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第1章
怖い人って大抵最初は優しい
しおりを挟む「さぁ、あんなバカは放って置いて参りましょう、秋月唯さん。フェリル様、迷い人の保護、ありがとうございました。」
「いいえ、国民の義務ですもの!唯だったらいつでも遊びに来てもいいんですのよ!」
「ありがとうございます、フェリル様」
笑い終わったアイルさんが私へ手を差し伸べて来た。ちょっと戸惑ったがその手を取って一緒に歩く。
フェリル様へお礼をいって別れる。あぁ...私の癒しが...
「アイルさん、どうやって帰るんですか?」
「時空の歪みの中へ入れば帰れますよ。場所は城の裏の山にありますので、少し歩きますがよろしいですか?」
「もちろんです、ありがとうございます。」
城を出ると下町のような場所があって商店街があるようだった。城下町、といった感じだ。
本当にゲームの世界みたいなところだなぁ。
町を横に抜けて山へ向かう坂道へさしかかる。結構歩いてるけど景色が新鮮で飽きない。
....というか、これ手繋ぐ意味あるの?
「失礼、女性の手をいつまでも不躾に握っているのは心苦しいのですが、世界の均衡を守るために貴女を元の世界に返すのが私の仕事ですので。たまに途中で逃げたり喚いたり面倒な方もいらっしゃるので、お許しください。」
「逃げず騒がず大人しくします!」
「聡明な方で良かった。私も呪縛の魔法を使わなくて済みます。」
この人逆らっちゃダメなやつだ...
私が顔に出てたのかもしれないけど、何もいってないのに心を読まれたような...一番苦手なタイプだ。
しかし異性と手を握るなんてそうそうないのでちょっと気恥ずかしさはある。
弟とはよく繋ぐけどあれは家族だし。
恋人つなぎやってるカップルとかみるとあれ手汗やばい奴はできないよなとかすげー思う。私一生できねーなと思う。
ぼんやりと凄いくだらないことを考えていたら大きな大きな大木の前でアイルさんが立ち止まった。
「この木は精霊の木と言われています。この木の裏、...ここですね。ここが地球へ繋がっています。」
だいぶぶっとい木を一周する形で裏へ回ると幹に穴が空いていて先が見えないくらい真っ暗。ここから帰れるらしい。
ちょっと怖いけど仕方ない。
入り口でこの先は真っ暗。そこまで私を引っ張ってくるとアイルさんは私の手を離した。
「ここから先は同行できません。貴女がこちらへ来た時空間に出るはずです。もう、迷われないよう祈っております。お元気で。」
そう、背中を押される。
不思議な体験をしたけれど、これで帰れる。みんな(一名除く)いい人でよかった。異世界が地球に対応してくれててよかった。
「アイルさん、ありがとうございました。さようなら。」
「はい、さようなら。」
アイルさんへお礼をいって真っ暗闇の洞窟のような木の中へ歩き出す。
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