つまりは女子高生が最強

amama

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第5章

棚から高級食材

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「アイルはどうやら一足先に謁見の間にいるようです。今取り次いでもらっているのでもうしばらくお待ちください。」


男性にしては美しすぎる容姿でにっこりと笑う彼をじーっと見つめる。
私は可愛いものや綺麗なものが好きだ。
でも綺麗な男性を見てドキドキしたことはない。可愛い系の異性なら好きだが綺麗系の男性にときめいたことなどない。断じてない。

綺麗系の女性なら抱きつきたいしドキドキしたことあるけど、これはいったいなんなんだろう。

そうか、この感情は.....


「...どうかなさいましたか?」

「.....いえ...たくましい胸板だなって...かてぇ...カッチカチですね」


ない...だと...!?

女性なんじゃないかと疑って彼の胸へそっと両手を乗せる。
とても失礼な行動なのはわかっているがどうしても確認したかった。
だがそこにあるであろう柔らかさはなく、とても逞しい胸板だった。
にっこりと不思議そうにきいてくる彼は女とか男とか超越した綺麗さなんだな、そう思うようにしよう。
1人で納得して謝っておとなしく待つことにする。


「お待たせいたしました!どうぞ!」

「ありがとう。さぁ参りましょう。」


鎧を着た兵士っぽい方が敬礼をして道を開けてくれた。
待って、レイチェルさんが男の人ってことで衝撃受けすぎて聞き逃しかけたけど、謁見の間っていってたよね?
それって王様とか偉い人に会うための部屋だよね?アイルさんって偉い人だったの?やばいこれ今更緊張してきた。

赤いド派手なレッドカーペットを進んで目の前のデカイ扉をレイチェルさんが開ける。


「私の真似をして下さい。」


扉が開いて、長いレッドカーペットが緩やかな階段の上へとつながっている。
カーテンの奥に王様っぽい人がいらっしゃる。足しか見えないけどおそらくそうだろう。
階段になる手前にアイルさんが片膝をついた状態でこちらをみていた。

部屋の豪華さや緊張感で固まっていると、レイチェルさんが耳元で真似をしろといってから歩き出した。
なんて恥ずかしいことをさらっとするのか。反射的に耳を手で押さえてしまった。顔があつい。
慌てて彼の後を追って歩く。

アイルさんの斜め後ろくらいで立ち止まると、片膝をついて手をお腹のあたりにおき礼をした。
かなりぎこちなくなったがなんとか真似をして礼をする。


「レイチェル・ブライト、参上致しました。」

「楽にしてくれ。ブライトの横にいる貴女が...」

「あっ秋月唯です!あのっ、色々ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ございませんでした!妹を探してご迷惑とわかっていながらこちらで探させて頂いたんですが、妹は私の世界で見つかったので、ご報告と謝罪をしたくてお邪魔させて頂きました。本当に申し訳ありませんでした!」


王様らしき人が私へ視線を移したのがなんとなくわかって、緊張と罪悪感で一気に謝ってしまった。
土下座がこちらの世界で通用するのかわからなかったがつい土下座の状態で謝ってしまった。人生初の土下座だ。

私の悲鳴のような謝罪の後、謁見の間は静まり返っていた。


「...ブライト。何もご説明をしておらんのか?」

「.....女神の美しさが有名なことはお伝え致しましたよ?」

「もうよい。このナルシストが。...頭を上げてくれ。私から説明をしよう。」


静まり返った部屋にイラついた声が響いたので即座に顔を上げて姿勢を正した。
なんか土下座するような場所でもないのだろうか、すごく恥ずかしくなってきた。


「貴女が壊滅させたのは騎士団が手を焼いていた集団でな、本当に感謝をしている。
それに恥を晒すが、人身売買の大元のローエル家のこともだ...。貴女が強引に切り開いてくれなければ、解決出来なかっただろう。
この国の主人として、礼を言わせてくれ。」

「...そんな、私は」

「ローエル家を追放し全員しょっぴいてやった、私の王としての人気も爆発的に上がり、本当に本当に感謝をしている。。」

「......ヨカッタデス」


なんだか想像してたのと違った。
もっと渋いおじさま的な方かと思っていたら本音ダダ漏れのなんだか緩そうな感じだ。足しか見えないのでどんな方なのかはわからないが、なんとなくイメージは崩れた。


「...王。」

「わかっている。...お持ちしなさい。この様な形でしか礼を出来ないのが申し訳ないが...」

「え?これ...え?お金ですか?」

「この世界の紙幣だ。あちらの世界でも金は金、魔法で変換すれば勿論使える。」


アイルさんがいらついてるのか少し怒った様な声で王様を呼ぶと思い出したかのように横に待機している兵士さんたちが持っているケースを二つ、私の目の前に持ってくると蓋を開けた。
中にはびっちり紙幣が入っていて、みたことのない文字が書いてある。
.....この世界のお金のレートがわからないけどこれ結構がっつりびっちり入ってる。こんなんもらうわけにはいかない。


「ありがたいのですが、お金をいただくわけには...」

「秋月さん、これは正当な報酬です。貴女が倒して捕縛された者たちの中には国が賞金を掛けている者が数人おりました。ですから遠慮などなさらないでください。
それに、秋月さんの世界では大した金額ではありませんよ。」


私が慌てて受け取れないと断ろうとしたら、アイルさんがさりげなく私が心配していたことを教えてくれた。
大金だったら私が断るとわかっていたのだろうか。
...報酬っていわれてもなぁ...迷惑かけながらだったしな....


「では私達は失礼致します。」


私がお金とにらめっこをしながら悩んでいると、横にいたレイチェルさんがケースを閉めてまた一礼をして颯爽と出口へ向かってしまった。まだもらうとかいってないのに!!


「秋月唯...感謝する。もう、迷われないことを祈ろう。」

「あ、ありがとうございました!」


礼をして顔を上げる。
相変わらず足しか見えなかったがなんだかすごい人なのかな、というのはわかった。
よくわからないプレッシャーで動けなくなっていたら斜め前にいたアイルさんが「参りましょう」と声をかけてくれてようやく謁見の間を出られた。
手汗がやばい...
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