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第6章
ワガママは5歳まで
しおりを挟む「あの、陽くん怪力すぎません?マジでおっぱい持ってかれそうになってんですけど...」
「...おい陽、引っ付いてると被害妄想がうつるぞ、離れろ」
秋月が帰ろうとしたら陽がまた引っ付いて動かなくなる。
陽がこんなにいうこときかねぇのは初めてで、とりあえず引き剥がそうとしてみたが秋月の無駄にデケェ胸が引きちぎれそうになるだけだった。こいつなんでこんな力強えんだよ、ガキのくせに。
「陽くーん、どうしたの?私も帰らなきゃなんだけどなー」
「....やだ」
「...っく、可愛い...!う、上目遣いで見つめたってダメなんだよ!陽くんおっぱい潰れるから力緩めてマジで」
「陽、いい加減にしろよ。離れろって何回言わせんだ」
つい舌打ちがでる。
陽は何も言わないまま、ただずっと秋月に引っ付いてる。
秋月といい、陽といい、イラつかせやがってなんなんだ。
秋月から引き剥がそうと手を伸ばしたら秋月の力の入ってない平手が頬に当たった。
「...何してんだお前」
「先輩、今のはダメです。子供なんてワガママなんだからまずワガママの内容聞いてあげないと。そんなんだから陽くん無口になるんですよ。」
「俺のせいかよ」
「陽くんの周りにいる大人みんなのせいです。めんどくさがってもいいから、ちゃんと聞いてあげてください。陽くんがなんで野菜が苦手かとか、知ってあげてください。家族の先輩が聞いてあげなきゃ陽くん誰に話せばいんですか。この乱暴者」
秋月に言われて、腹は立ったが陽のことなんてあまり知らないのに気付かされた。
三人で暮らすようになってからだった気がする。陽が今日何してたとか、幼稚園でどーだとか、そんな話をしなくなった。
好き嫌いなんてガキだからしょーがねぇと思ってた。聞きもしなかった。
秋月に抱きついたまま眉を下げてこっちを見る陽が俺を責めてるように見えて、居心地が悪かった。
「陽くんもだぞー。お兄ちゃんがこんな感じなんだからとっ捕まえてワガママ聞かせるくらい主張しないと、気付いてくんないぞー。だからちゃんと声に出していったげてね」
「...怒らない?」
「ワガママくらいで怒るほど器狭くないよー。」
秋月に兄弟が多いことはなんとなく知っていたけど、こんな大人びてる奴だと思わなかった。ただのふざけた女だと思ってた。
こいつがいたら、下は楽だろうな。
なんか無性に腹たったので頬に触れた手を思いっきり握りつぶした。
「あだだだ!手と胸が痛い!」
「良かったな、少しは痩せんじゃねぇの」
「手が痩せるってどういうことですか」
「知るかんなもん」
秋月がなんで血の繋がらない兄弟から好かれてるのかなんとなくわかった。
上から好かれてるのはよくわかんねぇけど。
あれはただのセクハラにしか見えねぇ。
「.......まだ一緒にいる」
陽が喋ったと思ったら、秋月に抱きついたままボソリと呟いた。
厄介なワガママいいやがって...
「...これは仕方ないな。先輩、陽くんを嫁がせてください。幸せにします」
「俺がお前嫌いな理由わかったわ。純粋に腹たつ」
「い、いっちゃやだ」
「うっぐ...、よ、陽くん、私もね、家族がいてね...って痛い痛い痛い、ハグが子供の力じゃない」
「ったく、お前が陽甘やかすからだろ。」
ぐだくだと、時間がたっていくのが余計イライラした。
さっきから秋月のスマホが鳴りまくってるけど見て見ぬ振りをした。
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