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第6章
口悪い奴はハートフル
しおりを挟む「....こんなんうちにあったか?」
「毒なんて入ってないですよ失礼ですね。ちゃんと冷蔵庫の食材を再利用しましたよ」
「てかカレーなのに品数多っ」
準備ができて部屋の片付けをやらせていた海藤先輩を呼ぶと食卓に文句を言ってきたので無言でスプーンとフォークを渡してやった。
どんだけ信用ないんだよ。食ってみろコンチクショウ。
「食ってかねぇの」
「先輩にお持ち帰りされる前にビッグマッ○セットにポテト増量で食べちゃったんでお腹減ってないんです。それに今食べたら週末の撮影の時にデブって怒られますもん。」
片付いた決して広いとは言えないリビングで先輩とあい向かいに座って膝に陽くんセットしたら不思議そうに食わないのかと聞かれた。入ることは入るがそんなことしたらまた撮影の時に後悔するのでやめる。
もう私がお持ち帰りだのなんだの言っても突っ込んでくれなくなったので先輩はだいぶお疲れなんだろう。
さっさと食べてさっさと休むのが一番だ。
「海藤先輩よりはマトモに料理できるんでどうぞおためしください。
陽くんいただきますしようか!」
「...いただきます、」
先輩も律儀にいただきますとか言い出したので可愛くなってこれからダーリンって呼んでやろうと決めた。多分ぶん殴られるけど。
「....人って何が優れてるかわかんねーもんだな」
「普通に褒めてくれていいんですよ」
「俺よりはマシっつーのは信じる。...陽、せっかくおばさんが押しかけてきて作ったんだから野菜食えよ」
「陽くんにならおばさんって呼ばれても抱きしめる」
初めて先輩に褒められたので浮かれてたら陽くんは野菜が苦手なのか、サラダや和え物系に一切手を出していない。
さっきまであんなに目をキラキラさせてカレー食べてくれてたのに野菜食えって言われた瞬間テンションだだ下がりの陽くんが可愛すぎる。だがしかし。食べ物の好き嫌いなど言語道断。
「陽くん、お野菜の何がやなの?」
「...あじがおいしくない、」
「味かー。ちょっとまってねー。」
陽くんを下ろして冷蔵庫から作り置きにと作ったポテサラをタッパーごと出してくる。
再び陽くんをだっこしてサラダにしたレタスとかキャベツの上にポテサラを乗っけて口元へと箸で運ぶ。
「騙されたと思って食べてみて。ちゃーんと味するよー」
困った顔して見上げられたがここは折れぬ、折れぬぞ...いくら可愛い顔して見てきても箸を下げずに食べるのを待ったら、陽くんは観念したのか食べてくれた。
数秒後、陽くんは自分からポテサラの乗ったサラダを食べてくれました。
何この子素直可愛い...なんで海藤先輩の弟がこんな可愛いんだ畜生...
「秋月」
「なんですか?」
「お前いつも真っ直ぐ帰るくせになんで今日は夕飯済ましてあんなとこで座り込んでんだよ」
「...ついに先輩も私に興味をお持ちになったのですね」
「マトモに答えねーならお前の兄貴にナンパしてきた不良蹴散らしたのバラすわ。保護者に怒られればいい」
「そいつぁ勘弁しておくんなせぇ...」
陽くん見て癒されてたら先輩が急に変なこと聞いてくるからさすがに動揺した。
しかもそんなことバラされたらまた和兄の機嫌損ねるじゃん...それが光に漏れる心配もある。恐ろしきかな。姉ちゃんまだ嫌われたくない。
うーん...ま、いいや先輩だし。
「今日両親が出張から帰ってくるんですよ。だからかなー」
「はあ?だったら寄り道してねぇで真っ直ぐ帰れよ、バカか」
「んーーー、...あんま明るい話じゃないんですけど、離婚してて再婚、つっても事実婚の義理の母から嫌われてるっぽいんですよねー。だからちょっと帰り辛かったかなー。」
「うっわうざ」
「えっさすがにひでぇ」
「お前それ逃げてりゃ誰か助けてくれると思ってんだろ。自分の都合のいいように考えやがって、このシンデレラ気取りが。だから女は嫌なんだよ。
待ってたら王子様が自分に都合の悪い継母を追っ払ってくれるってか。」
「.....先輩なんかシンデレラに恨みでもあるんすか。」
「あーいう考え方が嫌いなだけ。
人の家押しかけて偉そーなこといったんだ、自分の家族とくらい自分で向き合えよ。今のお前クソダセェわ」
「先輩....カレー食べてる時にクソとかいうのやめましょうよ。教育に良くないですよ。陽くん、せっかく先輩に似てなくていい子なのに....いだだだだ!先輩割れる頭割れる!」
海藤先輩がまともなこといってたので悔しくて口の悪さ突っ込んだら頭を撫でるふりして鷲掴みにされてやべぇ痛かった。
この人握力どうなってんだやべぇ痛いぞ。
陽くんもさっきしがみついてきたときの力は子供のそれじゃなかった。なんだこの兄弟怪力すぎるでしょ。
全くMじゃないけど先輩に叱られて、ぐだくだ悩んでても仕方ないので向き合う覚悟が出来た。たまには海藤先輩も役に立つ。
会って、話をしてみよう。
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