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第7章
あれ、なんかおかしい
しおりを挟む王子様の挨拶らしきことが終わり、大きな拍手がホールに響いた。
拍手が終わるとジャズっぽい曲が流れてたくさんの人がホールで踊りを始める。
「こちらへ。」
周りをみてたら手を引かれてホールの真ん中へと連れ出された。両手を彼へと預けるとやっぱり慣れているのか、身体を引き寄せられ自然にスローテンポなダンスを踊らされる。何回も言うが本当に息苦しい。
目の前にある綺麗な顔が微笑む。
「本当に、貴女は強く美しい。」
「....あの、」
「本当に、平和な舞踏会が行われる世界だと思っていらっしゃいますか?」
「...レイチェルさん」
「本当に、私が国を守る騎士だとお思いでしょうか?」
あれ、なんかおかしい。
彼の表情は笑顔でとても綺麗なのに、冷たくて凍えそうだ。触れられている手が怖くなって手を離そうとしたら、身体を思いっきり引き寄せられ抱き締められた。周りがそれに気付いて少しざわついた声が聞こえる。
「本当に、
貴女は素敵な生贄です。」
その台詞の意味はわからなかったが今の状況が不味いってことだけが理解できた。
突き飛ばして離れようとしたが、身体が動かない。ふと自分の手が目に入る。白いドレスに白い手袋をしていたはずなのに、右半分が真っ黒になっている。
慌てて自分の身体を見てみると床からなにか黒い物体が自分の身体に登って来てる。黒くなった右半身が動き辛い。固まっていくようだ。....これは本格的にやばい。
周りから悲鳴があがり、この異常事態が認識されたらしい。ついでに私がしてた仮面も落っこちて顔がバレた。私の顔はこちらの世界で有名らしく、女神だなんだと声がした。その女神ってやめてもらっていいっすか。
何が起きたのかわからないのは皆同じらしい。
混乱の中で怒鳴り声が響いた。
「レイチェル!!何をしてやがる!!」
「素直なバカは嫌いじゃなかったよ、ジェイン。だが君は少し見た目を気にした方がいい。」
「ふざけてんじゃねぇ!今すぐソイツを離して両手を上げろ!!」
抱き締められてるせいで私からは見えなかったが後ろからジェインさんの声がして、それになんでもないように穏やかな声色で答えていて...すごく怖くなった。
悲鳴がどんどん遠くなっていく。誰かがみんなを誘導して避難させているらしい。
自分の身体の黒い部分が増えていく。周りも徐々に暗くなっていく。身体の黒くなった部分が感覚もなくなっていく。
怖くて動けない、なんて初めてだった。
「あぁ...そんなに怯えないでください。そうですね、教えて差し上げます。
この世界には精霊というものがおります。
とても強力なものから、小さい精霊まで色々....。」
自分でも気付かなかったがまだ黒くなっていない部分が震えていた。
この状況の中で、いつものように優しい語り口調で話しをし始めた彼が怖かった。
悲鳴はもう聞こえなくなって鎧を着た人やローブの杖を持った人が私とレイチェルさんを囲んでいる。
....これ、本気でどうしよう...
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