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第8章
号泣しだすと止まらない
しおりを挟む元の、自分の世界に帰ってきて、井戸のはしごを戻しもしないで急いで家へ走る。
玄関を勢いよく開けて締める。あれからどのくらいたったんだろう。こっちはまだ暗くなり始めたくらい。
「お、おかえりー...って唯ちゃん何その格好。」
「.....和兄..」
今帰って来たのか、和兄が制服のまま二階から降りて来た。
なんかもう、和兄みたら安心した。
帰ってこれたことの安堵感とさっきの身体が侵食されていく恐怖が今更襲って来て、自然と立ち尽くしたまま涙が溢れた。
「えっ!?唯ちゃんどした!?怪我した!?どっか痛いの!?」
「ち、ちがっ、...ごめ、んっ、」
涙が一度溢れたらもう歯止めが効かなくなって、どんどん涙がでて止まらなくなった。
私が急に泣き出したので和兄が滅茶苦茶焦って目の前まで来て身体の心配をしてくれた。
身体は多分なんとも無いのに涙が止まらなくてうまく喋れない。
必死で首を振って怪我はないのを伝える。
なんて情けない。
「....嫌だったら、殴っていいからさ。....ちょっとはこっちの方が良くね?」
私が泣き過ぎてて話ができないし、泣き止まないで号泣してしまったから、和兄を困らせてしまった。
困り果てた和兄が私の頭を自分の方へ引き寄せて胸を貸してくれた。なんだこの女ったらし慣れてやがる。泣き顔が見えないようにだろうか。相当ブサイクな顔をしてたんだろうな。そりゃそうだ、鼻水たれてるもん。
人の体温にすごく安心して、余計涙がでて来た。
余計困らせるとはわかってたけど、和兄に抱き付いて鼻水つけまくった。どうせ洗濯するの私だし許せ。
何にも言わずにそのまま、どのくらいだろ、体感時間では五分くらい、抱き付いたまま制服を涙と鼻水まみれにした。
ガタン、と後ろで玄関が開く音がした。
「ただい........」
「...........」
「待った、待って待って、なんか誤解しそうだから言っ「クズだとは!チャラ男だとは!!思ってたけど!!!アンタ唯になにしてんの!?」
「和也、やっていけないことくらいわかる奴だと思ってたぞ」
あ、これやばい。
玄関が開いて帰って来たのは美佳姉と大輝兄で完全に和兄がなんかやらかしたと思ってる。これはさすがに申し訳ない。
和兄から離れて誤解を解こう。私が悪いのに完全に悪者扱いされててさすがに同情する。
「二人とも、違うの、私が」
「めっちゃ泣いてる!!ちょっ、和也あんたほんともうやだ!!」
「だーから違うって!人の話聞けよな!」
私が和兄から離れて二人の方を向いたらとてもびっくりしていて、相当ひどい顔なんだな、と悟った。
なんとか誤解は解いたが、その時咄嗟にした言い訳が町の占い師に家族が大変なことに!って言われて走って帰って来たら和兄いて安心して泣いてたって言い訳で自分の嘘のセンスのなさが憎くなった。誰だよ町の占い師って。
二人とも信じてはいないが和兄のせいではないっていうのは理解してくれたのでなんとかその場は収集できた。
慣れないことをするもんじゃないな...
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