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第8章
万能アイスノン
しおりを挟む「先生、怪我人!」
「.......なにごっこだ、そりゃあ」
私がお姫様抱っこしたまま保健室のドアを開けるとベランダでタバコ吸ってる養護教諭の宮本先生が驚いた後すごく微妙な顔してきた。
朝からタバコ吸いやがって。
さっきの状況を説明しつつ先輩をベットへと寝かせる。
「ボール打つかったくらいで意識飛ばすとか女子かこいつは。」
「腫れてるんだから冷やしてあげてくださいよ!顔面ですよ、顔面!」
「ほれ。俺に冷やしてもらうより女子の方がいいだろ。」
「職務怠慢だと思います」
「見たとこただの打撲だろ。冷やしときゃ治る。俺仕事あるからお前もソイツ起こしたら自分の教室に戻れ。」
この先生適当すぎないか?
冷やせっていったらアイスノンを投げ渡された。もう少し心配してあげてもいいじゃないか。気絶してんだぞ。
宮本先生が出ていってしまったので仕方ない。アイスノンを彼の腫れてしまった頬へとハンカチを巻いて当てる。
.....どうしても距離が近くなってしまうのは許してほしい。そしてこの人すげえ睫毛バッサバサなんだけど付けまつげ?そんなわけないよね?マツエクとかじゃないよね?なんて綺麗な睫毛してんだ...羨ましすぎるだろ。
少し長すぎる睫毛に嫉妬してたら吹っ飛んだ眼鏡のことを思い出した。
咄嗟にポケットに入れちゃったけど大丈夫かな。
アイスノンを片手で支えながらポケットを探って眼鏡を取り出す。
レンズ割れたりとかはしてないけど...曲がってたりしないよね?大丈夫かな。
私が眼鏡の無事を確認してると先輩がうなされたような苦しそうな声を出した。目覚めたようだ。なんてか弱い先輩なのだろうか。いや、まぁ野球部のボールだしそりゃ痛いよね。
「大丈夫ですか?」
「...ん?お前は...」
「あ、眼鏡!失礼します」
「な、な...っ、なにをしている!自分でかけれる!」
「あ、すいません、なんかつい」
彼は目覚めて上体を起こすと、眉を寄せて見えにくそうにしてたので持ってた眼鏡を身を乗り出してかけたら怒られた。
まぁ確かに馴れ馴れしかったな。いや、でも...なんか....なんだろう、この庇護欲は。
身長高いしきっちりした人っぽいんだけど、やけに庇護欲を掻き立てられるというか....構いたくなる感覚がある。
「先輩、まだこれで冷やしてたほうがいいですよ。」
「....っ、あぁ...そうか、野球ボールが当たったんだな....」
「はい。口切れたりはしてないみたいなので大丈夫だとは思うんですけど、....ちょっと腫れてるので。」
「全く...秋月といると何かしら起こるな」
「ごめんなさい」
「...お前じゃない。兄の方だ。」
「私が追いかけちゃったのが原因ですし...、大人気なかったなーと反省してます。和兄にも悪いことしちゃったし...,。ご迷惑おかけして申し訳ないです。」
「.....お前は、兄とは血が繋がっていないんだろう。」
アイスノンを再び彼の頬へと当てるとやっぱちょっと痛いのか、綺麗な顔が歪んだ。
そしたら予想外の言葉が出てきたので言葉に詰まった。先輩と眼鏡越しに目があって、どうしたらいいのかわからなくなった。
やっぱ睫毛なげぇ。
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