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神の血族
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「この世で俺に愛される事を拒む愚かな者もいるのだな」
そんな台詞を平気で吐ける奴こそが愚かだ、と言う台詞を俺は咳払い一つでごまかし肩をすくめて、まあね。と笑いながら外したシャツのボタンをまた掛けなおした。
「生憎とあたしは王様に愛されるにはふさわしくない男なもんでね。どうか他をあたってくださいよ」
「そう言われるとますます欲しくなる。クロイ、クドウに部屋をあてがってやれ。いいか、なるべくなら俺の部屋の近くにしろ」
「王よ……、戯れが過ぎます」
ため息交じりにクロイがそう呟くが、ジモンは全く意に介さず、ただただ豪快に笑って答えた。
「ははは、珍しい物が俺は好きだ。ましてやこの異界の男はこの世でただ一人だ。それを欲しがらない男がどこにいる?まあ……今は丁重に扱う客人だが、用が済めばただの男だ。いいか、クドウ。俺は欲しい物は手に入れる。とりあえず、クロイにこの素晴らしい王宮とお前の住処になる部屋を案内してもらうがいい。安心しろ、夜這いなどしないさ、今は、な」
そう言い放ちながらジモンは何がおかしいのか大笑いする。大笑いしながら部屋を出て行く王に慌ててお付きの者共はついていく。後に取り残されたのは困り顔のクロイと俺だけだった。
俺にはちっとも理解できん人種の類の男だ。
自分や自分のバックボーンに絶対の自信があって、自尊心が高くて、プライドも高い。まあ、一言で言えば。
「ああも傲岸不遜って言葉が似あう奴は初めて見たよ」
「ゴウガンフソン?それはなんですか、クドウ様」
「うん、まあ……自分だけが偉くて後は皆、ゴミカスか虫けらだって思ってる男って意味だね」
「それは仕方が在りませんよ。ジモン様は神様の子孫ですから」
「なんだって?」
俺が思わずクロイの顔をまじまじと見つめると、慌てたように首を振った。
「そう言われているんです。我が王はこの地を治めていた褐色の肌を持ったエイニアスという金属や鉱石を司る神が人と交わったのが今のグノーシスの王族の血筋なのだと。ですから、王族以外は皆、白い肌に金か白金しろがねの髪をしているのですよ」
「少数民族が俺と同じような肌をしていると言ったが」
「でも……明らかに王とは違います。王は神と人の、混血なのですよ」
にこり、と人の良さげな男が笑う。
微笑んだ。だが、毒がある。
俺はそれには触れないで、じゃあ他の王族もいるのかいと聞くと、それはいないのだと言う。
なんでも王族はその高貴な血を薄めないために一族の者としか婚姻できない規則があったそうなのだが。
まあはっきり言って年数が経てば経つほど血は濃くなるどころか澱み始める。良くある話だ。
最初に異変を感じたのは、女が生まれなくなり、手足の指が多かったり少なかったりする子供が増えた事、大人になるまでに死んでしまう子供が異様に多くなったこと。それらの原因を血族同士の濃すぎる婚姻、交合であると説いた医者は首をはねられ、隣国の王女を嫁に娶るように忠告した大臣は豚の餌になった。グノーシスの王族、神と同じ褐色の肌を持つ彼らにとって、死よりも恐ろしい事は、自分たちの肌を薄くすることだった。
「五年前の事です。ある流行り病が起こりました。それは普通の者が罹患りかんしても咳が出たり微熱が出るだけだったのですけれど……王族の方々がかかると、それは恐ろしい病へと変わるのです」
「どんな?」
「皮膚が爛れましてね。紫の色をするのです。足の先から、徐々に蝕みます。しかもそれはとても痛むようでして……、そしてある日急に、コロリと意識を失い死んでしまいます。それで、現王のジモン様と、その息子であるロル様のお二人を残して王族の皆様は逝ってしまわれました。ジモン様のお妃様、そしてロル様の母でもあったイアナ妃は大層お美しい方でしたけれど、最後は見る影さえなく……余りのむごたらしいお姿にジモン様が耐え切れず、皆に見せる前に火葬せよ、と言われるほどでしてね」
「じゃあ彼らが最後の生き残りってやつかい」
「まあ、まだジモン様もお若いですから。王族以外の方でもよいので子を残して頂きたいのですが……どうにも気が進まないご様子で」
「ふうん、でもまあ安心したよ。俺にちょっかいを出したのがおふざけだってことが解ってさ」
「え?」
クロイが戸惑ったように俺を見た。まさか。
「……王は男性もお好みです。ましてや貴方のような小さく、肌は褐色めいていて。おまけに黒い髪の男性は少ないのですよ。希少価値がある」
「そりゃあ、参ったね」
そんな台詞を平気で吐ける奴こそが愚かだ、と言う台詞を俺は咳払い一つでごまかし肩をすくめて、まあね。と笑いながら外したシャツのボタンをまた掛けなおした。
「生憎とあたしは王様に愛されるにはふさわしくない男なもんでね。どうか他をあたってくださいよ」
「そう言われるとますます欲しくなる。クロイ、クドウに部屋をあてがってやれ。いいか、なるべくなら俺の部屋の近くにしろ」
「王よ……、戯れが過ぎます」
ため息交じりにクロイがそう呟くが、ジモンは全く意に介さず、ただただ豪快に笑って答えた。
「ははは、珍しい物が俺は好きだ。ましてやこの異界の男はこの世でただ一人だ。それを欲しがらない男がどこにいる?まあ……今は丁重に扱う客人だが、用が済めばただの男だ。いいか、クドウ。俺は欲しい物は手に入れる。とりあえず、クロイにこの素晴らしい王宮とお前の住処になる部屋を案内してもらうがいい。安心しろ、夜這いなどしないさ、今は、な」
そう言い放ちながらジモンは何がおかしいのか大笑いする。大笑いしながら部屋を出て行く王に慌ててお付きの者共はついていく。後に取り残されたのは困り顔のクロイと俺だけだった。
俺にはちっとも理解できん人種の類の男だ。
自分や自分のバックボーンに絶対の自信があって、自尊心が高くて、プライドも高い。まあ、一言で言えば。
「ああも傲岸不遜って言葉が似あう奴は初めて見たよ」
「ゴウガンフソン?それはなんですか、クドウ様」
「うん、まあ……自分だけが偉くて後は皆、ゴミカスか虫けらだって思ってる男って意味だね」
「それは仕方が在りませんよ。ジモン様は神様の子孫ですから」
「なんだって?」
俺が思わずクロイの顔をまじまじと見つめると、慌てたように首を振った。
「そう言われているんです。我が王はこの地を治めていた褐色の肌を持ったエイニアスという金属や鉱石を司る神が人と交わったのが今のグノーシスの王族の血筋なのだと。ですから、王族以外は皆、白い肌に金か白金しろがねの髪をしているのですよ」
「少数民族が俺と同じような肌をしていると言ったが」
「でも……明らかに王とは違います。王は神と人の、混血なのですよ」
にこり、と人の良さげな男が笑う。
微笑んだ。だが、毒がある。
俺はそれには触れないで、じゃあ他の王族もいるのかいと聞くと、それはいないのだと言う。
なんでも王族はその高貴な血を薄めないために一族の者としか婚姻できない規則があったそうなのだが。
まあはっきり言って年数が経てば経つほど血は濃くなるどころか澱み始める。良くある話だ。
最初に異変を感じたのは、女が生まれなくなり、手足の指が多かったり少なかったりする子供が増えた事、大人になるまでに死んでしまう子供が異様に多くなったこと。それらの原因を血族同士の濃すぎる婚姻、交合であると説いた医者は首をはねられ、隣国の王女を嫁に娶るように忠告した大臣は豚の餌になった。グノーシスの王族、神と同じ褐色の肌を持つ彼らにとって、死よりも恐ろしい事は、自分たちの肌を薄くすることだった。
「五年前の事です。ある流行り病が起こりました。それは普通の者が罹患りかんしても咳が出たり微熱が出るだけだったのですけれど……王族の方々がかかると、それは恐ろしい病へと変わるのです」
「どんな?」
「皮膚が爛れましてね。紫の色をするのです。足の先から、徐々に蝕みます。しかもそれはとても痛むようでして……、そしてある日急に、コロリと意識を失い死んでしまいます。それで、現王のジモン様と、その息子であるロル様のお二人を残して王族の皆様は逝ってしまわれました。ジモン様のお妃様、そしてロル様の母でもあったイアナ妃は大層お美しい方でしたけれど、最後は見る影さえなく……余りのむごたらしいお姿にジモン様が耐え切れず、皆に見せる前に火葬せよ、と言われるほどでしてね」
「じゃあ彼らが最後の生き残りってやつかい」
「まあ、まだジモン様もお若いですから。王族以外の方でもよいので子を残して頂きたいのですが……どうにも気が進まないご様子で」
「ふうん、でもまあ安心したよ。俺にちょっかいを出したのがおふざけだってことが解ってさ」
「え?」
クロイが戸惑ったように俺を見た。まさか。
「……王は男性もお好みです。ましてや貴方のような小さく、肌は褐色めいていて。おまけに黒い髪の男性は少ないのですよ。希少価値がある」
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