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扉の向こう側
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神が告げた瞬間に扉が開いた。
俺は、何かの視線を感じる。
真っ正面を向くと、眼球のない何か、が間近にいた。間近ではない。そいつの顔が大きいのだ。扉の中から、とてつもない巨大な何かが突き出た。
巨大な山羊の頭蓋骨だ。俺の前にいる。そいつの体は人間に近い。だが、どこか嘘くさい。完璧なフォルム、男、なのか、山羊なのか解らない怪物は小刻みに揺れていた。
何か。体を四つん這いにしている。そして、小刻みに揺れている。大きな頭蓋骨で、体が良く見えない。
ただ、そいつの床に置いた手と手の間に、もう二本手が見えた。それは、浅黒い肌をしていた。
思わず息を呑んでしゃがみこむ。
するとそこには先ほどまで意気揚々としていた男の姿があった。
男は、哀れな姿だった。
豪奢な衣服は全て取り除かれ、自慢気につけていた首飾りと金の腕輪だけが彼の肌に取り残されたままで。
彼は犯されていた。
山羊男のペニスが、ジモンを犯していた。
ゴチュン、ゴチュン、とやけに耳障りなその水音はやけに正確にリズムを刻み、そのリズム通りにジモンの体は浮き、そして沈んだ。
「おい、あんた……」
「あ……あええ」
声をかけるとぼろ雑巾のような男が俺を見て、呻いた。
「あ……、あええ、なじぇ……」
(なぜ、なぜだ)
勢いよく犯されて、ごふっ、とむせながらもジモンが俺に問いかける。そんなこと、そんなこと俺にだって解らない。手を差し出す。助けを乞うて、ジモンが俺に手を伸ばし。
だが扉がバタン、と閉められた。
眉をしかめて自称、神を睨むと、男はにこりと笑ってすまないね、と言った。
「これは君が十五歳の時に畏怖を覚えた物だった。君に良くしてくれた兄さんがサタニストだったんだろう?君はそれを、神だと思った」
「よせ、やめろ」
「君の母さんと父さんは敬虔なクリスチャンで。とても良い人だった。良い人というのは、悪い人の糧となる。父さんは若くして死に、彼女は騙されて知人の保証人になり、返しきれない借金を背負った。君とお姉さんとお母さんは借金取りが来るたびに押し入れに隠れて、過ごしたんだね」
「俺の、ことはどうでもいい」
「真っ暗な押し入れの中で、暴力的な罵声がドア越しに聞こえる。君は震えながら身を縮ませる。だが、母さんと姉さんは違っていた」
讃美歌を。
讃美歌を歌っていた。
二人は微笑みながら目を瞑り、家の前の男達に気づかれないように、しかし確実な旋律で神を称える唄を口ずさんでいた。
「神は乗り越えられない試練など与えられない。そう言って彼女たちは神を信じたけれど、結局の所、母さんと姉さんは神には選ばれなかった。君以外の家族は風俗に売り飛ばされ、君は孤児院で育ったわけだ。そして、神などいない、と思った。神、よりも悪魔に縋った。といっても君はサタニストではない。神よりも悪魔の類に親近感を覚えたんだね。君は悪魔に出会った事で吹っ切れた。やれるもんならやってみろ、と思ったんだね。神がいるなら、やってみろ。俺に罰を与えてみろ。でも、残念ながら神は君に応えてはくれなかった訳だ」
「俺の話なんか、どうでもいい。なぜ、あいつがあんな」
「あれは彼が恐れている事でもあったから」
「なんだと」
「彼の畏れは、弱い事への畏怖、弱い人間への軽蔑だ」
自称、神は再びドアを、コン、と叩く。
するとドアが開かれて、次に見えたのは三人の男だった。
二人の男が一人の男を犯している。
だが、三人の男は全てジモンだ。
傲慢な顔のジモンが、泣いているジモンの口に性器を押し入れ、その後ろからまた傲慢な顔のジモンが尻穴を犯している。
「彼は、男に犯されるのを畏怖している。虐げられるのを畏怖している。それは、男にとって屈辱的な事だからだ。彼はそう習ってきたし、従わせる為に男を犯す事が最も心に傷を負わせることができると、思っていた」
俺は、何かの視線を感じる。
真っ正面を向くと、眼球のない何か、が間近にいた。間近ではない。そいつの顔が大きいのだ。扉の中から、とてつもない巨大な何かが突き出た。
巨大な山羊の頭蓋骨だ。俺の前にいる。そいつの体は人間に近い。だが、どこか嘘くさい。完璧なフォルム、男、なのか、山羊なのか解らない怪物は小刻みに揺れていた。
何か。体を四つん這いにしている。そして、小刻みに揺れている。大きな頭蓋骨で、体が良く見えない。
ただ、そいつの床に置いた手と手の間に、もう二本手が見えた。それは、浅黒い肌をしていた。
思わず息を呑んでしゃがみこむ。
するとそこには先ほどまで意気揚々としていた男の姿があった。
男は、哀れな姿だった。
豪奢な衣服は全て取り除かれ、自慢気につけていた首飾りと金の腕輪だけが彼の肌に取り残されたままで。
彼は犯されていた。
山羊男のペニスが、ジモンを犯していた。
ゴチュン、ゴチュン、とやけに耳障りなその水音はやけに正確にリズムを刻み、そのリズム通りにジモンの体は浮き、そして沈んだ。
「おい、あんた……」
「あ……あええ」
声をかけるとぼろ雑巾のような男が俺を見て、呻いた。
「あ……、あええ、なじぇ……」
(なぜ、なぜだ)
勢いよく犯されて、ごふっ、とむせながらもジモンが俺に問いかける。そんなこと、そんなこと俺にだって解らない。手を差し出す。助けを乞うて、ジモンが俺に手を伸ばし。
だが扉がバタン、と閉められた。
眉をしかめて自称、神を睨むと、男はにこりと笑ってすまないね、と言った。
「これは君が十五歳の時に畏怖を覚えた物だった。君に良くしてくれた兄さんがサタニストだったんだろう?君はそれを、神だと思った」
「よせ、やめろ」
「君の母さんと父さんは敬虔なクリスチャンで。とても良い人だった。良い人というのは、悪い人の糧となる。父さんは若くして死に、彼女は騙されて知人の保証人になり、返しきれない借金を背負った。君とお姉さんとお母さんは借金取りが来るたびに押し入れに隠れて、過ごしたんだね」
「俺の、ことはどうでもいい」
「真っ暗な押し入れの中で、暴力的な罵声がドア越しに聞こえる。君は震えながら身を縮ませる。だが、母さんと姉さんは違っていた」
讃美歌を。
讃美歌を歌っていた。
二人は微笑みながら目を瞑り、家の前の男達に気づかれないように、しかし確実な旋律で神を称える唄を口ずさんでいた。
「神は乗り越えられない試練など与えられない。そう言って彼女たちは神を信じたけれど、結局の所、母さんと姉さんは神には選ばれなかった。君以外の家族は風俗に売り飛ばされ、君は孤児院で育ったわけだ。そして、神などいない、と思った。神、よりも悪魔に縋った。といっても君はサタニストではない。神よりも悪魔の類に親近感を覚えたんだね。君は悪魔に出会った事で吹っ切れた。やれるもんならやってみろ、と思ったんだね。神がいるなら、やってみろ。俺に罰を与えてみろ。でも、残念ながら神は君に応えてはくれなかった訳だ」
「俺の話なんか、どうでもいい。なぜ、あいつがあんな」
「あれは彼が恐れている事でもあったから」
「なんだと」
「彼の畏れは、弱い事への畏怖、弱い人間への軽蔑だ」
自称、神は再びドアを、コン、と叩く。
するとドアが開かれて、次に見えたのは三人の男だった。
二人の男が一人の男を犯している。
だが、三人の男は全てジモンだ。
傲慢な顔のジモンが、泣いているジモンの口に性器を押し入れ、その後ろからまた傲慢な顔のジモンが尻穴を犯している。
「彼は、男に犯されるのを畏怖している。虐げられるのを畏怖している。それは、男にとって屈辱的な事だからだ。彼はそう習ってきたし、従わせる為に男を犯す事が最も心に傷を負わせることができると、思っていた」
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