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しおりを挟む「はぁ……もう敵わないなぁ」
――――ギッ
ベッドが軋む音がする。その瞬間、ツーツェイの身体がふわりと浮いた。
(わぁ……)
腰に腕を回して、軽く持ち上げるテオドール。すぐにベッドに置かれる。
「僕もベッドで寝るから、ツーツェイもここで寝て」
(ひ、ひゃい!)
上から見下ろすテオドールに心の中で声を出して頷く。自ら言い出したことだったが、あまりの至近距離にカチコチに固まってしまう。
「大丈夫。なにもしないって言ったでしょ」
ツーツェイの薄い寝間着を隠すように身体に布団をかける。ふっと笑ったテオドールにプレートを差し出した。
『ありがとうございます』
「うん」
ベッドのかなり端に寄ってしまったテオドールにこれでは落ちてしまうと起き上がって近づくと、それを制止させるように手をかざされる。
「そこから動かないで」
珍しく少し怒ったように強めな語気で言うテオドールにツーツェイは首を傾げる。
(なにかしたかな? どうしよう……)
怒らせたのではないかと慌て始めたツーツェイに、諦めたようにまた大きなため息をつく。
「ツーツェイ」
『はい!』
びしっと返事を書いてベッドの上で正座する。
「前にも言ったけど、愛することはできないけど性行為はできるんだよ」
――――ピキーン!!
身体が一瞬で硬直してボードが手から落ちる。ダラダラと額を流れていく汗。
(愛してなくても……そ、そっか。そーいうのはできるものなんだ……え? そういうもの?)
「ツーツェイは僕をなんだと思ってるの……聖人とでも思ってるの?」
(うぇ? でもテオドール様は紳士で……)
「……僕も男だよ。必死に我慢してるだけ。可愛い女の子がいたらシたいと思うのは仕方ないでしょう」
ツーツェイがまた疑問が浮かんでいるのに拗ねたように布団を被って背中を向けてしまった。
(かかかか、可愛い!? 私が!?)
「はぁ……もういいから。ツーツェイも早く寝て」
その言葉に慌てて背中を向けて布団を被る。広いベッドだからか距離は離れているけれどバクバクと心臓が煩い。ユラユラと揺れる蝋燭の炎がこれでもかと開いた目に映る。
――――『可愛い女の子』
まさかテオドールが自らのことをそう思っているとは……。長年虐げられてきたツーツェイは自己評価が低く、『気持ち悪い』ということ以外、自らを表現するものはないと思っていた。
テオドールの言葉が甘く何度も脳内で繰り返される。
(ね、寝れない!!)
こんなことなら大人しくソファで寝てもらっていたほうがよかったと後悔した。
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