愛することはないと言った婚約者は甘い罠を仕掛けてくる〜声なし少女と訳ありの結婚〜

前澤のーん

文字の大きさ
63 / 80

63

しおりを挟む
 



「そのご本はなにが書いてあるかわかりません」
「ふふ、そうだね。ツェイには難しいかも」
「むっ、私もテオドール様に白魔術を教えていただけたら使えるようになりますか?」
「うーん、なるかもしれないけど。ツェイには必要ないでしょう?」
「むむ……」

 ベッドで並びながらテオドールが読む分厚い魔術書をツーツェイが覗き込む。膨れたツーツェイの頬を手の甲で撫でれば、萎んでいくのに可笑しそうに笑う。

 その手の甲が唇をなぞってから、顔が近づいてそっと触れ合う唇。

「ん……ふっ…んん…」
「はっ……ツェイ……」

(はっ!! だめだめっ、しっかりしないと!)

 気持ちのよいキスに微睡む意識を無理やり取り戻して、いつもぐるぐる巻きにされる布団を掴んで床に投げ捨てる。そんなツーツェイにテオドールは唇を離してなにがあったのかわからず目を丸くしている。

(お、女は度胸!!)

「ツェイ? ……わっ!?」

 セリニアの指南を思い出して、テオドールの身体をベッドに押し倒して足の間に挟んで膝立ちする。下から驚いたようにツーツェイを見上げるテオドール。
 銀色の柔らかな髪がベッドに広がって綺麗な瞳が真下に見える。このアングルも堪らないと息を飲むけれど、そんな場合じゃなかったと自身を奮い立たせた。

 ――――プチ……。

 薄い寝間着のボタンを上から外していく。呆然と眺めていたテオドールだけど、すぐに意識を取り戻したのか、いきなりボタンを外し始めたツーツェイの手を掴んで止める。

「な、なにしてるの!?」
「私は限界なのです!!」
「え? 限界?」
「あんな寸止めを繰り返されて我慢できるとお思いですか! それともなんですか!? あなたは見悶える私を見るのが好きなんですか!?」
「えっ!? なに言っ……」
「優しそうにみえてめちゃくちゃ鬼畜!! 鬼! テオドール様のド変態!」

 もうこの際だからすべてぶちまけてしまえとツーツェイはまくし立てる。そんなツーツェイにテオドールが今まで見たなかで一番、目を大きく開いて停止している。

「うぅ、こ、こんなこと言うつもりなかったのに……馬鹿ぁ、テオドール様の馬鹿ぁ……うわーん!!」
「えぇ!? つ、ツェイ、泣かないで!?」
「うわーん! 破廉恥になってしまったのも全部テオドール様のせいだ! ひっく……酷い!!」
「あぁ、ご、ごめん!? お願いだから泣かないで」

 ぎゅうと抱きしめて頭を優しく宥めるように撫でる。『絆されないんだから』と心の中で思うけれど、優しい大きな手のひらに徐々に涙が収まってくる。

(我ながらちょろい女……)

「落ち着いた?」

 ツーツェイが抱き締め返して頬を擦り付けてきたのにほっと安心する。それと同時にテオドールを襲ってくる罪悪感と後悔。
 ツーツェイを怖がらせたくないがゆえに先に進まない選択をしたけれど正解ではなかったことに頭が痛くなる。なんだったら本当ならすぐに抱きたかった。めちゃくちゃシたいのを必死に抑えていた自身が馬鹿らしいと思ってくる。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く

紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

処理中です...