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その日の夜、どこから嗅ぎつけてきたのか魔族の反応があったとアルトが私を訪ねてきた。
どうやら逃げろ、と言いたいらしい。
「カーフィス、準備は出来ていますね?」
「当たり前だろ」
「ラナ…ごめんなさい。
少し待っていてくれる?
すぐに終わらせて帰ってくるから」
「…いや…一緒に行く!
私め一緒に行きたい…!」
こんなにも強く自分の意思を口にしたのは初めてだった。
だからこそ、驚きも大きく、この状況での事に困惑もするのだが……。
まぁ、本人の意思でもあるし、問題ないだろう。
それに…私の結界があるしいざとなれば呼べばいいし。
「いいよ、行こうか」
「うん…!」
私はラナの手を取ると、この村の中央に位置する広場へと向かった。
「カーフィス、いつも通りにお願いします。
ラナ、いい?
ちゃんと見ていて。
これが私の仕事。
回復術師の仕事の1つだから」
私はそう自分に言い聞かせるように口にすると静かに詠唱を始めた。
今度こそ、守り抜くと。
もう、誰も傷つかせないと。
『我、ここに願い奉る。
我、回復術師の1人にして主神、エンディールの力の断片を持つ者なり。
汝、我等が偉大なる母にしてこの世を作りし神…』
「アルト、ユリア、覚えとけ。
ルーディアの専属になりたいんなら、な。
俺等にとっての勝ちは、ルーディアを守り抜く事だ。
だが、あいつにとっての勝利は、犠牲者を出すことなく、全てを守り抜く事だ。
あいつの専属になるならあいつにとっての勝利を取れるくらいになれ」
それは、アルトとユリアに向けた言葉でもあり、自分自身へと向けた言葉であった。
「ルーディアが『戦場の回復術師』じゃなく、『戦女神』や『金色の女神』なんて言われる所以だ」
カーフィスがそう口にした時、丁度、私の詠唱も完了した。
『我が名はルーディア!
我が意に従い汝が力を我に貸し与えたまえ。
発動しなさい、守護結界!』
その声と共に私の体から金色の魔力が吹き出す。
その魔力は上空へと登っていくと村を守るようにして囲んだ。
一気に脱力感に襲われるもののまぁ、魔力だけならばまだあるので問題は無い。
「綺麗……」
「ありがとう、ラナ」
思わず呟いた、という様子のラナに私は笑顔でお礼を告げると、カーフィスが反応し剣に手をかけた。
「ルーディア、来るぞ」
「分かっています。
こちらは問題ありません。
ただ……5時間程で消えます」
「おう」
それを聞くとカーフィスは一気走り出し魔族との距離を詰めた。
そんなカーフィスを援護するかの様に私の魔力がカーフィスの体を覆う。
とはいえざっと数えただけでも魔族は5人。
カーフィス1人では持たないだろう。
基本的に魔族は人間よりも力が強く、魔力の量も多いのだから。
「アルト、ユリア、魔族と戦った経験は?」
「申しわけありません…」
「ありません…」
これは……無理だろう。
そう判断した私は奥の手を使うことにした。
「アルト、ユリア。
ラナを頼みます。
私はしばらく変わりますから」
「ルーディア様?」
「ラナ、少しだけ待っていて。
…私は一旦私では無くなる。
でも、これが私のもう1つの戦い方だから」
私はラナをそっと撫でてから目を瞑る。
そして、もう1人の自分へと話しかける。
私が回復術師である根源にして、神の子を名乗れる理由。
それがこのもう1人の自分であり、私の1番の理解者であるシヴァ。
【可愛い私のルーディア、お前がそれを望むのならば……】
段々と私の意識が下へと降りていく。
その変わりに、シヴァの意識が浮上してくるのを感じる。
そして、すれ違いざま、綺麗な金色の瞳とが私の顔を覗いた。
そして、シヴァはフッと優しく微笑むと私の頬に手を伸ばした。
【私は、この世をも滅ぼそう…】
その、心地の良い鈴の音のような声に誘われ、私は意識を失った。
「…ふむ」
私は外の風景を見渡すと私のルーディアが私を呼んだ理由がよく分かった。
そこには、ルーディアが生まれ育った村を侵略し、ルーディアを狙う魔族がいたからだ。
だが、戦神の名を持つ私にとってはこの程度何の問題もない…………と言いたいところではあるが…ルーディアの体に負担をかける事になるからな…。
力をセーブしなければいけない。
「弓か剣、だな」
そのくらいならば問題ないだろう。
精々、筋肉痛程度だろうしな。
まぁ、多少は鍛えているようだから大丈夫だろうし、筋肉痛になっても治せるからな。
「剣か弓はあるか?」
「……誰、ですか?」
「ルーディア様は…」
「私か?
私は、戦神の名を持つ者。
ルーディアが回復術師である所以であり、ルーディアを見初めし者」
「戦神……?」
「ルーディア様が回復術師である所以?」
どうやらこの2人はルーディアの専属ではないようで話を聞かされていないようだ。
回復術師の正体を。
「知らぬのらば話しても意味がない。
……ん?
お前は………そうか。
良い奴に気に入られたな」
これは、ルーディアと私のコンビとまではいかないがいい線まで行くだろう。
あいつに気に入られるくらいならばルーディアの傍にいても問題はないからな。
「む……これは、早めに片付けておくとするか」
物凄い勢いでこちらに向かってくる魔族に私はそう呟くと剣を貰えなかったので仕方なく魔力を使って剣を作り出した。
どうやら逃げろ、と言いたいらしい。
「カーフィス、準備は出来ていますね?」
「当たり前だろ」
「ラナ…ごめんなさい。
少し待っていてくれる?
すぐに終わらせて帰ってくるから」
「…いや…一緒に行く!
私め一緒に行きたい…!」
こんなにも強く自分の意思を口にしたのは初めてだった。
だからこそ、驚きも大きく、この状況での事に困惑もするのだが……。
まぁ、本人の意思でもあるし、問題ないだろう。
それに…私の結界があるしいざとなれば呼べばいいし。
「いいよ、行こうか」
「うん…!」
私はラナの手を取ると、この村の中央に位置する広場へと向かった。
「カーフィス、いつも通りにお願いします。
ラナ、いい?
ちゃんと見ていて。
これが私の仕事。
回復術師の仕事の1つだから」
私はそう自分に言い聞かせるように口にすると静かに詠唱を始めた。
今度こそ、守り抜くと。
もう、誰も傷つかせないと。
『我、ここに願い奉る。
我、回復術師の1人にして主神、エンディールの力の断片を持つ者なり。
汝、我等が偉大なる母にしてこの世を作りし神…』
「アルト、ユリア、覚えとけ。
ルーディアの専属になりたいんなら、な。
俺等にとっての勝ちは、ルーディアを守り抜く事だ。
だが、あいつにとっての勝利は、犠牲者を出すことなく、全てを守り抜く事だ。
あいつの専属になるならあいつにとっての勝利を取れるくらいになれ」
それは、アルトとユリアに向けた言葉でもあり、自分自身へと向けた言葉であった。
「ルーディアが『戦場の回復術師』じゃなく、『戦女神』や『金色の女神』なんて言われる所以だ」
カーフィスがそう口にした時、丁度、私の詠唱も完了した。
『我が名はルーディア!
我が意に従い汝が力を我に貸し与えたまえ。
発動しなさい、守護結界!』
その声と共に私の体から金色の魔力が吹き出す。
その魔力は上空へと登っていくと村を守るようにして囲んだ。
一気に脱力感に襲われるもののまぁ、魔力だけならばまだあるので問題は無い。
「綺麗……」
「ありがとう、ラナ」
思わず呟いた、という様子のラナに私は笑顔でお礼を告げると、カーフィスが反応し剣に手をかけた。
「ルーディア、来るぞ」
「分かっています。
こちらは問題ありません。
ただ……5時間程で消えます」
「おう」
それを聞くとカーフィスは一気走り出し魔族との距離を詰めた。
そんなカーフィスを援護するかの様に私の魔力がカーフィスの体を覆う。
とはいえざっと数えただけでも魔族は5人。
カーフィス1人では持たないだろう。
基本的に魔族は人間よりも力が強く、魔力の量も多いのだから。
「アルト、ユリア、魔族と戦った経験は?」
「申しわけありません…」
「ありません…」
これは……無理だろう。
そう判断した私は奥の手を使うことにした。
「アルト、ユリア。
ラナを頼みます。
私はしばらく変わりますから」
「ルーディア様?」
「ラナ、少しだけ待っていて。
…私は一旦私では無くなる。
でも、これが私のもう1つの戦い方だから」
私はラナをそっと撫でてから目を瞑る。
そして、もう1人の自分へと話しかける。
私が回復術師である根源にして、神の子を名乗れる理由。
それがこのもう1人の自分であり、私の1番の理解者であるシヴァ。
【可愛い私のルーディア、お前がそれを望むのならば……】
段々と私の意識が下へと降りていく。
その変わりに、シヴァの意識が浮上してくるのを感じる。
そして、すれ違いざま、綺麗な金色の瞳とが私の顔を覗いた。
そして、シヴァはフッと優しく微笑むと私の頬に手を伸ばした。
【私は、この世をも滅ぼそう…】
その、心地の良い鈴の音のような声に誘われ、私は意識を失った。
「…ふむ」
私は外の風景を見渡すと私のルーディアが私を呼んだ理由がよく分かった。
そこには、ルーディアが生まれ育った村を侵略し、ルーディアを狙う魔族がいたからだ。
だが、戦神の名を持つ私にとってはこの程度何の問題もない…………と言いたいところではあるが…ルーディアの体に負担をかける事になるからな…。
力をセーブしなければいけない。
「弓か剣、だな」
そのくらいならば問題ないだろう。
精々、筋肉痛程度だろうしな。
まぁ、多少は鍛えているようだから大丈夫だろうし、筋肉痛になっても治せるからな。
「剣か弓はあるか?」
「……誰、ですか?」
「ルーディア様は…」
「私か?
私は、戦神の名を持つ者。
ルーディアが回復術師である所以であり、ルーディアを見初めし者」
「戦神……?」
「ルーディア様が回復術師である所以?」
どうやらこの2人はルーディアの専属ではないようで話を聞かされていないようだ。
回復術師の正体を。
「知らぬのらば話しても意味がない。
……ん?
お前は………そうか。
良い奴に気に入られたな」
これは、ルーディアと私のコンビとまではいかないがいい線まで行くだろう。
あいつに気に入られるくらいならばルーディアの傍にいても問題はないからな。
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