回復術師ですが仕事と婚約者候補に追われています!

紗砂

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何も見えない闇の中、ふわふわと私は漂っていた。
そんな闇の中で突如パッと光がさす。

そこに映し出される光景はいつかの記憶。
そう、私が10歳の頃。
選定の儀の時の記憶。
私が回復術師になり、シヴァと出会った時の記憶だ。

































「ルーディア、遂に選定の儀だ!」

「うん!
カーフィスは、騎士になりたいんだっけ?」


カーフィスは私の幼馴染で、一緒に選定を受ける事になっていた。
そんなカーフィスが望むジョブは騎士だったはず。

私はそんなカーフィスにつられるように魔術師を目指していた。
幸い…と言うべきか、魔力の量はこの辺りでは圧倒的…とまではいかないにしてもそれなりに多く、魔術系のジョブは確定だろうと村の皆からは言われていた。


「ルーディアは魔術師だっけ?」

「うん!
だって、カーフィス1人じゃ危なっかしいんだもん」

「ルーディアも同じだろ!?」


そうこうしている間に選定の順番がやってきた。
カーフィスは村長の息子ということもありかなりの期待を背負っていた。


「さぁ、水晶に触れて」

「…ん」


流石のカーフィスも緊張しているのかその動きは少し固く感じた。


「ほぅ……これは…中々……」

「カイン、どう?
良さそうな子、いた?」


どうやらカーフィスを担当した人はカインというらしい。
多分、間延びした声の人は噂の回復術師様だろう。
選定の儀には必ず回復術師が2人は来るって聞いたし。


「ライ様…。
この子は騎士のジョブでしたが…」

「へぇ……騎士、ねぇ…?
ま、それはあとにしよう。
さっさと終わらせようか。
研究もあるし…」


カーフィスは無事、騎士になれたようだ。
素直に祝福したくなる反面、私へのプレッシャーにもなった。
そして、残るは私だけとなり、緊張が高まる。


「次の子は…」

「ルーディア、魔術師、なれるといいな!」

「うん!
行ってくるね」


カーフィスが私の緊張を和らげようとしてくれたのか声をかけてくれる。
それに笑顔で答えると水晶に向かって手を伸ばした。


「…っ!?
ライ様…これは…!!」

「…まさか、出るとは、ね。
残念だけど……君、名前は?」

「え……ル、ルーディア」

「そう…ルーディア。
ようこそ、新たなる回復術師。
僕達は君を歓迎しよう」


新たなる回復術師。
それが私の事を指していると理解するまでにそう時間はかからなかった。


「カイン、後は頼んだよ。
僕は僕の仕事をしてくるから」

「ここは他の者に任せます。
私はライ様の騎士ですから」

「そう」


私はライ様とカイン様と共にお父さんとお母さんのところへ行く。
その光景を見ていたカーフィスが何も言わずに私の隣を歩く。

それから、両親のところへと戻ると私とカーフィスは外に出された。


「えっ……ルーディアが回復術師!?」

「ルーディアを連れて行く気か!?
あの子は渡さん!!」


外で盗み聞きをしていた私とカーフィスはそんな声を聞いてしまい思わず顔を見合わせた。


「…私、王都へ行くのかな?」


その不安からか私ポロポロと涙を流し始めた。
不安やら恐怖やらの感情は考えるだけでどんどんと膨らんでいく。


「もし行くとしても俺もついてく。
ルーディアが回復術師で俺が騎士。
丁度良いだろ?」

「……カーフィス」

「俺が、お前を守る。
だから、泣くな」


カーフィスが私を安心させるように抱きしめた。
その温かさに安堵した私はスースーと穏やかな寝息をたてた。





「……ここは?」

【ここは精神世界】


私の声に答えたのは青い髪に金色の瞳をしている綺麗な女の人だった。


「……誰?」

【私は、シヴァ。
戦神の名を持つ者にして、主神エンディールの第5子】

「シヴァ…戦神?」


私が彼女の名前を口にすると嬉しそうに目を細めた。
そして距離を詰めると私の頬に手を添えた。


【あぁ…可愛い私のルーディア。
ようやくこうして愛おしいお前に触れる事が出来る】

「え…と…?」


ドン引きだ。
考えても見てほしい。
知らない人にいきなり愛しいやらと言われるのだ。
……引くに決まっている。


【ルーディア、私はお前が望むのならばなんだってやってやろう。
この世界を消しされというのならば消し去ってやろう】


怖いと思ってしまうのは仕方ないだろう。
私にとって、シヴァは知らない人なのだから。


【…む、残念ながら時間のようだ…。
では、またな。
私の可愛いルーディアよ】






……何やら変な人に会った。
それが目が覚めた時に思った事であった。


「ルーディア、起きたみたいね」

「お母さん」

「ルーディア…ごめんなさい。
守れなくて…本当にごめんなさい」

「お母さん…私、王都へ行くの?」


私の質問にお母さんは悲しげに微笑んだ。
その表情からするときっとお父さんとお母さんは一緒には行けないのだろう。


「嫌だ…嫌だよぉ…お父さん、お母さん…!
嘘、嘘だよね?」

「……済まない、ルーディア」


その後、私は泣きつかれて眠るまでずっとお父さんとお母さんにしがみついて泣いていた。

朝、起きるとそこは既に馬車の中で出発した後だった。
再び泣きそうになった私を宥めたのは私に着いてきてくれたカーフィスだった。


「ルーディア、専属騎士って知ってるか?」

「…え?
回復術師につく護衛の中でも回復術師が選ぶ自分の騎士、でしょ?」


それくらいはこの辺でもよく聞かされる話だ。


「あぁ。
俺は、専属になる。
他の誰でもない、ルーディアのな。
俺が絶対にお前を守るから…だから、それまで待っていてくれ」

「…カーフィス…でも……」

「ルーディア、俺は絶対お前の騎士になるから…」

「いや、そうじゃなくて……まず、私がカーフィスを選ぶとは限らないし…」

「えっ…いや、そこは選ぶだろ!?」

「えー…だってカーフィスだよ?」


幼馴染でずっと一緒にいたカーフィスだからこそ、選びたくないんだ。
傷ついて欲しくないから…。
なんて事、本人の前で言えるはずもなく私はただ、笑って誤魔化した。
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