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しおりを挟むあのパーティーから1夜明け、私は淡い水色のワンピースに身を包んでいた。
あのパンケーキを食べられるということもありかなり上機嫌の私はジェラルドを今か今かと待ち続けていた。
「はぁ……ルーディア様、来られた様ですよ」
「えぇ、後の事はお願いします」
「畏まりました」
ユリアには私のスケジュールの管理を頼んでいる。
そして、私を尋ねて来たものに対しての対応だ。
カーフィスには何も頼んでいない。
あれは馬鹿なので何も出来ないのだ。
「ジェラルド、遅くなってしまい申し訳ありません」
「気にしないでください、ルーディア。
行きましょう」
「はい」
王都の街はやはり、賑わっていた。
滅多に来ることのないこの辺は私にとっては珍しいものでしかない。
「今年はあの競技試合の年ですが……ルーディアは観戦に行くのですか?」
競技試合というのはこの周辺国、5国が集まり様々な競技で競い合う、というものだ。
…言ってしまえば異世界版のオリンピックのようなものだ。
「いえ…。
私は選手に入っていますから」
「ルーディアは回復術師でしょう。
何故、選手に……」
ジェラルドは私が選手側だったと知りブツブツと何かを呟いていた。
「私は、聖魔導師でもありますから」
「聖魔導師…ですか。
それはまた……」
回復魔法に聖属性…私はこの世界で使い手の少ない魔法の適正しか持っていなかった。
しかも、回復術師特有の反転魔法は私の得意とする魔法であり、これがあると聖を反転させ闇にもする事が出来る。
そして、その闇もまた使い手の少ない属性であった。
「私は、学生代表として出場する予定です。
まぁ、私だけでなく、あなたの婚約者候補全員がそうなのですが」
それを聞き私が思ったのはシェードが面倒そうだということとレイが戦えるか、という不安だった。
ジェラルドは問題無いだろう。
何でも卒無くこなしそうだし。
グランなんてあの騎士団長の息子なのだ。
体術で右に出るものはいても少ないだろう。
「その時はよろしくお願いします、ジェラルド」
「えぇ、こちらこそ」
私が微笑むとジェラルドまでつられて微笑んだ。
冷たく感じる青の瞳が少しだけ暖かく感じた。
「ここ、ですね」
そこは、落ち着いた雰囲気のある店だった。
だが、店の外には行列が出来ている。
予め予約をしていた私達はすんなりと中に入り、日当たりの良い席へと案内される。
メニューを見て、パンケーキの種類の多さに驚き、どれにしようかと悩む。
そして、チラッとメニューで顔を隠しながらジェラルドを覗いて尋ねてみた。
「ジェラルドは決まりましたか?」
「…いえ、2つまでは絞ったのですが。
このストロベリーかチョコかで迷ってしまって」
困ったように眉尻を下げるジェラルドに私はクスリと笑った。
「でしたら、私はストロベリーを頼みますから半分ずつ分け合いませんか?」
「いいのですか?」
「えぇ、勿論。
私も色々目移りしてしまっていましたし…」
ジェラルドは嬉しそうに笑みを浮かべると嬉嬉として注文をした。
意外と子供っぽいところがあるのだと思いつつもその笑顔がかっこいいと思ってしまう。
「ジェラルドは学園に通っているのでしたよね?」
「えぇ、シェード殿下と同じ魔法学園に」
それがどうかしたのか、という視線を投げかけてくるジェラルドに私は少し悩みながらも口にした。
「私も来週から通う事になったので……」
「よく承認を得られましたね…」
「えぇ、競技試合で本気を出させたければ…と言えば承認してくれました」
私の言葉にジェラルドは目を丸くした後、何が面白いのか笑い転げた。
「っ…ふふっ……まさか、あなたがそんな事をするとはっ……」
「仕方ないじゃないですか。
かなり前から申請していたのに何の返事も無いんですよ…」
私が口を尖らせるとジェラルドは穏やかな笑みを浮かべた。
ずっとその表情でいれば大抵の人であれば靡くだろうに……と思ったのは心の内だけに留めておいてある。
「ルーディアの事ですからSクラスでしょうね」
「えぇ、ジェラルドやシェードも同じクラスですか?」
「はい。
一応、これでも学年次席と主席ですから」
学園のクラスはDからSの5クラスだ。
人数は各クラス特に決まってはいない。
実力事に分かれている。
C、Bが多くなっている。
Sは数人しかいない。
「ルーディア」
「ルー、そう呼んでください。
ジェラルド」
「分かりました、ルー。
では、私の事はルド、と」
「はい」
愛称で呼び合う事になった私達の元に、丁度良くパンケーキが運ばれてきた。
それぞれのパンケーキを半分ずつ切り、互いの皿にのせるとようやく私達はパンケーキを食べ始めた。
口の中に入れた瞬間、ふわりと溶けてしまうようなパンケーキに思わず目を見開いた。
スフレパンケーキ、という方が合っていると感じる。
ふわふわとした甘い生地にいちごの酸味がうまくマッチしている。
「これは……」
「美味しい、ですね」
ジェラルドもあまりの美味しさに驚いている様だった。
パンケーキを食べ終わり私達は王都の街を歩く事になった。
だが、その前に私とジェラルドの容姿は目立ち過ぎ、私に限っては名前も知られ渡っているので魔法を使う。
『あの日の夢をもう一度』
この言葉から始まる魔法は幻術のみだ。
……普通であれば、とつくが。
普通ではない場合、ちょっとした変化があるのだ。
まぁ、今の私では使えないのだが。
『私達の真なる姿は誰にも見えず、見えるのは虚像のみ』
今回は私達のもとの姿の上に虚像を貼り付けた感じだ。
傍から見れば中の良い兄妹に見えるはずだ。
「ルー……。
幻術も使えたのですか……」
「私達回復術師には反転の魔法かまありますから」
実はこの幻術、私の得意としている魔法であるのだが闇と聖の合成魔法となっているので個人で使える者はいないのだ。
聖と闇の術者が協力をすれば発動できるのだが。
「行きましょう、ルー」
「はい」
私とルドは2人で王都を散策する。
その最中、人混みが出来ているのを見つけ私達はそこに近付いた。
すると、そこには何があったのか血の臭いが充満している。
「これは……。
冒険者ギルド、ですか」
「ルド、申し訳ありませんが……」
「分かっています。
見逃せないのでしょう?」
「……はい」
私は幻術を解くと声をあげた。
「道を開きなさい。
私はルーディア。
この国の回復術師の1人です!」
すると、周りに集まっていた者達はザワめきながら私に道を譲った。
そんな私に続いてジェラルドもついてくる。
ギルドの怪我人に対する対応は酷いものだった。
怪我人が血を流し倒れているのをただ包帯を巻いただけだったのだ。
それでは傷口から菌が入り炎症を起こすし膿も溜まってしまうだろう。
「あんた、回復術師だって本当か!?」
「えぇ」
「頼む!
こいつらを助けてやってくれ!
金は払う……。
だから!」
「元からそのつもりです。
重傷の者からここへ運んできてください」
ギルドの者が運んできた人の包帯を取ると尋常ではない程の傷口が姿を現したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
長いので一旦切ります!
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