回復術師ですが仕事と婚約者候補に追われています!

紗砂

文字の大きさ
13 / 39

12

しおりを挟む


酷い。
それが私の抱いた最初の感情だった。
惨たらしいその傷に思わず仕事を忘れそうになる。


「ルー」


そのルドの声で私は現実へと戻ってくると治療を始めた。


『我、神の子なりて主神、エンディールが第5子戦女神シヴァと共に生きしもの。
我が願うは安寧と平穏なり』


ここまでは私の使う回復魔法の常套句。
ここからが本番だ。


『聖なる加護と光のもと、私は願う。
この者の傷を癒し、命を延長する事を。
光よ、私の願いのもとこの者の傷を癒し、苦しみから解放せよ』


1人、また1人と治していき、ようやく最後の1人が終了すると私はホゥッと息を吐いた。

 
「お疲れ様です、ルー」

「ありがとうございます、ルド」


私を労ってくれるルドに対し、お礼を口にする。
無事、全員助けられた…そう安堵したのも束の間。
1人が突然黒い光に包まれ、苦しみ出した。


「なっ……呪い……!?」

「魔族ですか!」


私は自身を責める前に呪いを調べた。

自身を責めるのは後。
今はそれよりもこちらが優先。

そう判断してから素早く動く。
他のものにも呪いはかかっていないかを調べ、無いことを確認すると発動してしまった呪いを確認した。


「思ったよりも侵食が早い……」


これでは調べる事さえままならない。
それが分かると魔法を発動させる。
本来ならばこの呪いをちゃんと調べたかったのだが……仕方ない。


『回復術師たる我が命じる』


多分、今回の呪いの発動条件は回復魔法をかけられるか呪いがかけられてからの時間だ。
だとすれば回復術師対策として反転は想定しているだろう。
だから、私は相手の予想している斜め上をいこう。


『反転せよ』


反転は回復魔法でも秘術と呼ばれる存在。
これを扱えるのはこの国にいる回復術師13人の中でも私とライ先輩の2人のみ。
私はこれを11の時に習得した。
そんな私がこの反転魔法の扱いに長けていないはずがなかった。


「思った通りですね。
これならば問題なく


私の髪が黒く染まった。
いや、染まったのは髪ではない。
黒く染まったのは私の魔力だ。
反転で染まった魔力。


『世界をすべし闇夜に請う。
我が敵を消しされ』


闇は扱いさえ注意すればやっかいな呪いをも消し去る術となる。
少なくとも私はこの属性をそういう風にしか使っていなかった。

反転を解除し、呪いを調べるとちゃんと消滅していた。


「少なくとも、3日間は様子見を。
そう動き回らないように見ていてください。
3日後、17時に王宮診療所のA-2へ来るようにしてください」

「A!?
Aっていうとルーディア様の診療室じゃ……」

「えぇ……それがどうかしたのですか?
やったからには最後までやりますよ」

「ルーディア様……あの…噂通り美しい……」


……聞かなかった事にした。


「名前を伺っても?」

「は、はい!
ダートです」

「では、ダートさん。
この冒険者達の事は頼みます。
それと、診療所に入る際、ギルドの者だと言えば案内されます」

「は、はい!
ありがとうございます、ルーディア様!」


あまりの過剰すぎる反応に、どこかやりにくさを感じながら私とルドは城へ戻った。


「ルド、午後はあの様なことに付き合わせてしまいすいませんでした」

「気にしないでください、ルー。
…あの姿はとても綺麗でした。
もし、それでも悪いと思ってしまうのなら…今度、また付き合ってはくれませんか?」


そんな事ならば何の問題もない。
友人と遊びに行く程度のことであれば。


「そんな事でいいのなら…。
今度、また休みの日を確認しておきます」

「えぇ……。
では、また学園で」

「はい」


私は城の外でルドを見送ると疲労感を残しながらも与えられた部屋に戻った。


「おかえりなさいませ、ルーディア様」

「えぇ、ただいま戻りました……。
ユリア、3日後の17時に冒険者の方が尋ねて来られると思いますから私の対応する2号室へと案内をお願いします」

「畏まりました」


ユリアは恭しく頭を下げるとお茶を用意するために下がった。


「ルーディア、いるか?」


カーフィスの声だった。
私は慌てて扉を開き、カーフィスを招き入れる。
とは言っても応対室なのだが。


「どうしたの、カーフィス」

「あ、あぁ……。
ルーディア、お前殿下と婚約するのか?」

「いきなり何?
カーフィスには関係ないと思うけど」


私の声は自然と数段低くなっていた。
こんなのは駄目だ。
そう思っているのに、理解しているのに勝手に口が動いてしまう。


「私が誰と婚約しようが私の勝手でしょう?
カーフィスには何の関係も無いんだからほっといて。
どうせ、私が婚約した時点でカーフィスとの縁も切れるんだから」


カーフィスはこれでも村長の子。
私が婚約した時点で村に帰らなければいけないのだ。
いや、引き継ぎをしてあるのならばいい。
だが、婚約してからも一緒にいるにはあまりにも……あまりにも私達は親密すぎた。


「っ…ルーディア!」

「それとも何!?
もう、私の騎士じゃいたくないの?
なら、なら言ってくれれば……!!」

「違う!!
俺は、俺は……!」


最低だ。
私……よりによって何カーフィスに言ってるんだろう。
もう、とっくに諦めたと思ってたのに。
もう、初恋は終わったと思ってたのに……。

何も終わってなんかなかった…!!
私、馬鹿だ。
自分の気持ちに蓋をして、諦めたフリしておきながらこうしてカーフィスに当たってる。
ほんと、何やってんだろ。


「俺は、お前の側にいる。
俺は、お前の騎士だ。
お前だけの…。
だから、お前が婚約したとしても俺は、着いていく。
その時は、俺に反転魔法を使ってくれ。
そうすれば、問題ないだろう」


何で、何でそこまでして…。
それじゃあ、私が諦めきれなくなるのに。
私の初恋が終わらなくなっちゃうのに。
なのに、なのに何で?
何でこんなに嬉しいの?


「……で、何でそこまでするのさ…」

「俺がルーディアの事を好きだから。
俺は、お前の側にいたい」


馬鹿……。
何で私を選んだの……。
他の人を選んでくれればまだ…諦めがついたのに。
これじゃあ……本当に……。


「…愛してる、ルーディア」

「……馬鹿」

「あぁ」


しばらく沈黙が流れ、私はカーフィスに答えを告げた。


「……カーフィス。
私、ルーディアの名において命じます…。
あなたを私の専属から外します」

「……あぁ、悪ぃ」

「ほんと、馬鹿なんだから……。
じゃあね、カーフィス」

「あぁ、またな、ルーディア」


リミットは私が学園を卒業するまでの3年間。
それまでに私の婚約者候補が1人増えるか。
それとも、間に合わずに私が他の人と婚約するか。

私は賭けたのだ。
カーフィスが候補にまで上り詰めてくれることを。

もし、入らなかったとしてもその頃にはきっと他の人を愛せるようになることを。


「信じています、カーフィス」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました

ララ
恋愛
3話完結です。 大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。 それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。 そこで見たのはまさにゲームの世界。 主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。 そしてゲームは終盤へ。 最後のイベントといえば断罪。 悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。 でもおかしいじゃない? このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。 ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。 納得いかない。 それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

処理中です...