16 / 39
15
しおりを挟む朝、私はいつも通り回復術師の正装に着替えていた。
「ルーディア様!?
何故そちらを着てるんですか!?
今日から学園でしょう!」
「あ……」
「忘れてらしたのですか!?
あなたが行きたいと言っていたのに!」
ユリアにみっちり叱られた後はちゃんと制服へと着替えた。
…カーフィスに知られなくて良かった。
あいつに知られてたら間違えなく笑いものにされたし。
「ルーディア様…学園の中には私達は入れませんので……お気を付けて」
「えぇ、分かっています」
ユリアの心配そうな声に返事を返すと、少しだけ安心したようにユリアは微笑んだ。
私は、城を出ると朝の早い王都の街を歩きながら学園に向かう。
普通は馬車なのだろうが……シェードと一緒だなんてゴメンだ。
そんな事を思いながら歩いていると私の前で馬車が止まった。
「ルー、何故歩いているのですか……」
窓から顔を出したのはルドだった。
「偶にはこういうのも悪くはないと思い…」
「…はぁ……、回復術師にそのようなことをさせていると思われたら不味いのですよ…。
ルー、乗ってください」
「……失礼します」
確かに回復術師の不遇を訴えている様だ。
うん、申し訳無かった。
ちゃんと考えるべきだった。
私はルドの馬車に乗り込むとまず、お礼を口にした。
「ありがとうございます、ルド」
「えぇ…。
次からは注意してください…」
「はい……」
私が少しだけ落ち込んでいるとルドは笑みを浮かべた。
「あなたは……しっかりしているようでどこか抜けていますね……」
それは普通の笑みというよりも呆れや、微笑ましいといった感情を含んでいる気がする。
そして、今までよりも優しげな視線に感じた。
「…ルー、そろそろ着きますよ」
「はい…。
少し、緊張しますね…」
「ルー、大丈夫です。
私がいますから」
少しだけ、照れくさそうなルドを見て私の心も落ち着きを取り戻した。
「ありがとうございます、ルド」
「……えぇ」
学園に着くと、馬車から降りる際、ルドが私をエスコートしてくれる。
そのせいで先程よりも体が強ばったがルドには笑われた。
絶対に分かっていてやったのだろう。
「ジェラルド様っ……!」
「ジェラルド様、おめでとうございますっ!」
「ジェラルド様、受け取ってください!」
人気だなぁ…などと傍観していた私だったがおめでとうございますという言葉に違和感を抱く。
「ルド…もしかしてとは思いますが…今日が誕生日ですか?」
「えぇ……まぁ」
何も用意していなかった。
友人に何も渡さないというのは流石に罪悪感がある。
…まだ、カーフィスならばまだしも。
まぁ、ルドは甘党だしお菓子とかでいいかな。
「ルド、申し訳ありませんが何も用意していないので少し遅れますが……今週中に渡せるようにします」
「ルー、気にしなくとも…」
「友人としてそんなわけには行きません」
「友人として……ですか……」
複雑そうな表情だったが結局、ルドは受け取る事になった。
「ジェラルド様、受け取ってください!」
様々な令嬢達からプレゼントの箱を差し出されるルド。
はたしてそのうち何人がルドの立場目当てと顔目当てなのだろうか?
「そういったものは受け取れません」
とルドが謝る中、何人かの令嬢が声を挙げた。
「ですが、そこの方のものは受け取るとお聞きしました!」
「えぇ、受け取りますよ」
あっさり認めてしまった。
穏便に済ませるためには否と言うべきなのに。
「何故!」
「私が彼女の婚約者候補だからです」
「ルド!?
そこは普通友人と言うべきでは……!」
「私は、ルーを殿下に取られるつもりはありませんよ。
ガルアやレイトにも……ね」
……何故こうなったのだろうか?
私はどこで失敗したのか……。
「ルー、どうかしたのですか?」
ルドのせいだ!
と叫びたくなるのをグッとこらえ、私は微笑んだ。
「ルド、申し訳ありませんが……。
私、婚約者を決める予定はありませんから他の方を探してください」
と。
いつだったかシェードにいった事と同じ内容を口にしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました
ララ
恋愛
3話完結です。
大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。
それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。
そこで見たのはまさにゲームの世界。
主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。
そしてゲームは終盤へ。
最後のイベントといえば断罪。
悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。
でもおかしいじゃない?
このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。
ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。
納得いかない。
それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる