回復術師ですが仕事と婚約者候補に追われています!

紗砂

文字の大きさ
38 / 39

37

しおりを挟む

あの攻撃を受け、残ったのは一人だった。
私としては、一人でもいたことの方が驚きだけど。


「ちっ……。
ただの聖魔導士じゃないってか。
あーあー、ったくめんどくせぇ……。
あのバカ共のせいで俺まで叱られるじゃねぇかよ。
ま、精々頑張りますか、っと!」


その人物は無詠唱で炎を作り出すと、身体に纏わせ、かなりの勢いで距離を詰めてきた。
それに慌てたのは観戦側、特にシェードやグランだった。

私?
私は別に、この程度では驚かないし、動じることはない。
これならば、カーフィスの方が強いと知っているから。


「光よ」


軽く手をかざし、光の壁を作り道を閉ざす。
だが、どうせ避けられることは分かっている。
なので、強い光を生み出し、その間に結界を自分の周りにはり、壁も作り出す。

これぞ二段階守護。


「んなもん、砕けばいい!」


強い光にやられ、一瞬止まったかと思えば、壁を思い切り殴りつけた。
炎を纏った拳で。

すると、ピキっという乾いた音が聞こえる。


「嘘っ!
……殴られただけで壊れる程、やわな作りはしていないはずなのですが」


驚きのあまり思わず、素が出てしまった。
すぐに取り繕ったが。


『光よ。
汝が僕の願いを聞き届け、我が敵を討ち滅ぼす矢となり、弓となれ。
対価として差し出すは、我が魔力、我が願い。
疾く、ゆけ』


適当に並べただけで、特に意味もない呪文。
だが、そんなものでも効果を上げるには多少なりとも役立つ。
更に、低燃費なのが良いところだろう。

私が弓を構える動きをとると、そこに光の弓と矢ができる。
相手はといえば、既に守護結界一枚を挟んだ向こうだ。
いくら力を抑えているとはいえ、カーフィス以外にここまでやられたのは初めてのような気がする。


「あなたに、敬意を。
ですが、私の勝利は揺るがない」


その瞬間、私は矢を放った。

矢はそのまま選手の肩へと刺さり、場外へと押し出した。
つまり、私の勝利だ。


「あぁ、くそっ!
やっぱ負けたか……。
にしても痛、くはないんだよな。
刺さってはいるけど。
なんだ、この魔法?」

「簡単に説明すると、波のようなものです。
周りに被害が出ないよう、矢を目印とし、その対象のみに範囲を指定しただけのものですから」


範囲を絞るのが難しいだけで、あとは簡単だ。
力のままに押し出せば良いだけなのだから。
私の場合、それと同時にアルテミスの力で、彼の周りの風を少しばかり操り、抵抗を無くしただけだ。
ダメージを受けないように。


「うわっ、なんだよそれ。
そりゃ、負けるわな。
魔力量も魔力操作も負けたってなら納得だ。
うちの一年が聖魔導士だからってバカにしたみてぇで悪かった。
あんたは強ぇよ」

「ありがとうございます。
ですが、私もまだまだですね。
まさか、守護結界が突破されるとは思いませんでしたもの。
いい経験になりました」


私たちは、互いに握手をし、この試合は終わった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」 仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。

王太子に理不尽に婚約破棄されたので辺境を改革したら、王都に戻ってきてくれと言われました

水上
恋愛
【全18話完結】 「君は中身まで腐っている」と婚約破棄されたエリアナ。 そんな彼女は成り行きで辺境へ嫁ぐことに。 自身の知識と技術で辺境を改革するエリアナ。 そんな彼女を、白い結婚のはずなのに「膝枕は合理的だ」と甘やかす夫。 一方、エリアナを追放した王都では、彼女の不在の影響が出始めて……。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

処理中です...