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しおりを挟むあの攻撃を受け、残ったのは一人だった。
私としては、一人でもいたことの方が驚きだけど。
「ちっ……。
ただの聖魔導士じゃないってか。
あーあー、ったくめんどくせぇ……。
あのバカ共のせいで俺まで叱られるじゃねぇかよ。
ま、精々頑張りますか、っと!」
その人物は無詠唱で炎を作り出すと、身体に纏わせ、かなりの勢いで距離を詰めてきた。
それに慌てたのは観戦側、特にシェードやグランだった。
私?
私は別に、この程度では驚かないし、動じることはない。
これならば、カーフィスの方が強いと知っているから。
「光よ」
軽く手をかざし、光の壁を作り道を閉ざす。
だが、どうせ避けられることは分かっている。
なので、強い光を生み出し、その間に結界を自分の周りにはり、壁も作り出す。
これぞ二段階守護。
「んなもん、砕けばいい!」
強い光にやられ、一瞬止まったかと思えば、壁を思い切り殴りつけた。
炎を纏った拳で。
すると、ピキっという乾いた音が聞こえる。
「嘘っ!
……殴られただけで壊れる程、やわな作りはしていないはずなのですが」
驚きのあまり思わず、素が出てしまった。
すぐに取り繕ったが。
『光よ。
汝が僕の願いを聞き届け、我が敵を討ち滅ぼす矢となり、弓となれ。
対価として差し出すは、我が魔力、我が願い。
疾く、ゆけ』
適当に並べただけで、特に意味もない呪文。
だが、そんなものでも効果を上げるには多少なりとも役立つ。
更に、低燃費なのが良いところだろう。
私が弓を構える動きをとると、そこに光の弓と矢ができる。
相手はといえば、既に守護結界一枚を挟んだ向こうだ。
いくら力を抑えているとはいえ、カーフィス以外にここまでやられたのは初めてのような気がする。
「あなたに、敬意を。
ですが、私の勝利は揺るがない」
その瞬間、私は矢を放った。
矢はそのまま選手の肩へと刺さり、場外へと押し出した。
つまり、私の勝利だ。
「あぁ、くそっ!
やっぱ負けたか……。
にしても痛、くはないんだよな。
刺さってはいるけど。
なんだ、この魔法?」
「簡単に説明すると、波のようなものです。
周りに被害が出ないよう、矢を目印とし、その対象のみに範囲を指定しただけのものですから」
範囲を絞るのが難しいだけで、あとは簡単だ。
力のままに押し出せば良いだけなのだから。
私の場合、それと同時にアルテミスの力で、彼の周りの風を少しばかり操り、抵抗を無くしただけだ。
ダメージを受けないように。
「うわっ、なんだよそれ。
そりゃ、負けるわな。
魔力量も魔力操作も負けたってなら納得だ。
うちの一年が聖魔導士だからってバカにしたみてぇで悪かった。
あんたは強ぇよ」
「ありがとうございます。
ですが、私もまだまだですね。
まさか、守護結界が突破されるとは思いませんでしたもの。
いい経験になりました」
私たちは、互いに握手をし、この試合は終わった。
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