脇役だったはずですが何故か溺愛?されてます!

紗砂

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食事

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それから何時間かたってから兄の仕事が終わったようで挨拶を交わし部屋を出た。


「咲夜、待たせてごめんね」

「いえ、白鳥先輩とお話していたので大丈夫です!
お兄様、明日白鳥先輩とも御一緒したら駄目ですか?
お兄様の学院での姿を色々聞いてみたいのですが…」


上目遣いで聞いてみる。
白鳥先輩は良さそうな人だったから仲良くなったら色々とメリットがありそうなんだよね。


「……涼太もかい?
…仕方ないな、分かったよ」


少し困ったような表情をしたが、どうにか認めてくれたようだ。

よし!
兄に勝った気分!!
あれ……そういえば、私と兄と皐月先輩と白鳥先輩と天也と奏橙……って…多くない?
6人か……。


「あ、そうだ。
咲夜、僕の方からも1人いいかい?」

「勿論です!
お兄様のご友人ですか?」


7人に増えたよ……。
1人増えたとこであんま変わらないか。
女子の友達、欲しいなぁ……。


「うん、僕が1年生の時からの友人だよ。
咲夜は会った事なかったかな?」


うーん……会った事あるっけ?
……覚えてないな。


「覚えてないです……」


少し落ち込んだ様子で言うと兄は優しく頭を撫でてきた。
そんな兄の手が心地よい気もするが、かなり子ども扱いされている気もする。


「お兄様、くすぐったいです」

「あぁ、ごめんごめん。
咲夜が可愛かったからつい、ね?」


私は可愛くなんてないはずなのだが……。
いや、今の姿は脇役とはいえ乙女ゲームの登場人物なのだ。
小さいという意味でも可愛いのかもしれない。
だが、何れにしても、ゲーム内の咲夜に対する反応とこっちでの対応の差が激しすぎると思うのだが…。

ゲーム内ではあからさまに咲夜を避け、嫌っていた。
いや、最初の頃もか。
今とは大違いだ。
…これは、兄ルートでの死亡フラグは消えたと考えていいのだろうか?
まぁ、今のこの兄に殺されるような事はないだろうしな。

私は兄にマカロンを買ってもらい上機嫌で家に帰った。

今更だが、兄の友人とは攻略対象者の1人、朝霧燈弥あさぎりとうやじゃないだろうか?
何年か前にそんな名前が出ていた気がしないでもない。

家に帰ると父が出迎えてくれた。


「咲夜、悠人、話がある」


そう切り出した父の表情はどこか暗く感じる。
一体何があったのだろうか?


「あー…なんだ、そのな……。
仕事でドイツへ行くことになったんだが……一緒に来るか、残るかどうする?」


え……私、入学したばっか……。
だが、今ならば友人と言える者も攻略対象者のあの2人しかいない。


「お母様も行くのですか?」

「えぇ、ごめんなさいね…。
この人を監視してなければいけないから…」


お母様は申し訳なさそうに謝ってきた。
だが、理由を聞いてなんか納得した。
父は仕事を抜け出すことが稀に……いや、かなりあるのだ。
そんな時、母がいつも父を連れ戻しているのである。

私はここに残りたいが、兄はどうなのだろうか?
行ってしまうだろうか?
それとも残るのだろうか?


「父さん、母さん、僕はここに残るよ。
咲夜はどうする?」

「私はお兄様と一緒がいいです!」


一緒にここに残りたいじゃん。
折角首席とれたのにここで転校とか悲しいし。
皐月先輩いるし。
兄は何処か嬉しそうに私の頭を撫でた。


「そうか……私達は明後日に出発する。
1年で帰ってくる予定だが……」


という事で明後日、御見送りする事になりました。

その日、私の入学祝いという事でいつもよりも豪華な食事だった。
根が庶民の私は食べにくく感じたのだが……。

7歳の体だからだろうか?
急に眠気が襲ってきた……。


「咲夜、眠いのかい?」


私は言葉を発しずにコクリと頷いた。
……眠い………。


「咲夜、眠ければ寝ていいぞ?」


……うん、寝よう。
あ、でもお風呂……入ってから寝よ。


「……はい、そうします…。
おやすみなさい、お兄様、お母様、お父様…」

「おやすみ、咲夜」

「おやすみなさい」

「おやすみ」


私はゆらゆらと扉へ向かい、それから手早く入浴し就寝したのだった。
……子供の体は不便すぎる!


早い時間に寝たからなのか、次の日私は4時に起きた。
……さて、登校まで何をするか。
……暇だなぁ………。
とりあえず着替えよっと。

私は制服に着替えてからブロンド色の髪を梳かす。
母譲りの綺麗なブロンド色の髪は私の自慢の1つだ。
そういえば昨日の夜、父から入学祝いと言われ何か貰った気がする。
まだ開けて無かったし……開けてみようかな。

昨日、枕元に置いた父からのプレゼントを開け始める。
包装された袋の中からは見覚えのある大きさの箱が出てきた。


「スマホだ……」


私が前世で使用していたものと同じシリーズの中でも最新の機種のスマホだった。
これは…有難い…。
だが…設定をどうしようか?
久しぶりすぎて覚えてないや……。
説明書読むのも面倒だし…後で兄に聞いてみよ。


「後でお父様にお礼、言わなきゃなぁ…」


天也や奏橙に知られないようにしよう。
天也はゲーム内だと電話に出ないと家に押しかけてくるようなキャラだったし、押しかけてこなくても機嫌が悪くなって面倒臭かったんだよね。
奏橙に知られると天也にも知られそうな気がするから知られないように気を付けないと。
兄も持ってると思うし兄とは連絡先交換しておこう。


「あ、そろそろ行こうかな…」


時間を確認したら5時30分になっていたのでもう兄が起きているはずだ。
それを確認してから私は端末をもって朝食をとりにいく事にした。


「咲夜、おはよう」

「おはようございます、お兄様」


ダイニングルームへ行くと案の定、既に兄がいた。
私は笑顔で挨拶をすると、兄の隣に座る。


「お兄様、お父様から貰ったんですが…良く分からなくて…教えてくれませんか?」


コテンと首を傾げて兄を伺うと兄は笑顔で了承してくれた。
流石兄、優しいね。
端末を差し出すと、兄は優しく登録の仕方などを教えてくれた。

その途中で朝食がきたので、急いで食べるとアドレスやら電話番号やらの登録をする。
それらが終わったところでようやく兄と連絡先を交換した。


「あら…2人とも何をしているのかしら?」

「あ、お母様おはようございます!
お兄様に色々と教えて貰っていました」


私はお母様に向けて端末を見せるとお母様は目を細めた。


「そう、良かったわね。
帰ってきたら連絡先を教えてちょうだいね」

「はい!」


このスマホ、ゲーム入れられるかな?
好きだったゲームあったんだよね。
またやりたいなぁ……。


「悠人様、咲夜様お時間です」

「あぁ、咲夜行くよ。
母さん、行ってきます」

「お母様、行ってきます!」


お母様は優しい声で
「行ってらっしゃい」と御見送りしてくれた。


「咲夜、昼食の時だけど…僕等が席をとっておくから安心して。
分かりやすい場所にいるつもりだけど分からなかったら電話してね」

「分かりました」


屋敷から学校までわりと近いため10分もしないうちに着いてしまう。
私は兄と共に降りると、キャァァァァという黄色い悲鳴が上がった。

……一体どうしたのだろうかと思い、悲鳴の上がった方を見てみると女子達がこちらを見ていた。

…いや、正確には兄を、だろう。
私が言うのもなんだが兄はカッコイイと思う。
成績優秀、容姿端麗……それに優しいし…。
シスコンの部分さえなくなればいいと思うが。
まぁそんな兄がモテるのは当たり前だろう。
だが、この様子では兄と昼食をとることも大変そうだと思う。


「じゃあまた昼食で。
頑張ってね、咲夜」


兄は人の良さそうな笑みを浮かべ手を振った。
それによりまた女子達が黄色い悲鳴をあげる。
……あぁ、うるさい。


「お兄様も頑張ってください」


とだけ言って私はさっさと退散する。
……が、逃げた先には既に先客がいた。


「おはよう、咲夜」

「あ……おはよう、咲夜」

「……………おはようございます」


そう、天也と奏橙だ。
まさか先客がいるとは……。
場所を間違えたな。
そう思い引き返そうとするが……。


「どこへ行くんだ?」


天也に止められた。


「教室へ行こうかと思いまして」

「俺らも行くか」

「そうだね」


……マジすか…。


「……やはり、私は図書館へ行きますので」

「図書館か…昨日は見れなかったな…。
俺も行く」

「なら僕も行くよ」


……逃がしてはくれないと。
面倒臭いなぁ……。


「やはり私は教室へ…」

「あぁ、そうだな。
図書館は後でゆっくり見たいしな」


違う!?
私は1人になりたいだけだし!!
面倒事に首突っ込みたくないだけだし!


「咲夜…まさかとは思うが…俺とは一緒にいたくないという事か?
友人だろう……?」


くっ……捨てられた子犬のような目でみるな!
あぁ、もう!
私の負けでいいよ!!


「…そんな事はありません。
ただ、お2人といると周りが騒がしくなりそうでしたので」

「そんな事はないはずだけど…」


いやいや…そんな事あるって。
私が1人の時と2人が一緒の時だと周りの声の大きさが段違いだっての。


「はぁ……分かりました。
行きますよ」

「っ!
あぁ!!」


……何故私は攻略対処者と一緒にいるのだろうか?
近付かないようにしようと決めていたはずなのにな……。


「昼食の件ですが、お兄様達が席を取っておいてくれるそうです。
それと私達の他にお兄様のご友人と皐月先輩、白鳥先輩も来るそうです」

「そうなのか!?
…それは、悪いな……。
というか7人か……」

「じゃあ、後でお礼を言わなきゃだね」


そうだね。
先輩達にお礼を言わないと。
それにしても、楽しみだなぁ……。
皐月先輩もいるし……。


その日の授業はやはり基礎的な事だったので簡単だった。
昼食の時間となり、天也と奏橙の元には女子達が群がっていたので助ける事はせず1人で食堂へと向かおうとする。
が、そこで止められてしまった。


「海野さん!
あ、あの…よ、良かったら一緒に昼食を……」

「あ、ずるいぞ!
俺が先に狙ってたんだ!」

「海野さん、あんな奴らほっといて僕と一緒に……」


私は男子達に囲まれてしまった。

……あぁ、天也と奏橙の苦労が分かった気がする。
だが、何故私のところに来るのだろうか?
やはり家が問題なのか……。
私は一人一人丁寧に断ろうとするが人数が多かったため皆に聞こえるように少し大きめに声をだした。


「申し訳ございません。
先約がありますので……。
行きましょう、天也、奏橙」

「あ、あぁ…そういう訳だから、悪いな」

「ごめんね、咲夜と約束があるから…」


次いでという事で2人を救出し、昼食へと向かおうとする。
何故って?
それは救出しなければ先輩に迷惑をかける事になりそうだったからだ。

そうでなければわざわざ助けるわけがない。


「ちょっと!
海野さん、流石にそれはないんじゃなくて!
私が最初に天野様を昼食にお誘い致しましたのよ!
それに、天野様の事を下の名前で……しかも、呼び捨てだなんて!!」


あぁ、面倒臭いタイプだ……。
しかも、呼び捨てとかは天也が言ってきたんだし。
私は何もしてないと思うんだけど。


「おい、それは俺が…」

「…お話はそれだけでしょうか?
お兄様達をお待たせしていますのでこれで失礼させていただきますわ」

「…お兄様」


なんというタイミングだろうか。
兄から電話がかかってきた。

……くそ、2人に私が端末持ってるってバレたじゃないか。
兄よ、どうしてくれる。

切るわけにもいかず、仕方なく兄からの電話に出る。


『咲夜、席は取れたよ。
迎えに行こうか?』

「お兄様、問題ありませんわ。
すぐに向かいます」

『…大丈夫だよ、もうすぐつくから』


話が全くもって通じてないのですが?
というか、何故電話をかけてきた。
もうすぐ着くというのなら別にかけてこなくてもいいじゃないか。


「咲夜、迎えに来たよ」


本当に早かった。
絶対、席とるのは皐月先輩とかに任せて真っ直ぐ来たよ……。


「お兄様、お待たせしてしまい申し訳ありません……」

「いいよ。
咲夜、行こうか。

…あぁ、2人は別にここにいてもいいよ?
昨日はあぁ言ったけど僕は君達に興味ないからね」


おい。
流石にそれは不味いから。
一応、約束したし。


「お兄様それは、お2人に失礼です!」

「大丈夫、問題ないよ」


笑顔を崩さない兄に私は少し意地悪のつもりで昨日の件を言ってみた。


「お兄様、昨日私が言った事ですが……やはり一週間……」

「さぁ、2人も早く来なさい。
咲夜が待っているだろう」


変わり身はやっ!?
周りも引いてるんだけど!?
…天也と奏橙は急いで来ると兄は私の手をとり、歩きだした。
………やめる気は無いらしいです。


「咲夜さん、大変でしたでしょう?
海野さんが授業が終わった途端咲夜さんを迎えに行ってくると、飛び出していきましたから……」


あぁ、やっぱり。
それで兄はあんなに早かったのか。
あの場から助けてもらった手前、なんとも言えないのだが……。


「悠人、その子が自慢の妹?」

「あぁ、可愛いだろう?」


シスコンですか!?
恥ずかしいから辞めてくれ!!


「初めまして、海野咲夜です」

「初めまして、僕は朝霧燈夜。
悠人の友人のつもりだよ。
宜しくね」

「はい、宜しくお願い致します」


そう笑いかけると先輩は
「可愛い…」
と呟いた。

私は可愛くなんてないが……。
あぁ、私の隣にいる皐月先輩のことか。
納得した。

何か思い出した様に私の元に天也と奏橙が駆け寄ってくる。


「あ…咲夜、お前スマホ持ってるだろ。
連絡先交換しておきたいんだが……」

「ついでだし僕も」


そう言って天也と奏橙はスマホを取り出した。
分かってはいたが、私の拒否権は無いらしい。
渋々といった形で私はスマホを取り出した。
が、そこで言い訳を思いつきはっとした様子で言った。


「あ…私、やり方が分からないのでまた今度という事には……」

「俺がやる」


……スマホを取られ、強制的に交換させられた。
これで他の女子達に虐められたら2人のせいだからな。
まぁ、いじめられたらいじめられたで兄が黙ってはいないだろうけど。


「ほら、出来たぞ」

「……そうですか、ありがとうございます」


私は何とも言えない表情で礼を述べる。
奏橙だけは私が嫌がっているという事を分かっていたらしく笑っていた。
そんな奏橙をみて私はついつい奏橙の足の脛を蹴り上げてやりたい気がするが我慢我慢、と自分に言い聞かせていた。


「…咲夜、早く頼みなさい」


兄の声がいつもより数段低く感じる。
私は身の危険を感じ急いで頼みにいった。

…と言っても前回と同じく日替わりセットなのだが…。
何故かって?
いちいち考えるのが面倒臭いからである。
何より、一番安いからだ。

根が庶民の私にはフォアグラとかキャビアやらを頼む勇気はない。
というか、学生の食堂にあるメニューじゃないと思う。

頼んだら後は給仕の人が席に持ってきてくれるらしいので私は兄の待つ席へと戻る。
兄は私と天也と奏橙の3人が戻ってきたのを見計らって重要な話を始めた。


「咲夜…と、天野、神崎。
今日のうちに連絡がいくと思うけどついでだしここで話しておくよ。
咲夜とその他2人は光隆会の正式なメンバーになる。
来年になればまた試験があってそれによって上位3名が光隆会のメンバーになるって感じで変わる事があるから成績を落とさないように。
説明するのが面倒だからね。
あ、咲夜に関しては心配してないから大丈夫だよ?」


……へぇ。
成績を落とさないようにしないといけないのか……。
兎に角あれだね、3位以内に入ればいいんだよね。
つまり、あれか。
私のライバルと言えるのは天也と奏橙だけという事か。


「それと、注意事項は咲夜に関しては特に無いよ。
2人に対しては、咲夜にあまり近付かない事。
咲夜を困らせないこと。
咲夜と同じ空間にいないようにする事、かな」


兄よ。
それでは仕事も何もないじゃないか。
私は別室でやれとでもいうのか。
しかも光隆会のことと全く関係ないし。


「ごめんなさいね。
海野さんは咲夜さんが大好きだから……」

「それってシスコンっていうんじゃ……」

「仕方ないだろう。
咲夜が天使以上に可愛いんだから」


兄よ……頼むからドヤ顔で言わないでくれ。

などと思いつつ私は平然としていた。
皐月先輩も何もないようにしている私に対して驚いたようだった。

……まぁ、普通なら赤面とかするだろうからね。


「咲夜さん、平然としていますのね…」

「……もう慣れましたから」


そう、もう慣れた。
それだけだった。
だが、それだけの事で皐月先輩を初めとした先輩方と同級生2人は可哀想な目で見ていた。

……そんな目で見ないでほしい。
私は悪くない。
私がやったんじゃない。
これはただの病気だ。
時間が経てばきっと兄の目も覚めるはずだ。

……だからそんな目で見ないでほしい。


「悠人…お前……何やってるんだ……」


兄の友人である燈夜先輩も引いていた。


「何って…最愛の妹を思う存分愛でていただけだよ?
マカロンを買ってあげると可愛いんだ。
満面の笑みでマカロンの入った箱を大切そうに抱えながら僕に
『ありがとうございます!お兄様』
なんて言うんだ…。
それにそんな好きなくせに僕に1つくれるんだ。
『お兄様も一緒に食べませんか?』
って、可愛く首を傾げながらしかも上目遣いで聞いてくるんだ。
仕方ないだろう。
咲夜が可愛すぎるのが悪いんだ!
天使としか思えないほど可愛いのが悪いんだ」


……前からマカロンを良く買ってくれたのはそのせいでしたか。

……まぁ、マカロンは私の大好物だからね。
そうなっても仕方ない。
が、それが私の無意識でやっていた事だからか物凄く恥ずかしい。

というか、ここで暴露するのを辞めてほしい。
それより天使って何!?


「確かにそれは可愛いな」

「朝霧先輩!?
お兄様も辞めてください!」


ちょっと朝霧先輩まで可愛いなんて言い出したせいで取り乱したじゃないか。
……ついでに兄を止めておく。


「あぁ、ごめん。
咲夜の可愛さを知って欲しかったんだ。
帰りにマカロンを買ってあげるから機嫌を直して」


………マカロンを、か。
うん、許そう。


「…今回だけですよ?」


私は少し照れるようにお茶の入ったカップで顔を隠すようにする。
手で隠すのも変だったからこれしか無かったのだ。


「…約束は出来ないな」


兄がボソッと呟いた言葉を私は聞き取る事が出来なかった。
聞こうと思ったが兄は笑って誤魔化した。

……むぅ……気に食わぬ…。

そんなこんなで楽しい昼食の時間が過ぎ、また明日も一緒に…と言ったところで別れた。


「なぁ、俺等何かやったか?
…悠人先輩に嫌われてる気がするんだが……」

「…それは、個人的な事だと思うなぁ…思いますわ。
お兄様はその……心配症というか、家族想い?なので…」


つい素が出てしまった。
気を付けなければ……。


「…つまりはシスコンじゃないのか?」


あぁ、そうだよ。
それを自分で言うなんて出来ないだろう!


「……そうとも言いますね」

「それと、咲夜。
3人でいる時くらいは素で接してくれないか?」


げっ。
それは、どこで他の人が来るか分からないし…。


「これが素ですよ?」

「嘘つけ。
さっき敬語忘れただろうが」


あぁ、忘れたよ!
悪かったな!!

私は感情を外に出さず淡々と言い放つ。


「それは天也の耳がおかしいだけです」

「いや、嘘だよね?
僕の耳にもそう聞こえたし…」

「あら…凄いですね。
お2人揃って耳がおかしくなるだなんて……。
何かご病気でしょうか?
でしたら人に伝染る可能性がありますね……。
他の方にうつす前にどこかおおきな病院で検査をすることをお勧めいたしますわ」


私はあくまでも気の所為だと述べる。
が、2人は全く信じては居なかった。
……少しくらい信じてくれてもいいと思うんだ。


「咲夜」


天也が真顔で私の名前を呼んでくる。
その眼差しに耐えられなくなり諦めのため息をついた。


「……はぁ……分かりました。
3人の時だけですよ?」


結局私が折れる事となった。
そして何故か天野家が借りているという個室に放課後通う事となった。

……なんでもそこでは色々とお菓子が置いてあるらしい。
そして、その中には私の好物であるマカロンも含まれているという。

……あぁ、そうだよ!
マカロン欲しさにつられましたとも!
何か問題でも!?


……私はマカロンには目がないのです。
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