4 / 87
問題発生?
しおりを挟む……入学して2ヶ月。
私は数々の問題に直面していた。
一つ一つは小さいのだが……数が多いのだ。
1つ、兄がこまめに教室へ来ることだ。
仕事もせずに来るらしく他の光隆会の先輩が私のいる教室に居座るようになったのだ。
しかもその時に限って……。
まぁ、それは2つめだ。
2つ、天也と奏橙のせいによる女子からの妬みだ。
それによりかなり面倒なことになっている。
例えるなら、机に落書きをされたり、物を勝手に捨てられたり……。
時には人気の少ないところへ呼び出されることもあった。
3つ、2つめのことによる兄達の報復のような事を止めること。
これが1番大変なのだ。
兄が話を聞いてくれないんだよね……。
「あなた、聞いていますの!?」
「えぇ、勿論、聞いていますわ。
……ですが、私ではどうにもならない事のようですので失礼させていただきますわ」
何も聞いていなかったがどうせ、天也と奏橙に関することだろう。
あぁ、もう……面倒臭い……。
ヒステリックを起こした者より面倒な者は中々いないと思うんだ。
「なっ……待ちなさい!!
あなたなんかが何故天野様や神宮様と……!!」
「知りませんわ。
あの御二方に聞いてください。
それと……この尻拭いをするのは私だということをお忘れなく。
……はぁ、お兄様にバレていなければいいのですが。
隠すこちらの身にもなって……」
「咲夜、隠し事は良くないよ。
僕が咲夜について、知らないことなんてあるはずがないんだから。
さ、正直に話そうか。
……それとも、僕の可愛い妹に手を出した奴らに聞いた方がいいかな?」
……まったく運の悪い人達だ。
よりによって兄にバレるどころか見られるとは……。
というか、兄がストーカーっぽくて怖いのだが。
「お兄様……何故ここにいるんですか」
「咲夜がここにいるって聞いたからね」
……誰から、とは聞かないでおこう。
ただ、きっと兄の笑顔という名の脅しに屈したのだろう。
というよりも、聞いたからといってここに来なくともいいと思うんだ。
「けど……まさか またこんなことになっているとは思っていなかったよ……。
咲夜、行こうか」
「っ……ま、待ってくださっ……。
わ、私達は別に」
「お兄様、少し待っていただけませんか……?」
「……分かったよ」
私は兄の許可を得てから彼女達に近付くと声をかけた。
「明日は他の場所でお話いたしましょう。
また、色々と教えていただけると有難いですわ。
では、お先に失礼致します」
こうしておけばきっと問題ないだろう。
多分……。
「……はぁ、仕方ないな、咲夜は。
全く……甘すぎるよ」
きっと兄は気付いている。
それでも、こう言っておけば兄は手を出さない。
いや、出せない。
私の友人、そう見せておけば私の機嫌を損ねるかもしれないので何も行動を起こすことは無い……はず。
それを分かっているからこそのこの行動だった。
「お兄様ほどではないと思うのですが……」
「僕よりも全然、優しいよ。
僕が優しいのは咲夜だけだからね」
そう言って、兄は私の頭を優しく撫でる。
その優しく暖かな手が心地いい。
でも、私にだけ優しいというのもどうなのか。
皐月先輩にも優しくして欲しい。
これがゲーム越しだったら悶えていたかもしれないが現実、それも実の兄からだと全くそんな気は起きなかった。
……まぁ、この兄だし。
という言葉で完結してしまうほどには慣れていたのもあるからだろうが。
「あぁ、もう……可愛いんだから……。
……仕方ないから今回は、咲夜に免じて許してあげる。
行くよ、咲夜」
「っ……はい!」
先を歩くお兄様に並ぶように少し小走りになると、お兄様は私に歩幅を合わせてくれる。
そんな気遣いが私以外の人にも出来たらなぁ……。
「咲夜!」
「天也……?
どうかしましたの?」
天也が私を見つけるなり走り出してきた。
奏橙が居ないようだがどうしたのだろうか?
天也単体はかなり珍しい気もするが。
「あ、いや……。
大丈夫かと思って来たんだが……」
「問題ありませんわ。
慣れていますもの。
ただ、お兄様を止めるのが大変でしたけど」
私は笑顔で応対するといつもの様に挨拶を交わしお兄様と共に車に乗り込んだ。
車の中で、お兄様が私の髪を弄り始める。
少しくすぐったいが兄はご機嫌のようなので放置しておくことにした。
次の日、先日話していた令嬢達を見つけ、近付くとすぐに謝罪をした。
勿論、兄に関してだが。
「申し訳ありませんでしたわ。
お兄様は少々気が立っているようでして……先日の件は許していただけませんか?」
「え、えぇ……」
「ありがとうございます」
彼女達の返事に、用は終わった!とばかりに自分の席へ戻るとすぐに天也と奏橙の2人が来た。
内心で毒づきながらも表面上では取り繕っているとこちらも先日の件についての話だった。
「大丈夫だったか?
助けてやれなくて悪かった」
「問題ありませんわ。
それに、これくらいは自分で対処できますのでご安心を。
ですから、これからはお兄様は呼ばないでくださいね?」
冷たく言い放つとなせか天也は安心したように、奏橙は笑みを深めた。
「本当に大丈夫そうだね。
普通、こういう事があれば傷ついたりすると思うけど」
「生憎ですが……私、そんな女々しい性格はしておりませんので。
いちいち傷ついていたら身が持ちませんし」
「女々しい……か。
面白いな」
……何故そこで面白いという感想が出てくるのか。
しかも何故そうも嬉しそうなのか。
全くもってわからん……。
「咲夜なら安心だね」
「何がですの?」
「さぁ、何だろう?」
奏橙の言葉に、これ以上何を聞いても無駄だろうと思った私は2人をスルーし窓の外を眺めた。
10
あなたにおすすめの小説
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています
六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった!
『推しのバッドエンドを阻止したい』
そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。
推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?!
ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱
◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*)
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さくら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる