30 / 87
客船
しおりを挟むそれからしばらくたち、夏休みに入ると私達6人は豪華客船の旅に出ていた。
「う、うわぁ……」
「咲夜、部屋はどこを使えばいい?」
「……さすがは海野グループ。
豪華客船に関しては一番だね……」
「わ、私……海野グループの豪華客船なんて初めてですの……」
「紫月ちゃんはまだいいですよ!
私達なんて……豪華客船乗ったことないんですから!!」
「ふふっ……お父様に頼んだかいがありましたわ。
取り敢えず、客室へ案内いたしますわ」
皆が客船に驚く中、私はスタッフから鍵を受け取ると客室へと案内した。
用意した客室は勿論、最上階。
合計六部屋のため丁度1人1室分ある。
特に変わりはないため、カードキーを選んでもらいそれぞれの部屋に入る。
「あら…私は愛音と隣室のようですわね」
「そうみたいですね!
咲夜が隣の部屋で良かったです!」
「俺も咲夜の隣室らしいな」
「僕は天也の隣か……」
「俺は…姉さんの隣か?」
「私は奏橙の隣みたいです」
それぞれの部屋を確認するとそれなりに関わりの強い者の隣になったらしい。
それにしても……天也と愛音が隣なのか。
夜は愛音の部屋で話そうかな?
「咲夜、今更かもしれないが……口調戻していいんじゃないか?」
「え?」「は?」
紫月と魁斗はそれぞれ疑問を浮かべているようだがこのメンバーなら問題ないだろうと思い、私は素に戻った。
「そう?
なら、遠慮なく。
あれだね、やっぱり令嬢としての口調って疲れるわ。
慣れてきたとはいえやっぱこっちの方が落ち着くよね」
「……さ、咲夜……?
だ、大丈夫ですの?」
「……なんか、令嬢感しないな…」
紫月には心配され、魁斗には呆れのこもった目で見られた。
天也は……満足そうだ。
………納得いかない…。
「2人共、慣れて。
咲夜は初等部の頃からこんな感じだから」
「もとはと言えば天也に言われたからだって……。
言われなかったらちゃんと口調は注意してたし。
それに、人が見てるとこでは戻すからいーの。
これでもあのシスコンのお兄様にだってバレてないんだから」
「そこら辺の切り替えだけは本当に早いよね……。
特に悠人先輩の前での変わりようは凄いと思う」
「そうでもないと思うけど……。
まぁ、いっか。
あ、そういえば、水着って持ってる?
持ってたらプールいかない?
温泉の方でもいいけど…」
苦笑している奏橙に対し、私はボソッと呟くとそんな提案をした。
この客船にはプールと温泉もある。
プールに関してはウォータースライダーや流れるプールなどといったものまであるのだ。
温泉に関しても水着着用のゾーンはジャグジーもあるし、ワインやお茶といった香りの温泉まである。
……どこかのホテルと比べても遜色ないくらいだ。
とても客船だとは思えない。
「あぁ……そうだな。
だが、どっちにする?」
「最初はプールの方でいいんじゃない?」
「んじゃ、プールの方にしよっ……」
「あ、あの……す、すいません…。
私と魁斗は持ってきてない…です……」
……ふむ、確かに言って無かったしね。
仕方ないか。
……2階のショッピングゾーンに何かしらあったはず。
行ってみるか。
「天也、ショッピングゾーンで着替えてプールで集合という事で!
魁斗の方はお願いね。
私達の方は愛音を担当するから。
あ、もし何かあったら私持ちだから適当に持ってっていいよー。
天也は分かってると思うけどカードキー出せばいいから。
そーゆー事でよろしくー」
「あぁ、分かった。
後で集合な」
「え?
…え?
さ、咲夜!?
ちょっと待ってくださっ………」
「はっ!?
待て……って、おい!?」
私は魁斗を天也と奏橙の2人に任せると愛音と紫月を連れショッピングゾーンに向かう。
ショッピングゾーンの水着コーナーに行くと私と紫月は愛音に似合いそうな水着を探し始めた。
「あ、これとかどう?」
そう言って私が出したのはピンクのフリルのついた可愛らしい水着だった。
「これもいいと思います!」
紫月が選んだのは水色の落ち着いた雰囲気の色の水着だ。
そんな私達を見てか愛音も周りを見始める。
「ピンクは咲夜の方が似合っています!
なのでこれとかどうでしょう?
紫月ちゃんはこっちの薄紫のとかどうでしょうか!」
…今の水着よりは可愛い…けど……。
私に似合うとは到底思えそうにない、ピンクの水着という選択に戸惑いながらも考える私だった。
「咲夜には確かにピンクって似合いますの。
ですが、やはり白や黒も捨て難いと……」
……何で皆白って言うんだろうね?
兄や父を筆頭とした人達も白が合うっていうし。
あ、でも黒は初かも。
「咲夜はどれにしますか?」
「わ、私は持ってきたし…」
愛音が笑顔でピンクと白の水着を持って聞いてくるが私はどうにか逃げようと持ってきた事を言うが、次に紫月の言った一言で私の意見は変わる事となる。
「咲夜、天也さんに可愛いっていってもらえるように選びましょう!」
「……うっ……言ってもらえる、かな……?」
「か…可愛い!
咲夜が小動物みたいです!」
「って、何で天也にっ……!!」
そんな愛音の言葉すら聞こえないくらいに私は自分の世界に入り込んでいた。
…天也は本当に可愛いと言ってくれるだろうか?
だけど、いってくれたとしてもこの水着は恥ずかしいし……。
そう、愛音や紫月が持ってきたのはビキニタイプの水着なのだ。
流石にそれを着て出て行く勇気は持ち合わせていない。
それに、最近マカロンやケーキの食べ過ぎか太り過ぎた気がするし……。
「咲夜、チャンスですわよ?」
「チャ、チャンスって……」
「そうですわ。
天也さんが好きなのは分かっているんですから……。
可愛いと言ってもらいたいのでしょう?
でしたら……」
そう言われ、私は意を決して愛音の持つフリルであしらわれた薄いピンクの水着へと手を伸ばした。
次いでに白の水着の上に着る上着も持つ。
そして更衣室で着替えてから出ると愛音と紫月から揃って可愛いと言われた。
……天也は可愛いといってくれるだろうか?
ついでに髪をひとつに縛っておいた。
……邪魔になるし。
その頃には愛音と紫月も選び終えていたようで着替えていた。
全員揃ったところでプールに向かう。
「咲夜、どうしましたの?」
「咲夜?」
…私は恥ずかしさのあまり足をとめてしまいプールの中に入れずにいた。
……冷静になってみればこの格好、物凄く恥ずかしい。
ピンクというのも私に合わない気がするし…。
それに、フリルとかビキニって……。
私は顔を赤く染めてすくぶってしまっていた。
それを見てどう思ったのか愛音と紫月が私の手をひき歩き出した。
「愛音、紫月来たのか…って…咲夜は?」
「2人とも、その水着似合ってるよ」
「姉さんが別人に見える……」
私は扉から出られずに隠れていた。
そんな私に対して2人が叱咤する。
「咲夜、この期に及んで往生際が悪いですわよ!」
「そうですよ、咲夜!」
皆の声にやはり持ってきていたものにしようと踵を返す。
「私、やっぱ着替えてく…」
「させません!
紫月ちゃん!」
「えぇ、愛音さん!」
愛音と紫月は息ぴったりに私の手を掴み引っ張った。
それにより扉から出てしまった私はあまりの恥ずかしさに顔が赤くなっていく。
「咲夜、似合ってるよ。
いつもとは雰囲気が違うけどね」
「……可愛い、と思う」
とは奏橙と魁斗だ。
私が一番聞きたかった天也は固まっている。
私はそんな天也にやはり似合ってないだろうか、と思い始めたころ、愛音が要らない事を話し始めた。
「天也、何か言ってあげてください!
咲夜ったら可愛いんですよ!
最初は着るのを嫌がってたくせに……」
「か、かかか愛音!?
何言ってるの!?」
「本当の事ですから」
「愛音の馬鹿ぁぁぁ!!」
そんなやり取りをしていた私に天也は顔を背けて言った。
その頬は少し赤くなっている気がする。
「その…なんだ……?
…に、似合ってる…か、可愛いと、思う……」
「な、なっ……。
何を言っているんですの!
私ですもの。
当たり前でしょう」
私はそう口にしてからしまった、と顔を青くする。
こんな事を言いたかったわけではない。
なのに照れ隠しのように勝手に口から出てしまったのだ。
「咲夜って褒められたりするとたまに心にも無いこというよね」
「うっ……。
そ、それは…!!」
「しかも、令嬢としての口調に戻るし…」
「うっ……」
「照れ隠しってバレバレだし…」
ことごとく奏橙に心を抉られる私だった。
……何もここでそんな事を言わなくてもいいと思うんだ。
そしてそのあと、皆で流れるプールやスライダーなどといった場所に移動する際、天也が私の隣にきて小さく呟いた。
「咲夜、本当に可愛いし、綺麗だ。
その、さっきはすぐに言えなくて悪かった……。
いつもの咲夜とあまりにも雰囲気が違いすぎたし…見とれてたんだ…」
「っ……。
…別に、気にしてないし。
でも、まぁ…ありがと」
私は天也の率直な言葉に思わず顔を背けた。
少しばかり顔が赤くなっている気もするが、そこはご愛嬌ということで。
私は天也にお礼を言うと、すぐに愛音達のもとへ走っていく。
「愛音、紫月!
スライダー行こう!」
と、照れ隠しのように2人を巻き込み走って行った。
もうすでに天也の事が好きなのだとバレているような気もするが……まぁ、知らないフリをしておこう。
うん、そうだ。
この前の告白のせいで変に意識していることにすれば問題はない。
……好きだと言っても、愛音の邪魔をするようなことはしたくないし。
やっぱり親友には幸せになってもらいたいし。
まぁ、奏橙と紫月をくっつけた私が言っていいことではない気もするが。
10
あなたにおすすめの小説
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
【コミカライズ企画進行中】ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!
あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】
小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。
その運命から逃れるべく、九つの時に家出を決行。平穏に生きていたが…。
ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。
その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。
優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。
運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。
※コミカライズ企画進行中
なろうさんにも同作品を投稿中です。
プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる