王族なんてお断りです!!

紗砂

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本編

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王妃殿下へのプレゼントを受け取ると、私たちはフィーリン商会のカフェへと向かいました。

頼まれていたケーキを殿下に試食をしていただくためです。
私が屋敷で作ってもよかったのですが、私が作るよりもちゃんとした料理人が作るほうがおいしいでしょうし、そのような時間はありませんでしたのでフィーリン商会の料理人に頼みました。
私の頼んでいた事に関する報告書も受け取らなければなりませんし。

そのことを伝えると、殿下は驚いたような表情を浮かべ、感心するように口を開きました。
普通であればもっと時間をかけて作るのが普通ですから驚く理由も十分理解できます。
あくまでもフィーリン商会の商会ですが。


「もうできたのか……。昨日頼んだばかりだろう。速いな」

「えぇ、以前本店でのみ取り扱った事のある限定品を参考にアレンジを加えたものを用意しましたから。
そのためそれほど時間はかかっておりません。
今回試食していただくのはまだ完成品ではありませんから。
完成品は今回の件を踏まえ、また変えていきますので」

「ほぅ……。
新作を作る度そこまでしているのか?」

「はい、もちろんです。
お客様から金銭をいただいて出す以上、妥協だけは何があっても許されませんから」


フィーリン商会で扱うものは、何であれ妥協を許すつもりはありません。
一度妥協をしてしまえば、あとは扱う商品のレベルが下がっていくことになってしまいます。
だからこそ、私は自分のところで扱う商品に妥協は許しませんし、その商品に絶対の自信を持っています。
そうでなければ売ってはいけないと思っています。


「ここか……。相変わらず混みあっているな」


店の前には長蛇の列ができていました。
殿下の言葉からして、いつもこのような様子なのでしょう。


「そうですね。
エリンスフィールでもこれだけの人気があるとは思っていませんでしたが」


これは、本店の移動を急いだほうがいいかもしれませんね。
広さも十分にとる必要がありそうです。
それと、この店舗の従業員を増やしたほうがいいかもしれませんね。
これでは休憩もできないでしょう。
こうしてくると、いろいろな改善点が見つかります。
やはり実際に見なければ、報告書だけではわからないことも多いですね。


「殿下、こちらへ。
表からは入れそうにありませんので裏口から入ります」

「並ばなくても大丈夫なのか?」

「えぇ、上の一室を使おうと思いますから。
普通席に案内されて発売もしていないものをお客様方の目にふれさせるわけにはいきませんし」

「それもそうだな……」


殿下は分かってくださったようで、素直に私の後をついてきます。
裏口のカギは当然締まっていますが、カギはちゃんと持っているので問題はありません。
まだ商会を立ち上げてばかりのころ、何度かバカな貴族たちがゴロツキを雇い店のレシピを盗もうとしたことがありました。
それ以来、どこの店もこうして常時鍵をかけることにしてあるのです。
それも二重の仕掛けを施しています。
その辺は抜かりありません。


「こちらです、殿下」


二階へと上がると、私が訪れたときに使う執務室へと案内します。
そして、再びカギを開けようやく目的の部屋へとたどり着きました。


「そちらにどうぞ。私はお茶とケーキを持ってきます」

「あ、あぁ。分かった、待っていよう」


殿下が頷いたことを確認してから、私は退出しました。
そして、丁度今から休憩に入るところの者を一人捕まえると、私はこの店の責任者を呼ぶように頼みます。
責任者の方がいないと何もできませんから。
勝手にケーキを取り出すわけにもいきませんし……。

そして、待つこと数分。
責任者が急いでやってきました。
相変わらず忙しい人です。
優秀なのですが、性格に難があるという大変面倒な人物なのです。


「お待たせいたしました、エリス様……!
すぐにお持ちいたします」

「いえ、私がやります。
場所は分かっていますから問題ありません。
ニールは休憩をとってください」

「ですが、エリス様にそのような事をさせるわけにはいきません!」


ニールは孤児院育ちで働き口が見つからなかったところを私がこの店に誘ったせいか、私に対する扱いが丁寧すぎるところがあります。
それだけ感謝されているということなのでしょうが、正直やりにくく感じることも少なくはありません。


「ニール、私はあなたが働きすぎて倒れるようなところを見たくはありません。
あなた自身が気付いていなくても体に疲労は蓄積されているのですからきちんと休んでください。
上の者が休まなければ下の者も休めないのですよ?」


ニールの事が心配なのは本当の事です。
ですが、打算があったのもまた事実。
こうでも言わなければニールは休みませんから。


「承知いたしました……」

「きちんと休んでくださいね?」

「はい」


少々落ち込んでいるように見えましたが、これは日ごろ休まないニールが悪いのですから仕方ありません。
多少の罪悪感にさいなまれますが。


「優秀すぎるのも困りますね……」


思わず苦笑を漏らし、私はケーキとお茶を準備して殿下のいる部屋へと戻りました。
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