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本編
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後日、国王云々の話で気絶していたお父様のもとへ、私と殿下の二人で向かいました。
話は勿論、婚約についてです。
「お父様、婚約の件ですか、殿下との婚約を進めていただきたいのですが」
「私の記憶違いでなければ、そのつもりはないと、そう言ってはいなかったか……?」
「はい、そのつもりでした。
ですが、エンドルース公爵とルースベル公爵が自分達の息子が王になれば国が崩壊する、と脅しをかけてきたことと、私がフィーリン商会を立ち上げた、当初の目的を思い出したので」
私がフィーリン商会を立ち上げた目的は色々あったが、エールを守るために他国が無視できない程の商会を……そういった思いがありました。
それは、エールに住む人々の生活を守りたいという想いがあったからこそです。
それを考えた時、私のその想いを突き通すのであれば王になることが必要だと、そう思いました。
「エリス、私は反対だ。王は、そう簡単に務まるものではない。
それはお前もよく知っているはずだ」
お父様の言うことは正しい。
私は王になることの大変さをよく知っています。
王が孤独にならないよう、王となる者のサポートが出来るよう、バカ王子の婚約者だった私は王妃教育を受けていましたから。
「はい、ですが……知っているからこそ、私は王になろうと思うのです。
そしてそのために、私は殿下と婚約をしたいのです」
「フォーリア公爵、貴殿の考えはよく分かる。
私は王になるため教育を受けてきた。
エリスの力になれるはずだ。
エリンスフィールには私の代わりもいる。
私がエリスと婚約をしてもなにも問題は無いはずだ」
「確かに、エンドルースやルースベルの候補者と比べれば満場一致でエリスがいいだろう、と答えるだろう。
だが、親として言わせてもらうと、自分の子にそんな苦労を背負って欲しくはないのだ」
「……お父様」
苦労を背負って欲しくはない、ですか。
……ならば、私が言うことは一つだけですね。
「バカですか」
「……は?」
「お、おい、エリス?」
殿下とお父様が狼狽えています。
知りませんが。
「苦労だなんて、フィーリン商会を立ち上げた時点で既に遅いのです。
一国を背負うことになるのですから苦労なんて当たり前でしょう。
ですが、支えてくれる人がいるでしょう。
その上、あのバカ王子の婚約者として過ごしていたのですから、それ以上の苦労だなんてありません」
「む……それもそうだな」
「ということで、認めて下さいますよね、お父様?」
「……はぁ、分かった。
だが、殿下と二人で話がしたい。
殿下、よろしいですかな?」
認めてはくださったようですが……殿下と二人で、というのは心配です。
私は、殿下を伺うと、殿下は笑顔で頷いた。
「はい、私も貴殿と話をしたいと思っていたので」
「……私は、失礼させていただきます」
心配はありますが、問題はないと思っています。
お父様が殿下を害するようなことをするはずがありませんから。
やるのなら徹底的にやります。
だからこそ、心配なのですが……。
「……そのうちに、仕事でも済ませてしまいましょう」
何かしていないと落ち着きませんし。
そう考えていた私に、お母様が声を掛けてきました。
「エリス、庭で少し話しましょう?」
私はそれに頷くと、お母様の後ろをついていきます。
庭につき、お茶を用意するとお母様は私に質問を投げかけました。
「エリス、あなた殿下のことが好きなの?」
殿下のことが好きか、その問いに私は答えられません。
最初は面倒事を持ち込んでくる人、という考えだったのですが、ルアンが殿下の友人に、と話した頃から少しずつですが考えが変わっていました。
ですが、殿下に対する私の想いはまだ、友人止まりのような気もします。
「……分かりませんが、好意はあります。
それが異性としてなのか、友人としてなのかはまだ、わかりませんが」
「そう……。
エリス、あなたが自分の全てをかけて守りたい、助けたいと思うのなら、絶対に離さないようにしなさい」
「お母様、それはどういう……」
「私は部屋へ戻るわ。あとは自分で考えなさい」
お母様の言葉は、これから何かが起きるというのを暗示しているようにも感じます。
ですが、その『何か』が起こるという確証をお母様はどこで得たのか、そして私と殿下にどんな関係があるのかが分かりません。
分かることは、決して離してはいけないということくらいです。
「エリス、聞いたよ。殿下との婚約、決めたんだって?
それに、この国初の女王になるつもりだってこともさ」
「……ルアン、あなたが殿下に入れ知恵をしたのではないのですか?」
「ははっ、まさか。僕がそんなことするはずないよ。
まぁ後押しなら、多少はしたかもしれないけどね?」
薄く笑みを浮かべるこの従弟は、殿下を焚き付けた張本人のようです。
分かってはいましたが、どうしてそんなにも私と殿下をくっつけたがるのでしょうか?
「……殿下とエリスって、似てると思うんだよね。
雰囲気というか、性格というか、そんなものが。
二人ともさ、大切なものが傷つくことはゆるさないくせに、自分がどれだけ傷つこうと気にしない。
それが周囲にどれだけ心配させてるかも気付かないで突き進むとことか、ほんと似てるよ」
……そうでしょうか? そんな自覚はありませんが。
「他にも、自分に厳しいくせに身内には甘いところとか。
そんな殿下とエリスが婚約者になれば、相手を甘やかすでしょ?」
そんなに、甘いでしょうか? 自分に厳しい憶えもないのですが。
私としては、ただ貴族として当たり前のことを出来るようにしているだけなのですが。
「……それに、エリスは貴族よりも王族の方が合ってると思うから」
「そうでしょうか?」
「うん。エリスには、人を惹きつける魅力があるから」
人を惹きつける、ですか。
そう言われたのは初めてですね。
ルアンがそんなことを思っていたとは……。
「ルアン、一ついいでしょうか? なぜ、殿下には婚約者がいなかったのですか?」
本来であれば、王族の婚約者は早々に決まるものです。
それが王子ならば尚更です。
第二王子ならば問題はありませんが、殿下のような第一王子の婚約者には王妃教育がありますから。
幼い頃から学ばせ、その自覚を持って行動してもらう。
そのために、婚約者は通常、十歳になる頃までには決まっています。
私も、殿下の婚約者に選ばれたのはその頃でしたから。
「エリンスフィールの王族に、駆け落ちした人がいた、というのは知ってるでしょ?」
その話は有名ですから、私もよく知っています。
なんでも、その時の王太子が子爵令嬢に恋愛感情を抱いたのが始まりだったと。
王太子には既に婚約者がいたので子爵令嬢への想いは叶わないはずでした。
ですが、王太子と子爵令嬢は全てを捨て、駆け落ちしたと。
「その件があって以来、エリンスフィールの王族は相手が貴族であれば自由になっているんだ。
ただ、権力を使って無理矢理婚約を、っていうのは禁止されてるようだけど……。
なんでも人を見る目を、っていうのと下級貴族の中にも優秀な人材はいるからっていうのが理由らしい」
確かに、下級貴族にも優秀な者はいます。
ですが、だからと言ってそれはどうなのでしょうか。
王となるのならば後ろ盾も必要です。
下級貴族にそういった後ろ盾を用意出来るとは思えません。
「……ふるい落とし、ですか」
ルアンが笑みを深めます。
どうやら、正解だったようです。
王族が何人かいた場合、その中で最も能力のある者を次の王とする。
そのために人を見る目を……ということなのでしょう。
それを見る項目がこの、婚約者ということなのでしょうね。
「……ということは私はまた、面倒事に巻き込まれる、ということですか」
私の考えが間違っていなければ、ですが、確実に面倒事に巻き込まれる気がします。
話は勿論、婚約についてです。
「お父様、婚約の件ですか、殿下との婚約を進めていただきたいのですが」
「私の記憶違いでなければ、そのつもりはないと、そう言ってはいなかったか……?」
「はい、そのつもりでした。
ですが、エンドルース公爵とルースベル公爵が自分達の息子が王になれば国が崩壊する、と脅しをかけてきたことと、私がフィーリン商会を立ち上げた、当初の目的を思い出したので」
私がフィーリン商会を立ち上げた目的は色々あったが、エールを守るために他国が無視できない程の商会を……そういった思いがありました。
それは、エールに住む人々の生活を守りたいという想いがあったからこそです。
それを考えた時、私のその想いを突き通すのであれば王になることが必要だと、そう思いました。
「エリス、私は反対だ。王は、そう簡単に務まるものではない。
それはお前もよく知っているはずだ」
お父様の言うことは正しい。
私は王になることの大変さをよく知っています。
王が孤独にならないよう、王となる者のサポートが出来るよう、バカ王子の婚約者だった私は王妃教育を受けていましたから。
「はい、ですが……知っているからこそ、私は王になろうと思うのです。
そしてそのために、私は殿下と婚約をしたいのです」
「フォーリア公爵、貴殿の考えはよく分かる。
私は王になるため教育を受けてきた。
エリスの力になれるはずだ。
エリンスフィールには私の代わりもいる。
私がエリスと婚約をしてもなにも問題は無いはずだ」
「確かに、エンドルースやルースベルの候補者と比べれば満場一致でエリスがいいだろう、と答えるだろう。
だが、親として言わせてもらうと、自分の子にそんな苦労を背負って欲しくはないのだ」
「……お父様」
苦労を背負って欲しくはない、ですか。
……ならば、私が言うことは一つだけですね。
「バカですか」
「……は?」
「お、おい、エリス?」
殿下とお父様が狼狽えています。
知りませんが。
「苦労だなんて、フィーリン商会を立ち上げた時点で既に遅いのです。
一国を背負うことになるのですから苦労なんて当たり前でしょう。
ですが、支えてくれる人がいるでしょう。
その上、あのバカ王子の婚約者として過ごしていたのですから、それ以上の苦労だなんてありません」
「む……それもそうだな」
「ということで、認めて下さいますよね、お父様?」
「……はぁ、分かった。
だが、殿下と二人で話がしたい。
殿下、よろしいですかな?」
認めてはくださったようですが……殿下と二人で、というのは心配です。
私は、殿下を伺うと、殿下は笑顔で頷いた。
「はい、私も貴殿と話をしたいと思っていたので」
「……私は、失礼させていただきます」
心配はありますが、問題はないと思っています。
お父様が殿下を害するようなことをするはずがありませんから。
やるのなら徹底的にやります。
だからこそ、心配なのですが……。
「……そのうちに、仕事でも済ませてしまいましょう」
何かしていないと落ち着きませんし。
そう考えていた私に、お母様が声を掛けてきました。
「エリス、庭で少し話しましょう?」
私はそれに頷くと、お母様の後ろをついていきます。
庭につき、お茶を用意するとお母様は私に質問を投げかけました。
「エリス、あなた殿下のことが好きなの?」
殿下のことが好きか、その問いに私は答えられません。
最初は面倒事を持ち込んでくる人、という考えだったのですが、ルアンが殿下の友人に、と話した頃から少しずつですが考えが変わっていました。
ですが、殿下に対する私の想いはまだ、友人止まりのような気もします。
「……分かりませんが、好意はあります。
それが異性としてなのか、友人としてなのかはまだ、わかりませんが」
「そう……。
エリス、あなたが自分の全てをかけて守りたい、助けたいと思うのなら、絶対に離さないようにしなさい」
「お母様、それはどういう……」
「私は部屋へ戻るわ。あとは自分で考えなさい」
お母様の言葉は、これから何かが起きるというのを暗示しているようにも感じます。
ですが、その『何か』が起こるという確証をお母様はどこで得たのか、そして私と殿下にどんな関係があるのかが分かりません。
分かることは、決して離してはいけないということくらいです。
「エリス、聞いたよ。殿下との婚約、決めたんだって?
それに、この国初の女王になるつもりだってこともさ」
「……ルアン、あなたが殿下に入れ知恵をしたのではないのですか?」
「ははっ、まさか。僕がそんなことするはずないよ。
まぁ後押しなら、多少はしたかもしれないけどね?」
薄く笑みを浮かべるこの従弟は、殿下を焚き付けた張本人のようです。
分かってはいましたが、どうしてそんなにも私と殿下をくっつけたがるのでしょうか?
「……殿下とエリスって、似てると思うんだよね。
雰囲気というか、性格というか、そんなものが。
二人ともさ、大切なものが傷つくことはゆるさないくせに、自分がどれだけ傷つこうと気にしない。
それが周囲にどれだけ心配させてるかも気付かないで突き進むとことか、ほんと似てるよ」
……そうでしょうか? そんな自覚はありませんが。
「他にも、自分に厳しいくせに身内には甘いところとか。
そんな殿下とエリスが婚約者になれば、相手を甘やかすでしょ?」
そんなに、甘いでしょうか? 自分に厳しい憶えもないのですが。
私としては、ただ貴族として当たり前のことを出来るようにしているだけなのですが。
「……それに、エリスは貴族よりも王族の方が合ってると思うから」
「そうでしょうか?」
「うん。エリスには、人を惹きつける魅力があるから」
人を惹きつける、ですか。
そう言われたのは初めてですね。
ルアンがそんなことを思っていたとは……。
「ルアン、一ついいでしょうか? なぜ、殿下には婚約者がいなかったのですか?」
本来であれば、王族の婚約者は早々に決まるものです。
それが王子ならば尚更です。
第二王子ならば問題はありませんが、殿下のような第一王子の婚約者には王妃教育がありますから。
幼い頃から学ばせ、その自覚を持って行動してもらう。
そのために、婚約者は通常、十歳になる頃までには決まっています。
私も、殿下の婚約者に選ばれたのはその頃でしたから。
「エリンスフィールの王族に、駆け落ちした人がいた、というのは知ってるでしょ?」
その話は有名ですから、私もよく知っています。
なんでも、その時の王太子が子爵令嬢に恋愛感情を抱いたのが始まりだったと。
王太子には既に婚約者がいたので子爵令嬢への想いは叶わないはずでした。
ですが、王太子と子爵令嬢は全てを捨て、駆け落ちしたと。
「その件があって以来、エリンスフィールの王族は相手が貴族であれば自由になっているんだ。
ただ、権力を使って無理矢理婚約を、っていうのは禁止されてるようだけど……。
なんでも人を見る目を、っていうのと下級貴族の中にも優秀な人材はいるからっていうのが理由らしい」
確かに、下級貴族にも優秀な者はいます。
ですが、だからと言ってそれはどうなのでしょうか。
王となるのならば後ろ盾も必要です。
下級貴族にそういった後ろ盾を用意出来るとは思えません。
「……ふるい落とし、ですか」
ルアンが笑みを深めます。
どうやら、正解だったようです。
王族が何人かいた場合、その中で最も能力のある者を次の王とする。
そのために人を見る目を……ということなのでしょう。
それを見る項目がこの、婚約者ということなのでしょうね。
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