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本編
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しばらく、雑談を楽しんでいると、陛下と共にバカ二人が会場入りしました。
だらしなく緩んだその表情を見るに、以前よりも悪化しているような気がします。
「突然だが、一つ報告がある。
キースの王位継承権を剥奪し、次の国王は公爵家の中から選出することとする」
ついに、陛下は口にしました。
招待客側は、当然とでも言うような反応でした。
ですが、あのバカ二人だけは狼狽えています。
「な、なぜですか父上!」
「キース様の王位継承権を剥奪するなんて……酷い!」
こうなることは分かっていたでしょう。
ルベルコートとの取引が失われそうになったそもそもの原因はキース様、あなたなのですから。
そもそも、バカ王子などと言われている方を王にするなどあり得るわけがないのです。
「お前か……。エリス、お前の仕業か!
どこまで私の邪魔をすれば気が済むというのだ!」
……なぜ、そう思ったのでしょうか?
脳味噌まで腐り切っているのではありませんか?
私にそんなことが出来るはずがないでしょうに。
最終決定は陛下が下します。
そこでその決定がなされたということはもう、既に見限られていた、ということなのに。
「……キース様、私も言いたいことがあります。
私の商会に出入りするのをやめて頂けませんか?
私のもとにキース様についての苦情がかなり来ているのですが……」
「ふんっ、お前の商会だと? 行った覚えもないがな。
どうせ、お前の店などすぐに潰れるだろうがな!」
……何を言い出すかと思えば。
フィーリン商会に行ったことがない?
ならば、アリスは何故怪我を負ったのでしょうか。
すぐに潰れる?
エリンスフィールへ本店を移動するだけであんなにも貴族が騒いだ商会がそんな簡単に潰れるとでも?
きっと、この方は知らないのでしょう。
私がフィーリン商会の会頭であると。
貴族であればほとんどの者が知っていることだというのに、かつて私の婚約者であった人は知らないという。
それほど、私に興味がなかったということなのでしょう。
「キース様、あなたがまだ王位継承権を持っていたのなら、私は即座に商会をこの国から引き上げたでしょうね」
私の言葉に、貴族の大半が息を呑みます。
それほどまでにフィーリン商会が愛されている、というのはやはり嬉しいですね。
「引き上げるだと? 商才がなく続けられない、の間違いではないのか?」
キース様は嫌な笑みを浮かべました。
……なぜ、私は今までこのような方のために頑張って来たのでしょうか?
「キース、まさか本当に知らんのか……?
エリス嬢は、あのフィーリン商会の会頭だぞ」
「は? まさか、そんなはずないじゃありませんか。
エリスがフィーリン商会の会頭など、ありえるわけがない。
……あぁ、そういうことですか。
父上もきっとこの女に騙されているのですね!」
陛下は呆れ果てた様子で口にしました。
そうですよね。
婚約者のことですし、そうでなくても名を馳せている商会のトップくらい貴族であれば誰でも調べます。
特に王族であれば、国に影響を及ぼすであろう商会や人物については頭に入れておくものですから。
更に、私はあの方の婚約者であったこともあり、商会頭としての立場を隠すことはありませんでしたし。
「エリス嬢、フィーリン商会を撤退させたりしないよな?」
「……今のところは、ですが」
「そうか……」
ホッとしたような表情を浮かべる陛下。
……王妃殿下もお気に召されているようですし、その影響でしょう。
「キース様、私、今回ばかりはかなり怒っています。理由は、分かりますよね?」
もちろん、アリスを傷つけたからです。
私の大切な人を傷付けたのだからそれ相応の覚悟はしているのでしょう?
「こ、婚約破棄の件ならば、あれは……」
「婚約破棄については、私にメリットしかありませんでした。それに関しては感謝しています」
キース様がいなければ婚約をすることも無かったのですが、それは言わずにおきましょう。
「……アリス、私の店の従業員を傷付けましたよね?
キース様の負わせた肩から首元あたりまでの刀傷は残ってしまうかもしれないのですよ?
その者から聞いた話によると、フィーリン商会を寄越せ、と言ったのだとか。
それを断った者に剣を向けるとは、王族である前に人としてどうなのでしょうか?」
私はこれでも怒っているのです。
アリスを傷付けたこと、店を潰そうとしたこと、フォーリア公爵家の品位を汚そうとしたこと。
色々とありますが、やはりアリスの件が大きかったのだと思います。
だからこそ私は敢えてこの場で、キース様の名を落とします。
「王子としての教育から逃げておきながら、特権は行使する。
そのようなことが、本当に許されるとでも思っていたのですか?」
私は、バカ王子を突き放すように口にしました。
あなたは、私を婚約者として扱ったことなど一度もありません。
最初の頃は、国のためならばそれでも良いと思っていました。
ですが、途中から馬鹿らしく感じていました。
だって、そうでしょう?
あなたは、何もしなかったのだから。
国のためになるのなら、それでもまだ許すことはできました。
ですが、そうではなかった。
国のことなど何も考えていないのですから。
なぜ、婚約者とも思っていない相手のために、敵を減らさなければいけないのでしょうか?
なぜ、私がこんなバカのために動かなければいけないのでしょうか。
このバカを見ていると時々思うのです。
ノブレス・オブリージュとは、一体なんなのか、と。
「少なくとも、私はあなたを許しません。
アリスを、私の大切な者を傷付けたあなたを、許すつもりはありません。
フィーリン商会を敵に回したこと、せいぜい後悔してください」
最後に、私は笑顔を見せ、キース様の前から立ち去った。
これで本当にお別れです。
きっと、これから二人を待つのは地獄でしょう。
フィーリン商会は太いパイプを持っています。
そのフィーリン商会の敵となったお二人を客に取る商会は無いでしょうから。
あの二人はもう、貴族としても、商人としても終わったのです。
特別選民思想の高いお二人にとって、これ以上の屈辱は無いでしょう?
もちろん、他にも色々とやらせていただきますが。
まさか、この程度で終わるだなんて、思っていませんよね?
憎んではいませんが、フィーリン商会に所属する者に手を出したバカの末路として、十分利用させていただきます。
これまで、かなりの苦渋をのまされたんですからこのくらいは構いませんよね、キース様?
だらしなく緩んだその表情を見るに、以前よりも悪化しているような気がします。
「突然だが、一つ報告がある。
キースの王位継承権を剥奪し、次の国王は公爵家の中から選出することとする」
ついに、陛下は口にしました。
招待客側は、当然とでも言うような反応でした。
ですが、あのバカ二人だけは狼狽えています。
「な、なぜですか父上!」
「キース様の王位継承権を剥奪するなんて……酷い!」
こうなることは分かっていたでしょう。
ルベルコートとの取引が失われそうになったそもそもの原因はキース様、あなたなのですから。
そもそも、バカ王子などと言われている方を王にするなどあり得るわけがないのです。
「お前か……。エリス、お前の仕業か!
どこまで私の邪魔をすれば気が済むというのだ!」
……なぜ、そう思ったのでしょうか?
脳味噌まで腐り切っているのではありませんか?
私にそんなことが出来るはずがないでしょうに。
最終決定は陛下が下します。
そこでその決定がなされたということはもう、既に見限られていた、ということなのに。
「……キース様、私も言いたいことがあります。
私の商会に出入りするのをやめて頂けませんか?
私のもとにキース様についての苦情がかなり来ているのですが……」
「ふんっ、お前の商会だと? 行った覚えもないがな。
どうせ、お前の店などすぐに潰れるだろうがな!」
……何を言い出すかと思えば。
フィーリン商会に行ったことがない?
ならば、アリスは何故怪我を負ったのでしょうか。
すぐに潰れる?
エリンスフィールへ本店を移動するだけであんなにも貴族が騒いだ商会がそんな簡単に潰れるとでも?
きっと、この方は知らないのでしょう。
私がフィーリン商会の会頭であると。
貴族であればほとんどの者が知っていることだというのに、かつて私の婚約者であった人は知らないという。
それほど、私に興味がなかったということなのでしょう。
「キース様、あなたがまだ王位継承権を持っていたのなら、私は即座に商会をこの国から引き上げたでしょうね」
私の言葉に、貴族の大半が息を呑みます。
それほどまでにフィーリン商会が愛されている、というのはやはり嬉しいですね。
「引き上げるだと? 商才がなく続けられない、の間違いではないのか?」
キース様は嫌な笑みを浮かべました。
……なぜ、私は今までこのような方のために頑張って来たのでしょうか?
「キース、まさか本当に知らんのか……?
エリス嬢は、あのフィーリン商会の会頭だぞ」
「は? まさか、そんなはずないじゃありませんか。
エリスがフィーリン商会の会頭など、ありえるわけがない。
……あぁ、そういうことですか。
父上もきっとこの女に騙されているのですね!」
陛下は呆れ果てた様子で口にしました。
そうですよね。
婚約者のことですし、そうでなくても名を馳せている商会のトップくらい貴族であれば誰でも調べます。
特に王族であれば、国に影響を及ぼすであろう商会や人物については頭に入れておくものですから。
更に、私はあの方の婚約者であったこともあり、商会頭としての立場を隠すことはありませんでしたし。
「エリス嬢、フィーリン商会を撤退させたりしないよな?」
「……今のところは、ですが」
「そうか……」
ホッとしたような表情を浮かべる陛下。
……王妃殿下もお気に召されているようですし、その影響でしょう。
「キース様、私、今回ばかりはかなり怒っています。理由は、分かりますよね?」
もちろん、アリスを傷つけたからです。
私の大切な人を傷付けたのだからそれ相応の覚悟はしているのでしょう?
「こ、婚約破棄の件ならば、あれは……」
「婚約破棄については、私にメリットしかありませんでした。それに関しては感謝しています」
キース様がいなければ婚約をすることも無かったのですが、それは言わずにおきましょう。
「……アリス、私の店の従業員を傷付けましたよね?
キース様の負わせた肩から首元あたりまでの刀傷は残ってしまうかもしれないのですよ?
その者から聞いた話によると、フィーリン商会を寄越せ、と言ったのだとか。
それを断った者に剣を向けるとは、王族である前に人としてどうなのでしょうか?」
私はこれでも怒っているのです。
アリスを傷付けたこと、店を潰そうとしたこと、フォーリア公爵家の品位を汚そうとしたこと。
色々とありますが、やはりアリスの件が大きかったのだと思います。
だからこそ私は敢えてこの場で、キース様の名を落とします。
「王子としての教育から逃げておきながら、特権は行使する。
そのようなことが、本当に許されるとでも思っていたのですか?」
私は、バカ王子を突き放すように口にしました。
あなたは、私を婚約者として扱ったことなど一度もありません。
最初の頃は、国のためならばそれでも良いと思っていました。
ですが、途中から馬鹿らしく感じていました。
だって、そうでしょう?
あなたは、何もしなかったのだから。
国のためになるのなら、それでもまだ許すことはできました。
ですが、そうではなかった。
国のことなど何も考えていないのですから。
なぜ、婚約者とも思っていない相手のために、敵を減らさなければいけないのでしょうか?
なぜ、私がこんなバカのために動かなければいけないのでしょうか。
このバカを見ていると時々思うのです。
ノブレス・オブリージュとは、一体なんなのか、と。
「少なくとも、私はあなたを許しません。
アリスを、私の大切な者を傷付けたあなたを、許すつもりはありません。
フィーリン商会を敵に回したこと、せいぜい後悔してください」
最後に、私は笑顔を見せ、キース様の前から立ち去った。
これで本当にお別れです。
きっと、これから二人を待つのは地獄でしょう。
フィーリン商会は太いパイプを持っています。
そのフィーリン商会の敵となったお二人を客に取る商会は無いでしょうから。
あの二人はもう、貴族としても、商人としても終わったのです。
特別選民思想の高いお二人にとって、これ以上の屈辱は無いでしょう?
もちろん、他にも色々とやらせていただきますが。
まさか、この程度で終わるだなんて、思っていませんよね?
憎んではいませんが、フィーリン商会に所属する者に手を出したバカの末路として、十分利用させていただきます。
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