王族なんてお断りです!!

紗砂

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本編

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もうすぐ夜会が始まるということで、ルアンやカイン様、アルと共に馬車へと乗り込みました。
馬車の中で挨拶をする必要のある人物を確認し、アルとファーストダンスを踊る約束を交わし私たちは会場入りしました。


「エリス、手を」


アルが優しく微笑んで、手を差し出してきました。
私はそれに応えるように微笑んで、アルの手に、自分の手を重ねます。

今宵の私のドレスは、深めの青に宝石が星のように散りばめたドレスで、金のラインが入ったそのドレスは気品を感じさせるようです。
正直、私としては衣装負けしてしまいそうで衣装の変更を求めたかったのですが……。


「エリス、ありきたりな言葉にはなるが……綺麗だ。よく似合っている。星空から舞い降りた女神のようだ」


などとアルに言われてしまい、衣装の変更を求めにくくなってしまい今に至ります。
……言い過ぎだとは思いますが、嬉しくも思います。
どこかのバカは、そんなことを一度も口にしてはくださいませんでしたから。


「さて、ここからは気を引き締めて行くぞ」


アルの言葉にそれぞれが返答を返すと、会場内へと入っていきます。
会場内は王宮なだけあり煌びやかで、最高品質のものばかりが並んでいます。
招待されている貴族も最低でも伯爵家、他国の王族もいるとなれば、自然と緊張感も高まります。


「エリス嬢、先日のお話は考えていただけましたかな?」


会場入り早々に話しかけてきたのはやはり、と言うべきかルースベル公爵でした。
その口元はうっすらと上がっており、まるで私が断るなどとは全く考えていないように思えます。


「えぇ、ですがその前に、当事者同士で話がしたいのですが……。
そして、まだ公表はしていませんが紹介させてください。
私の婚約者です」

「エリスの婚約者となる、アルス・エリンスフィールだ。
よろしく頼む」

「公爵位を頂いております、ターナイト・ルースベルと申します。
以後お見知り置きを」

「あぁ」


ルースベル公爵が頭を下げたことにより、周囲の目が向きますが、私の隣にいるのがエリンスフィールの王子だと分かったのか皆、視線を逸らしました。
若干の目は向いていますが、それは諦めましょう。
こうなるということはもとより分かっていたことですし。


「エリス、大丈夫か?」

「問題ありません。
アルこそ、大丈夫ですか?」


注目を集めていることについての問なのでしょう。
私はフィーリン商会の会頭として表舞台に立ってきましたからこのくらいならば問題ありません。


「おぉ、エリス嬢! 先日の件、考えていただけたか!」


夜会で大声を上げ、私に近付いてくるような方は一人しかいません。
その口に出した内容が、誰であるかを示しています。


「エンドルース公爵、丁度今その話をしていたところです。
その前に……こちらは、エリンスフィールの王子の……」

「アルス・エリンスフィールだ。
まだ未公表ではあるがエリスの婚約者だ」


今更ではありますが、こうして婚約者、と言われると恥ずかしい気もします。
今まで、あのバカから婚約者と言われてもなんとも思わなかったというのに不思議です。

やはり、人が問題なのでしょうか?
アルとバカとでは天と地程の差がありますし……そのせいでしょうね。


「エリス嬢とか! それはそれは!」

「エンドルース公爵、少々声を……」

「む? すまんすまん、いつもの癖でついな」


ルースベル公爵がエンドルース公爵を諌めますが、あまり変わりませんでした。
……やはり、エンドルース公爵には話すべきではなかったでし観世だって

「……話通りの人物だな」


隣にいたアルが呟きましたが、私はそれに苦笑をもらすしかありませんでした。


「こちらだけ随分と賑やかですね。よければ、私も混ぜていただけませんか?」


私たちの間に入ってきたのはルベルコートの王子でした。
この夜会で一番注意すべき人物です。


「もちろんです、殿下」

「エリス嬢、だったかな? よく私が王子だとわかったね」

「……殿下のお召し物は一見、エールのもののように見えますが、この国にはない技術の使われたものとお見受けします。
そして、そのようなものとなれば考えられるのは商国と名高いルベルコートのみ。
今宵の夜会の招待客に、ルベルコートご出身の方は殿下とその護衛の方々しかおりませんから予測だけならば私にも可能ですから」


殿下の纏う服は、深い藍色に銀のラインが入ったものです。
一見普通のもののようにも見えますが、その実、生地は一級品、銀は特別なものを使用しています。
そのような衣装を作ることのできる者は、この国にはいないでしょう。
ならば、可能性として高いのはルベルコートです。
そしてもう一つ、この国の貴族であれば顔と名前は全て頭の中に入っています。
他国から出席しているのはルベルコートとエリンスフィールの二国のみ。
エリンスフィールからはルアン、カイン様、アルの三人しか来ていません。
となれば残るはルベルコートの王族のみ。

そして、護衛ともあろう者が主よりも豪華な服を着るとは思えません。
なので、この方がルベルコートの王子だと気付くことが出来ました。


「さすがはあのフィーリン商会の会頭、と言うべきかな?
初見で気付かれるとは思ってなかったよ。
……ねぇ、この国にいるよりも絶対に、ルベルコートの方が発展させられる。
君が望むのなら貴族としての地位も用意するし、フィーリン商会にかけられる関税だって引くこともできる。
一等地の土地だって、建物だって、フィーリン商会が望むのならば差し出そう。
だから、フィーリン商会と共にルベルコートにおいでよ、エリス・フォーリア公爵令嬢」


その誘いは思ってもいませんでした。
まさか、それほどまでに評価されているとも思っていませんでしたし、それほどまでルベルコートという国が、商国と名高き国が私と商会を求めてくれるとは。
ですが、既に答えは決まっています。
確かに、ルベルコートの方が、商会を発展させられるでしょう。


「お断りさせていただきます。私はフォーリア公爵家の人間ですから」


暗に、エールから動くつもりはない、と口にします。
明確に口にしなかったのは、私がこの国を離れる可能性を考えてのことです。
王の座を他の方に押し付けられるのであれば、私はこの国から離れるつもりですから。


「へぇ……。まさか断るとは思わなかったよ。でも、君のせいで予定が狂った。
アレを見てこの国との取引は打ち切るつもりだったのに……。
君がこの国に根を張り続けるというなら、そうもいかなくなった。
私としては、君が我が国に来てくれると踏んでいたんだけどね」

「それは良かったです。
国としても、私個人としてもルベルコートとの取引が失われるのはかなりの痛手となってしまいますから」


ギリギリのところで首の皮一枚繋がったことに安堵しつつ、私は笑みを浮かべました。


「こちらとしてもフィーリン商会との取引が失われるのは痛手だからね。
一つ、聞いてもいいかい?
なぜこの国を見捨てない?
婚約者には冤罪を仕立てあげられ婚約破棄を申し立てられた挙句、国外追放と言い放たれる。
この話だけでも国を見捨てるだろう、普通は」

「この国に住む者にとって、フィーリン商会は身近な商会となりました。
主にスイーツや美容品などの販売を行っていますが、カフェやレストランなども運営しておりますし、雑貨や衣料品など幅広く手掛けています。
そんな我が商会がこの国から撤退してしまえば、困るのはこの国に住む民たちです。
そうとわかっていて、見捨てられるはずがありません。
……私は、商会の長である以前にエール王国の貴族です。
貴族である以上、私には民の生活を守り、保証する義務があるのですから」
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