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本編
アルス
しおりを挟む「……エリスが可愛すぎて辛い」
「……そのエリスは社交界では、可愛くない女、としても有名だったのですが」
あんな花の咲くような笑みを浮かべるエリスが、可愛くないだと?
「誰だ、そんなことを言った奴は。
私がその腐り切った目を潰してやる」
「殿下ぁぁぁ!?
マジで行く気ですか!?
その剣、置いて行ってください!」
チッ……仕方ないな。
ルアンがいない時に行くとするか。
「そもそも、エリスが笑わないからそんなことを言われ始めたんです。
エリスにしても、あのバカの隣で退屈だったのは分かりますが……少しは笑うべきだったんです」
「別に、エリスは笑ってなくても可愛いだろう」
「あぁ、はいそうですね」
全く……ルアンはエリスの従弟のくせに、何も分かっていないのか。
何故エリスの可愛さが分からないのか。
いや、それよりも存在だけで苦痛を与えるあの王子をどうにかしなければならないか……。
「殿下、俺もやる時は一緒に行く」
「カイン、それはいいが……ルアンを抑える役が必要だな……」
「……そんな本人がいる前で堂々と話さないで欲しいのですが」
そう言えば、追い出すのを忘れていたな。
「気にするな」
「気にしないでいられるならそれがいいんですけど」
一々五月蝿い奴だ。
そうでなければ側近候補にねじ込まなかったのだが。
イエスマンは要らないからな。
私に必要なのは、必要な時に止めてくれる者だ。
その役割を二人が成してくれると信じたからこそ、こうして私は二人を側近候補へとねじ込み、学友にしたのだが。
「なら、気にしなければいいだろう。
偶にはルアンも共に行くか?
中々に爽快だが」
「丁重にお断りします。
爽快って言いますけど、殿下とカインがやったことは僕が全て握りつぶさないといけないんですからね!」
「全く……そういうことで権力を使うのはどうかと思うが……」
「誰がやらせてると思ってるんですか!
そう思うのなら大人しくしてください」
全く……それがわかっているから強く言えないんだがな。
少なくとも、私は悪いとは思っていないからな。
私の大切な者に手出しをしたのだ。
そういったことがあると、覚悟をしているだろうしな。
「断る」
「でしょうね」
「だろーな」
……カインまでルアンの味方か。
どうやら、私に味方はいないらしい。
「アル、いますか?」
ノックの音と共に天使の声が聞こえた。
「あ、あぁ。
入ってくれ」
「失礼します。
突然、申し訳ありません」
「いや、いい。
エリスならばいつでも来てくれ」
婚約者となるのだしな。
問題はないはずだ。
それにしても……今日のドレスは薄紫か。
エリスの可愛らしさが良い具合に引き立っている。
……今度、薄紫のドレスと共に髪飾りを贈るか。
「どうかしたのか?」
「よろしければ、ケーキを焼いたので一緒にお茶を、と思ったのですが……」
ケーキを焼いた、ということはエリスがか?
それに、エリスがお茶へ誘ってきたのだ。
行かないわけがないだろうに。
「行こう。
ルアンとカインはどうする?」
「そうですね……エリス、ケーキって自分で作った新作とか?」
「そうですが」
「なら、行く」
「俺も」
「では、庭でお待ちしています」
エリスは可愛らしく微笑むと、先に行ってしまった。
それにしても、新作のケーキか。
しかもエリスの手作りとは。
考えるだけで頬が緩んでくる。
「多分、タルト系のものだと思いますよ?
この時期ですし、木苺のタルトではないでしょうか?」
「木苺か……」
そんな話をしながら、私はルアンとカインと共に庭先へと向かった。
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