28 / 70
本編
22
しおりを挟む
夜会の数日後、私は期間限定で出す予定の木苺のタルトを作り、アルとルアン、カイン様をお茶へと誘いました。
お母様はお茶会へ、お父様は王宮へ仕事へ行ったので現在は家にいません。
なので、二人の分は取っておき、あとは……と思ったのです。
「エリス」
「アル、お茶とケーキ、用意しますね」
「あぁ」
アル達を席に着かせると、私は厨房へと向かい、ケーキとお茶の準備をして庭へと向かいます。
「お待たせいたしました。
木苺のタルトです。
私が作ったものなので味の保証は出来ませんが……」
王子に出す物としては駄目だったかもしれません。
レシピを渡して作ってもらうべきだったかもしれませんね。
などと思っていると、アルがタルトを一口、口にしました。
「……ん、美味い。
私は、店のものよりエリスの作ったものの方が好きだな」
「エリスの作ったほうが美味しいんだよね」
「へぇー。
そうなのか」
それはそうと、前々から気になっていたのですが、最初の夜会の時とカイン様の話し方というか、印象がかなり変わられた気がするのですが……。
その件について尋ねると、カイン様から意外な言葉がかえってきました。
「いや、騎士団にラハトって奴がいるんだけど、そいつの真似してみた」
「……理由をお聞きしても?」
「その方が、殿下に集まる女が減るって聞いたから?」
かなり酷い返答ではありましたが、納得もしました。
確かに、カイン様の容姿は良い部類だと思いますし、あの時の女慣れしていそうな様子であればカイン様のもとへ人が集まるでしょう。
ですが、だとするのなら何故その後はやめたのか、ですが。
「だって、あれ疲れるし。
殿下の婚約者も決まったならいいか、って思って?」
最後が疑問形なのが気になりますが……良いとしましょう。
それはそうと、アルに渡すリングを早々に頼まなければならないのでした。
アルをイメージしつつ、あのリングのイメージとも合わせる、というのはなかなかに大変ですね。
時間ができたときにルベルコートへ行き、職人でも探してみましょうか。
「エリス、その明後日の出発に間に合いそうか?」
「大丈夫です。
準備はできています」
もともとそのつもりだったので、ちゃんと準備はしてあります。
少々邪魔が入ったりもしましたが、問題はありません。
ただ、心配なのは今回の旅にアリスがついてくる、ということでしょうか。
アリスの傷はまだ完全に癒えたというわけではありませんから、傷口が再び開いたりでもすれば、どうなるかというのは分かりきっています。
それでもついてくる、と言うアリスが心配ではありますが、本店の移動の件の責任者はアリスですから、ついてくる権利はあります。
それに、多分私が駄目と言ったのなら、アリスは自分一人でエリンスフィールまで来るでしょう。
ならば、まだ共に向かったほうがマシというものです。
「明日は確か、お土産を探す予定でしたか?」
「あぁ、そのつもりだ。
済まないが、エリス、案内を頼めるか?」
「私でよければお受けさせていただきます」
アルの言葉にうっすらと微笑んで、了承した。
えぇ、公爵方の訪問を断る理由ができた、などとは思っておりませんよ。
婚約者となる方、それも隣国の王子の案内をするのは当然ですから。
などと考えていると、お父様が庭先まで走ってきました。
「エ、エリス、済まない!
その、だな……。
明日の晩餐なんだが、うちに三公と陛下たちが集まることになった……」
「なっ……なぜ、そのような事になっているのですか、お父様!」
「いや、それがだな……。
次期国王を決める話し合いになったのだが……」
その言葉だけで王宮でいったい何があったのか分かってしまいました。
どうせ、公爵方から私を王に、という話が出たのでしょう。
お父様はそれに反対しましたが、残念ながらあの方たちは聞かなかったのでしょう。
それどころか、『ならば、エリス嬢に聞いてみよう』、『ちょうど、息子に会いたいといっていたしな』みたいな会話があり、それを聞いていた陛下が……というよりも、王妃殿下が便乗したのではないでしょうか。
フィーリン商会のケーキ目当てに。
「……仕方ありません。
お父様、食後のケーキは私が作ります。
今回のものは新作にするつもりですから、問題は無いでしょうし、非公式の場なので何も言われることは無いと思いますから。
ニール、ハーネス、話は聞いていましたね?
ニールは当日お茶をお願いします。
ハーネスは、ルーファスと手分けして影のものの対処を。
この件は決してアリスの耳には入れないようにお願いします」
「承知いたしました」
「はい」
「了解です」
取りあえず、三人に命を出すと、アル達に挨拶をしてから厨房へと向かい、ケーキの材料を確認します。
キイチゴが少し足りませんが、何とかなるでしょう。
足りない分は他のもので代用しようと思います。
いえ、やはり買いに行きましょう。
市場にならば売っているでしょうから。
「馬車を出すように伝えてください」
「かしこまりました」
厨房を出てから、傍にいた者に告げると、私はカーディガンを羽織り、市場へと向かいます。
護衛には、明日まで予定のないルーファスに頼みました。
正確に言えば、ルーファスがついてきていた、ですが。
「エリス様、お疲れ様です。
直前にニールからお茶を渡されたのですが、どうなさいますか?」
「いただきます」
ルーファスからお茶を受け取ると、私はそのまま口にした。
お母様はお茶会へ、お父様は王宮へ仕事へ行ったので現在は家にいません。
なので、二人の分は取っておき、あとは……と思ったのです。
「エリス」
「アル、お茶とケーキ、用意しますね」
「あぁ」
アル達を席に着かせると、私は厨房へと向かい、ケーキとお茶の準備をして庭へと向かいます。
「お待たせいたしました。
木苺のタルトです。
私が作ったものなので味の保証は出来ませんが……」
王子に出す物としては駄目だったかもしれません。
レシピを渡して作ってもらうべきだったかもしれませんね。
などと思っていると、アルがタルトを一口、口にしました。
「……ん、美味い。
私は、店のものよりエリスの作ったものの方が好きだな」
「エリスの作ったほうが美味しいんだよね」
「へぇー。
そうなのか」
それはそうと、前々から気になっていたのですが、最初の夜会の時とカイン様の話し方というか、印象がかなり変わられた気がするのですが……。
その件について尋ねると、カイン様から意外な言葉がかえってきました。
「いや、騎士団にラハトって奴がいるんだけど、そいつの真似してみた」
「……理由をお聞きしても?」
「その方が、殿下に集まる女が減るって聞いたから?」
かなり酷い返答ではありましたが、納得もしました。
確かに、カイン様の容姿は良い部類だと思いますし、あの時の女慣れしていそうな様子であればカイン様のもとへ人が集まるでしょう。
ですが、だとするのなら何故その後はやめたのか、ですが。
「だって、あれ疲れるし。
殿下の婚約者も決まったならいいか、って思って?」
最後が疑問形なのが気になりますが……良いとしましょう。
それはそうと、アルに渡すリングを早々に頼まなければならないのでした。
アルをイメージしつつ、あのリングのイメージとも合わせる、というのはなかなかに大変ですね。
時間ができたときにルベルコートへ行き、職人でも探してみましょうか。
「エリス、その明後日の出発に間に合いそうか?」
「大丈夫です。
準備はできています」
もともとそのつもりだったので、ちゃんと準備はしてあります。
少々邪魔が入ったりもしましたが、問題はありません。
ただ、心配なのは今回の旅にアリスがついてくる、ということでしょうか。
アリスの傷はまだ完全に癒えたというわけではありませんから、傷口が再び開いたりでもすれば、どうなるかというのは分かりきっています。
それでもついてくる、と言うアリスが心配ではありますが、本店の移動の件の責任者はアリスですから、ついてくる権利はあります。
それに、多分私が駄目と言ったのなら、アリスは自分一人でエリンスフィールまで来るでしょう。
ならば、まだ共に向かったほうがマシというものです。
「明日は確か、お土産を探す予定でしたか?」
「あぁ、そのつもりだ。
済まないが、エリス、案内を頼めるか?」
「私でよければお受けさせていただきます」
アルの言葉にうっすらと微笑んで、了承した。
えぇ、公爵方の訪問を断る理由ができた、などとは思っておりませんよ。
婚約者となる方、それも隣国の王子の案内をするのは当然ですから。
などと考えていると、お父様が庭先まで走ってきました。
「エ、エリス、済まない!
その、だな……。
明日の晩餐なんだが、うちに三公と陛下たちが集まることになった……」
「なっ……なぜ、そのような事になっているのですか、お父様!」
「いや、それがだな……。
次期国王を決める話し合いになったのだが……」
その言葉だけで王宮でいったい何があったのか分かってしまいました。
どうせ、公爵方から私を王に、という話が出たのでしょう。
お父様はそれに反対しましたが、残念ながらあの方たちは聞かなかったのでしょう。
それどころか、『ならば、エリス嬢に聞いてみよう』、『ちょうど、息子に会いたいといっていたしな』みたいな会話があり、それを聞いていた陛下が……というよりも、王妃殿下が便乗したのではないでしょうか。
フィーリン商会のケーキ目当てに。
「……仕方ありません。
お父様、食後のケーキは私が作ります。
今回のものは新作にするつもりですから、問題は無いでしょうし、非公式の場なので何も言われることは無いと思いますから。
ニール、ハーネス、話は聞いていましたね?
ニールは当日お茶をお願いします。
ハーネスは、ルーファスと手分けして影のものの対処を。
この件は決してアリスの耳には入れないようにお願いします」
「承知いたしました」
「はい」
「了解です」
取りあえず、三人に命を出すと、アル達に挨拶をしてから厨房へと向かい、ケーキの材料を確認します。
キイチゴが少し足りませんが、何とかなるでしょう。
足りない分は他のもので代用しようと思います。
いえ、やはり買いに行きましょう。
市場にならば売っているでしょうから。
「馬車を出すように伝えてください」
「かしこまりました」
厨房を出てから、傍にいた者に告げると、私はカーディガンを羽織り、市場へと向かいます。
護衛には、明日まで予定のないルーファスに頼みました。
正確に言えば、ルーファスがついてきていた、ですが。
「エリス様、お疲れ様です。
直前にニールからお茶を渡されたのですが、どうなさいますか?」
「いただきます」
ルーファスからお茶を受け取ると、私はそのまま口にした。
0
あなたにおすすめの小説
怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~
美袋和仁
恋愛
ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。
しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。
怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。
なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる