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本編
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しおりを挟む夜会が始まり、陛下の挨拶が終わった頃、本来アルがエスコートするはずだった王女殿下が挨拶に来ました。
波打つような銀の髪に、穏やかな翠の瞳。
少し小柄にも感じますが、その身に纏う雰囲気は正しく『王女』でした。
「お久しぶりです、アルス様」
「リフィア、久しぶりだな。
今回はエスコートしてあげられず、済まなかったな」
「いえ、構いません。
それより、そちらの方は?」
リフィア殿下はアルの隣にいた私を見つめました。
その視線に、私は頭を下げるとアルの紹介を経て挨拶をします。
「エリス・フォーリア嬢だ。
フィーリン商会の会頭、といった方がわかりやすいか?」
「フィーリン商会の会頭を務めております、エリス・フォーリアと申します」
「まぁ、あのフィーリン商会の!
私、フィーリン商会のオレンジのタルトが好きなんです!
ですが、ルヴェール王国にはフィーリン商会がありませんでしょう?」
「ありがとうございます。
許可さえ頂けるのであれば、支店を出させていただきたいと思っています。
その際はよろしくお願い致します、リフィア殿下」
どうやら杞憂だったようです。
リフィア殿下がアルに向ける視線は家族に向けるものと同じような気がしました。
ですが、リフィア殿下までフィーリン商会を気に入っていたとは思いませんでした。
この様子であれば出店許可もいただけそうですね。
近いうちに申請を出しておきましょう。
その前に調べさせなければいけないでしょうが。
「お待ちしております、エリス様」
「その時は私も共に行こう」
「ありがとうございます、アル」
花のような笑みを浮かべるリフィア殿下に私も思わずつられて笑みを浮かべました。
ですが、別にアルはついて来なくともいいのですが。
アリスかハーネスと共に行くつもりでしたから。
「アルス様、本日は、その、ルアン様はいらっしゃらないのですか?」
微かに頬を赤らめて聞くその姿は正しく恋する乙女、という風でした。
いえ、まさか有り得ないと思うのですが、リフィア殿下はルアンのことを?
アルのことは考えすぎだったようですが、まさかルアンを好きなどとは思ってもいませんでした。
「ルアンはエールで公爵家を継ぐために勉強をしている」
「え?
エール王国で、ですか?」
「あぁ。
ルアンはフォーリア公爵家を継ぐことが決まっているからな。
仕方ないだろう」
「そんな。
で、では婚約者などは」
「それは、エリスの方がよく知っているだろう」
私が仕向けたことですが、リフィア殿下には申し訳なく思いますね。
私としては公爵家を継ぎたくは無かったので有難いのですが。
「決まったという話は聞いておりません。
ですが、その、リフィア殿下はルアンのことを?」
「は、はい。
お慕いしております」
恥ずかしそうに口にしたリフィア殿下はとても可愛らしかったです。
アルの妹のような存在というのであれば、私も協力しましょう。
今回の夜会で出席出来なくしたのは私ですから謝罪の意味も込めて、となりますが。
「リフィア殿下にそのつもりがあるのならば、私も協力致します」
「よろしいのですか?」
「勿論です。
ですが、婚約者を作らずにいられるのも2年が限度でしょう。
それでも構いませんか?」
「はい!
お願い致します、エリス様」
「承知致しました」
こうして、私はリフィア殿下のために、ルアンの婚約者探しの妨害をすることにしました。
ルアンには申し訳ありませんが、リフィア殿下のためです。
許してくれるでしょう。
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