王族なんてお断りです!!

紗砂

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本編

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フォーリア家へと向かう途中、何かあるかもしれないと身構えていたものの、何事もなく到着しました。


「あの、ほ、本当に私なんかが大丈夫なのでしょうか?」


ミリスさんはまだ気にしているようで、屋敷の前で気後れしていました。
そういう性分なのでしょうが、そこに居られると困ります。
どうしたものでしょうか。


「あらあら、可愛らしいお客様ねぇ。
いらっしゃいませ、歓迎するわ」

「えっ?」

「お久しぶりですぅ」

「お母様……何故、そちらからいらっしゃるのか、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「それは、秘密よ」


お母様はうふふ、と微笑み私達を中へと入れました。
ですが、やはり気になります。
何故、馬車を利用せず、歩いて帰って来たのでしょうか?
それも、メイド服を着用して。


「え、えっ?
お、お母様ということは……公爵夫人!?
そ、そんな方が何故メイド服を……?」

「それはねぇ、あの人の好み、かしら?」


お父様が原因だったようです。
まぁ、それだけではないように思えますが。


「それと、この方が一人で出歩くのには安全でしょう?」


それは誘拐やらの危険を考えているのでしょうが、それならばまず、一人で出歩くのをやめていただきたいのですが。
私もお母様のことを言えないのでしょうが。
……幼い頃は私も頻繁に屋敷を抜け出していましたから。
そう言えば、抜け道を教えてくださったのは、お母様付きのメイドだった気がします。
まさか、お母様が?


「あ、そうそう。
オランジェット、良かったわぁ。
華やかだし、今度お茶会を開く時はあれを用意させようかしら?」


オランジェットは、オレンジのシロップ漬けをチョコでコーティングした簡単なものです。
見た目重視でありながらも安化で簡単に作れるため、商会側としても大変重宝していますし、平民でも買える値段設定なのでかなり売れています。
ただ、オランジェットを売り始めたのは最近です。
いつの間にお母様はフィーリン商会に来ていたのでしょうか。


「次からは、護衛を付けて来てください。
もしくは、事前に言っていただければこちらから護衛をつけますので」

「あらあら、仕方ないわねぇ」

「仕方なくありません!」


お母様といると、ペースが乱されますね。
それに、笑顔でサラッと怖いことを口にする時もありますし。
この公爵家で一番怖いのはやはり、お母様だと思うのです。


「あぁ、そうだったわ。
エリス、来月あたりに私の実家に行くことになったのだけど、予定は大丈夫かしら?
お父様とお母様が、孫の顔が見たいって煩くてねぇ」


来月は確か、何も無かったような気がします。
お祖母様とお爺様、ですか。
そういえば、お母様の実家については知らない気がします。


「分かりました。
予定は空けておきます。
ですが、どちらの領地でしょうか?」

「フラングベルスよ」

「……すいません、お母様。
もう一度お願いします」

「フラングベルスよ」


最早、国内ですらありませんでした。
しかも、フラングベルス帝国は実力主義国家です。
実力主義国家だからこそ、貴族もそうであれ、ということで弱い貴族は平民に落とされ、平民でも強ければ爵位が貰える、という本当に実力こそ全てという国なのです。
そのため、かなりの軍事力を持つ大国となっています。


「お母様、私は戦えないのですが?」

「あら、教えたはずよ?
レイピア、使えるでしょう?」

「確かに習った覚えはあります。
ですが、あれはあくまでも護身術程度だったと記憶しているのですが?」

「あらぁ……あれが護身術だなんて。
それじゃあ、過剰防衛になるわねぇ」


なんということでしょう。
知らない間に帝国流の育て方をされていたようです。
おかしいですね。
私が聞いた時は『護身術程度なのだから、過信はしないようにね』と言われたのですが。
まさか、その護身術程度というのは、帝国で、という意味なのでしょうか?


「エリス様のお母様は、フラングベルスではどれ程の強さだったのですか?」


ミリスさんは大分落ち着いてきたようで、お母様に質問を投げかけました。


「そうねぇ……。
普通、かしら?」

「普通、ですか?」

「えぇ、あくまでも普通だったわねぇ」


お母様が懐かしむように目を細めました。
ですが、何故でしょう。
お母様の『普通』は普通ではないように感じます。


「あれが普通なはずないだろうに」

「お父様?」

「あらぁ、普通だったわよ?」

「求婚してきたものを片っ端から斬り捨てていくのが普通なのか?」

「もう、若かったのだから普通でしょう?」


お母様とお父様の会話を聞いていてやはり、と思います。
お母様の仰っていることのどこが普通なのですかっ!
それはかなり強い部類なのではないでしょうか?


「あら、あの人達が弱すぎるだけよ」

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