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第1章 物語の始まりは突然に

死んで最初の相手は神でした〈☆〉

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『ピチャ…。』

卑猥な音を立てながら、合わされた唇が離れていく。
最初は合わせる程度だった口づけは、次第に深くなり終いには濡れた音と共に『ツゥー』っと銀の糸が紡がれるほど互いの熱く熟れた唇を貪りあった。

(ヤバい。これが背徳感とか言うやつなのかもしれない。)

流石に神様に対してこの気持ちを持つのは如何なものかと思っている自分がいる。確かに、性に対して正直で据え膳で生きてきた伊吹だったがこの展開には躊躇してしまっていた。

クスクスと声が聞こえ、アストを見るとこぼれた透明のしずくを手で拭いながらニヤリと笑みを浮かべていた。

「僕はお前が好きだと素直に伝えたぞ。お前もどうしたいか思ったことを言えばいい。」

アストは更に淫靡な香りを漂わせ、腰を浮かして目の高さを合わせると『ベロリ』と耳を舐めてきた。

(え?は?なんかすごくなかったか?!っていうかチョー気持ちいい。マジでこの神様、上手過ぎなんですけど?!)

アストの突然の行動に色々ついていけない伊吹だったが、

次の瞬間、ふと膝にやわわかな感触がしたかと思うと、今まで濃厚な口づけを交わしてきた美しき男神が伊吹に横向きになって膝の上に座っていた。
そして、首に手を回すと顔を近づけ色気を含んだ声でしっとりと囁く。

「眼鏡をはずしてくれないか?」

伊吹の心臓はバクバクと激しく鼓動を打ち付けている。
先ほどまで暗く深刻な話をしていたはずなのに、急になんだこれは?!で状態で、全く体が動かない。

(くそ~流石に神だけにきれいな顔しやがって。しかも、物凄くエロイ空気を醸し出してるし!)

「伊吹、聞こえなかったか?お前ともっと淫らな口づけを交わしたいのだ。だから、この邪魔な眼鏡をお前の手ではずしてはくれまいか?」

伊吹が理性と戦っているというのに、この男神はそんなこともお構いなしにじれったいばかりに自身の衝動に赴くまま、ぴったりと体を摺り寄せ吐息交じりの声で更に言葉を投げかけてくる。

(だから、エロイっ!エロ過ぎですって!!
なんか、口調もさっきとは全然違ってるし。どうすればいいんだよ?!アホ女神答えろ!)

もしここに、あの女神がいたらなんと答えるだろうか
「えー、ワタシはただいま、猛省中のためお答えすることができません。ピーっという発信音の後にご用件をお入れください。ゲフン、ゲフンー。」

…馬鹿らしい。目の前に美味しいディナーがあるっていうのに我慢するやつがどこにいる。
ガシガシと頭をかくと次の瞬間、伊吹の目つきは変わった。

「ふん!このまま、主導権を渡すとなるとなんか納得いかないし?そっちがその気ならもう気にせず神様アンタの誘いに乗ってやるよ。」

スイッチを切り替えたとたん、クリアになった頭でこの綺麗な顔をどうやったら歪ませてやれるか。そればっかり考える。しかし、感情とは裏腹にその手は、どこまでも優しくアストの顔から綺麗な首筋を通り背中へとなぞっていく。

アストはゾクゾクした。先ほどまで子供のように泣きついていた男が、雄に変わるその瞬間を見たのだ。体の奥が熱くならないわけがない。期待するように自然と受け入れる準備をしだし尻の谷間くちゅりと濡れ、奥がうずくのを感じていた。

(なるほど。
僕は今回、捕食方はなく、方になりたいということか。)

獣の目をした伊吹が、それとは逆に繊細な動きで眼鏡を壊さないように慎重にはずした。視線を外すことなく、お互いを見つめたまま、伊吹はその眼鏡を邪魔だとばかりにアストの後ろのほうに投げ捨てた。飛んで行った眼鏡は地面に落ちる直前でパッと消えてなくなってしまった。おそらくアストの仕業だろうが今はそんな事は気にしていられない。

アストの顔をグッと引き寄せると、お互いの高ぶった熱をぶつけ合うように再び熱い口づけを交わしていった。

舌と舌を絡ませながら、幾度も唾液を交換し合い。隅々まで味わおうとまた舌を伸ばす。
アストが逃げれば伊吹が追い、伊吹が吸えばアストはそれを甘噛みする。
口づけだけでイケそうになる。相性がいいのかそれほど気持ちがいい。

唇がふやけそののまま溶けて無くなってしまっているんじゃないかというほど交わしていく。

「ふふ、先ほどの呆けて口が開いている顔もなかなか可愛いかったが。やはりお前は今の顔のほうがいい。僕の好みだ。まるで獣のように食べられてしまいそうで、神なのに考えるだけで、飛んでしまいそうだよ。伊吹。もっと私を味わうといい。」

そういうとアストの赤い果実が、伊吹を誘うように自身の唇をひとなめした。

ゾクゾクするーーー。
アストの声はまるで麻薬だ、一度その声を聴いてしまうと否応なく従ってしまう。
そして、そのまま言われるがまま快楽に沈められるのだろう。

(これ、はまったらやばいだろうな。)

頭の隅ではわかっているが、伊吹を見つめるアストの表情はまるで愛する人を見るかのようなそれで、かけられる言葉は呪文だ。
つい数十分前まで、恥ずかしさで熱くなっていた体は、別の熱によってすっかり塗り替えられていた。
そして、言うまでも無く体の中心のソレは今か今かと出してほしそうにガチガチに勃起していた。
アストを見ると同じようになっているのが分かって更に興奮する。

(この男神のアレはどれだけもんだ。きっと綺麗なんだろうよ。しゃぶりつくしてしごいた時どんな顔をしていくのかじっくりと見てみたい。)

しかし、そんなことを思いながらもふと気になったことがあった。思い切って口にしてみる。

「なぁ、アスト様」

「なんだ?言ってみろ。あぁ、それから名前は呼び捨てで構わない。」

「あぁ。そうなの。そんじゃあ、遠慮なく『アスト』って呼ばせて貰うことにする。
んで、ここまでお互い息子ガチガチにしといて確認ってアレなんだがこれって、このままスルのが正解か?」

伊吹は変に回りくどい言い方をせずに直球で聞いたみた。
一瞬何を言われたかわからない風でキョトンとしていたアストだったが、ややあって理解したのか成程『ポンっ』とと手を打った。

(なにそれ、可愛いんですけど。あれって無自覚なのか計算なのかわかんねぇ。)

「そうだな。このままシテもよいが、お前とせっかく初めて情交じょうこうを結ぶのにムードとやらがないのも面白くないな。」

そして、紅茶のセットを出した時と同じように『パチン』と指を鳴らすとアストの足元のすぐ横に方陣が浮かびあがりそこから扉がきた。

全体が生え終わると『ガチャ』っとドアノブが回りゆっくりと扉が開かれる。
扉越しの向こう側は強い光を放っていてどうなっているのか全く分からない。
あちら側にいったい何が待っているのか一抹の不安を感じるが、開いたとたんアストはこちらに声をかけることなくさっさと扉をくぐってしまった。
戸惑う隙も無く、しょうがないので伊吹も後を追うということにした。

(お約束の扉を抜けるとそこは雪国だった。とかじゃないよな。流石に…)

恐る恐る光の壁に手を突っ込ん腕をぐるぐるしてみるが、とりあえず何も起こらない。次は手をグーパーしてみる。何も起こらない…っと思ったら急に手を握られそのまま引っ張られてしまった。
どうやら、いつ迄経っても入ってこない伊吹にしびれを切らしたアストが、引っ張り込んようだ。
ややつんのめりながらも、何事もなく向こう側とやらに渡れたらしい。
体も特に異常はない。少し安心して、顔を上げると目の前には少し拗ねた様子のアストの姿。そして、その背中越しに見える景色に思わず息を吞む…いや、黙り込んでしまった。

そう、そこはとても広々とした綺麗な…

部屋ラブホでした。

「…なんでラブホだよ。」

伊吹にとってはある意味見慣れた風景で安心する所かもしれないが、ちょっとどこかで期待していた分がっかり感も否めない。

「お前の住んでいた世界のものだろう?ここで愛する者と契りを交わすと認識していたが?」

神の作る空間なのだから、特別な場所にでも連れてこられると思っていたのに、連れてこられたのはお馴染みの部屋ラブホ。神様のくせにどんだけだよと文句の一つでも言いたくなったが、アストのどや顔付きのセリフに伊吹は笑ってしまった。
その、ちょっとズレた感覚になんだよ可愛いじゃん。と思ったのは内緒だ。

「ぷっ、まぁいいや。でも、さっきの眼鏡の時とか、こんなトコ創っちゃうとか見てやっとアストが本物の神様だって実感した気がするよ。」

「そうだぞ。そして、今からその神に突っ込もうとしているのは誰なのだろうな。フフフ。」

「だな。考えただけでもスゲー興奮してさっきからアソコが痛いってーの。てか本気でイカすから。後で泣いて止めてください。って言っても止めてやらないからな。覚悟しとけよ。」

アストの細い腰を抱きよせると
それが合図とばかりに三度目の熱い口づけが始まった。

(あぁ。唇がきもちいい。キスでこれって事は神様なんかに入れたら俺ってばどうなっちゃうんだろうな。)
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