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第3話 父の帰還。
しおりを挟む「た、ただいま」
その言葉を耳にした途端、母は床に崩れ落ち泣き出した。その姿はいつもの綺麗な母ではなく、まるで幼い子供の様に泣き叫んでいた。
「すまなかった、一年も家を空けてしまって」
「ローグ……お前も大きくなったな……」
ガイアは申し訳なさそうな顔で、オレと母さんの事を見ている。
「ガイア、お帰り……」
「お腹が空いたでしょ?」
母さんは泣きながら、食事の支度をし始めた。
料理を作っている後ろ姿を見れば誰でもわかる。泣いてはいるがとても嬉しそうだ。
テーブルにはいつもより豪華な料理が並び、久々に父との食事をすることになった。
だが食事中、誰もコニーの事を話そうとはしない、コニーは今何してるのか?元気なのか?母さんは気にしていると思うが、ガイアはあえて口にすることはなかった。
この一年ガイアは、王都の掟違反の罪で牢屋に入れられていたらしい。
ガイアは牢屋での生活を笑いながら話してくれた。たぶんオレたちに気を遣っているんだろう。
「そういえばローグ、お前ちゃんと鍛えてるか?強くならないと女は守れないぞ!」
母さんを泣かせといてお前が言うなよ!と言いたいところだったが、そこはグッと堪え。
「全然鍛えてないよ。」
「お! じゃあお父さんがお前に剣を教えてやろう!こう見えてこの村じゃ一番の剣豪なんだからな!」
その日を境に父ガイアと、剣術の稽古が始まった。
実際、ガイアと剣を交わせて分かった事なんだが、この男、稽古となると目の色が変わる。
「どうしたローグ、もうバテてるのか?」
「こんなんじゃ、モンスターにすぐやられちまうぞ!」
元々ニートだったオレに剣術の稽古をさせるなんて鬼畜すぎるだろ!てかお前、子供相手に大人気ない稽古するなよ!
「ハァ、ハァ……」
「父さん、少し、、休ませてくれない?」
「なんだローグ、もう降参か?」
「ガイア、あまりローグをいじめないでちょうだい。」
剣術の稽古をキッカケに、寂しかった家庭に笑顔が生まれ始めた。
稽古が始まって数日が経った頃、今日は両親の様子が少しおかしい。
「お、おはようローグ、今日は友達と遊びに行くのか!? な、何時に帰ってくるんだ!?」
「そうね、心配だから、何時に帰ってくるかだけ教えてちょうだいローグ。」
おいおい、この両親、隠し事が下手すぎやしないか?
今日ってなにか特別な日だったっけ、、、?
あっ!! 今日オレ、四歳の誕生日だ!!
ここ最近、漁や稽古で忙しくて、全然気づかなかったよ。
はは~ん、さてはサプライズパーティーでも予定するつもりだったんだな。よし!ここはあえて気づかないフリでもしてやろう。
両親がどんなサプライズをするか気になるし、なにより、オレのためにここまでしてくれる気持ちが嬉しい。
「母さん、今日はクリエと川に遊びに行くんだ! 18時くらいには帰ってくるよ。」
「あ、そうなの、クリエちゃんと仲良くするのよ。」
「じゃあ行ってくるね~」
さてさて、どんなサプライズになるか楽しみだな。
「ローグ、遅いよ!! 何時間待たせる気なの!!」
「ごめんごめんクリエ、寝坊しちゃったよ。」
「もうっ!! ローグはいつも寝坊してばかり、そんなんじゃ女の子にモテないんだからね!」
この子の名前はクリエ・バレンタイン、金髪ロングで青い目が特徴の女の子だ、歳はオレの五つ上、コニーと同じ歳ということもあり、二人はとても仲が良く、コニーが王都に連れて行かれるまでは、よく三人で遊んでいた。
オレたちが村のみんなから嫌がらせを受けてるときも、クリエだけは変わらず接してくれていた。
コニーがいなくなった後、オレが腐らなかったのは、クリエがいろいろと気にかけてくれて、オレの元気を取り戻そうとしてくれたのが大きかった。
九歳の女の子に励まされるおっさんって、なんか悲しくなってきたよ。
「ローグ、来年で五歳だよね? 神様からどんな職業もらえるか楽しみだね。」
「そっか、、あと一年で職業がもらえるのか。」
「私は今ね、ハイヒールが使えるように特訓中なんだ、ハイヒールが使えるようになれば、王都にある騎士団の入団試験に挑戦するつもりなの。」
「あ、この事は誰にも言ってないから、私とローグだけの秘密ね。」
おっと危ない、そんな純粋な目で、二人だけの秘密。なんて言われると普通の男だったら惚れてしまうぞ。
まぁ、何作もの乙女ゲーをクリアしてきたオレだったから良かったものの、そういう事は好きな人にしか言っちゃダメだぞクリエちゃん。
「そういえば、クリエの職業って僧侶だったよね? 僧侶ってなにができるの?」
「そうだよ!僧侶だよっ!」
「‥う~ん。そうだなぁ、基本的には回復のスキルが使えるって感じかな。」
「あと毒や石化なんかも治せるらしいんだけど、今の私にはそういうのは無理かなっ!」
やはり思った通りだ、僧侶は回復系、コニーの賢者は攻撃系。前世のRPGゲームにそっくりだ。
確か僧侶が、星★★★で、賢者が、星★★★★★
う~ん。できればオレも星三以上の職業が欲しいなぁ。
もしかしてオレって、転生者だから星五の職業もあり得るんじゃないか?アニメだと主人公無双なんてこともあるし、いや~成人の儀が楽しみだなぁ。
「あ、でも、ちゃんと身体作りしないとダメだよ!」
「剣士になったはいいものの、筋力がなくて剣が上手く振れない。ってこともあるんだから、どんな職業になってもいいように、事前に体力トレーニングは必須だからね」
「お姉さんからのアドバイスだよっ!」
ま、またしてもやりやがったなクリエ、お前は天然なのか?天然あざと系女子なのか?
クリエの隠された能力、あざと系女子を知ったオレは、彼女の今後を心配しつつ帰宅することにした。
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