残酷過ぎる異世界転生。

日比谷カサゴ

文字の大きさ
3 / 4

第3話 父の帰還。

しおりを挟む



 「た、ただいま」
 
 その言葉を耳にした途端、母は床に崩れ落ち泣き出した。その姿はいつもの綺麗な母ではなく、まるで幼い子供の様に泣き叫んでいた。

 「すまなかった、一年も家を空けてしまって」

 「ローグ……お前も大きくなったな……」

 ガイアは申し訳なさそうな顔で、オレと母さんの事を見ている。

 「ガイア、お帰り……」
 「お腹が空いたでしょ?」

 母さんは泣きながら、食事の支度をし始めた。

 料理を作っている後ろ姿を見れば誰でもわかる。泣いてはいるがとても嬉しそうだ。

 テーブルにはいつもより豪華な料理が並び、久々に父との食事をすることになった。

 だが食事中、誰もコニーの事を話そうとはしない、コニーは今何してるのか?元気なのか?母さんは気にしていると思うが、ガイアはあえて口にすることはなかった。

 この一年ガイアは、王都の掟違反の罪で牢屋に入れられていたらしい。

 ガイアは牢屋での生活を笑いながら話してくれた。たぶんオレたちに気を遣っているんだろう。

 「そういえばローグ、お前ちゃんと鍛えてるか?強くならないと女は守れないぞ!」

 母さんを泣かせといてお前が言うなよ!と言いたいところだったが、そこはグッと堪え。

 「全然鍛えてないよ。」

 「お! じゃあお父さんがお前に剣を教えてやろう!こう見えてこの村じゃ一番の剣豪なんだからな!」

 その日を境に父ガイアと、剣術の稽古が始まった。

 実際、ガイアと剣を交わせて分かった事なんだが、この男、稽古となると目の色が変わる。

 「どうしたローグ、もうバテてるのか?」
 「こんなんじゃ、モンスターにすぐやられちまうぞ!」

 元々ニートだったオレに剣術の稽古をさせるなんて鬼畜すぎるだろ!てかお前、子供相手に大人気ない稽古するなよ!

 「ハァ、ハァ……」
 「父さん、少し、、休ませてくれない?」
 「なんだローグ、もう降参か?」
 「ガイア、あまりローグをいじめないでちょうだい。」

 剣術の稽古をキッカケに、寂しかった家庭に笑顔が生まれ始めた。


 稽古が始まって数日が経った頃、今日は両親の様子が少しおかしい。

 「お、おはようローグ、今日は友達と遊びに行くのか!? な、何時に帰ってくるんだ!?」

 「そうね、心配だから、何時に帰ってくるかだけ教えてちょうだいローグ。」
 
 おいおい、この両親、隠し事が下手すぎやしないか?

 今日ってなにか特別な日だったっけ、、、?

 あっ!! 今日オレ、四歳の誕生日だ!!

 ここ最近、漁や稽古で忙しくて、全然気づかなかったよ。

 はは~ん、さてはサプライズパーティーでも予定するつもりだったんだな。よし!ここはあえて気づかないフリでもしてやろう。

 両親がどんなサプライズをするか気になるし、なにより、オレのためにここまでしてくれる気持ちが嬉しい。

 「母さん、今日はクリエと川に遊びに行くんだ! 18時くらいには帰ってくるよ。」

 「あ、そうなの、クリエちゃんと仲良くするのよ。」

 「じゃあ行ってくるね~」

 さてさて、どんなサプライズになるか楽しみだな。

 「ローグ、遅いよ!! 何時間待たせる気なの!!」

 「ごめんごめんクリエ、寝坊しちゃったよ。」

 「もうっ!! ローグはいつも寝坊してばかり、そんなんじゃ女の子にモテないんだからね!」

 この子の名前はクリエ・バレンタイン、金髪ロングで青い目が特徴の女の子だ、歳はオレの五つ上、コニーと同じ歳ということもあり、二人はとても仲が良く、コニーが王都に連れて行かれるまでは、よく三人で遊んでいた。

 オレたちが村のみんなから嫌がらせを受けてるときも、クリエだけは変わらず接してくれていた。

 コニーがいなくなった後、オレが腐らなかったのは、クリエがいろいろと気にかけてくれて、オレの元気を取り戻そうとしてくれたのが大きかった。

 九歳の女の子に励まされるおっさんって、なんか悲しくなってきたよ。

 「ローグ、来年で五歳だよね? 神様からどんな職業もらえるか楽しみだね。」

 「そっか、、あと一年で職業がもらえるのか。」

 「私は今ね、ハイヒールが使えるように特訓中なんだ、ハイヒールが使えるようになれば、王都にある騎士団の入団試験に挑戦するつもりなの。」
 
 「あ、この事は誰にも言ってないから、私とローグだけの秘密ね。」

 おっと危ない、そんな純粋な目で、二人だけの秘密。なんて言われると普通の男だったら惚れてしまうぞ。

 まぁ、何作もの乙女ゲーをクリアしてきたオレだったから良かったものの、そういう事は好きな人にしか言っちゃダメだぞクリエちゃん。

 「そういえば、クリエの職業って僧侶だったよね? 僧侶ってなにができるの?」

 「そうだよ!僧侶だよっ!」

 「‥う~ん。そうだなぁ、基本的には回復のスキルが使えるって感じかな。」

 「あと毒や石化なんかも治せるらしいんだけど、今の私にはそういうのは無理かなっ!」

 やはり思った通りだ、僧侶は回復系、コニーの賢者は攻撃系。前世のRPGゲームにそっくりだ。

 確か僧侶が、星★★★で、賢者が、星★★★★★

 う~ん。できればオレも星三以上の職業が欲しいなぁ。

 もしかしてオレって、転生者だから星五の職業もあり得るんじゃないか?アニメだと主人公無双なんてこともあるし、いや~成人の儀が楽しみだなぁ。

 「あ、でも、ちゃんと身体作りしないとダメだよ!」

 「剣士になったはいいものの、筋力がなくて剣が上手く振れない。ってこともあるんだから、どんな職業になってもいいように、事前に体力トレーニングは必須だからね」
 
 「お姉さんからのアドバイスだよっ!」
 
 ま、またしてもやりやがったなクリエ、お前は天然なのか?天然あざと系女子なのか?

 クリエの隠された能力、あざと系女子を知ったオレは、彼女の今後を心配しつつ帰宅することにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件

やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

処理中です...