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歩・二十三「捕」
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暗くなった街角に、人影がひっそりと混ざりこんでいた。
俺たち三人――俺、カサレア、エノク――は、街の食堂での食事を終えて、無言のまま席を立った。
「……出よう」
エノクの声に頷き、俺たちは外に出た。
今夜は静かだった。いや、静かすぎた。
それが妙に神経に触った。
ギルドで報酬を受け取ってからずっと、俺は“誰か”の視線を感じていた。
食堂の中でもそれは消えず、席を立つ瞬間、その視線が一際強くなったのを感じた。
街灯の光がまばらな裏路地に入り、俺たちは自然な流れを装って分かれた。
エノクは西の宿へ、カサレアはいつもの小さな宿屋へ向かう。
俺はそのまま、影の中に身を潜め、視線の動きに注意を向けた。
いた。
黒いフードを被った人影が、カサレアの後を尾けている。
距離を保ち、街のざわめきに紛れながら、足音を極限まで殺していた。
(こいつか……)
俺はすぐにエノクと目を合わせた。
彼もすでに気づいていたようで、わずかに頷くと、俺たちはそっとその人物の後を追った。
カサレアは、尾行されていることに気づいていない。
その無防備な背中に、フードの人物はじわじわと距離を詰めていく。
やがて、その右手が黒衣の下からナイフを取り出すのが見えた。
その瞬間、俺たちは動いた。
「今だ!」
俺が叫びながら飛びかかり、エノクが後ろから抱きつくようにその人物を地面に引き倒した。
ナイフがカチンと音を立てて、石畳に落ちる。
相手は女だった。
痩せた身体、鋭い目つき、口元に浮かぶのは苛立ちと軽蔑の混ざったような冷笑。
「チッ、間抜けどもが……」
吐き捨てるような声が荒々しく響く。
「誰だよ、何者だお前は」
「……答える義理はねぇよ。クソが」
女は唾を吐くように言った。
俺たちは彼女を拘束したまま、廃屋の一つに連れていった。
とりあえず、すぐに衛兵には渡さず、状況を確認する必要がある。
この女が俺たちを監視していた尾行者であり、カサレアを狙ったのも事実だ。
だが、気になるのは彼女の技量。
ナイフの扱いも、足音の消し方も、完全に訓練された者のそれだった。
ただの盗賊じゃない。どこかの組織に属している……それも、おそらく――闇ギルド。
「カサレア、お前……今夜狙われていた」
「……え?」
廃屋の隅で、小さく震えていたカサレアが顔を上げた。
「お前のことを見張っていたんだ、ずっとな。今日のクエストの最中からな」
「……そんな……」
俺の言葉に、彼女は顔を青ざめさせた。
震える手を、自分の胸のあたりでぎゅっと握りしめた。
「でも……助けてくれたんだよね。ありがとう、アラン……エノクも……」
その声には、少し涙が混じっていた。
俺は深く息をついた。
(いったい、どこまで狙われている……?)
この女――名も明かさぬまま、俺たちを睨み続けているこの女。
俺たち三人――俺、カサレア、エノク――は、街の食堂での食事を終えて、無言のまま席を立った。
「……出よう」
エノクの声に頷き、俺たちは外に出た。
今夜は静かだった。いや、静かすぎた。
それが妙に神経に触った。
ギルドで報酬を受け取ってからずっと、俺は“誰か”の視線を感じていた。
食堂の中でもそれは消えず、席を立つ瞬間、その視線が一際強くなったのを感じた。
街灯の光がまばらな裏路地に入り、俺たちは自然な流れを装って分かれた。
エノクは西の宿へ、カサレアはいつもの小さな宿屋へ向かう。
俺はそのまま、影の中に身を潜め、視線の動きに注意を向けた。
いた。
黒いフードを被った人影が、カサレアの後を尾けている。
距離を保ち、街のざわめきに紛れながら、足音を極限まで殺していた。
(こいつか……)
俺はすぐにエノクと目を合わせた。
彼もすでに気づいていたようで、わずかに頷くと、俺たちはそっとその人物の後を追った。
カサレアは、尾行されていることに気づいていない。
その無防備な背中に、フードの人物はじわじわと距離を詰めていく。
やがて、その右手が黒衣の下からナイフを取り出すのが見えた。
その瞬間、俺たちは動いた。
「今だ!」
俺が叫びながら飛びかかり、エノクが後ろから抱きつくようにその人物を地面に引き倒した。
ナイフがカチンと音を立てて、石畳に落ちる。
相手は女だった。
痩せた身体、鋭い目つき、口元に浮かぶのは苛立ちと軽蔑の混ざったような冷笑。
「チッ、間抜けどもが……」
吐き捨てるような声が荒々しく響く。
「誰だよ、何者だお前は」
「……答える義理はねぇよ。クソが」
女は唾を吐くように言った。
俺たちは彼女を拘束したまま、廃屋の一つに連れていった。
とりあえず、すぐに衛兵には渡さず、状況を確認する必要がある。
この女が俺たちを監視していた尾行者であり、カサレアを狙ったのも事実だ。
だが、気になるのは彼女の技量。
ナイフの扱いも、足音の消し方も、完全に訓練された者のそれだった。
ただの盗賊じゃない。どこかの組織に属している……それも、おそらく――闇ギルド。
「カサレア、お前……今夜狙われていた」
「……え?」
廃屋の隅で、小さく震えていたカサレアが顔を上げた。
「お前のことを見張っていたんだ、ずっとな。今日のクエストの最中からな」
「……そんな……」
俺の言葉に、彼女は顔を青ざめさせた。
震える手を、自分の胸のあたりでぎゅっと握りしめた。
「でも……助けてくれたんだよね。ありがとう、アラン……エノクも……」
その声には、少し涙が混じっていた。
俺は深く息をついた。
(いったい、どこまで狙われている……?)
この女――名も明かさぬまま、俺たちを睨み続けているこの女。
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