戦乱の世は終結せり〜天下人の弟は楽隠居希望!?〜

くろこん

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駿河編

しょうゆとてんぷら?作ったよ?

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全てが燃えていた。

 家が、懐かしのゲー〇×が。

 物が動いている、まるで出来損ないのゲームのように物が移動して、視界の隅にあったものが瞬時に消え、現れを繰り返している。

 朧げで、そこがどこかすらもわからないが。

  今、確かにここは燃えていた。

 ここにいるのは3人の男と1人の女性だ。

 いずれもおっさんやおばさんの年齢であり30代前半から後半という印象がある。私自身の顔はわからないが、きっと目の前にいる3人のように憔悴した顔をしているのだろう。

 酷い顔だ、あまり鮮明には見えないが、きっとそうな気がした。

 私が思っても無いことを口に出す。

 それは視界として確実に現れているのに、それはまるで映画のようだ。

 「こっちだ!」

「急げ急げ!」

「だぁっちょ、押すなって!」

 「ちょっと、太った?」

 「今言うなバカ野郎がぁ!ハンゾー、前どうだ?前!」

 4人の男女がもみくちゃに押し合い、長い廊下を走っている。

 その中の誰もが、余裕を持っていなかった。

「あぁもう!お前が△◯*♪!!」

「後で謝る!今は足を動かしてくれ!」

「ここを曲がれば出口...なっ!?」

 目の前にあった道が、火によって塞がれている。

 これでは前に進めない。

 「燃えてる、これじゃあ...」

「クソ、他にもあるだろ非常階段が!そこを探すぞ!」

 走る

 走る

 走る

 これは夢だ、そう確信しているにも関わらず口を開くことができない。悪夢であるから、目覚めようとすれば目覚められるしそれは恐らくできるだろう。

 だがいつも、私はこの夢を最後まで見ていた。

 何故だろう。

 こんな時に、いや私はこれを事実で無いと知っている余裕か、私はぼんやりとそんなことを考える。

 体は疲労し、息はたえだえな筈なのにそう思うのは、私がこれを夢だと知っていたからだろう。

 何故なのか?わからないな。

 走る、走る、走る。

 出口?

 いやこれは、真っ白な何かだ。

 いつもの経験から、私はこの夢が終わるのだと朧げに確信する。

 嫌だ、あと少しだけ、その少しを見せてくれ!

 そう、意識が覚醒しないように冷静にそう心の中で叫ぶ。

 だが、夢というものはそんな甘いものじゃあ無い。

  最後の数十秒、走った後の景色が見られず、私は目を覚ました。




「はぁっ!!!!!!!!!」

 飛び起きるように、私は目覚める。

 隣には目がぼやけて良く見てないが、女性がいるようだな。誰だ?

 寝汗が滝のように流れており、思わず手でそれを拭う。

「拭うものを、どうぞ」

「あぁ、ありがとう」

 隣で寝ていた女性が手拭いを渡してくれたので、そのまま体の汗を拭いた。

「また、いつもの夢ですか」

「あぁ、うん。すまないな、気を使わせてしまって」

「いえいえ、との...いえ。ご隠居様のお役に立てて光栄です!」

 火事の夢、走る夢。

 最近はあまり見ていなかったのだが、久しぶりに見たなこの夢。

 朧げになって来た夢の中で、これだけは未だに鮮明なままだ。

  火事、私たちがこの世界に来る原因になった事件。

 その記憶がフラッシュバックされて夢になっているのだろう。

 まぁいい、その話は一度置いておこう。

「藤吉郎」

「はい♡」

「お前、なんで私の部屋で寝ているんだ?」

「輝宗様のお布団を温めておりましたら、輝宗様から布団に入って来たんですよ~つまりこれは輝宗様も同意の上での一夜!」

「げ!旅の疲れで全然気がつかなかった...」

 その手があったか。

 いや、どちらにせよダメなのだが、木下藤吉郎。

 つまり史実では豊臣秀吉だった者が今目の前にいる。

 だが、いるのは美しい現代美女の女だ。

 背は低いけど、顔は女優としても通用しそうな程の美女。

  なんでこれが信長に猿とか言われて馬鹿にされてたんだ?

  まぁいいか、そんなん知るか。

 「お藤、もう朝か?」

 「はい、そろそろ起こそうと思っていたところです」

 「そうか、朝食にしようか」

「はい...人を呼んできます」

 とてとてと、歩き出していく藤吉郎。

 いや、アイツが呼びに行くのはまずい!!!!!!!!



◇◇◇◇
 
 
間に合いませんでした。

「なんと!こんな美しい方と一緒だったとは、ご隠居様もスミにおけませんなぁ!」

「綺麗な人だなぁ...」

「おっおい?幸村、大丈夫かぁ?」

 幸村の顔が真っ赤になっている、オイオイ、大丈夫かこれ。

「紹介が遅れたな、私に仕えてくれている乱破の木下藤吉郎だ。おとう、この2人が私の供だ」

「お初に、藤吉郎とお呼び下さい。元は織田に仕えておりましたが、ご縁あり輝宗様に拾って頂きました。輝宗様の妾希望です、よろしくお願いします」

  「「ぶーーーーーーーーーっ!!!!」」

 最後の一文字て私と幸村が味噌汁をぶちまける。

 爆弾発言をするな、貴様ぁ!

 「妾ですか、確かにご隠居様の奥方様はお亡くなりになっておられましたな」

「拙は元々百姓の出なので、輝宗様には相応しく無いかと。妾で十分でございます」

  うん、まず許可して無いからね?

  豊臣秀吉が元は木下藤吉郎という名前なのはちょっと歴史を学んだ者なら誰でも知っている常識だ。

 木下藤吉郎から、羽柴秀吉となり、朝廷から豊臣の姓を貰って豊臣秀吉になる。

 そんなコイツだが、史実でも女だったらたーい変だぞこれ。

 まぁこういうことがあるから、私は史実とこの世界は別だと確信できるのだがな。

 「年寄りのそんな話、聞いててつまらんだろう。ほれ、とっとと刺身を食え」

「私としては実に興味深いのですが、仕方ない...おや、これは刺身ですか?」

「あぁ、醤油で食べてくれ」

 話を変えよう、今日は駿河領を見て回るので朝飯なのだがちょっと豪華にして貰った。

 この時代、普通は1日2食が普通らしいが、それだと腹が減ってしまう私は1日3食にして貰っている。

 無理は言えないが、習慣は抜けないな。

 さて、話は変わって醤油のワードが出てきたが、この時代に醤油は無い。

 しかしどうしても魚が食いたかった私が何をしたかと言うと醤油の作成だ。大豆や塩を使って作る醤油は、たまたま私が醤油の作り方を知っていたのもあり、試行錯誤してなんちゃってなものを作ることができた。

「うん!美味い!これもご隠居様が作った者なのですよね?」

「あぁ、そうなのだ。美味いか?」

「はい!」

 幸村が子供らしい笑顔で答える。

 まともな孫というのはこういう感じなのだろうなぁ...

 龍臣丸?あれは悪ガキだからなぁ...

 昨日の夜も、疲れていると言うのにずっと遊ばされた。

 追いかけっこをしたり、蹴られたり踏まれたりで、老骨には堪えるよ。

 まぁ、それも可愛いところではあるのだがね。

 さて、次はてんぷらだ。

 寿司、てんぷらと豪華な朝食だなぁ...

「ご隠居様の好物ばかりを作れと言っておきましたから♡」

 心を読むな心を。

「塩も種類が多いですな」

 慶次が驚いたようにそう言う、そうだろう。天ぷらには良い塩が無いとな。

「右から抹茶塩、カレー塩、柚塩、普通の塩だ」

「ご隠居様、かれぇと言うものは何ですか?」

 幸村が聞いてくる、あぁ、カレーは珍しいよな。

 この中で1番作るのが難しかったのがカレー塩だ、南蛮人と交渉したりして大変だったんだから。スパイスの丁度良い混ぜ方とか色々試行錯誤してさぁ、楽しかったなぁ。

 「天竺インドにあると言われる料理だ、この塩はそれを模したものだな。かけてみろ、美味いぞ」

「はい!」

 そう言うと、幸村は躊躇無くカレー塩を天ぷらにかけ、口に放り込む。

 「かっ辛い!お茶を...あっ熱う!!」

 「くくく、ちび助は大げさだな。若い若い」

「何を言うておる慶次、私から見ればここにいる者全員が若いぞ」

「これは、失礼しました」

 慶次がポン、とおでこに手をのせて戯けると皆が笑い始める。

 いや、結構切実なのよ?

 慶次、お藤は20代、幸村は10代だ。

 旅では私だけ馬に乗っているのに体中の節々が痛むが、幸村と慶次は歩いているのにぴんぴんしている。

 忍びとして活躍してきたお藤もきっとそうだろう。

 気が重いよ、全く。


 ◇◇◇◇


 木がある。

 一本の木だ、野原、木。

 そんなあまりにありふれた場所のてっぺんに、ありふれていない様相の男が立っていた。

 全身に着せられた黒々しい服装は、まさしくTHE・忍者と言ったものであり、機能的なデザインだ。

 その素顔は隠れて見えないが、背中には大きな十文字槍を背負っている。

 しかさこんな昼間にこんな姿で木の上にいても、道を通る者は誰一人木の上に立つその男の存在に気づかない。

 服部半蔵。又の名を鬼半蔵。

 彼の体は霞の如く自由自在に動き、それでいて鬼のように強い。背丈こそ小さいものの、体は岩を彷彿とさせる程鍛え抜かれていた。

「半蔵様」

 木の間から、同じような服を着た忍びが現れる。

「輝宗が今川館に入られました」

「そうか、ご苦労。これから雪も降る、冬の間奴らは動かんな」

「は、とすれば我らは...」

「3日後だ、3日後襲撃する」

「初日なら今川の兵も緊張する、2日目なら未だ、ならば3日目...と言うわけですか。」

「うむ、今まで緊張していたのが一気にほつれる。それを狙う、何名程出せる?」

「精鋭を、300程。既に30名ほどずつで分け配置しております」

「いいだろう、3日後だ。伝達せよ」

 下忍の気配が消え、半蔵は再度前を向く。

 16で初陣をたてた。

 殿より盃と持槍を拝領した。

 一向一揆があった際には、自分も一向宗ではあったが殿に忠誠を誓った。

 殿は、悔しがっていた。

 「こんな筈では無かった」
 「どこで間違えたのだ」

 毎晩、殿の警護をする際、そのようなすすり泣く声が聞こえてくる。

 もう十分だ、殿は耐えた。

 天下の今川家の家臣、殿はそれではいかんのだ。

 殿は、殿は羽ばたかなくてはならん!

 虚空の空に、1人の忍びが決意する。

 その瞳は燃え盛り、今川館を覆い尽くしていた。
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