戦乱の世は終結せり〜天下人の弟は楽隠居希望!?〜

くろこん

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奥州編

俺の側に近寄るなぁーーーー!!

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小姓とはそもそも、どの様な仕事なのか?

 わかりやすく表すと、秘書という言葉が一番ピッタリなのでは無いだろうか。 武将の身辺に仕え、主に若年者が着く仕事とされており身の回りの世話などを受け持っていた。戦においてはその最も近くで戦を学び取る者であり、最後には主君の盾とならねばならない職だ。

 秘書とSPが合わさったものと認識して貰って構わない。

 そんな彼が、弱い筈も無かった。

 そう、彼は時として強いことが求められるのだからーーーー

ここに揃えられている人数は何故か少ない、そこをつけば十分殺すチャンスはある。

「またこの2人にまたやって貰うのもなぁ、本当この2人桃ちゃんに仕えてなけりゃうちに召抱えたいぐらい優秀だよな。」

 ちらりと、輝宗が後ろの慶次とお藤を見るような素振りを見せる。

 もし2人が揺らいでいれば本気で誘う気だったのだろう、事実奥州は人材不足だ。だが2人の身体には些かの揺らぎも見られない、諦めて輝宗は前を向いた。

「ま、最後は奥州ウチのモンに任せておいてよ。と言うことで行け、小次郎。」

「はっ」

「は?」

 2人の若者が出したのは、同じ音ながら全く違う音程の声。

 彼が出したのが驚愕のはで、了承の意を示したのは小十郎だ。

 片倉小十郎。別名、と言うか本名は片倉景綱。

 笛を得意とする美少年と言うのが特徴だ。

 だが、彼は小十郎が刀を得意としたと言う話はついぞ聞いた事はない。

 だがこれは戦だ、彼は逃げるという選択肢を捨てて1人の武士として勝負に出ていた。

 故に油断は、無い。

 始まりの合図を出すものはいない、烈気と共に彼は刀を振り下ろす。

   数十キロの鉄の塊を、小十郎は刀を数センチずらしただけでその勢いを

「なっ!?貴様」

 そんなに使えたのか、そんな驚愕の言葉を投げようとするも返す刃で首を刎ねられそうになり仰け反る。

「殿の命故に。」

 小さくそう呟いた小十郎は今ので決められなかったことに対して少し顔を顰めた。

 小十郎は未だ幸村と同じ、つまりは14程度の若造である。

 梵天丸の従者になったのすらつい最近の小十郎は、小姓の中でも筆頭格であり歳も19歳の彼に肉体面のみ劣っていた。

 中学生と大学生が喧嘩するようなものである、不良漫画ならともかく現実ではかなり厳しい展開だ。

 小十郎は天才だった、ちなみにこれは輝宗ハンゾーも驚いたことだ。

  片倉景綱に刀の才があったと言う説は確かにあるが、大抵は後世の脚本家が書いた歴史的背景の無い嘘だというものがほとんどだったからだ。

  だが、現実に小十郎には才があった。

 故に、敢えて輝宗は、小十郎にその腕をひけらかすことを禁ずる。修練も1人でやらせることにした。

 いずれ来る未来伊達政宗の為にーーーー

「伊達、輝宗ぇぇぇぇぇ!!」」

 彼は叫ぶ、劣勢で息を吸うのも苦しいこの状況で。

「貴様は、貴様に殺された者たちの姿を思い浮かべたことはあるか!」

 今は今川が天下に覇を唱え、それにより多くの大名同士の戦は停止している。だが遠方の奥州のような地では小競り合いが絶えないのもまた事実ではあった。

 彼も、そんな小競り合いの犠牲者の1人である。

 輝宗は、そんな彼の叫びに淡々と答えた。

「無い、とは言えないな。戦によって流れた血は足元を満たし、僕の足取りをより重くさせる。」

「感じているのか、それが恨みだ!俺に殺された後も、永遠に地獄で苦しみ続けるがいいさ。」

「だが、僕はまだ前に進む。この奥州の大部分を...手に入れる。」

 「ば、馬鹿な!お前はまだこの奥州で戦をするつもりか!?」

「そうだよ、何故この国で戦が起きると思う?」

「自らの欲、悪心の為であろう!」

 彼は吐き捨てるように言い放つ。

 小十郎は攻めあぐねているようだ、話は続く。

「違うな、大部分の大名が戦をする理由はとても単純シンプルさ、皮肉なことに我々人類史が争う最も原始的な理由は弥生時代から一歩も前に進んじゃあいない。」

「我が父が伊達と戦ったのは食うためだったと!?」

「あぁ、まず領主の政策が悪くて領内が荒れる。荒れれば流民や夜逃げが多発し年貢の徴収が滞る...悪循環だな。最後に待ってるのが向こうの領民を襲って飯を手に入れろの精神だ。言ってみりゃ盗賊と同じ原理だね。」

「父が悪いと言うのか!」

「現実を見ろと言ってるんだ、お前の親父も必死だったろうよ。この東北の地は言ってみりゃあ最悪の土地だよ、寒いから農作物も育ち難いし使者の行き帰もままならない。」

 だが、伊達輝宗はそんな地で奥州を喰おうとしていた。それは何より、この地に住む民たちの為なのだからーーーー

「だからこそ、僕はこの奥州を獲る。」

「奥州を、獲るだと!?」

「当然だ、この奥州は弱すぎる。自然の守りにうつつを抜かして自らの鍛錬を怠った我らは知略でも力でもいずれ上方かみかたの者等に負けてしまうだろう。」

 故に伊達輝宗と言う男は作る、強い奥州という未来をーーーー

「グゥ、アァァァァァァ!!!!」

 彼は憤りからか、打つ手を変えた。一気に踏み込んで小十郎を斬りに行く、だがそれは小十郎も読んでいた。

 わずかな刀の揺らぎ、それで先ほどと同じように刀をいなそうとする。

 見誤っていたのは、その覚悟。

「ーーーー!?」

「そこを、退け!」

 恐らくは、彼の人生の中で最高の一撃だったろう。そんな一撃が小十郎の刀を真っ二つにし、そのまま小十郎を肩から斬る。

 鮮血が小十郎の身体から派手に出、地面を紅に染めた。

 一輪の花のように美しく、小十郎の身体は地面へと投げ出され、小十郎の身体はそのまま動かなくなった。

「ハアッ...ハァッ...ハァッ...やらせん、もう2度と戦など!」

「ここで僕を殺しても戦は終わらないよ?」

「それでも!お前を殺すことに意味はある。」

「・・・・これから僕は強い奥州を作る、これから起こり得るであろう世界を相手に戦をする時代。その未来を担うのは君たち若者だ、その力を次代の為に使ってはくれないだろうか?」

 小十郎を斬られても、なお輝宗は笑顔で彼に手を伸ばしていた。

 それはいつもの蛇を連想させるような表情からは程遠い、息子を見るような優しい親の顔でもあった。

 その手を斬るように彼は刀を構える、元々伊達家に未練があるようならば敵と内通などしていない。

 小十郎を斬った感触を思い出しながら再度刀を握り直す、軽い感触だった。これなら残りの2人と輝宗を殺せるかも知れない。

 少しずつ、しかし確実に距離を詰めていく両者。

 そんな中、輝宗ハンゾーがしたことは

「残念だーー」

 そう言っただけであった。

 次の瞬間、彼が目にしたのは戦の際に見せるあの顔だ。戦人の顔だ。

 恐怖が無いと言うわけでは無い。だがアレが、アレこそが殺すべきモノだと確信した彼に、最早止まる術など無かった。

 走り出す、残り10歩。

 少しずつ距離が狭まっていく、冬の凍えるような風が彼の肌を刺していく。

 対するのは、誰だ?

 生首を持った女か?

 それとも、熊のような大男か?

 どちらが来ても関係は無い、どちらも討つ。

 










 残り4歩、刀を伸ばせば届くそこまで彼がまともに進むことは無かった。

 前から、右から、左から。

 180度からの攻撃に反応できるように、最大限の注意を傾けていた彼を殺した攻撃は、なんと後ろからだった。

「な、きぎ様。さっき殺した筈ではーー」

「斬られたフリをしました、趣味なんです、人を後ろから刺すの。」

 腹から映えた刀、これが縦横無尽に暴れて彼の臓器をめちゃくちゃにする。

 「殺す...俺は...奴を!」

 それでも、彼は動いていた。

 片手で持った刀にはまだ力があり、身体はまだ前へと進んでいる。

 執念、それだけが彼を前へと進めさせていた。

 口から血の味がする、だが生き絶えてはいない。

「弱い者には何もできません、それが戦国時代です。」

「弱...ければ、何もできず...ただ虐げられていればいいと...そう言うのか?」

「違います、弱ければ強くなれば良いのです。それが出来なければ死ぬか、弱いままなら弱いなりのことをすれば良いのです。要するに身の丈を考えろという奴ですね。」

 あと、3歩。

 それが、彼と伊達輝宗の間に隔たれた壁だった。



◇◇◇◇



 「ありがとうな桃ちゃん、2人を貸してくれて。助かったよ。」

「何、気にするな。2人とも良くやってくれた。」

「いえ、良い経験になり申した。」

 慶次とお藤が揃って頭を下げる、ふーん、雪かきが良い経験か。

 流石に仕事中毒が酷いと思うな、楽しく無いだろ絶対。

 ハンゾーと慶次とお藤が3人で戻って来たのには驚いた、話を聞いてみると「お藤にも慶次と自分の仕事を手伝って貰った」と言っていたので、お藤も雪かきをさせられたという事か。

 すまん...

 普通にハンゾーからのお菓子食べてる間に忘れてたんだ、貸し1つだ。どっかで優しくしないと...

 ダブル輝宗が食事をとっているここからは、雪の情景が一目で見渡せる素晴らしい部屋だった。

 あまり開けた場所だと狙撃などが心配ではあるものの、見張りもいるので問題は無い。

「それにしても残念だ、幸村も来れれば良かったのに。良い経験になったよ?」

 そんなハンゾーの言葉に、私は確かにと眉を潜める。

 1日中ゴロゴロして風呂入って寝ているだけの私の護衛は確かに退屈であっただろう、だが雪かきよりは辛く無い筈だ。

 だって伊達家にある書物ってそんなに多く無いんだもん、冬が過ぎるまでに読み切るには十分すぎる量しか無い。残念なことではあるが。

「いかんなハンゾー、幸村には少し早い。」

「あぁそうかい、うちは小十郎にやらせたよ?早いうちから知っておくのも悪いことじゃあ無い。どうせいつか知ることになるのだから。」

 何を?

 そう思った言葉を抑え込み、ふーんとだけ返しておく。

 幸村をチラっと見ると羨ましそうに慶次を見ている、えっそんなに雪かきしたいの....?

 「ふむ、ならば次機会があれば幸村にも任せよう。」

 次の瞬間、幸村の目が綺麗に輝いた。

 犬だな、これは。

 まぁ、喜んでくれるなら良いのだが。

 雪かきだぞ....?

「ご隠居様」

「なんだ?」

 少し呆けた顔をしていたのだろうか、お藤が伺うようにこちらを見てきた。

「長尾景虎様より書状を預かっております。」

「ほう!」

 お藤より書状を受け取り、広げて見る。

 長尾景虎、またの名を上杉謙信 (この世界では使われていない)。

 越後を本拠地として軍神やら越後の龍とか呼ばれる戦国史のスーパースターだ。

 慈悲深く、義理堅く、超強い。

 さて、内容は?

 



「ハンゾー」

「なんだい?」

「助けて・・・・」

「なんで!?」
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