戦乱の世は終結せり〜天下人の弟は楽隠居希望!?〜

くろこん

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前章・九州大名決戦編

流石に撤退

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 「閣下、指令より撤退の指示が再度出ました」

 「わーってるよ!流石に萎えたわ、もう追え無いしな!」

 誰もいなくなった戦場跡でカトーは叫ぶ、足元には多くの薩摩兵が転がっていた。

 老いも若きも、皆平等な死を迎える。戦場の習いとは言えカトーにとってこれ程むかっ腹の立つことも無いだろう。

 おまけにこの者らの死因が自らの主人を守ることだと言うのだから驚きだ。

 「あんなのに何の価値があるのかねぇ・・・・」

 カトーは思う、島津義久。

 島津の総大将、を守る為にあの男よりも価値ある者たちが死んだ。

 カトーは息絶えた種子島久時を見る、このような男こそ島津が守らねばならない宝なのでは無いのか?

 あまりにも無駄に過ぎる、をこれだけ無駄に使うなど薩摩の頭はおかしいのでは無いか?

 カトーはそう言った考えに至らざるを得ない。

 「義久を追うのは諦めますか?」

 「今行けば毛利の本隊とぶつかるだろう?それが悪手だとガリレオは言ってるんだ、ならそりゃそうなんだろう?」

 「私と閣下が行けば問題無いのでは?」

 そう、カトーはまさしく一騎当千だ。

 ここで毛利とぶつかっても恐らく勝てるだろう、兵たちも奮起するに違い無い。

 「だが、俺の軍はどうなる?」

 「道理ですな」

 そう、カトーは大丈夫だ。ディエゴも平気だろう。

 だが、そんな2人に追随する兵たちは?彼らは疲労する。

 犠牲は大きくなるだろう、そんな勝利に意味は無い。

「ですが、ここで撤退すれば」

 「あぁ、敵はこれより陣を引くだろう。俺らを引きつける為にな」

  カトー達スペイン軍は、日本地上の制圧を目論んでいる。

 しかしその為には一定の拠点が必要だ、しかし彼らはその拠点を作る作業が難しいと踏んでいる。

 戦国記と言うか世界レベルの話だが、上陸戦というものの難しさはとてつも無く苛烈な話であった。

 と言うのもそれなりの兵力、それなりの知性を持つ敵であれば陣地作成をほぼ確実に邪魔するからだ。

 有名なものだとマゼランなどが挙げられるだろう、マゼランは先住民に対して武力による苛烈な対応をとった。

 結果マゼランと先住民たちは戦うことになるが、なんとこの戦いは先住民が勝利する。

 船の問題、人数差は圧倒的兵装をもってしても覆すことが出来ず。

 マゼランはあえなく戦死することとなる。

 その状況と違う点が2つ、カトー達スペイン軍は十分な糧食、武装を整えていると言う点。

 もう1つは、カトーが最初からこの戦争を侵略戦争と定めている点である。

 カトーは、この国をある意味滅すつもりでいた。

 「この戦は勝った、。」

  カトーは身を翻す、この戦の終焉を知って。

 かつて、史実の関ヶ原においても似たような光景が存在した。

 島津は敵を突っ切り薩摩へと帰還する、そんな中薩摩兵は我が身を顧みず敵に突っ込み時を稼いだ。

 全ては、『島津』を守る為に。

 生きていれば、彼らの子孫が、彼らの想いを遂げてくれると信じて。

 この光景を、千代が見ればどう思うだろう。

 恐らく嘆くだろう、カトーもどちらかと言えば千代のような価値観に近い為に嘆く。

 価値ある者が生き残り、価値無きものが消え去るべき。

 その考えは、ある意味弱肉強食に通ずるものだ。

 カトーや千代は気付かない、

 薩摩の兵が守ったのは、島津という名前だ。

 彼らの名前は、彼らの子が、子が居なくても薩摩の者らか継いでくれている。

 薩摩兵は、それを信じて戦っているのだ。

 そして、そんな簡単な理屈はカトーも当然把握している。

 それでもカトーは、薩摩の腐った習慣を否定する。

 そんなものは知らないと、気付くことそのものを放棄した。

 薩摩の想い?そんなものが何になる。

 人は結局1人だ、自分が死ねばそこで全てが終わる。

 神は居ない、死の先に待っているのは天国では無く無だ。

 そんな簡単なことにも気づかない馬鹿者は死んで当然だ。

 「馬鹿野郎が・・・・」

 「何か言いましたかな?」

 「何でもねぇよ、兵は引いてるのか?」

 「はい、他軍も閣下の全身に合わせて前に出ていましたが撤退を始めています。敵への損害はかなり大きいかと」

  そう言うディエゴの声は不審に満ちている。

 ディエゴは単騎としても優れているが、それ以上に将という側面が強い。

 幹部の中の立ち位置としては

 戦士としての側面が強いのが、無口なあの大男、カトー。

 軍師としての側面が強いのがガリレオ、将としての側面が強いのがディエゴとドレークである。

 ちなみに、カトーの妻とトニオは完全なる別枠とする。

 トニオは宮廷工作などが専門だし、カトーの妻は

 「そうだ、これだけの陣地の撤退、相次ぐ追撃戦。にも関わらず戦場の死体の数が少ないし血の匂いも少ねぇ」

 何かを察したディエゴの脳内を保管するかのようにカトーは言う、ディエゴは驚きの視線をもってカトーを貫いた。

 「さしづめ、敗北の神将と言ったところでしょう。これだけの戦力差がありながら損害をこれだけ少なくできる将を私はガリレオ殿以外に知りませなんだ」

 「恐らくだが、この将は桃ちゃんが配備した人間ヤツの仕業だろう。良いなぁ桃ちゃん、絶妙な配置だぜ!」

 「閣下の幼馴染みと言われる者達ですかな?」

 ディエゴはそう聞き返す、ディエゴも無論桃・・・今川輝宗の情報は入っている。

 恐るべき謀略と不敗の伝説を築いたこの国最強の将、立ち合いを希望したがカトーがそれを唯一止めた男。

 ディエゴは戦慄した、もしや早めに日本に到着し先制攻撃をしかけるというこちらの策自体が気づかれていた可能性。

 それは無いとディエゴは結論づける、何故ならば日本に利益が何一つ存在しないからだ。

 「そうすると、その輝宗という人物はこれだけの策を弄したと?」

 「あぁ、もしかしたらこの案は敵の今の大将では無くそもそもが桃ちゃんの策なのかもな」

 カトーは思う、大桃蓮という人間はこのような策を使う人間だったかと。

 犠牲が出ぬように工夫する男ではあったような気がした、とは言え考えるのは専らハンゾーの仕事で自分と桃はどちらかと言えば身体を動かす担当だった。

 しかし、日本に潜入し調べてみれば、桃ちゃんの伝説の中には謀略や知略に関するものも存在している。

 不思議だ、だがあの男ならやりかねない怖さも確かにあったのだ。

 「まぁどっちでも良いや、会う時が楽しみだぜ!桃ちゃん!」

 カトーは笑いながら去って行く、幾重もの尸を後にして。










 かくして、スペイン軍と九州勢の初戦は多くの犠牲を出した九州勢の敗北という形で終わりを迎えている。

 毛利輝元率いる九州勢は軍を再編、スペイン軍に対して時間稼ぎをする構えに出た。

 対するスペイン軍もガリレオの手により盤石の手を取り確実に九州勢を追い込んでいった。

 だが、到達した。

 本隊が彼らに合流したのだ、上杉が、伊達が、その場に到着して行く。

 しかし、そんな中軍の指揮を取らねばならない今川だけがその場に居なかった。



 

 



 
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