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英雄譚始動

エピローグ 輝赤は目覚めるこの世界で

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『まだグリーン殿は目覚めないのか?』

この館の主人であるアストルフ伯爵は、自分の側にいたカミーユにそう尋ねた

『目覚めませんね...まぁあれだけの数の敵を相手にし、あの高名なる山の神を退けたのです、体に負担がかかってしまうのは当然でしょう、コレット様も近くにいるようですし、自然に目がさめるのを待つのが良いかと』

ほう、コレットが近くにいるのか、そういえば助けてもらって館に来てもらってから、あの旅人とずっと話しをしていたようだしな、案外仲が良いのかもしれない。

コレットはアルノ領3女である。

長女も次女も既に嫁に行っており、コレットもそろそろ嫁の貰い手を探さねばならないと思っていたところだったのだが......

まぁまだ先の話かとアストルフは思考を変えた

それよりもあの武器である。

あの武器は疑いようもなく「神器」の1つ、ギリオンである。アストルフも古い伝承で伝え聞いただけであったが、あの武器には見ただけでそれとわかるほどの迫力が確かにあった。

今、判明している武器は王国と帝国が1つずつ所持しており、戦争の抑止力となっている。

我らが王国では、騎士団長の息子が武器に選ばれ、所持しているようだが......

そのようなことを考えていると、私の前にモードレッドが連れてこられていた。

両手は後ろで縄に縛られているが、本人自体は大した抵抗もせず、神妙にしている。

部下達もほぼ全て抵抗せずに捕虜となっていた。いかに彼への忠誠心が高かったのかを思わせる。

『何か言うことはあるか?弟よ』

アストルフはそう尋ねるが、モードレッドは一言、無い。そう言い残した。

『よし、では処分を言い渡そう、財産及び元々納めていた領は全て没収、代わりにカミーユを補佐する副騎士団長をやってもらおう!以上だ!』

これにはモードレッドも目を丸くした。財産や受領を没収されるのは当たり前だとして、命が助かるとは、おまけに副騎士団長?

裏切り者であると言う汚名を着ながらもこの街を守れと言うのか、確かにこれは厳しい、ある意味死罪よりも厳しい条件かもしれんな

そうモードレッドは思い、たまには甥っ子を連れてこいバカ弟と言いながら笑うアストルフと一緒に笑った。

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やぁみんな!初めましてかな?

僕の名前は松岡輝赤[マツオカーキセキ]

黒塗りの高級車.........じゃなかった、普通の車にはねられちゃって、死にかけてたのが最後の記憶なんだけど......ドコココ?

そして僕寝てるベッドの隣にあるイスで豪快によだれを垂らしながら寝ているこの子は誰?

まぁいいや、また他の人格が書いたメモノートを確認してみよ~っと。

.........へぁ?ここ異世界?とっとりあえず今の状況を整理すると......

・ここは異世界
・領主の娘助けちゃった
・反乱起きた
・巨人倒した
・なんでか武器貰った

.......°(ಗдಗ。)°.

クロとグリーンはさぁ...もう...何やってんだよ本当に。

こりゃ後で記憶を見ておかないと、状況がわからないぞ...

その後、コレットが起きてまた質問ぜめにされた。僕は名前としてはそのままグリーンで通そうと決めた。今更名前が違いますーとか言っても、それはそれで怪しまれるかもしれないし。

その後アストルフとカミーユにも会い、少しの間この屋敷に滞在するよう請われたため、一ヶ月ほど屋敷に滞在することになった。

屋敷でも日々は楽しかったし、この世界で右も左もわからかさなかった僕にとって、ちょうど良い情報集めの場となった。

たまーにカミーユに手合わせをお願いされたが、なんとか回避した、クロの人格の時は受けてコテンパンにしており、そのついでにモードレッドさんとかも参戦してくるらしく、ボコボコにしてるらしいけどね...

騎士団のみんなに迷惑かけてないかだけが心配だよ............

その日、僕宛に王国から手紙が来た。

王都への招待状であった

第1章、英雄譚始動           完

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『1つ聞いてもいいか?モードレッド』

『なんだ?兄上』

『結局誰だったんだ?お前を反乱するようにと唆した奴らは』

『兄上にはお見通しか...ぁぁ確かに俺はあの方に指示をもらって反乱を起こした。部下達を洗脳したり、山の神を召喚してたあの男も、あの方の指示で派遣されていた男だ、まぁ最も俺も部下達も洗脳されていたなんて気づきもしなかったがな、その男とは...第2王子...ライト王子だ』

やはりそうか、とアストルフは思っていた、宮廷の腐敗を拭い、王国を新しく強い国にするには、やはりあの方が王になるしか無いのだと、そう強く決意した。その手にはグリーンへの招待状が握られていた...
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