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王都にて、王子と多重人格者

輝赤のターンが終わりません

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レッドは頭を悩ませていた。

何故また僕なんだ...

膨大なる招待状の束、束、束...

もうムリ...泣泣

イエローなら、こういう書類仕事得意だし、やってくれそうなもんだけど...はぁ...アストルフさんに相談してみるしかないか...膨大な書類の前にすっかり心が折れてしまったレッドは、仕方がないのでアストルフにお願いすることにした。10分ほどでアストルフは部屋を訪ねてくれて、今後のスケジュールを決めてくれた。

『領主なんてものをやってると、こういう仕事は自然と身につくものなのですよ。いつも娘がお世話になっているお礼です、また何かありましたら是非頼ってください。まだ貴方の件について何も決まってはないのですがな』

そう言ってアストルフは笑った。僕もつられて笑ったが、これは結構問題である。

現状この王都には1年ぐらいの滞在で十分(らしい)。現状僕たちの目標は元の世界に帰ることだ。なんか強すぎる力や、能力を手に入れたところで、それは変わることはない。

クロとか完全に帰りたくなさそうだけど...(イエローもどう思ってるかわかんないな。ホワイトはなんでもいいみたいだし、ピンクは...正直どこでも変わらないか)今帰りたいと願っているのは、僕とグリーンだけか。

元の世界は帰るためには、とにかく情報を集めるしかない。そのためには王都図書館で古い文献を漁ったり、この世界にあるらしい『召喚術』と言うのを調べるのがいいかもしれない。前にウルフィアスさんが空間魔法が使えると聞いたので、なら、自分たちを元の場所に戻すことは可能なのか聞いてみたら、(その時は東の国とか適当言っちゃだだけど...)自分が元々行った場所ではないといけなかったりするらしく、行くためにもイメージが必要らしいので、慣れない場所ではあまり使えないらしい、残念。

王都での今のところ判明している情報だと、古より伝わる異世界より人間を召喚する術は、王都にもあるらしい。今度王様に謁見させてもらう時に聞いてみよう。また、隣の帝国では、その方法も判明しているらしく、召喚術の研究が日夜されているらしい。行く方法があるなら帰る方法も確立できるだろう。というグリーンの持論により、現状王都での情報収集が終わり次第帝国に向かいたいのが僕達の本音である。

しかし、僕達は神器を手にしてしまった。これにより王国はわざわざ僕達を国から手放すことはないだろう。とはいえ勝手に逃げ出したりするとアストルフさんに迷惑がかかる。どうしたものかな......

つまり、下手に役職なんてもらって王都から離れられなくなると、それだけ元の世界に帰れる日が遠くなると言うことだ。

これは由々しき問題である。

まぁともかく現状はアストルフさんの指示に従っておこう。

帝国に行く口実作りは、グリーンに任せたよ!

そう思いながら、グリーンはアストルフに指定された場所に向かうのであった。

アストルフさんに言われたのは、この国を守る王国騎士団の決起パーティー(らしい)だ。

パーティーに女性がついてないと...と言うことでコレットに一緒についてきてもらった、というかコレットが勝手についてきたね。うん、当たり前かのように玄関で待機してたし。

カミーユもついてくるらしい、何故か僕から少し離れたがるのは何故だろうか?

会場でついた。騎士団長の屋敷で行うらしい。なんか来ている人たちも随分とガタイのいい...この人たちと比べると僕はモヤシみたいだなぁと自嘲する。

カミーユはさっきからずっと興奮して僕に誰が誰だか説明してくれる。

『彼の旗印は!先代の陛下の頃からこの国の将軍を務めているヘリン様!あそこには、陛下の持つ超大型剣「ガルノバルク」を、陛下への忠誠の証として、鍛治師に任せられず自分で剣を作って献上した鍛治将軍アリー様の旗印!すごいですぞグリーン殿!ここには王国中の猛者達が集まっているようですな!』

前から気になっていたのだが、騎士団にも魔法担当などはいないのか聞いてみたのだが、王国騎士団と魔法局は仲があんまり良くないらしい。魔法を使いながらも剣を使う者はいるらしいのだが...

僕達の馬車も屋敷内に入った、屋敷へと入れてもらい、中へ入る。すごい広い屋敷だ。ひょっとすると一番広い部屋は、王の間に負けないものかもしれない。王国騎士団長の財力がよくわかる。

人がめちゃくちゃにいる波に、僕とコレットとカミーユは放り投げ出された。揉みくちゃにされてはぐれないように、僕はコレットと手を繋いで行く。カミーユ?大丈夫だよアイツは大きいから。

途中で何人かのおっさんに挨拶されたが、正直名前を覚えるので精一杯だ。てかそんなに何人も1日で覚えられる訳ないよ!挨拶も程々に、騎士団長さんに挨拶に向かう。騎士団長さんはすぐに見つかった。まぁ主催者さんだし、そりゃ人集まるよね。

騎士団長はルーカン・ド・バトラーと言う名前である。身長は190センチ後半、カミーユと同じくらいか?あり、周りの騎士達と比べても頭一つ抜けている。逞しい髭を蓄えており、声がでかい偉丈夫だ。

『グリーン殿か!是非是非、今度は演習上にてお手合わせ願いたいものですな、山の神を下して神器を手に入れた男の武勇伝でも、今日はお聞かせ願いたい!!!』

そう言うと酔っているのか顔を真っ赤にして笑った。

『父上、飲み過ぎですよ、飲めないのに無理しちゃって...』

そう言いながらも、騎士団長よりもまた大きな男が来た。

『お、グリーン殿か、コレット嬢、お久しぶりです。アロンだ、覚えているか?』

僕は覚えていると話した、クロのノートで確認済みだ。

『次は演習上でお手合わせ願いな、さらばだ、父を寝かせなければな。』

そう言うとアロンは人混みの中に紛れて聞えていった。

今度クロに聞いてみよう......僕の時は絶対行かないぞ、危ないからね。

少し他の騎士の人と談笑していると、人の波が割れ、一人の男が話かけて来た。

この世界では珍しい黒髪である。背は自分より少し高いくらいだろうか。顔は整っており、優しい目をしているものの、その奥には闘志が眠っている。そのように見えた。

『初めまして、神器使い殿、私がこの国の第一王子、ベリアスだ、話したいことはたくさんあるのだが、今日はこのぐらいにしておこう。今度招待状を出すから、是非来てくれ。』

そう腕を強く掴まれたまま、ベリアス様に言われてしまった。僕はそれも適当にごまかすと、そそくさとパーティーを抜け出し、一息ついた。

イエローの言う通りだよ...もう直ぐ王子達からの接触がありますぞ~頑張れ~とか、準備できないわけないじゃん、心臓ばくばくだよあんなの。

アストルフさんの予定を確認したら、来月に騎士団の演習見学と書いてあった、うわ、これ絶対戦わされる奴じゃん。

絶対来月は自分になりたくないよ。

イエローへの愚痴を色々独り言で言い切った後、レッドは眠りにつくのであった。
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