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9章神と人
戦場は揺れ、王都に向かう
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「ふざけるな、アイテールは今魔王が倒しに向かっている。お前のはずはあるまい。」
「...まずはその殺気をしまってくれないかね?」
どこから出したのか、その男...アイテールはティーカップに紅茶を注いでそう発言した。
事実、この場にいるほとんどのものは抜刀し、戦闘態勢を取っていた。
ーーただ1人、崩れ落ちた老人を除いて
「カイセイ殿!」
ウーフィルが素早くカイセイをキャッチする。既にカイセイは眠りについていた。全身に疲労の跡が残っているが、それ以外に異常はない。
ーー忠義の光ーーあれは生命力を蝕む技...女神に与えられた仮初めの命では、一撃が限界だったということだろう。
「あぁ、彼か。あの技は素晴らしいよね、あの剣技がただの祈りだって?僕の子機を何年か前に撃ち破ったのもあの技だったね。」
ゆっくりと、話をしているアスカモーを視線から外さずにアイテールは呟く。
「ーー彼は素晴らしかった、この世界が素晴らしいものだと我々が認めざるを得ない程度には。ーーさて、鬼人よ、質問だ。何故我々は人々を間引こうとしている?」
「......知らないし、興味もない」
「元々は、人類の更なる成長と発展の為だよ。人間とはね、生存のためならば、あらゆる手段を講じる性質がある。事実、これまで人間が生み出してきた技術の多くには、我々に対抗するための兵器となったものも多い。」
「...技術の進歩のために血が必要だとでも言いたいのか?」
「その通りだとも、人という種は何かと争いをするときに知恵を巡らすものだ。」
「...もっと良い方法はないのか?」
「ないな、長期的に考えればこれが一番効率的だという結論に達した...と言いたいところだが我らの総意というわけでもない。それに真っ向から反対してる奴もいた。君たちもよく知っている人物だ」
「......女神か」
「正解だ」
アイテールは再度、持っていた紅茶を口に運ぶ。その顔は正解した教え子を褒め称えるかのような、そんな口調である
「貴様らもよく知っている女神はそれに真っ向から反対した。生き物の...否、人の発展は、技術は、その時代の人々の手によってなされるべきものであると。」
「............」
「意見は割れた。結局私に賛同してくれたのは2人、女神についたのが1人...しかし意見がこのままでは決まらない。そこで私は提案したのだ。「そうか、ならそちらも人に手を貸すがいい。人がどのくらい自らの力のみで可能性が開けるか、試してやろうではないか」とな」
「...それが数千年前に起きた神話の戦いか」
「そうだ、正確には2180年ほど前だな。まぁ王国の歴史書にすら、それほど昔の本は貯蔵されていない。知るものがいないのだ、無理もないな」
「それで女神の方があっていることが証明されたにも関わらず、何故また生物に対して害を成そうとする?」
「本当に君はこの現状を見て本当にそうだと言えるのかね?」
「......違うとでも言いたいのか?我々と人との融和作が近年、本当に少しずつではあるが進められている。幹部のみに限れば、人間と出会って即戦闘などという事態にはならない。」
「否、生物の...人の進化は遅々として進んではいない。魔族と人の融和?我々は人の技術が我らの通りにしていけば、とうに魔族などという連中はこの大地から消え去っている」
「なんだと...!!」
アイテールのあまりの言葉に、後ろにいる幹部達も拳を握りしめる。そのようなことはない、と否定できない自分たちがいるのだ。ビネルを除けば幹部達は全員、昔の魔族領を知ったものである。
力を持った人間が今まで敵だった自分たちを屠らないとは思えなかった。
「そもそも、我らの小機であの者達を創り、生命を掃討させた3柱。それを撃退したのは勇者であり、人間だ。それは認めよう、しかしその周りの生命は?レベルは低いままだ。」
「......特別なのは勇者とその周りの人間のみ、その他の成長は望めなかった...か。」
「その通り、数千年という時を超え、ようやく中央集権国家におちつき、各国との融和関係が気付けた。これは我々が想定していた時より800年以上も遅れた自体だ。そしてその時に流された死者、病死した者。技術の遅れにより出産すらままならない赤子、その母親。病気に対する環境すら、最近になりようやく樹立されたものなのだよ。」
「......少なくともその間は女神の主張を信用していたということか」
「返事はNOだ。およそ856年ほど前、今はオワリの国と呼ばれる場所で私に無断で同胞2柱が子機を起動、それを破壊された。それにより、我々は再度人間の...生命の力を認めざるを得なくなった。」
「あの化け物を2体も倒した奴がいるのか?!」
「あぁ、無論私の子機には遠く及ばないものの、彼らの子機も十分に強かったと思う。世界を丸焼けにするには十分なほどにな。しかし結果は惨敗。サブロウと名乗る男に2柱の子機は完全に破壊されて修復不可能。以外参戦は不可能になった。全くとんでもないことをしてくれる...撤退じゃなくて完全なる破壊だぞ?女神からの祝福があるにしても異常すぎる」
「......で、なら何故貴様はここにいる。」
「...今まさに、私の子機も破壊されかけているからだろう。あのグリーンとか言う若者からも、サブロウと同じ。...神を破壊する素質があるのは事実だ。だからこそ許すわけにはいかないのだよ、我々の主張が正解であることに間違いはないのにも関わらず、面子をあの女に潰され、これ以上黙っていることはできん。全力をもって潰させてもらう。」
「...なるほど、お喋りはそのぐらいにしよう。名を名乗った時からわかっていたことだが...私は魔王軍を名乗るものとしてお前をここで殺さなくてはならない。」
途端、この会話の中一瞬たりとも油断をしていなかった幹部達の中に再度、殺気の炎が再燃した。それは、この場で止めなくてはならないと言う使命感であり、義務であった。
「ふむ、残念だ。もう少し喋りたいこともあったのだが...まぁこの変にしておこう」
アイテールはすっかり冷えてしまったティーカップを捨てる。
カラン、そんな音が鳴った次の瞬間には、幹部達は、アイテールに対して斬りかかっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うん、いい準備運動だった。」
お世辞にも狭いとは言い難い空間に、血の香りが漂う。
この場に、アイテール以外に立っている人間はいない。それどころか息をしている者がいるかすら怪しいレベルだった
アイテールはしかしながら彼らの矜持まで奪い取ることはできなかったな、と1人反省する
アイテールの靴には、ほんの僅かに土埃がついていたのだから。
ドドドドドドドドドドドドドドドド
ここの、壁1枚隔てた場所から地響きのような音が聞こえ始めた。
「おっと...この辺りは間もなく、地面に埋もれて消え去る。まぁ当然とも言えよう。お前達が戦闘やら何やらで、ただえさえ不安定だった地盤が崩れてしまった。この崩壊を止める力は魔王にすらないだろう。」
返事は聞こえない。無駄話が嫌いではないアイテールにとって、自らの計算結果や推論を正しいか間違っているかを判断されるならともかく、「無関心」というのが一番不快だった。
だがまぁ仕方がないだろう、神に対する不敬だ。アイテールはそれほど神というものに対して優越感を持ってはいないが、アスカモー達に対する評価はそれで済まされる。
「放っておいてもいずれ死ぬだが...まぁこのぐらいでやめておこう」
メインディッシュがお待ちかねだ
直接戦闘など何年振りだろうか
最も弱い自分が「叡智」という意味で神々となったのは3番目、力という意味で神となったのは8番目である。もしフレイヤと殴り合いになったら......?
そう懸念するアイテールだが、実際のところ、これもないと考えていた。神々同士の対戦などを地上で行なってしまえば、その大地に備蓄されるダメージは相当なものとなる。最低でも人が住めなくなる大地になり、悪ければ大地ごと崩壊する。
その点で甘々なフレイヤがそう決断するとは思えない、損得感情で言えば6割を殺した方が安全なのだから。
こちらとしても、この大地の人間を全て滅ぼす気はない、ここ以外にも生命は存在するが、ここはここで独自の様式がある。
そしてアイテールはそれが嫌いではなかった。
フレイヤに対する懸念を忘れたアイテールはスタスタと歩いて外に出る。外に出るときに天使達にこんなことを言っておいた
「外で待機している魔王軍を強襲し、全滅させておけ」
アイテールはその指示を出したことを数秒で忘れた。余計なことは覚えても無駄だ。記憶メモリーの無駄遣いである。
アイテールは静かに、王都へと向けて歩き始めた。
ーーその靴音が王都に迫るまで、1時間もかからなかった。
「...まずはその殺気をしまってくれないかね?」
どこから出したのか、その男...アイテールはティーカップに紅茶を注いでそう発言した。
事実、この場にいるほとんどのものは抜刀し、戦闘態勢を取っていた。
ーーただ1人、崩れ落ちた老人を除いて
「カイセイ殿!」
ウーフィルが素早くカイセイをキャッチする。既にカイセイは眠りについていた。全身に疲労の跡が残っているが、それ以外に異常はない。
ーー忠義の光ーーあれは生命力を蝕む技...女神に与えられた仮初めの命では、一撃が限界だったということだろう。
「あぁ、彼か。あの技は素晴らしいよね、あの剣技がただの祈りだって?僕の子機を何年か前に撃ち破ったのもあの技だったね。」
ゆっくりと、話をしているアスカモーを視線から外さずにアイテールは呟く。
「ーー彼は素晴らしかった、この世界が素晴らしいものだと我々が認めざるを得ない程度には。ーーさて、鬼人よ、質問だ。何故我々は人々を間引こうとしている?」
「......知らないし、興味もない」
「元々は、人類の更なる成長と発展の為だよ。人間とはね、生存のためならば、あらゆる手段を講じる性質がある。事実、これまで人間が生み出してきた技術の多くには、我々に対抗するための兵器となったものも多い。」
「...技術の進歩のために血が必要だとでも言いたいのか?」
「その通りだとも、人という種は何かと争いをするときに知恵を巡らすものだ。」
「...もっと良い方法はないのか?」
「ないな、長期的に考えればこれが一番効率的だという結論に達した...と言いたいところだが我らの総意というわけでもない。それに真っ向から反対してる奴もいた。君たちもよく知っている人物だ」
「......女神か」
「正解だ」
アイテールは再度、持っていた紅茶を口に運ぶ。その顔は正解した教え子を褒め称えるかのような、そんな口調である
「貴様らもよく知っている女神はそれに真っ向から反対した。生き物の...否、人の発展は、技術は、その時代の人々の手によってなされるべきものであると。」
「............」
「意見は割れた。結局私に賛同してくれたのは2人、女神についたのが1人...しかし意見がこのままでは決まらない。そこで私は提案したのだ。「そうか、ならそちらも人に手を貸すがいい。人がどのくらい自らの力のみで可能性が開けるか、試してやろうではないか」とな」
「...それが数千年前に起きた神話の戦いか」
「そうだ、正確には2180年ほど前だな。まぁ王国の歴史書にすら、それほど昔の本は貯蔵されていない。知るものがいないのだ、無理もないな」
「それで女神の方があっていることが証明されたにも関わらず、何故また生物に対して害を成そうとする?」
「本当に君はこの現状を見て本当にそうだと言えるのかね?」
「......違うとでも言いたいのか?我々と人との融和作が近年、本当に少しずつではあるが進められている。幹部のみに限れば、人間と出会って即戦闘などという事態にはならない。」
「否、生物の...人の進化は遅々として進んではいない。魔族と人の融和?我々は人の技術が我らの通りにしていけば、とうに魔族などという連中はこの大地から消え去っている」
「なんだと...!!」
アイテールのあまりの言葉に、後ろにいる幹部達も拳を握りしめる。そのようなことはない、と否定できない自分たちがいるのだ。ビネルを除けば幹部達は全員、昔の魔族領を知ったものである。
力を持った人間が今まで敵だった自分たちを屠らないとは思えなかった。
「そもそも、我らの小機であの者達を創り、生命を掃討させた3柱。それを撃退したのは勇者であり、人間だ。それは認めよう、しかしその周りの生命は?レベルは低いままだ。」
「......特別なのは勇者とその周りの人間のみ、その他の成長は望めなかった...か。」
「その通り、数千年という時を超え、ようやく中央集権国家におちつき、各国との融和関係が気付けた。これは我々が想定していた時より800年以上も遅れた自体だ。そしてその時に流された死者、病死した者。技術の遅れにより出産すらままならない赤子、その母親。病気に対する環境すら、最近になりようやく樹立されたものなのだよ。」
「......少なくともその間は女神の主張を信用していたということか」
「返事はNOだ。およそ856年ほど前、今はオワリの国と呼ばれる場所で私に無断で同胞2柱が子機を起動、それを破壊された。それにより、我々は再度人間の...生命の力を認めざるを得なくなった。」
「あの化け物を2体も倒した奴がいるのか?!」
「あぁ、無論私の子機には遠く及ばないものの、彼らの子機も十分に強かったと思う。世界を丸焼けにするには十分なほどにな。しかし結果は惨敗。サブロウと名乗る男に2柱の子機は完全に破壊されて修復不可能。以外参戦は不可能になった。全くとんでもないことをしてくれる...撤退じゃなくて完全なる破壊だぞ?女神からの祝福があるにしても異常すぎる」
「......で、なら何故貴様はここにいる。」
「...今まさに、私の子機も破壊されかけているからだろう。あのグリーンとか言う若者からも、サブロウと同じ。...神を破壊する素質があるのは事実だ。だからこそ許すわけにはいかないのだよ、我々の主張が正解であることに間違いはないのにも関わらず、面子をあの女に潰され、これ以上黙っていることはできん。全力をもって潰させてもらう。」
「...なるほど、お喋りはそのぐらいにしよう。名を名乗った時からわかっていたことだが...私は魔王軍を名乗るものとしてお前をここで殺さなくてはならない。」
途端、この会話の中一瞬たりとも油断をしていなかった幹部達の中に再度、殺気の炎が再燃した。それは、この場で止めなくてはならないと言う使命感であり、義務であった。
「ふむ、残念だ。もう少し喋りたいこともあったのだが...まぁこの変にしておこう」
アイテールはすっかり冷えてしまったティーカップを捨てる。
カラン、そんな音が鳴った次の瞬間には、幹部達は、アイテールに対して斬りかかっていた。
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「うん、いい準備運動だった。」
お世辞にも狭いとは言い難い空間に、血の香りが漂う。
この場に、アイテール以外に立っている人間はいない。それどころか息をしている者がいるかすら怪しいレベルだった
アイテールはしかしながら彼らの矜持まで奪い取ることはできなかったな、と1人反省する
アイテールの靴には、ほんの僅かに土埃がついていたのだから。
ドドドドドドドドドドドドドドドド
ここの、壁1枚隔てた場所から地響きのような音が聞こえ始めた。
「おっと...この辺りは間もなく、地面に埋もれて消え去る。まぁ当然とも言えよう。お前達が戦闘やら何やらで、ただえさえ不安定だった地盤が崩れてしまった。この崩壊を止める力は魔王にすらないだろう。」
返事は聞こえない。無駄話が嫌いではないアイテールにとって、自らの計算結果や推論を正しいか間違っているかを判断されるならともかく、「無関心」というのが一番不快だった。
だがまぁ仕方がないだろう、神に対する不敬だ。アイテールはそれほど神というものに対して優越感を持ってはいないが、アスカモー達に対する評価はそれで済まされる。
「放っておいてもいずれ死ぬだが...まぁこのぐらいでやめておこう」
メインディッシュがお待ちかねだ
直接戦闘など何年振りだろうか
最も弱い自分が「叡智」という意味で神々となったのは3番目、力という意味で神となったのは8番目である。もしフレイヤと殴り合いになったら......?
そう懸念するアイテールだが、実際のところ、これもないと考えていた。神々同士の対戦などを地上で行なってしまえば、その大地に備蓄されるダメージは相当なものとなる。最低でも人が住めなくなる大地になり、悪ければ大地ごと崩壊する。
その点で甘々なフレイヤがそう決断するとは思えない、損得感情で言えば6割を殺した方が安全なのだから。
こちらとしても、この大地の人間を全て滅ぼす気はない、ここ以外にも生命は存在するが、ここはここで独自の様式がある。
そしてアイテールはそれが嫌いではなかった。
フレイヤに対する懸念を忘れたアイテールはスタスタと歩いて外に出る。外に出るときに天使達にこんなことを言っておいた
「外で待機している魔王軍を強襲し、全滅させておけ」
アイテールはその指示を出したことを数秒で忘れた。余計なことは覚えても無駄だ。記憶メモリーの無駄遣いである。
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