多重人格者の異世界転移〜あれっお前魔王じゃね?!〜

くろこん

文字の大きさ
116 / 150
10章 多重人格者の未来は

神1柱との会話

しおりを挟む
「さっそくなんだが、魔王とグリーン君を借りたい。いいかな、私?」

こともなにげに、この戦場に降り立った男はそう言った。アイテール、そう呼ばれたもう1人の男は、四聖達を足蹴にしながらそこに立っている。

その身につけた白衣はこの大地に吹く風によりたなびいており、その服からシャツが溢れ出ている。

こいつが本当にアイテールかまうかはともかく、戦闘力において、確実にアイテールの上に立っているのは確かだな、と魔王は個人的に分析する。四聖をあそこまで上手く捌けるか?結果はNOであるだろう。自信はない。

そして、それは今まで戦ってきた方のアイテールでさえも同じだったようだ。

今までの怒りの矛先を失い、それでも冷静であろうと勤めようとするアイテールの姿は、一見すると滑稽なように移るものの、それでいて威厳と保とうとする姿は、敵としてはそれだけで高い壁であることを実感させられていた。

「......断る、そして私は私1人しかあり得ない...否。」

アイテールはそこまで言うと首を力なく左右に振った。白髪のアイテールが拒否の言葉を口にした瞬間殺気を出したからではないだろう、ただ単純に自分の敵を取られたくない、そういう感情を持って断ろうとしたその意見を、アイテールはアイテール自身で打ち消した。

「恐らくお前が本物のアイテールなのだろう...私の記憶とも合致する。」

「ほう、ヒントを出したとは言え、すぐにその答えまで辿り着いたのはまぁ、褒めよう。心の中で確信はあっただろうが、察するに私をアイテールだと断定する証拠まで全て揃ったのだろう?流石は私だ」

先ほどとはうって変わり、自分の飼っているペットが芸をしたのを褒めるかのように褒めるアイテール。

「では、2人は連れていっても構わないか?残りは任せよう。君は残りを蹂躙し、私からの指示を果たすといい」

「わかった、我が使命を果たそう。研究材料として申し分ない素体だ、謝ってもバラバラにしてくれるなよ。「私」

「努力しよう」

穏やかにそう話す2人に、笑顔はない。まるで一言で100通り以上の剣戟が行われているかのようなそんな肌がピリつくような会話を終えて、2人のアイテールは面々と対峙した。アイテールの触手がレッドと魔王に延びる。

「来るぞ!」

魔王の一言で我に返ったレッドは神器を持つも、その触手が攻撃ではなく、転移のための魔法陣だと気づくには、もう少しの時間を要したーーーー








気づけばそこは、神殿のような場所だった。レッドと隣にいる魔王は武器を構えるも、そこに敵意は介在しない。殺気すらこの場を支配し得ない。

「さて、まずは...話をしよう。」

後ろを振り向けば、そこに卓があった。その中央には水晶。その水晶は人の頭ほどの大きさでその場に存在しており、全てを見通すかのように透明だった。

目の前にあるのは2つの椅子

座れ、ということなのか?

俺は隣にいる魔王の顔を確認する

「座っても良さそうだな」

いや、よっこらせって座ってるけど、警戒とかしないんだね?いやいっそふてぶてしいですね!

「いや話したいって言ったからこんなところまで来たんだろ。ーーーー」

まぁそれならそうだと、レッドも同じく椅子にかける。あ、「どうぞ」とか言われてから座るのがマナーなんじゃないかな?まぁいいか。

「さてーーでは話をしようか、この会話が双方にとって有意義なものになることを願っているよ。」

アイテールは紅茶を魔王とレッドの前に置き、淡々と話し始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「さて、まずは初めましてと名乗っておこう、カワサキシンヤ、マツオカキセキ。私はアイテール、この世界の神11柱の1人だ。」

「.........随分と調べられてるんだな」

「素性の分からぬものをお茶に誘うほど酔狂でもないつもりだ」

そう言うとアイテールは優雅に一口、紅茶を飲む。

魔王が「ブフォス」という音を出して紅茶を吐き出したのは、絶対自分にその記憶があるからだ。

「まずは魔王、君から話そう。...あぁ、これからは魔王と呼ばせてもらうよ、こちらでの通り名の方が気にならないだろう。君もグリーンと呼ばせてもらうぞ」

構わない、そう返すと、満足げに笑みを見せながら、アイテールは話を続けた

「魔王...58年前にここから北にある魔族領に転生、ゴブリンとして生きるも、進化を繰り返し鬼神へ...まさに異色の経歴だな。鬼人として生まれた者が鬼神へなることはそう珍しい話ではないが、一介のゴブリンがこの領域に到達するとは...。おまけに君はただの鬼神ではない、復讐を誓った鬼神が気の遠くなるような研鑽を積みようやくなれる存在...いやはや、神々はよほど君に嫌われてしまっているらしい。」

残念そうにアイテールは肩を落とす。

「そうだ、お前も含め、我が大地を狙う奴らはことごとく敵だ。第1フレイヤとてまだ許した訳ではない。」

魔王は屈託なくそう返すと、アイテールも困り顔を見せた。僕と同じ姿になって、この世界に戻ってきてもなお、彼の憎悪は無くなっていないのだ。そうレッドは実感した。

「何か私に質問したいことはあるかい?」

「無い、我は自らの叡智で、全ての疑問を自分自身の力で解決してきた。今までも、これからもだ。」

「......そうか、じゃあグリーン。君の話に移ろう、要件は後で一遍に聞けばいいしね」

そう言うとアイテールはこちらの方に向き直ってくる。その瞳は興味深く、爛々とした目でこちらを見つめてくる。まるでカブトムシを虫かごごしから眺める少年のように。

「...この世界の私とフレイヤの関係性について、彼女はどこまで教えてくれた?」

「へ?」

「......教えてなさそうだな」

「......逆にあの寡黙女神が何故教えてると思ったんだ、長い付き合いだろ?」

「そうだな、私が教えよう」

魔王は呆れながらも、次の瞬間その話に聞き入ることになる。その話しは、曰く

生命を滅ぼすギリギリまで追い込み、進化を促すこと

それに反対したのがフレイヤであること

それが本当に正しいのか、フレイヤは人の可能性を証明するために戦っていること

今人類を滅ぼしているアイテールは、創り物であるということーーーーーー








「なるほど」

全て話を聞いた、恐らく...彼は嘘をついていない。そのメリットがない。勿論嘘をつくのが上手いという可能性もあるが、それならもっとフレイヤの悪口を言ってもいいはずだ。

彼は恐らくーー単純にフレイヤを尊敬しているのだ、意見が異なるだけで。

「それで...そこまで言って、貴方は私に何をさせたいんですか?」

そう、ここまで親切にする必要はないのだ。

話し合いながらも、アイテール本人から出る威圧感も、わずな揺らぎもない。

余計な手間を使ってまで、僕と魔王に交渉するーそのメリットは一体なんなのだろうか?

「うん、そうだな、早く言うべきだった。魔王くんにも言おうと思っていたが...私につく気はないか?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...