多重人格者の異世界転移〜あれっお前魔王じゃね?!〜

くろこん

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10章 多重人格者の未来は

かくて、終焉前夜は静かに来たる

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「「あ」」



............声被ってるな



「「あ」」



............まだ被ってるな



...「あ」

あっ声がやっと元に戻った...良かった...いや、本当にさっきの変なテンションはなんだったんだ...神殺したいとか普通に言ってたし...魔王さん、もしかしたら今でも神様憎いんじゃないかな?まぁ無理もない話だけど...

物騒にも程があるでしょ...

おっと、目の前に集中しないと...

隣にいたフレイヤは、既に神殿上層に移動して、こちらを見ている。

本当に援護とかないのか........まぁそりゃそうなのだ、彼女の願いは、神と人との相互不干渉、もしくは神から人への一方的な援助のみ。これを認めせるには人の可能性を見せつけなくてはならない。

........ということで僕は孤独に神様と戦わなくてはいけない訳だけどね。



既に、アイテールは行動していた。

持っていた水晶を手から離すと、水晶はまるで蛇のように不可思議に曲がりながらこちらへと接近してくる、水晶に刃でもついてるのかと言いたげに、水晶は時たま、地面を抉った。


そんな水晶を.....輝赤は、素手でキャッチした。

片手での無造作なキャッチ、勿論水晶は、もがくように回転を始める。しかし輝赤の腕力がそれを許さない。

やがて水晶の回転は、キュルルという頼りない音とともに、止まった。

「........ほぅ、止めるか。ひき肉にしてやろうと思ったが」

「そう?随分と質の悪いミンサーだね、返すよ」

そう言うと、僕は水晶を野球ボールのように持つと、ただ全力で。


ぶん投げた


ぶん投げた水晶は、ほんの僅かな間を空けてアイテールの顔面に直撃する。

と思いきや止まっていた、ギリギリで受け止めていたのである。

「........武器をわざわざ手渡して返すとは、随分と親切じゃないか」

「........だって、どこかに飛ばしても貴方の手に戻って来るようになってるでしょ?その武器。だから無駄でしょう」

「........斬るという選択肢はなかったのか」

「貴方の油断で手に入れたものを切って勝ったところで、貴方は納得しないんでしょう?だから.....」

ここまでの闘志は、僕にはなかったものだ。

長年付き合ってきた面々の中にいる「異物」の感覚。それが今、僕のこの感情の一因になっているのは、多分間違いがないと思う。


「僕は、貴方の心を折る。」

「........この水晶を切れるかどうかには答えないか、あの魔王まで取り込んで少々面の皮が厚くなったのではないか?」

「........どうでしょう」

そこから、2人の会話は一旦途切れる。

1000の対話は1度の撃ち合いに劣る、それを体現したかのような2人の武器のぶつかり合い。これはまさしく人智を超えたと言っても過言ではない争いだった。

間合いを見極め、輝赤の隙を突いて一撃を加えようとするアイテール。戦法自体は先程と変わりはないが、これが刀剣使いには一番有効であるというので間違いは無いようだ。

しかし今は違った。

彼には今、魔王の経験がついていた。

経験ーーと聞くと?となる人物も多いのではないだろうか。それは「力」や「速さ」などとは違い、明らかに目に見えるようなものではない。

しかし、人が何かを始め、それを継続していくと上手くなる、具体的には

絵を描けば描くほど上手くなるように

野球をやればやるほどに、球の感覚が掴めていくように

それが経験だ。今回魔王から輝赤が手に入れた経験とは、無数の命のやり取りーーという経験だった。

次第に輝赤には、アイテールが次に何をするのかが視界に現れるようになってきた。

(右ーーを躱したら、左足の上段蹴りをフェイクにして背中に隠した水晶で急所狙いか)

それは予知に近い、魔王本人が所持していた力。数多の研鑽を経て、彼自身が身につけた力を、輝赤は十全に使いこなしていた。

「ーーこれまで避けるか、当たらないというのは案外厄介なものらしい。では........趣向を変えようか」

ともするとアイテールは構えを少しだけ変えた、その構えは僕が言うのもなんなのだが、棒立ちだった。

正直構えと言うべきも怪しいかのような、一見、いや何度見ても普通に立っているようにしか見えない。

そんな構えから、アイテールは普通に貫手を放ってきた。その速さは普通なら速い、常人の目には見えないレベルだったが、これまでの攻防に比べれば遅いレベルだった。

(何の狙いがーーいや、ともかく刀で受け流して)

魔王の経験により、この状況下での最善策を導き出す。

しかしその決断を下したのが魔王であったのならば、違う決断をして輝赤を救ったのも魔王であった。

輝赤の体が勝手に動き、刀を避けさせ、自らの左手、それも腕でアイテールの貫手を受けたのだ

(えっ?何故ーーー)

それは恐らく危機管理能力........魔王が持つ経験の中でも最も重要な生存本能、それが働いた

「この拳は危険である」と判断したのだ。

そしてその判断は的中することになる

「なーーぐっ!?」

神器で覆った筈の鎧が響とともに破壊され、輝赤の体は宙に浮いてまたも壁に激突することになる。

防いだ左手の感覚がない

身体中が痛い。神器は防具とすればあらゆる防御を防いでくれるが、流石に衝撃まで完全にいなすのは不可能らしい。壁に何度も叩きつけられ、神器によりありえない動きをさせられている輝赤の体は、既に限界だった。

ギリオンを杖代わりにして何とか立つ、追撃はない。アイテールをも目の前にいるが、動きはなかった。

彼もまた傷を負っていた。輝赤により受けた斬撃をかすり傷のみで押しとどめているが、今の一撃で流した汗の量がとてつもなく、アイテールは肩で息をしていた。

「元々は採掘用の技でな、ほら振動を奥まで通して、中の様子などを調べたりとする技なのだが....今回は神器を通り抜け、心臓を止めようとしてみた。が失敗したか。魔王の予知には恐れ入ったよ。戦巧者と言う点なら私を超えているのではないか?いやそれにしても........流石に神器を通るほどの衝撃を送るのは........疲れたぞ」

神器を破壊するのをアイテールはほぼ諦めたと言っていい、その証拠に輝赤の着ている神器の鎧はヒビ割れた神器はすっかり元どおりとなっている。

無事ではないのは体だけ、と言うわけだ。

「ハァ...ハァ..もう一撃程度なら問題なく放てる、立ってはいるもののもう動けんだろう?腕でガードできたとはいえ、そこまで生温い攻撃ではない。正真正銘最高純度の一撃だ......その証拠に神器をも破壊されてるだろう?4つの神器を取り込んでをも貫く貫手、神が神器を超えた技『イディオム』だ」

GOD is greater than GOD

神が神を超えたってことか!

伊達に数千年生きてないよね





左手が死んだ状態で、輝赤は立ち上がった。

杖代わりにしていたギリオンを鞘にしまい、ゆっくりと歩き出す

「左手が使えなくてもまだやる気か?」

「それは貴方も同じでしょ?神器を通るほどの一撃........そう何発も撃てる訳ない。実は次で限界だったりするんじゃない?」

「魔王の慧眼、いや他の人格の記憶もあるな?まぁ正解だ。これを撃てば当分動けんよ、フレイヤと戦うなんて夢のまた夢。人類の減衰など不可能になる。お前がこれを撃ち破った時点で、お前の勝ちだ」

この発言は、普段のアイテールならありえない言動であるが.....彼との戦いが、それを忘れさせた。自ら弱味を晒すことなど決してしない人間がそれを吐露する、 その行動自体が既に、アイテールがこの状況を楽しんでるということだった。

「そうなんだ、なら僕も覚悟を決めるよ」

そう言うと、空いた右手で輝赤は鎧の中に腕を入れて、中から黒々しい神器を出す。その神器は、ツヴァイハンダー。魔王の神器である

ツヴァイハンダーは輝赤の手から離れると、輝赤の周りで浮遊を始めた。

「正気か?ここで身を守る神器を捨てるなど、これでお前の鎧の防御はさらに下がった。死ぬぞ?」

「貴方の技の性質上、いくら硬い鎧を着てても無駄でしょ?言ったよね、心を折ると。」

鎧を防御力を下げ、自らの攻めのカードを一枚増やす。お陰でアイテールはツヴァイハンダーをも警戒しなくてはならない。しかしアイテールは知っている。そのような小細工ができる男では、目の前にいる男が決してないことを。

必ずギリオンで来る、そう確信していた。

「そうか、なら何も言うまい」

輝赤は、再度ギリオンを鞘から抜きはなち、刀を横向きに構え、アイテールは再度あの脱力の状態へと戻った。

あたりに静寂が走る。

お互いの間合いが少しずつ接近して行くのを感じる







そして、その時が来た。

アイテールが手を鋭く構えて貫手を放ち、その少し前に輝赤が横薙ぎに神器を振り抜く

「イディオム!!」

「ーー折れろ!」

2人の刃と貫手がぶつかりあったその時































衝撃により神殿にヒビが入り、崩壊を始めた。




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