秘密の日記〜おもらしメモリーズ〜

柊ヒソカ

文字の大きさ
1 / 7

第一話「終電の夜に」

しおりを挟む
深夜零時を回った駅のホームに、私は一人立ち尽くしていた。
スカートから伝う温かな液体。太ももを濡らし、ストッキングを伝い、パンプスの中まで染み込んでいく感触。アスファルトに広がる水たまりを見下ろしながら、私は現実を受け入れることができなかった。
二十六歳、社会人四年目。それなりに仕事もできるようになって、後輩の指導も任されるようになった。そんな私が、まさか、駅のホームでおもらしをするなんて。

今日は月末の締め日で、残業が深夜まで続いた。最後にトイレに行ったのは夕方の六時頃。それから六時間、資料作りに没頭していた。途中、何度か膀胱の違和感を感じたけれど、キリの良いところまでと思っているうちに、終電の時刻が迫っていた。
「大丈夫、あと三十分で家に着く」
そう自分に言い聞かせながら、オフィスを飛び出した。駅までの五分間、小走りで向かう間も、下腹部の圧迫感は増していく。ホームに滑り込んだ電車は、幸運にも比較的空いていた。
座席に座った瞬間、それは間違いだったと気づいた。緊張が緩んだ途端、堰を切ったように尿意が襲ってきたのだ。下腹部がぎゅっと締め付けられる。足を固く閉じ、全身に力を込めて耐える。
「次の駅で降りてトイレに行こう」
そう決めたのに、次の駅のトイレは工事中だった。車内アナウンスが聞こえた瞬間、絶望が込み上げてくる。もう限界だった。内股をきつく閉じ、片手で下腹部を押さえる。
「あと三駅、あと三駅だけ」
まるで祈るように呟きながら、私は座席で身体を固くしていた。向かいの座席で居眠りをしているサラリーマン。少し離れた席でスマホを見ている女子大生らしき女性。誰にも気づかれないように、必死で平静を装う。
駅を一つ通過するたびに、尿意は容赦なく強くなっていった。膀胱が破裂しそうなほどパンパンに張っている。呼吸すら苦しい。小刻みに震える太もも。冷や汗が背中を伝う。
二駅目を通過した時、小さな漏れを感じた。下着がほんの少し濡れた感触。パニックになりそうな心を必死で抑え、さらに強く足を閉じる。もう涙が出そうだった。
そして、ようやく最寄り駅に到着した。
「着いた、着いた」
ドアが開く。立ち上がろうとした瞬間、それは起きた。座っている間ずっと緊張していた筋肉が、立ち上がる動作で一瞬緩んだのだ。
じわっ。
下着が温かくなる。まずい、と思った時にはもう遅かった。一度緩んだ括約筋は、もう制御できなかった。温かな液体が溢れ出す。止められない。止まらない。
「あ、あ……」
声にならない声が漏れる。ホームに降り立った私の足元で、液体が滴り落ちる音がした。周りに人がいないことが、唯一の救いだった。
放心したまま立ち尽くす私の背後で、電車のドアが閉まり、終電は夜の闇に消えていった。
濡れたストッキングが肌に張り付く不快感。スカートの裾から滴る雫。アスファルトに広がる水たまり。
「なんで、なんでこんなことに……」
震える声で呟きながら、私はふと遠い記憶を思い出していた。
そういえば、子供の頃、私はよくおもらしをする子供だった。小学校に上がってからも、何度か学校でもらしてしまったことがある。あの時の、この感覚。温かさと、恥ずかしさと、そして不思議な安堵感。
「まさか、大人になってまた……」
駅員に見つからないよう、人目を避けながら改札を抜けた。幸い、この時間に人通りはほとんどない。家まで徒歩十分。濡れた衣服が冷たくなっていく中、私はただ早足で夜道を歩いた。
家に着いて鍵を開け、玄関のドアを閉めた瞬間、膝から力が抜けてその場にへたり込んだ。
「はぁ……」
大きく息を吐く。まだ信じられない。二十六歳の大人が、駅のホームでおもらしなんて。
シャワーを浴びて、汚れた服を洗濯機に放り込んで、ようやく少し冷静になった頃、私はふとスマホを手に取った。私しか見れない秘密の日記アプリを開き、気持ちを整理するため、今日のことを記録する。
そして、ふと思った。子供の頃のことも、思い出せる限り書き残してみようか。あの頃の私は、どんな風におもらしをしていたんだろう。
画面を見つめながら、私の意識は徐々に過去へと遡っていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

処理中です...