7 / 17
7
「おいリト!これから宴会が開かれる、今度は腹が痛いからとトイレに逃げずきちんと任務に着くように」
「はっ」
上官に持ち場を離れたことをこっぴどく叱られたものの、俺の過去の成果のおかげが任務を外される事はなかった。
リータ。
やつが何者か簡単に分かった。
他国から来ている貴賓だそうだが、実際は第二王子らしい。他国の使用人に金を渡すと簡単に割れた。
そしてヤン。やつは他国の貴族で、リータはもちろん、その使用人曰く自分の利益のためならなんでもするような奴らしく、他の男とも寝ているらしい。
俺は今からやることをやる。
リータとヤン。
奴らから3人を守るために。
決意を固めながら宴会場に向かい、任務に着く。
この宴会は他国との親善を深めるために行われているらしい。
広々とした会場で高貴な身分の方々が手を取って踊ったりワインを一緒に飲んだり楽しそうに話ている。
この宴会で、アルバーン様とお父様とお兄様が。
グッと拳を握り、目を光らせる。
絶対に殺させない、必ずお守りします。
「みなさま、本日の主役である王太子アルバーン様のご登場です。」
そのアナウンスに肩が揺れた。
やっと、見ることができる。
どんな姿になってるんだろう?
どんな風に成長したんだろう?
「こんちには、楽しんでくれ」
短い挨拶はよく知った声のままだった。
奥からコツコツと足音を鳴らして現れた人物はワインの入ったグラスを高く上げる。
あぁ、アルバーン様だ。
相変わらずの眩しい金髪に碧眼の綺麗な目。
身長がグッと伸び、体格も以前よりずっとよくなっている。
久しぶりに見るその美貌とその成長ぶりに思わず見惚れる。
にこりと周りに微笑んでいる様子は以前の無表情な対応を考えると信じられない。
きっと、ヤンのおかげだろう。
俺では彼は変えられなかった。
俺の愛ではダメだったんだな。
さっさと立ち去って正解だった。
でも、ヤンは。
グッと胸が熱くなっていると次のアナウンスが鳴る。
「続いてフェリアノ公爵家様です。」
ペコリとお辞儀をしてアルバーン様の近くにいるのは白髪が増えたお父様と、ますますお父様そっくりになったお兄様だった。
3人で何かを話し談笑する姿を見て確信する。
彼らは幸せに過ごしている。
俺はあの笑顔を守るために、今まで図太く生き残ってきたんだな。
「他国の貴賓です、リガー王国よりリータ様です」
来た。
そのアナウンスを聞き、リータの野郎に目を向けた途端、俺は猛スピードで走り出した。
早速仕掛けてきやがった!
お父様とお兄様にワインを渡そうとする使用人が短剣を持っているのが見えたからだ。
「触るなっ!この野朗!」
「なっ、てめぇ、ガッっっ!!」
思いっきり使用人を突き飛ばす。
「なんだこいつ!?おい捕らえ…」
慌てて近くの騎士に声をかけるリータの野郎に無我夢中で飛びかかる。
「なんなんだお前!?」
驚くクソ野郎に笑ってやる。
お前の計画通りにはさせない。
アルバーン様を傷つけさせない。
「おいお前!いますぐやめろ!」
アルバーン様の声がする。
あなたの命令はなんでも聞きたい。
けど、これだけは聞けない。
ごめんなさい、アルバーン様。
俺は思いっきり持っていた短剣を振りかざす。
何か叫んでいるリータの喉仏。
そこに向かって短剣を刺した。
躊躇いはなかった。
グシャッと血が跳ね返る。
リータはカハカハと息を必死にしようとしているがもうすぐ死ぬだろう。
「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」」」」」
会場中に悲鳴が響きわたる。
「そこの罪人を殺せ!!!」
お兄様の怒声が響く。
アルバーン様は目を見開いて固まっている。
お父様は慌ててリータに駆け寄って安否を確認している。
きっと目の前で次の指示なく主人を失った刺客たちは何もできない。
これで、よかった。
安心して目を閉じた時。
グサッと体に刺された感覚があった。
目をうっすら開けると剣先が胸元に見えた。
「死んで償え」
その声はアルバーン様のものだった。
いくら死に損ないでも剣が体を貫通したらさすが死ぬだろうな。
俺、気持ち悪い。
アルバーン様の手で死ねて、幸せだと感じるなんて。
「カハッ」
口の中、血の味がする…。
ようやく、俺、楽に。
「なんでなんでなんでなんで!!!!!!!」
そのつんざくような悲鳴が聞こえたと同時に目の前に広がった光景。
剣を持ち半狂乱に「全部全部全部台無しだ!アルバーンもフェリアノの野郎どもも死ね!死ね死ね死ね死ね!みんな死ね!!!」と叫ぶヤン。
剣先は俺が愛する人に向かっている。
きっと彼は動揺して動けない。
彼が、刺されてしまう。死んでしまうかもしれない。
だめ、それはダメだ。
リハルト、お前、いつも図太く生きてきただろ?たて、たてよ!立つんだ!!!
ふらふらする、視界が歪む。
それでも思いっきり走った。
間に合え間に合え間に合え!!!!!
「っ、はっ…」
血が口からゴホッと出た。
綺麗にもう一本剣が貫通したな。
なんとも立派な死に様だ。
痛い、苦しい、でも、不思議と穏やかだ。
「なんで!?なんでなんでなんでなんで!?お前はなんなんだ!?僕はずっと幸せに生きるために!お母様と暮らすために!あいつの命令をずっと、ずっと我慢してきたんだ…リータにもアルバーンにも股を開いて媚を売って死にそうな思いをしながら生きてきたんだ!これで最後だったのに!どうしたらいいの?どうしたらどうしたらどうしたら…」
そう小さく呟くヤン。
想定外だったな。
お前、色んなやつに媚を売るだけの野郎だと思ったのに。
これは計算外だった。
でも、ヤン。そんなこと言わないでくれ。
俺は、アルバーン様を愛していて、アルバーン様はお前を愛しているんだ。
あの時は気が乱れてた、それでまだ通じる。
お前を愛しているアルバーン様なら信じてくれる。
だから。
「ヤン、こうなったら、ずぶとく、い、いきろ…いい、か?アルバーン様を…、それに、よ、よかったら、おとう、さま、おにいさまを、」
「お前…」
驚いた顔をするヤン。
俺に気付いたのか?
いや、どうでもいい。
「幸せに、してくれ」
そこで全てが真っ黒になった。
「はっ」
上官に持ち場を離れたことをこっぴどく叱られたものの、俺の過去の成果のおかげが任務を外される事はなかった。
リータ。
やつが何者か簡単に分かった。
他国から来ている貴賓だそうだが、実際は第二王子らしい。他国の使用人に金を渡すと簡単に割れた。
そしてヤン。やつは他国の貴族で、リータはもちろん、その使用人曰く自分の利益のためならなんでもするような奴らしく、他の男とも寝ているらしい。
俺は今からやることをやる。
リータとヤン。
奴らから3人を守るために。
決意を固めながら宴会場に向かい、任務に着く。
この宴会は他国との親善を深めるために行われているらしい。
広々とした会場で高貴な身分の方々が手を取って踊ったりワインを一緒に飲んだり楽しそうに話ている。
この宴会で、アルバーン様とお父様とお兄様が。
グッと拳を握り、目を光らせる。
絶対に殺させない、必ずお守りします。
「みなさま、本日の主役である王太子アルバーン様のご登場です。」
そのアナウンスに肩が揺れた。
やっと、見ることができる。
どんな姿になってるんだろう?
どんな風に成長したんだろう?
「こんちには、楽しんでくれ」
短い挨拶はよく知った声のままだった。
奥からコツコツと足音を鳴らして現れた人物はワインの入ったグラスを高く上げる。
あぁ、アルバーン様だ。
相変わらずの眩しい金髪に碧眼の綺麗な目。
身長がグッと伸び、体格も以前よりずっとよくなっている。
久しぶりに見るその美貌とその成長ぶりに思わず見惚れる。
にこりと周りに微笑んでいる様子は以前の無表情な対応を考えると信じられない。
きっと、ヤンのおかげだろう。
俺では彼は変えられなかった。
俺の愛ではダメだったんだな。
さっさと立ち去って正解だった。
でも、ヤンは。
グッと胸が熱くなっていると次のアナウンスが鳴る。
「続いてフェリアノ公爵家様です。」
ペコリとお辞儀をしてアルバーン様の近くにいるのは白髪が増えたお父様と、ますますお父様そっくりになったお兄様だった。
3人で何かを話し談笑する姿を見て確信する。
彼らは幸せに過ごしている。
俺はあの笑顔を守るために、今まで図太く生き残ってきたんだな。
「他国の貴賓です、リガー王国よりリータ様です」
来た。
そのアナウンスを聞き、リータの野郎に目を向けた途端、俺は猛スピードで走り出した。
早速仕掛けてきやがった!
お父様とお兄様にワインを渡そうとする使用人が短剣を持っているのが見えたからだ。
「触るなっ!この野朗!」
「なっ、てめぇ、ガッっっ!!」
思いっきり使用人を突き飛ばす。
「なんだこいつ!?おい捕らえ…」
慌てて近くの騎士に声をかけるリータの野郎に無我夢中で飛びかかる。
「なんなんだお前!?」
驚くクソ野郎に笑ってやる。
お前の計画通りにはさせない。
アルバーン様を傷つけさせない。
「おいお前!いますぐやめろ!」
アルバーン様の声がする。
あなたの命令はなんでも聞きたい。
けど、これだけは聞けない。
ごめんなさい、アルバーン様。
俺は思いっきり持っていた短剣を振りかざす。
何か叫んでいるリータの喉仏。
そこに向かって短剣を刺した。
躊躇いはなかった。
グシャッと血が跳ね返る。
リータはカハカハと息を必死にしようとしているがもうすぐ死ぬだろう。
「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」」」」」
会場中に悲鳴が響きわたる。
「そこの罪人を殺せ!!!」
お兄様の怒声が響く。
アルバーン様は目を見開いて固まっている。
お父様は慌ててリータに駆け寄って安否を確認している。
きっと目の前で次の指示なく主人を失った刺客たちは何もできない。
これで、よかった。
安心して目を閉じた時。
グサッと体に刺された感覚があった。
目をうっすら開けると剣先が胸元に見えた。
「死んで償え」
その声はアルバーン様のものだった。
いくら死に損ないでも剣が体を貫通したらさすが死ぬだろうな。
俺、気持ち悪い。
アルバーン様の手で死ねて、幸せだと感じるなんて。
「カハッ」
口の中、血の味がする…。
ようやく、俺、楽に。
「なんでなんでなんでなんで!!!!!!!」
そのつんざくような悲鳴が聞こえたと同時に目の前に広がった光景。
剣を持ち半狂乱に「全部全部全部台無しだ!アルバーンもフェリアノの野郎どもも死ね!死ね死ね死ね死ね!みんな死ね!!!」と叫ぶヤン。
剣先は俺が愛する人に向かっている。
きっと彼は動揺して動けない。
彼が、刺されてしまう。死んでしまうかもしれない。
だめ、それはダメだ。
リハルト、お前、いつも図太く生きてきただろ?たて、たてよ!立つんだ!!!
ふらふらする、視界が歪む。
それでも思いっきり走った。
間に合え間に合え間に合え!!!!!
「っ、はっ…」
血が口からゴホッと出た。
綺麗にもう一本剣が貫通したな。
なんとも立派な死に様だ。
痛い、苦しい、でも、不思議と穏やかだ。
「なんで!?なんでなんでなんでなんで!?お前はなんなんだ!?僕はずっと幸せに生きるために!お母様と暮らすために!あいつの命令をずっと、ずっと我慢してきたんだ…リータにもアルバーンにも股を開いて媚を売って死にそうな思いをしながら生きてきたんだ!これで最後だったのに!どうしたらいいの?どうしたらどうしたらどうしたら…」
そう小さく呟くヤン。
想定外だったな。
お前、色んなやつに媚を売るだけの野郎だと思ったのに。
これは計算外だった。
でも、ヤン。そんなこと言わないでくれ。
俺は、アルバーン様を愛していて、アルバーン様はお前を愛しているんだ。
あの時は気が乱れてた、それでまだ通じる。
お前を愛しているアルバーン様なら信じてくれる。
だから。
「ヤン、こうなったら、ずぶとく、い、いきろ…いい、か?アルバーン様を…、それに、よ、よかったら、おとう、さま、おにいさまを、」
「お前…」
驚いた顔をするヤン。
俺に気付いたのか?
いや、どうでもいい。
「幸せに、してくれ」
そこで全てが真っ黒になった。
あなたにおすすめの小説
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話
さんかく
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話
基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想
からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定
(pixivにて同じ設定のちょっと違う話を公開中です「不憫受けがとことん愛される話」)
【8話完結】いじめられっ子だった僕が、覚醒したら騎士団長に求愛されました
キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。
けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。
なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」
それが、すべての始まりだった。
あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。
僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。
だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。
過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。
これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。
全8話。
愛しい番に愛されたいオメガなボクの奮闘記
天田れおぽん
BL
ボク、アイリス・ロックハートは愛しい番であるオズワルドと出会った。
だけどオズワルドには初恋の人がいる。
でもボクは負けない。
ボクは愛しいオズワルドの唯一になるため、番のオメガであることに甘えることなく頑張るんだっ!
※「可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない」のオズワルド君の番の物語です。
※他サイトでも連載中
2026/01/28 第22話をちょっとだけ書き足しました。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
何かと突っかかってくる公爵様との婚約はお断りです。
あちゃーた
BL
剣術を磨き、王国最年少騎士となった真面目な主人公アーバン。
ある日、アーバンの元に実家から手紙が届く。
そこにはアーバンに婚約者ができたと綴られていた。
そんなの聞いてないし、第一相手はアーバンに何かと突っかかってくる公爵家のジェランではないか!?
「回避だ!回避!!こんなの絶対にお断りだぁぁぁぁ!!!」
ツンデレ溺愛攻め×鈍感受け
Seele―目が見えるようになったのは奇跡ではなく、罰だった―
真紀
BL
【完結まで執筆済み】目が見えない兄と、死にゆく弟の物語。
死んだ弟の角膜で、光(コウ)は視力を得た。見えたのは、涙をこらえる親友の顔。「和はおまえが大嫌いだった。憎んでた。だからおまえに目をくれたんだよ」光が歌をやめたのは、その日からだ。
あの人が泣きながら殴るたび、光は願う。「どうか明日は、早く壊れてしまえますように」と。
光は音楽を捨て、達哉は涙を隠せないまま、二人は同じ世界に立ち続ける。
これは、赦しのない世界で、それでも生きようとする者たちの物語。
《第二章》盲目の光が、最愛の弟を失うまでの日々を書いています。ブロマンス寄りですがBL好きな方に読んで欲しい作品です。「ノンケを堕とすノンケ」が好物の方、ぜひどうぞ。