愛され方を教えて

あちゃーた

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「おいリト!これから宴会が開かれる、今度は腹が痛いからとトイレに逃げずきちんと任務に着くように」

「はっ」

上官に持ち場を離れたことをこっぴどく叱られたものの、俺の過去の成果のおかげが任務を外される事はなかった。

リータ。
やつが何者か簡単に分かった。

他国から来ている貴賓だそうだが、実際は第二王子らしい。他国の使用人に金を渡すと簡単に割れた。
そしてヤン。やつは他国の貴族で、リータはもちろん、その使用人曰く自分の利益のためならなんでもするような奴らしく、他の男とも寝ているらしい。

俺は今からやることをやる。

リータとヤン。
奴らから3人を守るために。

決意を固めながら宴会場に向かい、任務に着く。

この宴会は他国との親善を深めるために行われているらしい。
広々とした会場で高貴な身分の方々が手を取って踊ったりワインを一緒に飲んだり楽しそうに話ている。

この宴会で、アルバーン様とお父様とお兄様が。

グッと拳を握り、目を光らせる。
絶対に殺させない、必ずお守りします。

「みなさま、本日の主役である王太子アルバーン様のご登場です。」

 そのアナウンスに肩が揺れた。

やっと、見ることができる。
どんな姿になってるんだろう?
どんな風に成長したんだろう?

「こんちには、楽しんでくれ」

短い挨拶はよく知った声のままだった。

奥からコツコツと足音を鳴らして現れた人物はワインの入ったグラスを高く上げる。

あぁ、アルバーン様だ。

相変わらずの眩しい金髪に碧眼の綺麗な目。
身長がグッと伸び、体格も以前よりずっとよくなっている。

久しぶりに見るその美貌とその成長ぶりに思わず見惚れる。

にこりと周りに微笑んでいる様子は以前の無表情な対応を考えると信じられない。
きっと、ヤンのおかげだろう。

俺では彼は変えられなかった。
俺の愛ではダメだったんだな。
さっさと立ち去って正解だった。

でも、ヤンは。

グッと胸が熱くなっていると次のアナウンスが鳴る。

「続いてフェリアノ公爵家様です。」

ペコリとお辞儀をしてアルバーン様の近くにいるのは白髪が増えたお父様と、ますますお父様そっくりになったお兄様だった。

3人で何かを話し談笑する姿を見て確信する。
彼らは幸せに過ごしている。

俺はあの笑顔を守るために、今まで図太く生き残ってきたんだな。

「他国の貴賓です、リガー王国よりリータ様です」

来た。

そのアナウンスを聞き、リータの野郎に目を向けた途端、俺は猛スピードで走り出した。

早速仕掛けてきやがった!

お父様とお兄様にワインを渡そうとする使用人が短剣を持っているのが見えたからだ。

「触るなっ!この野朗!」

「なっ、てめぇ、ガッっっ!!」

思いっきり使用人を突き飛ばす。

「なんだこいつ!?おい捕らえ…」

慌てて近くの騎士に声をかけるリータの野郎に無我夢中で飛びかかる。

「なんなんだお前!?」

驚くクソ野郎に笑ってやる。
お前の計画通りにはさせない。

アルバーン様を傷つけさせない。

「おいお前!いますぐやめろ!」

アルバーン様の声がする。
あなたの命令はなんでも聞きたい。
けど、これだけは聞けない。

ごめんなさい、アルバーン様。

俺は思いっきり持っていた短剣を振りかざす。

何か叫んでいるリータの喉仏。

そこに向かって短剣を刺した。

躊躇いはなかった。

グシャッと血が跳ね返る。

リータはカハカハと息を必死にしようとしているがもうすぐ死ぬだろう。

「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」」」」」

 会場中に悲鳴が響きわたる。

「そこの罪人を殺せ!!!」

お兄様の怒声が響く。
アルバーン様は目を見開いて固まっている。
お父様は慌ててリータに駆け寄って安否を確認している。

きっと目の前で次の指示なく主人を失った刺客たちは何もできない。

これで、よかった。

安心して目を閉じた時。

グサッと体に刺された感覚があった。
目をうっすら開けると剣先が胸元に見えた。

「死んで償え」

その声はアルバーン様のものだった。

いくら死に損ないでも剣が体を貫通したらさすが死ぬだろうな。

俺、気持ち悪い。
アルバーン様の手で死ねて、幸せだと感じるなんて。

「カハッ」

口の中、血の味がする…。

ようやく、俺、楽に。

「なんでなんでなんでなんで!!!!!!!」

そのつんざくような悲鳴が聞こえたと同時に目の前に広がった光景。

剣を持ち半狂乱に「全部全部全部台無しだ!アルバーンもフェリアノの野郎どもも死ね!死ね死ね死ね死ね!みんな死ね!!!」と叫ぶヤン。

剣先は俺が愛する人に向かっている。
きっと彼は動揺して動けない。
彼が、刺されてしまう。死んでしまうかもしれない。

だめ、それはダメだ。

リハルト、お前、いつも図太く生きてきただろ?たて、たてよ!立つんだ!!!

ふらふらする、視界が歪む。

それでも思いっきり走った。

間に合え間に合え間に合え!!!!!

「っ、はっ…」

血が口からゴホッと出た。
綺麗にもう一本剣が貫通したな。
なんとも立派な死に様だ。

痛い、苦しい、でも、不思議と穏やかだ。

「なんで!?なんでなんでなんでなんで!?お前はなんなんだ!?僕はずっと幸せに生きるために!お母様と暮らすために!あいつの命令をずっと、ずっと我慢してきたんだ…リータにもアルバーンにも股を開いて媚を売って死にそうな思いをしながら生きてきたんだ!これで最後だったのに!どうしたらいいの?どうしたらどうしたらどうしたら…」

そう小さく呟くヤン。

想定外だったな。
お前、色んなやつに媚を売るだけの野郎だと思ったのに。
これは計算外だった。
でも、ヤン。そんなこと言わないでくれ。
俺は、アルバーン様を愛していて、アルバーン様はお前を愛しているんだ。
あの時は気が乱れてた、それでまだ通じる。
お前を愛しているアルバーン様なら信じてくれる。
だから。

「ヤン、こうなったら、ずぶとく、い、いきろ…いい、か?アルバーン様を…、それに、よ、よかったら、おとう、さま、おにいさまを、」

「お前…」

驚いた顔をするヤン。
俺に気付いたのか?
いや、どうでもいい。

「幸せに、してくれ」

そこで全てが真っ黒になった。

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