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婚約はなくなり、俺は今回アルバーン様と関わることない人生を歩む……と決まったはずだったのだが、なぜか非常におかしいことになっている。
「何度も何度も何度も!王家のやつらはうちのリハルトをどうする気なんですか!?」
ビリッと手に持った手紙を破り捨てるお兄様の顔は怒りで満ちていた。
手紙には王家の紋章がついている。
そう、またもや俺とアルバーン様の婚約の提案が書かれた手紙が送られてきたのだ。
またもや、というあたり察してほしいのだが、これで7通目だ。
さすがにしつこすぎる。
仮初の婚約者をとりあえず決めたいという考えなら俺以外でも絶対にいいはずだ。
何度も送られてくる手紙から何か別の意図を感じる。
「このままではいずれ勅令が出てしまってもおかしくない!どうするんですか父上!!!」
目を血張らせてお兄様がお父様を見た。
お父様は椅子に深く座ったまま俯いていた。
ぶつぶつと「殺す」「反逆」というところどころ物騒な単語が聞こえるのだが、気のせいだと思いたい。
「聞いてるんですか父上!リハルトが王家と婚約者になって、あんなろくでもない噂が立っている野郎に時間と労力を使う羽目になるなんて…、俺は耐えられない!リハルトが婚約破棄なんてされたらものならっ、俺、俺はっ!!」
勝手に王太子と婚約した未来の俺を想像してお兄様は阿鼻叫喚している。
お兄様のこの感じにはもうすっかり慣れたので相手にするだけ症状が重症化することを知っている。
俺はスルーすることにした。
それよりも気になるのは先ほどからずっと何か物騒なことをを唱えているお父様だ。
心配になってちらりとその様子を伺う。
さすがに、これだけ王家から婚約の提案書がきてるのに断り続けるのはよくない。というか、最悪刃向かったとみなされる恐れだってある。
大人しく婚約した方がいいのだろう。
ヤンは他国のクソ王子の命令のせいでアルバーン様をきちんと見ることができなかっただけなんだ。
俺がヤンの件をうまく片付けて彼のしがらみをなくせさえすれば、きっとヤンはアルバーン様に惹かれて過去の惨劇は起こらない。
俺が初めから婚約なんてしない方がいいに決まってるけど仕方がない。
大丈夫。
過去みたいにアンバーン様に付き纏うことなく、静かに婚約破棄さえすれば、俺が勝手に傷つくだけであとは全てうまくいく。
リハルト、お前は一度経験しただろ?
俺ならできる。
それにお兄様の言う通り、この調子ならいずれ勅令が出る可能性が高い。
公爵家であっても、いや、だからこそ、その命令はは絶対に従わなくてはならない。
俺の我儘でお父様、お兄様の負担にはなりたくない。
だから、ヤンが戻ってくるまで耐えれば。
その時ふと、疑問が生まれた。
なぜ、アルバーン様はヤンとの婚約をすぐにできなかったかったのか。
何か事情があったのか?
この国では他国籍のものと婚約を結ぶことはできるものの、アルバーン様は王太子だ。
王太子の婚約者となったら、それ相応の義務が当然発生する。
婚約を結んで結婚するまでの間、王宮に訪れて定期的にアルバーン様と会ったり、作法を学んだりしなければならない。
また、将来的にはこの国の王妃となる身分なのだから、この国に居続けられる存在でなければ婚約は結べない。
つまり、過去ではヤンが他国にいる状態だったので婚約は長いこと結べなかった。
何か理由があってヤンは俺が15歳の頃までリガー帝国にいた?
早くこっちに来て婚約を結べばあいつの策略はもっとうまくいったはず…。
なぜだ?どうして…?
いや、ちょっと待て。
「リハルト、私はお前の幸せを奪う奴らを全員殺…」
「あるかもしれないです!!」
覚悟を決めた顔をして物騒なことを言い出すお父様の言葉をかき消す。
「な、何?」
「婚約しなくてもいい方法!俺、リガー帝国に行きます!」
そうだ、これだ。
俺が他国に行けば必然的に婚約はアルバーン様の身分上不可能になる。
それに、リガー帝国に行けば、ヤンの問題を早々に片付けられるかも。
「だ、だめだ、だめだ、ためだ!!!」
お兄様は顔を青白くさせて慌てふためく。
「でも、これしか方法はありません」
「だ、だとしても絶対にだめだ!き、危険すぎるし何よりリハルト、お前を一人になんてもうすることはできない」
「で、でも」
食い下がらないお兄様をどうやって説得しようかと考えていると、徐にお父様が口を開いた。
「リハルトの案を受け入れよう」
その言葉にシーンと部屋が静まり返った。
お兄様は信じられないと言う顔をしてお父様を見る。
「ち、父上!何を言って…」
「お前の言う通り、王からの勅令が出てしまえば、私たちは従わなくてはならなくなる。仮に刃向かったとしても待っているのは争いだ。負けてしまえばそれこそ一生リハルトを一人にしてしまうかもしれない。」
その言葉に何か言いかけていたお兄様の口が閉じる。
「リハルト、行ってきなさい。ただし、王太子が婚約者を決めたら、この件が落ち着いたら、絶対に帰ってくるんだ。」
その言葉を聞いている途中に俺の体は涙ぐむお父様とお兄様の両腕に包み込まれた。
「何度も何度も何度も!王家のやつらはうちのリハルトをどうする気なんですか!?」
ビリッと手に持った手紙を破り捨てるお兄様の顔は怒りで満ちていた。
手紙には王家の紋章がついている。
そう、またもや俺とアルバーン様の婚約の提案が書かれた手紙が送られてきたのだ。
またもや、というあたり察してほしいのだが、これで7通目だ。
さすがにしつこすぎる。
仮初の婚約者をとりあえず決めたいという考えなら俺以外でも絶対にいいはずだ。
何度も送られてくる手紙から何か別の意図を感じる。
「このままではいずれ勅令が出てしまってもおかしくない!どうするんですか父上!!!」
目を血張らせてお兄様がお父様を見た。
お父様は椅子に深く座ったまま俯いていた。
ぶつぶつと「殺す」「反逆」というところどころ物騒な単語が聞こえるのだが、気のせいだと思いたい。
「聞いてるんですか父上!リハルトが王家と婚約者になって、あんなろくでもない噂が立っている野郎に時間と労力を使う羽目になるなんて…、俺は耐えられない!リハルトが婚約破棄なんてされたらものならっ、俺、俺はっ!!」
勝手に王太子と婚約した未来の俺を想像してお兄様は阿鼻叫喚している。
お兄様のこの感じにはもうすっかり慣れたので相手にするだけ症状が重症化することを知っている。
俺はスルーすることにした。
それよりも気になるのは先ほどからずっと何か物騒なことをを唱えているお父様だ。
心配になってちらりとその様子を伺う。
さすがに、これだけ王家から婚約の提案書がきてるのに断り続けるのはよくない。というか、最悪刃向かったとみなされる恐れだってある。
大人しく婚約した方がいいのだろう。
ヤンは他国のクソ王子の命令のせいでアルバーン様をきちんと見ることができなかっただけなんだ。
俺がヤンの件をうまく片付けて彼のしがらみをなくせさえすれば、きっとヤンはアルバーン様に惹かれて過去の惨劇は起こらない。
俺が初めから婚約なんてしない方がいいに決まってるけど仕方がない。
大丈夫。
過去みたいにアンバーン様に付き纏うことなく、静かに婚約破棄さえすれば、俺が勝手に傷つくだけであとは全てうまくいく。
リハルト、お前は一度経験しただろ?
俺ならできる。
それにお兄様の言う通り、この調子ならいずれ勅令が出る可能性が高い。
公爵家であっても、いや、だからこそ、その命令はは絶対に従わなくてはならない。
俺の我儘でお父様、お兄様の負担にはなりたくない。
だから、ヤンが戻ってくるまで耐えれば。
その時ふと、疑問が生まれた。
なぜ、アルバーン様はヤンとの婚約をすぐにできなかったかったのか。
何か事情があったのか?
この国では他国籍のものと婚約を結ぶことはできるものの、アルバーン様は王太子だ。
王太子の婚約者となったら、それ相応の義務が当然発生する。
婚約を結んで結婚するまでの間、王宮に訪れて定期的にアルバーン様と会ったり、作法を学んだりしなければならない。
また、将来的にはこの国の王妃となる身分なのだから、この国に居続けられる存在でなければ婚約は結べない。
つまり、過去ではヤンが他国にいる状態だったので婚約は長いこと結べなかった。
何か理由があってヤンは俺が15歳の頃までリガー帝国にいた?
早くこっちに来て婚約を結べばあいつの策略はもっとうまくいったはず…。
なぜだ?どうして…?
いや、ちょっと待て。
「リハルト、私はお前の幸せを奪う奴らを全員殺…」
「あるかもしれないです!!」
覚悟を決めた顔をして物騒なことを言い出すお父様の言葉をかき消す。
「な、何?」
「婚約しなくてもいい方法!俺、リガー帝国に行きます!」
そうだ、これだ。
俺が他国に行けば必然的に婚約はアルバーン様の身分上不可能になる。
それに、リガー帝国に行けば、ヤンの問題を早々に片付けられるかも。
「だ、だめだ、だめだ、ためだ!!!」
お兄様は顔を青白くさせて慌てふためく。
「でも、これしか方法はありません」
「だ、だとしても絶対にだめだ!き、危険すぎるし何よりリハルト、お前を一人になんてもうすることはできない」
「で、でも」
食い下がらないお兄様をどうやって説得しようかと考えていると、徐にお父様が口を開いた。
「リハルトの案を受け入れよう」
その言葉にシーンと部屋が静まり返った。
お兄様は信じられないと言う顔をしてお父様を見る。
「ち、父上!何を言って…」
「お前の言う通り、王からの勅令が出てしまえば、私たちは従わなくてはならなくなる。仮に刃向かったとしても待っているのは争いだ。負けてしまえばそれこそ一生リハルトを一人にしてしまうかもしれない。」
その言葉に何か言いかけていたお兄様の口が閉じる。
「リハルト、行ってきなさい。ただし、王太子が婚約者を決めたら、この件が落ち着いたら、絶対に帰ってくるんだ。」
その言葉を聞いている途中に俺の体は涙ぐむお父様とお兄様の両腕に包み込まれた。
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