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「リト、リトか」
俺の名前を口にしてニタァと笑うリータに背筋が凍る。
とんでもない野郎に声をかけられてしまった。
「リ……ト、帰ろう。」
ダゼン、また俺の本名を呼びかけたな。
若干呆れつつも「あぁ、ではこれで」とそそくさと退散しようとしたのだが、ガシッと腕を掴まれる。
「離してください」
「嫌だね」
「離してください」
「リトが嫌がってる。離せ。」
「お前は黙ってろ!リト、コホンッ!今度俺の家に遊びにこい」
「嫌です」
「何でだ!?」
いい加減に離さないとその顔面ミンチになるぞ。
キッと強く睨みつけるものの、何ともない顔をしてリータは笑っているだけだった。
「いい加減に…」
「おい!リータ!!!」
ゾロゾロと門の方から人が出てくる中、見たことのある髪色の二人組がリータのもとに駆け寄ってきていた。
貴族だと騒がれていた赤い髪と黒い髪のやつらだ。
「お前何やってるんだよ」
「そうだぞ、嫌がってるだろ?離してやれよ」
どうやら悪い奴らではないらしい。
二人の声を聞いたリータは俺の手をゆっくりと離す。
「悪い」
あっけらかんと謝ってくるリータの姿に目をぱちくりさせる。
さっきから思ってはいたが、リータの性格が想像していたものと違う。
強引で傲慢そうなところは予想通りだが、俺とダゼンが生意気な態度を取っても激怒したり罰しようとしないし、意外と仲間の言うことを素直に聞いている。
許してはいけない、いけないのは分かってはいるがこんな奴が人を殺してまで国を乗っ取ろうとするだろうか?
こいつも、過去に何かあったのだろうか?
ふとそんな考えが浮かんだが、ふるふると頭を横に振る。
今はそんなこと考えている余裕なんてない。
ヤンをまず第一にどうにかしないといけないんだから。
「失礼します」
一応別れの挨拶はきちんとしてダゼンと共にその場を去る。
ちらりと後ろを振り返ると「強引すぎる」「お前は何様だ」と二人から説教されて項垂れているリータが見えた。
「あいつ、何?」
ダゼンが横を歩きながら尋ねてくるので「初めて会った人、もう関係ない」とだけ伝えておく。
ダゼンも剣術の試験は大丈夫そうだったので後は合格を待つだけだ。
アルタード学園はすぐに合格者発表があり、その後学校の寮に引っ越さなければならない。
メイドとダゼンと共に荷物をまとめ、合格通知を待った。
翌朝。
起きて食卓へと向かうとメイドが手紙を持って微笑んでいた。
「おめでとうございます、ダゼン、リハルト様」
その言葉で全て察した。
無事、俺とダゼンは合格できたらしい。
「ありがとう…、メイド…いや、キャリー。しばらく会えなくなるけど元気で過ごしてくれ」
ここ数ヶ月俺のために働いてくれたメイドの名前を呼んでみた。
一瞬メイドはぽかんとしていたが、「はい」とすぐにハキハキとした声色の返事をした。
たが、その顔はいつもと違って珍しく満面の笑みを浮かべていた。
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