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「おい聞いてんのか?」
聞いてる。
聞いてるから絶望してるんだ。
「っち…なんだこいつ?おい!お前だよ!リト!!!」
ダンッと今度は机に勢いよく手を置いてヤンは俺を睨みつける。
「………すまない、ぼーっとしていた」
開けっぱなしの口がようやく言葉を紡ぐ。
ヤンは俺の言葉に「ふんっ」と息を吐き、「返事がおせぇんだよ」と小言を呟いた。
受け入れるしかない。
さっさとヤンとの関係を築かなくてはならないのだから。
お兄様やお父様だって過去とは変わっていた。
別にヤンが過去と違ったっておかしくはない。
なんなら、これがこいつの本当の性格かもしれないしな。
「話があると言っていたが何か俺に用事があるのか?」
ヤンは行儀悪く目の前の机に座ると、「おうっ」と返事をしてニヤリと笑った。
「お前、特別学習の参加プログラムにグループワークがあって、優勝できたら賞金が出ること知ってるか?」
「いや、初めて知った」
「俺は今金がいるんだ、絶対に優勝したい。そこでだ、グループワークは2人1組!お前、俺と組め!」
一人称が、お、俺!?
ヤンは僕だっただろうが!
いや、解釈違いを起こしている場合じゃない。
「成績順だとダゼンと組んだ方が良くないか?」
浮かんだ疑問を口にすると、ヤンはチラリと俺の横でまた眠りこけそうなダゼンを見てうげぇっという顔をした。
「嫌なこった!ソイツと組んだら俺、思わず殴っちまう。俺より成績良いからどっちもムカつくけど、普段真面目な態度取ってるお前の方がマシだからな」
ダゼン、ヤンにいつの間にか心底嫌われてるぞ。
「それにたまには違うやつとつるんだほうが良いことが得られるかもしれないだろ?どうだ?」
棚から牡丹餅とはこのことだろう。
どうやってヤンと接触を図ろうか悩んでいたが、まさか自分から俺に絶好の機会を与えてくれるなんて。
「あぁ、良い案だな、賛成…」
「リト!!!!!」
ダンッと勢いよくこちらに走って来て抱きつこうとする輩の気配を察知し、慌てて体をよじる。
スカッと抱きつく対象をなくした両腕が空振りしていた。
出やがった。
「なんで避ける!?」
「当たり前だ!急に抱きつく奴がいるか!」
「リト、そろそろ俺に靡いてもいい頃…ってなんだ貴様?」
リータは顔馴染みではない顔に気がついたようだ。
「初対面の人間に対して王子様はだいぶ失礼なんだな」
はっと軽く乾いた笑みを漏らすヤンにリータも負けじと「貴様も大概失礼な態度だと思うが?」と喧嘩腰に言葉を返す。
なるべく関わってほしくない2人が関わってしまって俺は軽く天を仰いでいた。
最悪だ。
いや、ヤンと接触を図りたい俺を追いかけ回してくるリータが、ヤンと関わってしまうのは時間の問題だったのかもしれない。
こうなったら仕方がない。
2人が過去のようにならないよう、俺が頑張ればよい。
そのために俺はいるのだから。
「おい、喧嘩はやめとけよ」
後からぞろぞろとリータに続いてやって来たラキとティンが口を挟む。
バチバチと火花を散らしていた2人はフンッとお互いそっぽを向いて顔を合わせようとしない。
リータがヤンを抱いていた過去が信じられないのだが。
「邪魔が入ったがとりあえず約束はしたからな、後で忘れてたら叩きのめしてやる」
ヤンは物騒なことを言って離れた席にどしっと腰を下ろした。
「約束…?あんな奴と何を約束したんだ?」
案の定リータがその話に目を光らせた。
こうなるとしつこいので大人しく「特別学習のグループワークでペアを組むことにした」と伝える。
「あ、あいつと!?」
「あぁ」
「なぜだ?だったら俺とでいいだろう!?」
「いや、誰でもよかったし」
「だったらせめてそこで眠りこけている怠け者と組んでくれた方がマシだ!あ、あんな野郎と俺のリトが…」
誰がいつお前のものになった?
そんなツッコミをする暇もなく、リータはくるりと向きを変え、ドスドスとヤンの元に歩いていく。
嫌な予感しかしない。
「貴様…」
「んだよ?」
鬱陶しそうな顔をするヤン。
その様子を見たリータはぴくりと青筋を立てて口を開く。
「貴様だけは絶対に許さん!!!いいか?リトは俺のものだ」
頼む、勘弁してくれ。
聞いてる。
聞いてるから絶望してるんだ。
「っち…なんだこいつ?おい!お前だよ!リト!!!」
ダンッと今度は机に勢いよく手を置いてヤンは俺を睨みつける。
「………すまない、ぼーっとしていた」
開けっぱなしの口がようやく言葉を紡ぐ。
ヤンは俺の言葉に「ふんっ」と息を吐き、「返事がおせぇんだよ」と小言を呟いた。
受け入れるしかない。
さっさとヤンとの関係を築かなくてはならないのだから。
お兄様やお父様だって過去とは変わっていた。
別にヤンが過去と違ったっておかしくはない。
なんなら、これがこいつの本当の性格かもしれないしな。
「話があると言っていたが何か俺に用事があるのか?」
ヤンは行儀悪く目の前の机に座ると、「おうっ」と返事をしてニヤリと笑った。
「お前、特別学習の参加プログラムにグループワークがあって、優勝できたら賞金が出ること知ってるか?」
「いや、初めて知った」
「俺は今金がいるんだ、絶対に優勝したい。そこでだ、グループワークは2人1組!お前、俺と組め!」
一人称が、お、俺!?
ヤンは僕だっただろうが!
いや、解釈違いを起こしている場合じゃない。
「成績順だとダゼンと組んだ方が良くないか?」
浮かんだ疑問を口にすると、ヤンはチラリと俺の横でまた眠りこけそうなダゼンを見てうげぇっという顔をした。
「嫌なこった!ソイツと組んだら俺、思わず殴っちまう。俺より成績良いからどっちもムカつくけど、普段真面目な態度取ってるお前の方がマシだからな」
ダゼン、ヤンにいつの間にか心底嫌われてるぞ。
「それにたまには違うやつとつるんだほうが良いことが得られるかもしれないだろ?どうだ?」
棚から牡丹餅とはこのことだろう。
どうやってヤンと接触を図ろうか悩んでいたが、まさか自分から俺に絶好の機会を与えてくれるなんて。
「あぁ、良い案だな、賛成…」
「リト!!!!!」
ダンッと勢いよくこちらに走って来て抱きつこうとする輩の気配を察知し、慌てて体をよじる。
スカッと抱きつく対象をなくした両腕が空振りしていた。
出やがった。
「なんで避ける!?」
「当たり前だ!急に抱きつく奴がいるか!」
「リト、そろそろ俺に靡いてもいい頃…ってなんだ貴様?」
リータは顔馴染みではない顔に気がついたようだ。
「初対面の人間に対して王子様はだいぶ失礼なんだな」
はっと軽く乾いた笑みを漏らすヤンにリータも負けじと「貴様も大概失礼な態度だと思うが?」と喧嘩腰に言葉を返す。
なるべく関わってほしくない2人が関わってしまって俺は軽く天を仰いでいた。
最悪だ。
いや、ヤンと接触を図りたい俺を追いかけ回してくるリータが、ヤンと関わってしまうのは時間の問題だったのかもしれない。
こうなったら仕方がない。
2人が過去のようにならないよう、俺が頑張ればよい。
そのために俺はいるのだから。
「おい、喧嘩はやめとけよ」
後からぞろぞろとリータに続いてやって来たラキとティンが口を挟む。
バチバチと火花を散らしていた2人はフンッとお互いそっぽを向いて顔を合わせようとしない。
リータがヤンを抱いていた過去が信じられないのだが。
「邪魔が入ったがとりあえず約束はしたからな、後で忘れてたら叩きのめしてやる」
ヤンは物騒なことを言って離れた席にどしっと腰を下ろした。
「約束…?あんな奴と何を約束したんだ?」
案の定リータがその話に目を光らせた。
こうなるとしつこいので大人しく「特別学習のグループワークでペアを組むことにした」と伝える。
「あ、あいつと!?」
「あぁ」
「なぜだ?だったら俺とでいいだろう!?」
「いや、誰でもよかったし」
「だったらせめてそこで眠りこけている怠け者と組んでくれた方がマシだ!あ、あんな野郎と俺のリトが…」
誰がいつお前のものになった?
そんなツッコミをする暇もなく、リータはくるりと向きを変え、ドスドスとヤンの元に歩いていく。
嫌な予感しかしない。
「貴様…」
「んだよ?」
鬱陶しそうな顔をするヤン。
その様子を見たリータはぴくりと青筋を立てて口を開く。
「貴様だけは絶対に許さん!!!いいか?リトは俺のものだ」
頼む、勘弁してくれ。
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