愛され方を教えて

あちゃーた

文字の大きさ
33 / 34

2:15

「おっ、お前!廊下とかでやたらと俺を見てるなとは思ってたけど!そういうことかよっ!ただのムッツリスケベ野郎じゃねぇーか!」

「………?む、ムッツリスケベ野郎?俺はただお前を守りたいだけだ」

「り、リト!目を覚ませ!こいつはただのチンピラだ!どこに守ってやらなきゃならない要素があるんだ!?」

「全てだ」

「全て!?」

「き、きめぇんだよっ!近寄んなっ!!!」

「なんかとんでもないことになってない?」

「ティンもそう思う?俺も」

相変わらずうとうとして眠たげなダゼンの横でラキとティンはコソコソと耳打ちをし合う。

リータは顔面蒼白で俺とヤンの顔を相互に見て呆然としている。

一方で、顔を真っ赤にして俺を見たヤンは猫みたいにシャーッとこちらに威嚇する。

「俺はお前に守ってもらわなくてもいいんだよ!ムッツリスケベ野郎!」

なんで俺がムッツリスケベ野郎になっている?
変態はどちらかというとリータだろう?

「おい、ヤン。何か誤解が…」

「約束はしたからペアワークはやってやるよ!ただしそれ以降はもう話すこともないからな!ムッツリスケベ野郎!!!」

くるっと踵を返して俺から離れたところにヤンは座る。

慌てて追いかけようとするも「近寄んなっ!」と威嚇され、しぶしぶ大人しく元々座っていた席に座る。

「おい、リータ。元気出せって」

「そうだそうだ!お前の性格を考えるとこうなるのは当たり前かもな」

すっかり魂の抜けた様子のリータはラキとティンに介護されながら席に座らされていた。

あいつ、どうしたんだ…?

「みなさん、席についてますかー?」

ガラッと扉が開き、教師が教室を見渡しながら入って来たため、この騒ぎは一旦落ち着いた。

そこからヤンの言っていた通りペアワークの話が始まり、ペアを決めるように言われた。

ヤンのところに向かおうと立ち上がった途端、ドンっと横から音がした。

横を見ると、不機嫌そうなヤンが隣で偉そうに座っているではないか。

「ペアワーク、頑張ろう」

「黙れムッツリスケベ!俺が組んでやるんだ、優勝が絶対だからな」

ヤンはギロリとこちらを見てそう言い放つ。

だが、顔が可愛らしいのと、真っ赤なのとでイマイチ迫力がなかった。

そして誰がムッツリスケベだ。

が、ここで否定したところで罵詈雑言を言われるだけなのは目に見えたので俺は大人しくこくりと頷きペアを申請する紙に名前を書く。

「………お前、本当に平民なんだな」

「……?あぁ」

本当は他国の一応貴族だが。

ヤンはまじまじと俺が書いた「リト」の文字と、俺の顔とを見比べる。

「そんな綺麗な顔ぶら下げて、挙句王子様含め他の貴族に生意気な態度取る平民なんて初めて見た」

ふと、リガー帝国に来てからの自分の行動を振り返る。

第二王子であるリータ、そして公爵家のラキとティン、さっきのナヒという侯爵家の人間に敬語も使わずなんなら口悪く接する俺が頭に思い返される。

確かに、平民にしては怖いもの知らずだったかもしれない。

今度貴族の奴らと接する時は気を付けてみるか。

そんなことを思っている間に、ヤンは横で「ヤン・カリド」と名前を記入し始めた。

話を続けようと思い、「俺もお前みたいに天使みたいな顔で生意気なやつ初めて見た」と言ってみる。

ヤンの手がピタッと止まり、視線が紙から俺に移る。

「………言っとくけど、俺に媚びても、いいことねぇからな」

「媚びてない、純粋に思っただけだ。お前は可愛い顔をしている」

「………顔だけかよ」

ボソッと呟かれたその声は酷く弱々しく聞こえた。

ヤンが顔だけのやつなら、どれだけよかっただろうか。

死ぬ間際に見た、今にも泣きそうだった男を思い出す。

まだ、何があったのか、これから何が起こるのか俺にはわからない。
お前が何を背負ってるのかわからない。

だが、母親を守るために自分を犠牲にできるやつってことだけは知ってる。

それに。

「お前は顔だけじゃない」

「お前が何を知ってるんだよ、黙れ変態」

「さっきお前の言った通り、俺はお前のことをずっと見ていた。放課後残って剣を振ったり、勉強したりして一生懸命努力している姿も、もちろん知っている。なんなら噂になっているほどだ。そういう一生懸命なところが…」

そう。
そういうところに、アルバーン様は惹かれたんだろうな。
アルバーン様は顔で人を決めるような人じゃない。
ヤンの中身を知って、きっと恋に落ちたんだ。

「…………お、お前まじできめぇんだよ!」

バッと紙を顔に押し付けられる。
結構な痛みが顔に走り、「痛い…」と呟く。

「きっ、貴様!!!俺のリトに攻撃するな!」

「うっせーなっ!黙れ癇癪王子!!!」

「なっ!か、癇癪王子!?貴様いい加減に…!」

ギャーギャーとまた騒がしくなった教室だが、今回は教師の「みなさん!騒がないでください!!!」という叱責があり、ストンと落ち着いた。

痛む顔を押さえつつ、まだ書き途中の申請用紙をヤンに手渡す。

「はい」

「………」

ヤンはばっと無言で俺から紙を奪い取り、名前を書き終える。
それからじーっとただただ俺を見つめてくる。

さすがに気まずい。

「何だ?」

「………リトって呼んでやる」

リータと言い争って怒りが収まらないのか?
顔を真っ赤にしたヤンがそう言ってきた。

心境の変化でもあったのだろうか?
分からないが、これでムッツリスケベではなくなった。



あなたにおすすめの小説

愛されたいだけなのに

まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。 気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。 しかしまた殺される。 何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。

“いらない婚約者”なので、消えました。もう遅いです。

あめとおと
恋愛
婚約者である王子から、静かに告げられた言葉。 ――「君は、もう必要ない」 感情をぶつけることもなく、彼女はただ頷いた。 すべては、予定通りだったから。 彼女が選んだのは、“自分の記憶を世界から消す魔法”。 代償は、自身という存在そのもの。 名前も、記憶も、誰の心にも残らない。 まるで最初からいなかったかのように。 そして彼女は、消えた。 残された人々は、何かが欠けていることに気づく。 埋まらない違和感、回らない日常。 それでも――誰一人、思い出せない。 遅すぎた後悔と、届かない想い。 すべてを失って、ようやく知る。 “いらない存在”など、どこにもいなかったのだと。 これは、ひとりの少女が消えたあとに、 世界がその価値に気づく物語。 そして――彼女だけが、静かに救われる物語。

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

【完結・続編別立】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ@5月中旬書籍発売
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

Seele―目が見えるようになったのは奇跡ではなく、罰だった―

真紀
BL
【第ニ楽章完結】目が見えない兄と、彼を一人遺して死にゆく弟の物語。 死んだ弟の角膜で、光(コウ)は視力を得た。見えたのは、涙をこらえる親友の顔。「和はおまえが大嫌いだった。憎んでた。だからおまえに目をくれたんだよ」光が歌をやめたのは、その日からだ。 あの人が泣きながら殴るたび、光は願う。「どうか明日は、早く壊れてしまえますように」と。 光は音楽を捨て、達哉は涙を隠せないまま、二人は同じ世界に立ち続ける。 これは、赦しのない世界で、それでも生きようとする者たちの物語。 ブロマンス寄りですがBL好きな方に読んで欲しい作品です。「ノンケを堕とすノンケ」が好物の方、ぜひどうぞ。

手の届かない元恋人

深夜
BL
昔、付き合っていた大好きな彼氏に振られた。 元彼は人気若手俳優になっていた。 諦めきれないこの恋がやっと終わると思ってた和弥だったが、仕事上の理由で元彼と会わないといけなくなり....

グラジオラスを捧ぐ

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
憧れの騎士、アレックスと恋人のような関係になれたリヒターは浮かれていた。まさか彼に本命の相手がいるとも知らずに……。