好きな人に猛アタックする僕のお話。

あちゃーた

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僕と君

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「好き!!!」


「……馬鹿なこと言ってないで仕事をしろ、仕事を!!」


ゴンッと勢いよく頭に振り下ろされた拳に思わず「痛い」っと叫ぶ。

うぅ。

今日も失敗かぁ。


「殴ることないじゃん!好き!大好き!付き合って!」


「だ~か~ら~!!口を動かすなら手を動かせ!」


「好…なんでもないです」


愛を叫ぼうと口を開けばいい加減にしろと拳を向けられたのでスッと口を閉じた。

うーむ、どうしたものか…。

ぐぬぬぬぬ。

腕を組み、皺を眉間に寄せて必死に考える。

何をって?

それは決まっている。

今現在、生徒会室で僕の隣に座っている幼馴染…黒井 新君を落とす方法をです。

しかし、僕がどんなにアピールしたって彼は惚れたの惚の字も見せてくれないのだ。

何しろ彼はスーパーマン!

この超エリート高校で生徒会長を務め、毎日違う子に告白されるのが当たり前の男となってしまっている。

これは由々しき大問題……。


「うーん、うーん」


「まーた変なこと考えてるな!おかしなことだけはするなよ!いいな!」


ギロっと睨まれてヒィッと肩を縮ませながら仕方なく頷く。


「へーい…」


ケチッ!!

と心の中で呟くとそれがまるで聞こえたかのようにニコォッと微笑まれた。

いや、こっわ!

恐怖っす!


「手を動かせよ、手を!!」


「他に何も動かすって言うのさ」


「……さっきからお前の一番動いているところをこれで留めてやろうか?」


ガチャッッ!

ホッチキスで書類の束を留めながらそう言われた。

これとは何を指すのか…まさか先程からガチャガチャ鳴っているそのホッチキスではありませんよね??


「ははは…あ、はい、手を、動かしまーす」


サッと書類の角をトントンと机で整える。

本気で怒り始めちゃった。

ここは真面目にして僕の株を上げとかないと…うん。


「はい!整えたよ!」


「……お前は整えるのが仕事と思ってるのか?」


え??


そう聞き返す前に目が笑っていない笑みがこちらに向く。


「俺はお前に何を頼んだ??」


「え…あ…」


そう言えば。

新君は明日配る書類の束を作らないといけないから生徒会の活動記録帳を書いて欲しいって言われた…っけ??


「あ、あはははは!新君と少しでも一緒に活動したくて…間違えちゃったみたい、えへへ」


これだから僕は好きになって貰えないんだろうな。

もっとしっかりして新君の隣を堂々と歩けるような人になりたい。

頑張らなくっちゃ。


「……分かったなら早く書け」


「うん?」


あ、あれ??

怒って…ない!?

いつもならこのバカ~って怒るところなのに。

どうしちゃったんだろう??

チラッと横目で見てみると彼が耳を真っ赤にさせて俯いていた。

ま、まさか…風邪!?


「あ、新君…」


「なんだよ…」


「なんでそんなに真っ赤なの??」 


「聞くな、バカ」


バカ…?

自然に悪口言われた、あ、いつものことか。

とりあえず元気…だよね??

にしても。

束を留める度にチラチラとこちらを見る視線に緊張が走る。

思わず日誌を書くために握っていたシャーペンの芯をポキポキと折っちゃうくらい緊張してますよ、僕!

え、何かしましたか!?

はっ、これはもしや…。


「好き!」


「だから!そう易々とそんな事を言うな…慣れるまで大変だったんだぞ、ポーカーフェイスとか、ポーカーフェイスとか…」


違った。

遂に僕と付き合う気になったのかと思ったら。

安心して、僕はいつでも新君と付き合う覚悟はできてるよ…そう意味を込めて出来るだけ可愛く微笑む。

頑張って上目遣いしたよ、似合わないとか言わないでね、分かってますから!

するとポーカーフェイスポーカーフェイスとよく分からない呟きを繰り返していた新君がダンッとホッチキスを机に置いた。

あのホッチキスで留めちゃうぞ発言を思い出して慌てて口を塞ぐ。

自覚はあるよ、今一番動いてるのは僕のお口ってことぐらい分かってますよ?

だからってやっていいことといけないことがあると思います!

 
「創…あのな、俺も、お前がな…」


この世の中からホッチキスが危険物として処理されないことに安心しつつも、珍しく瞳をウロウロさせて話す新君に目をパチクリさせる。

彼はいつも真っ直ぐに意見を言うのにこんなにも言葉に詰まってるのは珍しい。

彼の口がゆっくりと開き、次の言葉を待っていた時。


ガラッと勢いよく生徒会室の扉が開く音がした。

 
そこから出てきたよく知った顔に思わず立ち上がる。


「お兄ちゃん!!」


小走りで駆け寄ってギュウギュウと抱きつく。


「創~?ここにいたのか」


抱き返してくれる大きな手に安心感を覚える。

優しくてカッコいい僕の自慢のお兄ちゃん、その名も朔君。

でも、どうしてここに??


「まったく…探したんだぞ?」


「えへへ、あ、お兄ちゃん何か用事?」


ソッと離れながらそう尋ねる。


「いや、創の姿が見えなかったから…それに新の姿もね」


そう言って微笑むお兄ちゃんに冷たい声が降り注ぐ。


「三年生は今日午前授業ではありませんでしたか?」


ビュゥー。

窓がしまっているはずの生徒会室に冷たい風が吹く。

なぜかすごく寒い。


「図書室で残って勉強してたんだよ、そういうお前はどうして生徒会に何の関係のない俺の可愛い弟に仕事を手伝わせてるんだ?」


ビュゥー。

おおう、こっちからも風が…。


「時間がないのに加えて人手が足りなかったもので…」


新君の言葉にコクコクと僕は頷く。

なんでこんなに空気が凍ってしまっているのか分からないけどこの二人の会話を早く終わらせろと身体中に警報が鳴っている。


「あれれ?おかしいな??その資料の配布は来週の月曜日だよね??あれれ?あの新君がミスをしたの??へぇ~」


「ちっ!!あ、本当ですね!俺も人間なのでミスぐらいしますよ、!」


何か今舌打ちが聞こえたような…??

いや、新君がそんなことするはずないよ!うん。


「あはは、新君はお口が達者だね」


「ふふふ、長い間創と一緒にいると口ぐらい達者になりますよ」


「な!なんだって~!?」


反射的に思わず叫んだ。

急に僕の悪口言った!?

言ったよね!!

ムス~と顔を膨らませてギロっと新君を睨みつける。


「新君のこと大好きだから僕はお口が達者なんですぅ」


素直に思いが飛び出す。

いつも隣に新君がいるから僕の好きって思いが溢れちゃうんだ。

だから、僕のお口はだからいつも勝手に開いちゃうの!

フンっとふんぞり返ると新君はゴンッと机に頭をぶつけた。

え、どうしたの??


「…………分かった、分かったからもう喋るな…」


「そ、そそそ創!?新よりお兄ちゃんだよね~?ね!!」


ごめん、お兄ちゃん。


「僕の一番は新君だから…でもね!お兄ちゃんはその次だよ」


「創、少し黙ってくれ、頼む、死ぬ」


「お兄ちゃんは割ともうすぐ死んじゃいそう」


今度は片手で顔を覆って僕に静かにするように催促して来た新君にエグエグと涙を流すお兄ちゃん。

二人とも死にそうらしい。


「どうしたの、二人とも…」


僕の声は生徒会室に静かに響いた。


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