魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第十八話 あたしそういうの嫌いじゃないから!

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───グランガン───
弓使いの養成や高品質な弓を生産することに力を入れている。まさに『弓のための街』と言えるだろう。何故、弓が発展していったかという理由はこの街の近くに出没する魔物にある。街の近くに出没する魔物には弓が効果的な魔物が多く、それ以外では余りダメージを与えられないものが多い。───Maoupediaより抜粋




☆   ☆   ☆   ☆





 ノエルが仲間に加わった次の日の朝、俺はノエルと向かい合っていた。ノエルにはおまけしてもらったナイフを持たせている。
 ノエルは不思議そうに首をかしげる。


「ホウリお兄ちゃん、今から何するの?」
「もしものときに備えてノエルも少しは戦えるようになってほしくてな。今はナイフしか無いが街に着いたら自分に合う武器を買ってあげるからな」


 ノエルは少し怖がっているような表情を見せた。まあ、いきなり戦えって言われたら不安になるよな。


「ノエルの不安な気持ちもわかる。だが、ここから先は危険な旅になってくる。もしもの事があった時のためにある程度は戦えるようになってほしい」
「……分かった」
「じゃあ、ノエルに一つ質問。『攻撃』の反対はなんだ?」
「えっと、『防御』?」
「普通はな。だが、俺の場合『攻撃』の反対は『受け』になる」
「『受け』?」


 ノエルが小首をかしげる。いきなり言われても分からないだろう。



「じゃあ、説明がてら自分自身の実力を実感しよう。そのナイフで俺に攻撃してみるんだ」
「え?いいの?」


 ノエルが目を丸くしながらナイフと俺を交互に視線を移す。
 それを見て俺は腰に手を当てながらフーッと息を吐く。

「まさか、素人の女の子の攻撃が当たるとでも?一日中やっても当たるわけないじゃんw」
「む?」

 ノエルがムッとした表情になる。それを見て俺はさらにねっとりとした口調でノエルを煽る。


「あ、もしかして当てられる自信がないの?ハンデとしてここから動かないであげようか?w」
「やあ!」

 
 真っ赤な顔をしながら掛け声とともにノエルがナイフを突き出してくる。俺はナイフを手で払いのけて回避する。


「どうしたぁ?全く当たってないぞぉ?」
「うー!」

 
 ノエルはムキになりながらナイフをむちゃくちゃに振り回す。俺はナイフを片手でいなしながら片手を口にあて大きく欠伸をする。そして、ある程度のところでノエルの足を引っ掛けて転ばせる。
 転んだノエルに手を差し伸べると、頬を膨らませながら俺を睨みつけていた。


「どうだ?今の自分の実力がわかっただろ?」
「……うん」


 ノエルはそっぽを向きながら返事をする。
 あー、ちょっと煽りすぎたか?

 
「ごめんごめん、ちょっと大人げなかった。お詫びにノエルに面白いものを見せよう」
「面白いもの?」
「ああ、フラン!」


 朝飯の用意をしていたフランを大声で呼ぶとお玉を持ちながら出てきた。


「なんじゃい」
「ノエルに戦闘を見せたいから戦闘訓練を食前にしていいか?」
「今スープを煮込んでおるから別に良いぞ。強さはどうする?」
「Lvは20速さ48スキルなしで武器は鉄の剣で」
「おっけーじゃ」


 フランが剣を取り出して上段で構える。俺も新月を取り出して構える。


「さっきの『受け』が発展するとこうなる。よく見ておいてくれ」


 俺の言葉を最後に辺りは緊張に包まれる。木の葉がざわめく音を聞こえる中、呼吸を整えながらフランを注意深く観察する。
 フランの剣が少し高くなったの瞬間を見計らい、横腹に新月を振るう。フランは剣で新月をはじきながら顔に向かって突きを繰り出してくる。斬撃を首を曲げてかわし、回し蹴りを放つ。
 その後もフランの斬撃を防ぎ、かわし、受け流し、弾きながら攻撃のスキを伺い攻撃を加えていく。
 フランが大きく剣での薙ぎ払いを受け止め大きく後ろに下がったのを見計らい、新月を腰にさして構えを解く。
 ノエルを見てみると目を丸くしながら、興奮した様にパチパチと拍手をしていた。


「かっこいいー!」
「ノエルにもこれ位出来るようになってもらいたい。いきなりは無理だから少しづつ頑張って欲しい」
「うん!」


 力強く頷いたのを見て俺はノエルに尋ねる。


「さっきのやり取りを見て気がついたら事はあるか?」
「えーっと、ホウリお兄ちゃんが攻撃を受けきれていなかった?」
「おー、良いところに気がついたな」


 ノエルは意外と見る目があるのかもしれない。これなら上達も早いかもな。


「さっきの戦闘、フランには俺よりも早い奴を想定してもらった。こういう奴が相手の場合、あえて攻撃を受ける事も必要になる。ここが『防御』とは違うところだ」



 『防御』は攻撃を防ぎダメージを減らす事。だが、『受け』はあえて攻撃を受けて相手に攻撃したり逃げるスキをつくる事が大切になる。まあ、ダメージを受けないに越したことはないがな。


「次からはこの『受け』の練習を始めようと思う」
「はーい」
「特訓も良いが朝飯にするぞ。そろそろスープも出来る頃じゃろう」
「おう」


 俺達はスープを煮込んでいる場所まで移動する。鍋の蓋を取るとキノコと山菜の良い香りがふわりと広がった。スープは完成だな。
 アイテムボックスからスープの器を取り出してスープを注ぎ入れノエルに渡す。


「ほら、冷めないうちに食え」
「ホウリお兄ちゃんありがとう」


 俺とフランの分もよそいアイテムボックスからパンを取り出して皆に配る。
 もりもりとパンとスープを食べているフランとノエルを見て俺もスープに口をつける。


「食べながらで良いから少し聞いてくれ」
「なんじゃ?」
「街の中での行動についてだ」


 順調に行けば今日中に街につく。ノエルが追われている立場である以上、ある程度の対策は必要になる。


「いくつか注意点があるが、まずノエルは絶対に一人になるな。必ずフランか俺と一緒にいるんだ」
「それもそうじゃな。極力わしと一緒におったほうが良いな」
「それと、街に入るには身分証明書がいるんだが、ノエル証明書を作るときには偽名を使ってもらう」
「偽名?」


 ノエルがスプーンを加えながら首をかしげる。


「実名は流石にバレる危険があるからな。ノエルは残してカタラーナを変えようと思う」
「変えるなら全て変えたほうが良いのではないか?」
「ノエルの一人称が『ノエル』だから思わず自分の名前を言ってしまう可能性がある。だからあえてノエルは残すことにする」
「なるほどのう」
「ノエル、何かつけたい名前はあるか?」
「うーん……」


 ノエルは少し唸り声をあげるとポツリと呟いた。


「ノエル・キムラ?」
「それはやめてくれ。なんかむず痒い」
「じゃあ、ノエル・アロス?」
「わしは別によいぞ?」
「じゃあ決まりだな。とりあえず、お前らは、姉妹ってことにでもしておこう」


 今出来る対策はこれぐらいだろう。食事を済ませた俺達は片付けを済ませ、『グランガン』を目指して歩きだした。



☆   ☆   ☆   ☆



「それでは、街へお入りください」
「ありがとうございます」



 無事に審査を終えて俺達は『グランガン』へと入ることが出来た。街の中は普通の店が並んでいる様に見える。だが、よくよく見てみると青果店では弓を射る用の果物があり、洋服店では弓者用の衣装がショーケースに陳列、魔道具屋では弓用の魔道具が入り口付近に飾られている。流石は弓の街、食べ物屋とかの店でも弓が飾ってある。
 

「わーい!」
「おーい!余り離れるなよー!」


 ノエルは自由に外を走り回れるのが嬉しいのか街に入った時からテンション高く走り回っている。
 トテトテと走り回るノエルの腕に付いている銀色の腕輪が太陽の光でキラリと光る。
 この街では、というかほとんどの街では身分証が無い人街に入るときこの腕輪を付けることになっている。この腕輪は今いる位置が街側に分かるようになる装置で、身分証を提出することで外されることになっている。



「それで、宿はどうする?」
「ある程度リサーチしているからそこにするぞ」


 めぼしい宿に入り二部屋をニ週間借りることにして、食堂でこの街でのことを話し合う事にする。
 宿に入り、宿泊の手続きをする。


「では、二部屋が二週間で48000Gで御座います」
「ギルドカードで」
「ありがとうございます。ご飯は食堂で出しておりますのでご利用下さい」
「わかりました」


 手続きを終わらせて宿の食堂に向かうと、既に居たフランとノエルがジュースを飲んでいた。


「俺の分のジュースは?」
「頼んであるぞ」


 少しニヤニヤしているフランからジュースを受け取る。ははーん、さては何かあるな。
 俺は気付かない風を装いながらフランに貰ったジュースを一気に煽る。
 強い酸味が口一杯に広がるのも構わずジュースを飲み下す。


「あー、生き返る」
「な、何故平気なんじゃ!?」


 フランが狼狽えながら大声をあげる。


「甘いなフラン、ディフェンドのババロアよりも甘い。大方、オダリムの仕返しだろ?表情でバレバレなんだよ」
「ぐぬぬぬ………」


 悔しそうに歯を食いしばるフランにドヤ顔しながら椅子に座る。


「とりあえず、二部屋借りたからノエルはフランと寝てくれ」
「ホウリお兄ちゃんは一緒に寝ないの?」
「流石に女子の部屋には泊まれないな」
「えー、つまんなーい」


 ブーブー文句を言うノエルをスルーしこの街でやる事を話す。


「この街に来た目的はユミリンピックと言うことは話したな?」
「うむ、ユミリンピックに出た入賞してない奴をスカウトするんじゃったな」
「実は例外が居るかもしれない」
「例外?」


 フランが不思議そうに首をひねる。横ではノエルが美味しそうにジュースを飲んでいる。


「ああ、今からそいつの所に今から向かう」
「オッケーじゃ。ちなみに、そいつはどんな奴なんじゃ?」
「うーん、俺も話に聞いただけなんだが……」


 今まで聞いた情報を思い出しながら少し考えて俺は口を開く。





「弓が下手なイケメンらしい」
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