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第十九話 サユッ
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───ユミリンピック───
ユミリンピックとは弓の腕を競う大会である。競技は、的当て、流鏑馬、戦闘など多岐にわたる。この大会で優勝することは弓使いにとって最高の名誉であり、王宮にスカウトされることもある。最近では大会の前に棄権者が続出しているが、偶然なのか作為的なものなのかは不明である。
☆ ☆ ☆ ☆
「それで、『弓が下手なイケメン』とはどういうことなんじゃ?」
俺たちはそいつがいるという『射撃場』に向かうことにした。
ノエルが手を繋ぎたいと言っていたので、ノエルの両手を俺とフランが繋ぎながら移動する。移動している間に俺はそいつの説明をする。
「俺も詳しくは知らない。知っていることと言えば名前が『ロワ・タタン』で、そいつが的に一度も中てたことがないイケメンって位だ」
「そのイケメンという情報はいるか?」
「情報を集めている時にイケメンの情報は必ず付いてくるんだよ。『弓があまり上手くないがいい奴だぜ。あとイケメン』『親父さんはかなり腕のいい弓使いだったみたいだぜ。あとイケメン』『イケメンってことは知っているぜ。あとイケメン』みたいな感じで」
「有名みたいじゃな。おそらく本人が望まぬ方向で」
「色々と情報は集めたが、イケメンで的に中った事がないってことぐらいしか分からなかった。あと、そいつの父親は凄腕の弓使いだったらしい」
「なんというか、情報が偏っておるの」
「全くだ」
全員が口をそろえてイケメンというほどのイケメン、興味がないと言えば嘘になる。だが、他に気になることもある。
「一つ、イケメン以外で気になることがある」
「なんじゃ?」
「もちろん、『一度も的に中った事がない』って部分だ」
「そう言えば変じゃのう?」
「変ってレベルじゃない。『一度も』中らないのは何者かが干渉しているか、それとも別の何かの影響か」
「なるほど、ユニークスキルか」
「ユニークスキル?」
手を繋いでウキウキだったノエルが話に入ってくる。
この世界の人にとっては常識と聞いていたが、ノエルは知らないのか?
「学校とかで習わなかったのか?」
「学校に行く前に村が無くなっちゃって、その後も神殿に籠りっぱなしだったから……」
「ああ、悪かった。少し無神経だった」
「いいよ、ホウリお兄ちゃん達が何とかしてくれるんでしょ?」
「ああ、必ず何とかしてやる」
ノエルのはにかむ顔を見ながら、俺は絶対に『サンド』の街の領主をつぶす決意を固める。
とりあえずはユニークスキルの説明をしなくちゃな。
「ユニークスキルっていうのはその人が生まれ持っている特別なスキルの事だ。大抵はいいスキルなんだが稀に悪いスキルある」
「て言うことは今から会いに行く人は、その悪いスキルを持っているってこと?」
「可能性だがな。今からそれを確かめに行くんだ」
そうこうしているうちに射撃場に到着する。射撃場の中は待機場だけで体育館ほどの広さがあり、ユミリンピックが近いこともあり人でごった返していた。中には店もあり、替えの弓の弦や訓練用の矢など弓に関係するものが売られている。だが、人が多すぎて誰がお目当ての奴か全く分からない。とりあえず、受付の女性にそいつの事を聞いてみる。
「あの、『ロワ・タタン』という方を探していますが、どこにいるのか分かりますか?」
「ロワ様ですか?でしたら、今は外の旧射撃場にいらっしゃいますがどのようなご用件でしょうか?」
女性の目つきが鋭くなり、明らかな敵意を向けてくる。
居場所を聞いただけで敵意を向けられるか。とりあえず、少しでも敵意を下げておくか。
「近いうちにユミリンピックがありますので優勝候補のロワさんにお話をお聞きしたくてですね」
「あ、新聞社の方でしたか。失礼しました」
いい感じに勘違いしてくれたな。このまま少し情報をもらうとしよう。
少し小声で内緒話をするように女性に尋ねる。
「ここだけの話、最近ロワさんの周りで不穏な気配があるのですが、何か知りませんか?」
「そうですね……、『ジル・クミンバ』が手下と一緒に嫌がらせしているのはいつも通りですけど、なにかあったんですか?」
「今のところ気配だけなのでなんとも……」
「あの、何かわかったらロワ様に教えてあげてくれませんか?」
「もちろんですよ」
お礼を言って受付の女性と別れ、旧射撃場に向かう。
綺麗な他の射撃場とは違い旧射撃場へと続く道はほとんど整備されておらず少し歩きづらい。ボロボロの街道を通りながらさっきの女性との話をフランたちに伝える
「ロワという奴がジルという奴に嫌がらせを受けとるのか」
「イケメンだから、さぞモテるんだろうな。それが気に食わない奴だっているだろう。受付の女性も『様』付けで呼んでいたし」
「というか、お主の言っておった『不穏な気配』とはなんじゃ?」
「ロワって奴に限った事ではないが最近ユミリンピックで棄権者が増えているらしい。憲兵も調べてはいるが全く何も分かっていない」
「ふむ、きな臭い話ではあるな」
棄権者は優勝候補ばかりだからロワって奴とは関係ないな。なんせ中らないもんな。
そんなこんなで旧射撃場に到着する。ボロボロの入口、痛んだ床、剥がれおちた壁、一目見ただけで廃墟だと分かる旧射撃場。
「ボロボロすぎるのう、なぜこのような場所で訓練しておるのじゃ?」
「本人に聞くのが早いだろ。とにかく探すぞ」
中に入るとそれほど汚れているようには見えず、綺麗に清掃されている。廃墟であろうと綺麗に使おうとしている使っている奴の心が見える。
「すみませーん!だれかいませんかー!」
俺は大声を旧射撃場内に響かせる。すると、奥から一人の男が現れた。
「またジルかい?いいかげん嫌がらせは止めてほし───、ってどちら様でしょうか?」
草原に生えている柔らかな若葉を思わせる鮮やかな緑色の髪、整った顔立ちに優しい目元が爽やかさを醸し出している男が現れた。一つの動作を取っても絵になっており、わざとらしさを一切感じない。こいつを一言で表すなら『イケメン』だろう。全員が口をそろえてイケメンと言っていた意味が分かった。
俺は出来る限り好意的に接する。
「俺の名前はキムラ・ホウリ。冒険者をやっています。職業はサムライ」
「わしはフラン・アロス。魔術師をしておる」
「ノエルはノエル・カタ───アロス。フランお姉ちゃんの妹です」
「僕はロワ・タタン。一応弓使いってことになるかな?」
意味ありげに笑うロワ。理由は考えるまでもなく一度も的に中った事がないことだろう。
「それで、僕に何か用かな?」
「俺たちは優秀な弓使いを探しているんですが、一度ロワさんの実力を見せてほしくて来ました」
「僕を見るよりも他の人を見るほうがいいですよ?」
「俺たちはあなたの実力がみたいんですよ」
「は、はぁ……」
釈然としなさそうな顔をしながら弓に弦をはり矢を持ち、そのまま的から数m離れたところに立つ。そのまま弓を引き絞り的に向かって矢を放つ。
矢はそのまま真っ直ぐ的に向かっていった。だが、矢は的に中る瞬間不自然に下に曲がり的から外れた。
それを見て俺はフランに確認を取る。
「フラン、外部からのスキルの気配はあるか?」
「いや、外部からのスキルの気配はない。あれはロワ自身のスキルじゃ」
「ユニークか?」
「それは鑑定してみんと分からん」
となると、何とかして鑑定の許可をロワに取らないとな。だが、冒険者にとってステータスは重要なものだ。そう易々とみせてくれるとは──────
「ロワお兄ちゃん、ステータス見せて?」
「いいよ」
「あっさり!?」
ステータス見せる事は自分の手の内明かすことと同じだろ!?なんで即決できんだよ!?
「僕のステータスなんかどうだっていいですから」
「まあ、見ていいなら遠慮なく見るけどな。フラン」
「うむ。『鑑定』」
フランが鑑定を使いロワのステータスが表示させる。どれどれ、えーっと……
ロワ・タタン ♂ 職業 弓使い
LV 15 経験値 87/780
HP 180/180
MP 75/75
攻撃力 58
魔法力 30
防御力 18
魔防御 9
敏捷性 30
武器 ポイントアロー
盾 無し
防具 鋼の鎧
アクセサリー 無し
スキル 狙い撃ち ピンショット (弓の試練)
魔法 無し
────狙い撃ち─────
弓を引き絞ってから放つまでの時間が長いほど命中精度が高くなる
消費MP 5~
─────ピンショット─────
命中精度を上げる
消費MP 無し
─────弓の試練────
ユニークスキル。弓の精度を99.99999%下げ、その他の命中精度を上げるスキルを全て無効化する。矢を100万本射ることでこのスキルは『弓神』に変化する。
射った本数 999872/1000000
……なんだこれ?命中精度を上げるスキルはあるが『弓の試練』の影響で全く意味がないぞ?
「フラン、たしかユニークスキルって『鑑定』使えば見られたはずだよな?」
「ああ。だが『神級スキル』は相応の魔力とスキルの熟練度がないと検出が出来ん」
「『神級スキル』……、頭に神ってついてるユニークスキルだったか?」
「その認識でよい。ユニークスキルでも最高の性能のスキル。それが『神級スキル』じゃ」
となると、鑑定しても出ない可能性があるな。聞いてみるか。
「ロワさん、自分のスキル把握出来てます?」
「ああ、あんまりにも中らないから命中精度を上げるスキルを取ったけど結局無駄だったんだよね」
「ユニークスキルがあるか『鑑定』して貰いました?」
「僕もユニークスキルのせいかと思って鑑定を頼んだんだけどね。結局なにもなかったよ」
「そうか」
と言うことは気付いていないのか。だけど、これ教えていいのか?
俺はフランにこっそりと確認をとる。
「ロワに『弓の試練』教えて良いのか?」
「別に教えて良いぞ」
「そうか」
もう一本の矢を番えている途中のロワに一つ提案をする。
「ロワさん、良かったら俺にアドバイスさせてくれませんか?」
「アドバイス?あなたは弓使いじゃないですよね?アドバイスできるんですか?」
「そうですね……、その弓と矢を貸してもらっていいですか?」
「え?あ、はい」
ロワから弓と矢を受け取り矢を番えず軽く弓を引く。弓の強さを確認した後に弓に矢を番えてロワが立った位置とは少し離れた所で構える。
「えーっと、フランさんでいいんでしたっけ?ホウリさん、弓を使えるんですか?」
「ホウリは訳あって木刀以外では戦えんからな。弓どころか他の武器を扱ってるところすら見たことないわい」
「そ、そうなんですか……」
フランの奴、余計なこと言いやがって……。まあ、どうせバレるから別に良いか。
気にせず弓を引き的に狙いを定める。的までの距離は18m、風速は二時の方向に……、弓の強さから矢の落下は……、そこだ!
俺の放った矢はまっすぐと的へと向かい、そのまま狙い通り的の中心へと命中する。
「おおー、中々やるのう」
「ど真ん中に命中!?本当に弓使ったことないんですか!?」
「ありますよ?戦闘もそこそこやってましたし」
「え?でも木刀しか使えないって……」
「『今は』です。昔は色んな武器を使わされていましたからね」
「……何があったんですか?」
「世の中知らないほうが良い事もあるんですよ。それより、アドバイスの件どうしますか?」
「そうですね……」
少し考え込むロを眺めていると、横からフランが話しかけてきた。
「ロワに『弓の試練』を話すんじゃ無かったのか?」
「ああ、あれは『弓の試練』の存在がバレてもいいかどうか確認したかっただけだ」
「確認?」
「『弓の試練』はそのまま『試練』の事を表していると俺は思っている。中らない矢を100万本、しかも本人は100万本とは知らない中で弓を引き続けるのは並大抵のことじゃない。『弓神』がどれほど強力かは知らないが、そんなスキルを扱うならこれぐらいの『試練』は必要だと思っている」
「うーむ、分かるような、分からんような」
「妨害を受けながらも100万本間近まで頑張ったんだ。覚悟がある奴のサポートは喜んでやりたい」
「まあ、細かいことはよいか。しかし、それはあくまでもロワが決める事じゃぞ」
「それは大前提だ。だから────」
俺はロワを見据えてゆっくりと尋ねる
「ロワさん、そろそろ答えを聞いて良いですか?」
「……僕の方こそお願いしても良いですか?」
「はい!これからよろしくお願いします!」
そんな訳でユミリンピックまでの二週間の間、俺はロワに弓の引き方を教える事になった。
ユミリンピックとは弓の腕を競う大会である。競技は、的当て、流鏑馬、戦闘など多岐にわたる。この大会で優勝することは弓使いにとって最高の名誉であり、王宮にスカウトされることもある。最近では大会の前に棄権者が続出しているが、偶然なのか作為的なものなのかは不明である。
☆ ☆ ☆ ☆
「それで、『弓が下手なイケメン』とはどういうことなんじゃ?」
俺たちはそいつがいるという『射撃場』に向かうことにした。
ノエルが手を繋ぎたいと言っていたので、ノエルの両手を俺とフランが繋ぎながら移動する。移動している間に俺はそいつの説明をする。
「俺も詳しくは知らない。知っていることと言えば名前が『ロワ・タタン』で、そいつが的に一度も中てたことがないイケメンって位だ」
「そのイケメンという情報はいるか?」
「情報を集めている時にイケメンの情報は必ず付いてくるんだよ。『弓があまり上手くないがいい奴だぜ。あとイケメン』『親父さんはかなり腕のいい弓使いだったみたいだぜ。あとイケメン』『イケメンってことは知っているぜ。あとイケメン』みたいな感じで」
「有名みたいじゃな。おそらく本人が望まぬ方向で」
「色々と情報は集めたが、イケメンで的に中った事がないってことぐらいしか分からなかった。あと、そいつの父親は凄腕の弓使いだったらしい」
「なんというか、情報が偏っておるの」
「全くだ」
全員が口をそろえてイケメンというほどのイケメン、興味がないと言えば嘘になる。だが、他に気になることもある。
「一つ、イケメン以外で気になることがある」
「なんじゃ?」
「もちろん、『一度も的に中った事がない』って部分だ」
「そう言えば変じゃのう?」
「変ってレベルじゃない。『一度も』中らないのは何者かが干渉しているか、それとも別の何かの影響か」
「なるほど、ユニークスキルか」
「ユニークスキル?」
手を繋いでウキウキだったノエルが話に入ってくる。
この世界の人にとっては常識と聞いていたが、ノエルは知らないのか?
「学校とかで習わなかったのか?」
「学校に行く前に村が無くなっちゃって、その後も神殿に籠りっぱなしだったから……」
「ああ、悪かった。少し無神経だった」
「いいよ、ホウリお兄ちゃん達が何とかしてくれるんでしょ?」
「ああ、必ず何とかしてやる」
ノエルのはにかむ顔を見ながら、俺は絶対に『サンド』の街の領主をつぶす決意を固める。
とりあえずはユニークスキルの説明をしなくちゃな。
「ユニークスキルっていうのはその人が生まれ持っている特別なスキルの事だ。大抵はいいスキルなんだが稀に悪いスキルある」
「て言うことは今から会いに行く人は、その悪いスキルを持っているってこと?」
「可能性だがな。今からそれを確かめに行くんだ」
そうこうしているうちに射撃場に到着する。射撃場の中は待機場だけで体育館ほどの広さがあり、ユミリンピックが近いこともあり人でごった返していた。中には店もあり、替えの弓の弦や訓練用の矢など弓に関係するものが売られている。だが、人が多すぎて誰がお目当ての奴か全く分からない。とりあえず、受付の女性にそいつの事を聞いてみる。
「あの、『ロワ・タタン』という方を探していますが、どこにいるのか分かりますか?」
「ロワ様ですか?でしたら、今は外の旧射撃場にいらっしゃいますがどのようなご用件でしょうか?」
女性の目つきが鋭くなり、明らかな敵意を向けてくる。
居場所を聞いただけで敵意を向けられるか。とりあえず、少しでも敵意を下げておくか。
「近いうちにユミリンピックがありますので優勝候補のロワさんにお話をお聞きしたくてですね」
「あ、新聞社の方でしたか。失礼しました」
いい感じに勘違いしてくれたな。このまま少し情報をもらうとしよう。
少し小声で内緒話をするように女性に尋ねる。
「ここだけの話、最近ロワさんの周りで不穏な気配があるのですが、何か知りませんか?」
「そうですね……、『ジル・クミンバ』が手下と一緒に嫌がらせしているのはいつも通りですけど、なにかあったんですか?」
「今のところ気配だけなのでなんとも……」
「あの、何かわかったらロワ様に教えてあげてくれませんか?」
「もちろんですよ」
お礼を言って受付の女性と別れ、旧射撃場に向かう。
綺麗な他の射撃場とは違い旧射撃場へと続く道はほとんど整備されておらず少し歩きづらい。ボロボロの街道を通りながらさっきの女性との話をフランたちに伝える
「ロワという奴がジルという奴に嫌がらせを受けとるのか」
「イケメンだから、さぞモテるんだろうな。それが気に食わない奴だっているだろう。受付の女性も『様』付けで呼んでいたし」
「というか、お主の言っておった『不穏な気配』とはなんじゃ?」
「ロワって奴に限った事ではないが最近ユミリンピックで棄権者が増えているらしい。憲兵も調べてはいるが全く何も分かっていない」
「ふむ、きな臭い話ではあるな」
棄権者は優勝候補ばかりだからロワって奴とは関係ないな。なんせ中らないもんな。
そんなこんなで旧射撃場に到着する。ボロボロの入口、痛んだ床、剥がれおちた壁、一目見ただけで廃墟だと分かる旧射撃場。
「ボロボロすぎるのう、なぜこのような場所で訓練しておるのじゃ?」
「本人に聞くのが早いだろ。とにかく探すぞ」
中に入るとそれほど汚れているようには見えず、綺麗に清掃されている。廃墟であろうと綺麗に使おうとしている使っている奴の心が見える。
「すみませーん!だれかいませんかー!」
俺は大声を旧射撃場内に響かせる。すると、奥から一人の男が現れた。
「またジルかい?いいかげん嫌がらせは止めてほし───、ってどちら様でしょうか?」
草原に生えている柔らかな若葉を思わせる鮮やかな緑色の髪、整った顔立ちに優しい目元が爽やかさを醸し出している男が現れた。一つの動作を取っても絵になっており、わざとらしさを一切感じない。こいつを一言で表すなら『イケメン』だろう。全員が口をそろえてイケメンと言っていた意味が分かった。
俺は出来る限り好意的に接する。
「俺の名前はキムラ・ホウリ。冒険者をやっています。職業はサムライ」
「わしはフラン・アロス。魔術師をしておる」
「ノエルはノエル・カタ───アロス。フランお姉ちゃんの妹です」
「僕はロワ・タタン。一応弓使いってことになるかな?」
意味ありげに笑うロワ。理由は考えるまでもなく一度も的に中った事がないことだろう。
「それで、僕に何か用かな?」
「俺たちは優秀な弓使いを探しているんですが、一度ロワさんの実力を見せてほしくて来ました」
「僕を見るよりも他の人を見るほうがいいですよ?」
「俺たちはあなたの実力がみたいんですよ」
「は、はぁ……」
釈然としなさそうな顔をしながら弓に弦をはり矢を持ち、そのまま的から数m離れたところに立つ。そのまま弓を引き絞り的に向かって矢を放つ。
矢はそのまま真っ直ぐ的に向かっていった。だが、矢は的に中る瞬間不自然に下に曲がり的から外れた。
それを見て俺はフランに確認を取る。
「フラン、外部からのスキルの気配はあるか?」
「いや、外部からのスキルの気配はない。あれはロワ自身のスキルじゃ」
「ユニークか?」
「それは鑑定してみんと分からん」
となると、何とかして鑑定の許可をロワに取らないとな。だが、冒険者にとってステータスは重要なものだ。そう易々とみせてくれるとは──────
「ロワお兄ちゃん、ステータス見せて?」
「いいよ」
「あっさり!?」
ステータス見せる事は自分の手の内明かすことと同じだろ!?なんで即決できんだよ!?
「僕のステータスなんかどうだっていいですから」
「まあ、見ていいなら遠慮なく見るけどな。フラン」
「うむ。『鑑定』」
フランが鑑定を使いロワのステータスが表示させる。どれどれ、えーっと……
ロワ・タタン ♂ 職業 弓使い
LV 15 経験値 87/780
HP 180/180
MP 75/75
攻撃力 58
魔法力 30
防御力 18
魔防御 9
敏捷性 30
武器 ポイントアロー
盾 無し
防具 鋼の鎧
アクセサリー 無し
スキル 狙い撃ち ピンショット (弓の試練)
魔法 無し
────狙い撃ち─────
弓を引き絞ってから放つまでの時間が長いほど命中精度が高くなる
消費MP 5~
─────ピンショット─────
命中精度を上げる
消費MP 無し
─────弓の試練────
ユニークスキル。弓の精度を99.99999%下げ、その他の命中精度を上げるスキルを全て無効化する。矢を100万本射ることでこのスキルは『弓神』に変化する。
射った本数 999872/1000000
……なんだこれ?命中精度を上げるスキルはあるが『弓の試練』の影響で全く意味がないぞ?
「フラン、たしかユニークスキルって『鑑定』使えば見られたはずだよな?」
「ああ。だが『神級スキル』は相応の魔力とスキルの熟練度がないと検出が出来ん」
「『神級スキル』……、頭に神ってついてるユニークスキルだったか?」
「その認識でよい。ユニークスキルでも最高の性能のスキル。それが『神級スキル』じゃ」
となると、鑑定しても出ない可能性があるな。聞いてみるか。
「ロワさん、自分のスキル把握出来てます?」
「ああ、あんまりにも中らないから命中精度を上げるスキルを取ったけど結局無駄だったんだよね」
「ユニークスキルがあるか『鑑定』して貰いました?」
「僕もユニークスキルのせいかと思って鑑定を頼んだんだけどね。結局なにもなかったよ」
「そうか」
と言うことは気付いていないのか。だけど、これ教えていいのか?
俺はフランにこっそりと確認をとる。
「ロワに『弓の試練』教えて良いのか?」
「別に教えて良いぞ」
「そうか」
もう一本の矢を番えている途中のロワに一つ提案をする。
「ロワさん、良かったら俺にアドバイスさせてくれませんか?」
「アドバイス?あなたは弓使いじゃないですよね?アドバイスできるんですか?」
「そうですね……、その弓と矢を貸してもらっていいですか?」
「え?あ、はい」
ロワから弓と矢を受け取り矢を番えず軽く弓を引く。弓の強さを確認した後に弓に矢を番えてロワが立った位置とは少し離れた所で構える。
「えーっと、フランさんでいいんでしたっけ?ホウリさん、弓を使えるんですか?」
「ホウリは訳あって木刀以外では戦えんからな。弓どころか他の武器を扱ってるところすら見たことないわい」
「そ、そうなんですか……」
フランの奴、余計なこと言いやがって……。まあ、どうせバレるから別に良いか。
気にせず弓を引き的に狙いを定める。的までの距離は18m、風速は二時の方向に……、弓の強さから矢の落下は……、そこだ!
俺の放った矢はまっすぐと的へと向かい、そのまま狙い通り的の中心へと命中する。
「おおー、中々やるのう」
「ど真ん中に命中!?本当に弓使ったことないんですか!?」
「ありますよ?戦闘もそこそこやってましたし」
「え?でも木刀しか使えないって……」
「『今は』です。昔は色んな武器を使わされていましたからね」
「……何があったんですか?」
「世の中知らないほうが良い事もあるんですよ。それより、アドバイスの件どうしますか?」
「そうですね……」
少し考え込むロを眺めていると、横からフランが話しかけてきた。
「ロワに『弓の試練』を話すんじゃ無かったのか?」
「ああ、あれは『弓の試練』の存在がバレてもいいかどうか確認したかっただけだ」
「確認?」
「『弓の試練』はそのまま『試練』の事を表していると俺は思っている。中らない矢を100万本、しかも本人は100万本とは知らない中で弓を引き続けるのは並大抵のことじゃない。『弓神』がどれほど強力かは知らないが、そんなスキルを扱うならこれぐらいの『試練』は必要だと思っている」
「うーむ、分かるような、分からんような」
「妨害を受けながらも100万本間近まで頑張ったんだ。覚悟がある奴のサポートは喜んでやりたい」
「まあ、細かいことはよいか。しかし、それはあくまでもロワが決める事じゃぞ」
「それは大前提だ。だから────」
俺はロワを見据えてゆっくりと尋ねる
「ロワさん、そろそろ答えを聞いて良いですか?」
「……僕の方こそお願いしても良いですか?」
「はい!これからよろしくお願いします!」
そんな訳でユミリンピックまでの二週間の間、俺はロワに弓の引き方を教える事になった。
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