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第七十二話 ロワ第一回戦 覚悟とは犠牲の言葉ではない
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───魔法銃───
魔法銃とはMPを弾丸のように発射することが出来る銃の事である。側面の摘みを回すことで銃の威力と『連射速度を調整することが出来うる優れものである。MPを弾丸にするため、本物の弾丸を用意する必要が無い。しかし、魔法銃自体が高価なため経済的とも言い難い面もある。ちなみに、実在している魔法銃はリオレ・グラニが持つ1つのみである。──────Maoupediaより抜粋
☆ ☆ ☆ ☆
「そろそろ出番なので僕は行きますね」
「うむ、しっかりな」
「私たちは応援しているぞ」
「ロワお兄ちゃん、ファイト!」
「はい、行ってきます!」
☆ ☆ ☆ ☆
ロワを笑顔で見送りわしらは席で待機する。そんな中で、魔道具から解説席の声が聞こえてくる。
『1回戦3試合目は「ロワ・タタン」選手と「リオレ・グラニ」選手の戦いだな。選手紹介といくか』
『ロワ様は皆さん知っての通りですわ』
『解説を放棄するな』
『別に解説しても良いですけど、明後日の閉会式までかかりますわよ?』
『……俺が解説しよう。ロワ選手は神級スキルである弓神の使い手だ。発射した矢の軌道を操ったり矢にエンチャントをしたり多彩な戦い方が出来る』
『ロワ様にぴったりの無敵のスキルですわ』
『ユミリンピックでは2回戦負けだがな』
『ジル……今度会った時は山の中に埋めてやりますわ』
相変わらず、ロワの姉はバイオレンスじゃな。
『ジルの事は置いといてだな、リオレ選手について解説するか』
『どういう選手なんですの?』
『お前も選手リスト渡されただろ?確認してないのか?』
『ロワ様以外には興味ありませんわ』
『お前な……まあいいか』
良くは無いじゃろ。
『リオレ選手はちょっと変わった選手でな、武器に銃を使うんだ』
『銃?弾を撃ち出すあれですの?結構マイナーな武器を使いますわね?』
『確かに弾自体が高いから数揃えるのも大変だし、専用のスキルも無いから使い手も少ない』
『ですが、本戦には残っている。もしかして、ただの銃ではないのですか?』
『流石俺の娘だ。俺に似て察しが早くて助かる』
『あなたに似ているなんて最大限の侮蔑ですわね』
『褒めた筈なんだがな?』
解説席のやり取りを聞いていたミエルがため息を吐きながら呟く。
「こいつらは仲良く出来んのか?仮にも親子だろ?」
「仲が良い親子だけではないからのう。こんな親子もいるじゃろう」
わしらが話している間にも解説席の話は続く。
『リオレ選手の銃は弾を発射するんじゃなくて、MPを発射する武器だ。それだけじゃなく、威力と連射性を調整できる優れものだ』
『弾の数を揃える必要が無いのは良いですわね』
『スキルは消費MP軽減スキルが主みたいだな』
なるほど、今までに居なかったタイプの相手みたいだ。だが、今の説明何かひっかかるな。なんだろうか?
わしが頭を捻っている間も解説席の話は続く。
『でも、それだけでは決勝に進めるとは思いませんわ』
チフールの言葉でわしは違和感の正体に気が付く。確かに銃は強いがそれだけで決勝まで行けると思えん。何か秘密があると考えるのは妥当じゃろう。
『どうなんですの?何か他に秘密があるんじゃないですの?』
『俺もそう思うんだがな、リストにはこれ以上の情報が書かれていない。これ以上は試合で確かめるしかないな』
む、トレットでも分からんのか。そういえば、ミエルはホウリに出場者のリストを貰っておったな。
「ミエル、ホウリから貰ったにはリストには何か書かれておらんかったのか?」
「書かれていたが、試合で見た方が良いだろう?」
ミエルがニヤリと笑いながら言う。この様子じゃと教えてはくれんな。まあ、出場する3人は分かっているみたいじゃし別によいか。
そんなこんなしている内に、選手入場のサイレンが鳴り、スピーカーから解説席の声が響き渡る。
『皆さんお待たせしました!選手入場です!』
(わああああああ!)
アナウンスが響くと同時に会場の熱気が高まっていく。そんな熱気を煽るように解説が選手の紹介をする。
『赤コーナー!弓神を使いこなす戦士!正確な狙撃で敵を逃がさない!ロワ・タタン!』
(わああああああ!)
「ロワお兄ちゃーん!頑張れー!」
ロワが片手に弓を持って矢筒を背負いながら戦場に入ってくる。歓声が更に大きくなる。それに負けじとノエルが大きな声でロワを応援する。
入場してきたロワの表情には緊張は見えない。さっきの家族からのエールが大きかったんじゃろう。
「思うんじゃが、この口上ってロワの父親が考えておるのかのう?」
「多分そうだな」
ノリノリでやっているようわしには聞こえるが、ミエルにもそう聞こえるみたいじゃな。というか、さっきと紹介方法が変わっておらんか?適当に考えておらぬか?
ノリノリのままにトレットが選手紹介を続ける。
『青コーナー!無尽蔵な弾が相手を襲う!銃なら俺に任せておけ!リオレ・グラニ!』
(うおおおおおおお!)
ロワの反対側から長い青髪を後ろで結んだ長身の男が入場してきた。右手にはスコープが付いたライフルのような銃が握られており、肩で支えながらロワを睨みつけている。
「お主らは対戦相手の事を知っておるんじゃよな?ロワに勝てる見込みはあるのか?」
「ロワは攻撃手段が豊富だからな。対策は立てやすい筈だ。勝てる可能性は十分ある」
ロワであればエンチャントで事前に対策が取れる。情報さえあれば対策は取りやすそうじゃな。
『それでは今から試合を始めます!両者位置について!』
2人が睨みあいながら定位置に着く。その雰囲気は今から打ち合うガンマンに似ている。間に入ったらハチの巣にされそうじゃ。
『それでは、試合開始ぃぃぃぃ!』
(うおおおおお!)
試合が始まった瞬間、2人はお互いに武器を向ける。
ロワはリオレに矢を放ち、リオレはロワに発砲する。矢とMPの塊が衝突しあい、光を放ちながら弾け飛ぶ。
ロワは更に矢を射ろうとするが、リオレはロワ以上の速度で銃を発砲する。
『これはマズイですわね。攻撃速度が明らかにロワ様よりも上ですわ』
『このままだとロワ選手は何もできずに終わってしまうな』
解説席ではロワが不利と予想しているみたいじゃな。じゃが、ロワはこの状況が読めとったはずじゃ。何か対策を取ってると見るのが妥当じゃろう。
当のロワは避ける事に専念している。じゃが、ロワは隙を見つけては地面に矢を放っている。フィールド作りはしっかりと行えているようじゃ。
絶え間なく弾が襲ってくる中で、ロワは回避しながら地面に矢を放ちまくる。そして、10本の矢が地面に刺さると、ロワは動かしていた足を止めた。
『おっと、ロワ選手が足を止めたな。あきらめたか?』
『ロワ様がこの程度で諦めるわけないでしょう?何か作戦があるに決まってますわ』
チフールの言う通り、ロワの目には諦めは見えない。何かをしようとしているのは明らかだろう。
立ち止まったロワを見たリオレは、チャンスとばかりにロワに向かって発砲をする。それを見てもロワは動こうとしない。誰もがロワに弾が命中したと確信したじゃろう。だが、その予想とは異なり弾丸は何かに弾かれ、弾丸はロワには届かなかった。
リオレが驚いたように目を開いている間にロワは真横に矢を放つ。矢は軌道を曲げてリオレに向かって飛んで行った。リオレは矢を撃ち落して再度ロワに発砲するが、同じように弾丸は弾かれてしまった。
『どういうことだ?一体何が起こっている?』
『ふふん、教えて欲しいですか?』
『なるほど、地面に突き刺さっている矢を起点に結界を起動している訳だな。矢の軌道を操作できるロワであれば結界を迂回して相手を狙える、効果的な手だな』
『理解するの早くありません?』
状況を理解したリオレは飛んで来る矢を撃ち落しながら結界を迂回しようとする。じゃが、結界は複数あり簡単には回り込めないようになっている。
じゃが、ロワは立て続けに射続けておるが全て撃ち落されるか回避されている。状況は硬直しておるが、ここからどうなるかのう。
結界を回り込めない事を察したリオレはその場に立ち止まり、そのまま銃を構えた。
「回り込みをあきらめたか」
「チャンスじゃな」
わしらと同じ考えなのか、ロワがクラウドショットの矢を立て続けに放つ。矢は分裂していき、何十本もの矢がリオレに襲い掛かる。しかし、
『な!?クラウドショットが弾かれた!?』
矢は全て何かに弾かれ地面に落下した。その後、リオレは矢が飛んできた方向へ弾を発射した。弾は明後日の方向に飛んだように見えたが、何かに弾かれた音と共にどんどん軌道を変えていきロワの元へと迫っていく。危険を察したロワはすぐさま矢を地面に放って新しい結界を作った。
弾はロワに届くことなく、新しい結界に阻まれて明後日の方向に飛んでいく。
『今のはなんですの?ロワ様の矢が弾かれて、リレオ選手の弾がロワ様に吸い込まれるように軌道を変えましたわ?』
『なるほどな、これがこいつの秘密か』
『分かっているなら教えてくださいませ。さっきみたいな焦らしは嫌ですわ』
『まあ、あれだ。両者とも使っているものは同じって事だ』
『同じ……もしかして結界ですの?』
『その通り。恐らく奴のスキルは結界の出現範囲を遠くに出来るスキルだ。それを使って弾の軌道を変えていたんだろう』
成程のう、ロワの矢を結界で防ぎ自分の弾を結界で弾いて軌道を変える。攻めと守りが出来る良い手じゃ。
『リレオ選手の秘密とはこれですの?』
『ああ、これさえあれば敵が盾を持っていようが早かろうが関係なく弾を当てられる。知らないでやられた奴も結構多いだろうな』
『それに今の攻撃で状況は大きく変わりましたわ』
『そうだな、どちらも攻撃が出来なくなっちまってるな』
今、ロワは自分が攻撃を通すための隙間を全て塞いでおる。これでは相手からの攻撃は届かないが、ロワも攻撃が出来ない。つまりは……
『結界が切れた時が勝負だな。下手したらそのまま決着なんてこともあり得る』
結界の効果は長くはない。初めに張った結界が消えた時の行動が重要になってくるじゃろう。それは両者分かっておる筈じゃ。さて、どう出てくるかのう?
皆が注目する中、ロワは1本の青い矢を取り出して弓に番えた。そして、弓を引き絞るとリオレに向かって狙いを定めた。
『あれはトリシューラ!?……いえ、輝きが鈍いので複製か贋作ですわね』
『だが、かなり高品質な矢には違いない。一撃で決まるつもりか』
トレットの言葉通り、トリシューラの複製が青く輝き始めた。MPを限界まで込めているのじゃろう。
対するリオレも銃の横についている摘みを回してロワに狙いを付けた。すると、銃口から光が漏れ始めどんどんと強くなっていく。
『リオレも受けて立つつもりみたいだな。どっちが強い一撃を放てるか、分かりやすくていいねぇ。俺好みだ』
会場が固唾をのんで見守る中、お互いの矢と銃口の光が強くなっていく。
そして、ついにロワの周りにあった結界が消え去り、ロワはリオレに向かって矢を放つ。対するリオレも対抗して弾を発射…………しなかった。
リオレはニヤリと笑うと、矢の射線上に3枚の結界が現れた。
『おっと、これは上手いな』
このままでは、矢が結界に直撃してしまうじゃろう。弾かれることは無いと思うが、威力が下がってしまうのは免れん。それを見越しての結界か。このままでは……
結界に矢が触れようとした瞬間、今度はロワがニヤリと口角を上げた。
「!?」
矢は結界に触れる直前に姿を消し、リオレの目の前に現れた。それを見たリオレは予想外の出来事に何もできず、そのまま矢は銃の中へと入っていった。
「うお!?」
MPをチャージしていた銃は矢の衝撃に耐えられずそのまま中央から爆発し跡形もなく消し飛んだ。
呆然としているリオレがロワの方へと視線を向けると、そこには油断なく弓を構えているロワが居た。それを見たリオレは首を振ると、諦めたように両手を上げた。
『勝者!ロワ・タタン!』
(うおおおおおおお!)
スピーカーから勝者を継げるアナウンスが響き、ロワは笑いながら無言で拳を天に突き上げた。
☆ ☆ ☆ ☆
『えーっと、今何が起きましたの?』
『まず初めにリオレ選手が結界でロワ選手の矢の威力を下げようとした』
『それは私にもわかりますわ。問題はロワ様が何をしたかです』
『あれはエンチャントの1つだな「スリップループ」っていって矢を射線上にワープさせる効果がある』
『なるほど、ロワ様はリオレ選手の手を読み切ってスリップループで結界を無視したって事ですわね。そして、MPが詰まった銃を破壊して勝利したと』
『そうなるな』
『流石ロワ様ですわ』
『ま、俺に比べたらまだまだだけどな』
『素直じゃないですわね。単純に褒めるってことが出来ませんの?』
『俺があいつを褒めるのは優勝してからだ』
魔法銃とはMPを弾丸のように発射することが出来る銃の事である。側面の摘みを回すことで銃の威力と『連射速度を調整することが出来うる優れものである。MPを弾丸にするため、本物の弾丸を用意する必要が無い。しかし、魔法銃自体が高価なため経済的とも言い難い面もある。ちなみに、実在している魔法銃はリオレ・グラニが持つ1つのみである。──────Maoupediaより抜粋
☆ ☆ ☆ ☆
「そろそろ出番なので僕は行きますね」
「うむ、しっかりな」
「私たちは応援しているぞ」
「ロワお兄ちゃん、ファイト!」
「はい、行ってきます!」
☆ ☆ ☆ ☆
ロワを笑顔で見送りわしらは席で待機する。そんな中で、魔道具から解説席の声が聞こえてくる。
『1回戦3試合目は「ロワ・タタン」選手と「リオレ・グラニ」選手の戦いだな。選手紹介といくか』
『ロワ様は皆さん知っての通りですわ』
『解説を放棄するな』
『別に解説しても良いですけど、明後日の閉会式までかかりますわよ?』
『……俺が解説しよう。ロワ選手は神級スキルである弓神の使い手だ。発射した矢の軌道を操ったり矢にエンチャントをしたり多彩な戦い方が出来る』
『ロワ様にぴったりの無敵のスキルですわ』
『ユミリンピックでは2回戦負けだがな』
『ジル……今度会った時は山の中に埋めてやりますわ』
相変わらず、ロワの姉はバイオレンスじゃな。
『ジルの事は置いといてだな、リオレ選手について解説するか』
『どういう選手なんですの?』
『お前も選手リスト渡されただろ?確認してないのか?』
『ロワ様以外には興味ありませんわ』
『お前な……まあいいか』
良くは無いじゃろ。
『リオレ選手はちょっと変わった選手でな、武器に銃を使うんだ』
『銃?弾を撃ち出すあれですの?結構マイナーな武器を使いますわね?』
『確かに弾自体が高いから数揃えるのも大変だし、専用のスキルも無いから使い手も少ない』
『ですが、本戦には残っている。もしかして、ただの銃ではないのですか?』
『流石俺の娘だ。俺に似て察しが早くて助かる』
『あなたに似ているなんて最大限の侮蔑ですわね』
『褒めた筈なんだがな?』
解説席のやり取りを聞いていたミエルがため息を吐きながら呟く。
「こいつらは仲良く出来んのか?仮にも親子だろ?」
「仲が良い親子だけではないからのう。こんな親子もいるじゃろう」
わしらが話している間にも解説席の話は続く。
『リオレ選手の銃は弾を発射するんじゃなくて、MPを発射する武器だ。それだけじゃなく、威力と連射性を調整できる優れものだ』
『弾の数を揃える必要が無いのは良いですわね』
『スキルは消費MP軽減スキルが主みたいだな』
なるほど、今までに居なかったタイプの相手みたいだ。だが、今の説明何かひっかかるな。なんだろうか?
わしが頭を捻っている間も解説席の話は続く。
『でも、それだけでは決勝に進めるとは思いませんわ』
チフールの言葉でわしは違和感の正体に気が付く。確かに銃は強いがそれだけで決勝まで行けると思えん。何か秘密があると考えるのは妥当じゃろう。
『どうなんですの?何か他に秘密があるんじゃないですの?』
『俺もそう思うんだがな、リストにはこれ以上の情報が書かれていない。これ以上は試合で確かめるしかないな』
む、トレットでも分からんのか。そういえば、ミエルはホウリに出場者のリストを貰っておったな。
「ミエル、ホウリから貰ったにはリストには何か書かれておらんかったのか?」
「書かれていたが、試合で見た方が良いだろう?」
ミエルがニヤリと笑いながら言う。この様子じゃと教えてはくれんな。まあ、出場する3人は分かっているみたいじゃし別によいか。
そんなこんなしている内に、選手入場のサイレンが鳴り、スピーカーから解説席の声が響き渡る。
『皆さんお待たせしました!選手入場です!』
(わああああああ!)
アナウンスが響くと同時に会場の熱気が高まっていく。そんな熱気を煽るように解説が選手の紹介をする。
『赤コーナー!弓神を使いこなす戦士!正確な狙撃で敵を逃がさない!ロワ・タタン!』
(わああああああ!)
「ロワお兄ちゃーん!頑張れー!」
ロワが片手に弓を持って矢筒を背負いながら戦場に入ってくる。歓声が更に大きくなる。それに負けじとノエルが大きな声でロワを応援する。
入場してきたロワの表情には緊張は見えない。さっきの家族からのエールが大きかったんじゃろう。
「思うんじゃが、この口上ってロワの父親が考えておるのかのう?」
「多分そうだな」
ノリノリでやっているようわしには聞こえるが、ミエルにもそう聞こえるみたいじゃな。というか、さっきと紹介方法が変わっておらんか?適当に考えておらぬか?
ノリノリのままにトレットが選手紹介を続ける。
『青コーナー!無尽蔵な弾が相手を襲う!銃なら俺に任せておけ!リオレ・グラニ!』
(うおおおおおおお!)
ロワの反対側から長い青髪を後ろで結んだ長身の男が入場してきた。右手にはスコープが付いたライフルのような銃が握られており、肩で支えながらロワを睨みつけている。
「お主らは対戦相手の事を知っておるんじゃよな?ロワに勝てる見込みはあるのか?」
「ロワは攻撃手段が豊富だからな。対策は立てやすい筈だ。勝てる可能性は十分ある」
ロワであればエンチャントで事前に対策が取れる。情報さえあれば対策は取りやすそうじゃな。
『それでは今から試合を始めます!両者位置について!』
2人が睨みあいながら定位置に着く。その雰囲気は今から打ち合うガンマンに似ている。間に入ったらハチの巣にされそうじゃ。
『それでは、試合開始ぃぃぃぃ!』
(うおおおおお!)
試合が始まった瞬間、2人はお互いに武器を向ける。
ロワはリオレに矢を放ち、リオレはロワに発砲する。矢とMPの塊が衝突しあい、光を放ちながら弾け飛ぶ。
ロワは更に矢を射ろうとするが、リオレはロワ以上の速度で銃を発砲する。
『これはマズイですわね。攻撃速度が明らかにロワ様よりも上ですわ』
『このままだとロワ選手は何もできずに終わってしまうな』
解説席ではロワが不利と予想しているみたいじゃな。じゃが、ロワはこの状況が読めとったはずじゃ。何か対策を取ってると見るのが妥当じゃろう。
当のロワは避ける事に専念している。じゃが、ロワは隙を見つけては地面に矢を放っている。フィールド作りはしっかりと行えているようじゃ。
絶え間なく弾が襲ってくる中で、ロワは回避しながら地面に矢を放ちまくる。そして、10本の矢が地面に刺さると、ロワは動かしていた足を止めた。
『おっと、ロワ選手が足を止めたな。あきらめたか?』
『ロワ様がこの程度で諦めるわけないでしょう?何か作戦があるに決まってますわ』
チフールの言う通り、ロワの目には諦めは見えない。何かをしようとしているのは明らかだろう。
立ち止まったロワを見たリオレは、チャンスとばかりにロワに向かって発砲をする。それを見てもロワは動こうとしない。誰もがロワに弾が命中したと確信したじゃろう。だが、その予想とは異なり弾丸は何かに弾かれ、弾丸はロワには届かなかった。
リオレが驚いたように目を開いている間にロワは真横に矢を放つ。矢は軌道を曲げてリオレに向かって飛んで行った。リオレは矢を撃ち落して再度ロワに発砲するが、同じように弾丸は弾かれてしまった。
『どういうことだ?一体何が起こっている?』
『ふふん、教えて欲しいですか?』
『なるほど、地面に突き刺さっている矢を起点に結界を起動している訳だな。矢の軌道を操作できるロワであれば結界を迂回して相手を狙える、効果的な手だな』
『理解するの早くありません?』
状況を理解したリオレは飛んで来る矢を撃ち落しながら結界を迂回しようとする。じゃが、結界は複数あり簡単には回り込めないようになっている。
じゃが、ロワは立て続けに射続けておるが全て撃ち落されるか回避されている。状況は硬直しておるが、ここからどうなるかのう。
結界を回り込めない事を察したリオレはその場に立ち止まり、そのまま銃を構えた。
「回り込みをあきらめたか」
「チャンスじゃな」
わしらと同じ考えなのか、ロワがクラウドショットの矢を立て続けに放つ。矢は分裂していき、何十本もの矢がリオレに襲い掛かる。しかし、
『な!?クラウドショットが弾かれた!?』
矢は全て何かに弾かれ地面に落下した。その後、リオレは矢が飛んできた方向へ弾を発射した。弾は明後日の方向に飛んだように見えたが、何かに弾かれた音と共にどんどん軌道を変えていきロワの元へと迫っていく。危険を察したロワはすぐさま矢を地面に放って新しい結界を作った。
弾はロワに届くことなく、新しい結界に阻まれて明後日の方向に飛んでいく。
『今のはなんですの?ロワ様の矢が弾かれて、リレオ選手の弾がロワ様に吸い込まれるように軌道を変えましたわ?』
『なるほどな、これがこいつの秘密か』
『分かっているなら教えてくださいませ。さっきみたいな焦らしは嫌ですわ』
『まあ、あれだ。両者とも使っているものは同じって事だ』
『同じ……もしかして結界ですの?』
『その通り。恐らく奴のスキルは結界の出現範囲を遠くに出来るスキルだ。それを使って弾の軌道を変えていたんだろう』
成程のう、ロワの矢を結界で防ぎ自分の弾を結界で弾いて軌道を変える。攻めと守りが出来る良い手じゃ。
『リレオ選手の秘密とはこれですの?』
『ああ、これさえあれば敵が盾を持っていようが早かろうが関係なく弾を当てられる。知らないでやられた奴も結構多いだろうな』
『それに今の攻撃で状況は大きく変わりましたわ』
『そうだな、どちらも攻撃が出来なくなっちまってるな』
今、ロワは自分が攻撃を通すための隙間を全て塞いでおる。これでは相手からの攻撃は届かないが、ロワも攻撃が出来ない。つまりは……
『結界が切れた時が勝負だな。下手したらそのまま決着なんてこともあり得る』
結界の効果は長くはない。初めに張った結界が消えた時の行動が重要になってくるじゃろう。それは両者分かっておる筈じゃ。さて、どう出てくるかのう?
皆が注目する中、ロワは1本の青い矢を取り出して弓に番えた。そして、弓を引き絞るとリオレに向かって狙いを定めた。
『あれはトリシューラ!?……いえ、輝きが鈍いので複製か贋作ですわね』
『だが、かなり高品質な矢には違いない。一撃で決まるつもりか』
トレットの言葉通り、トリシューラの複製が青く輝き始めた。MPを限界まで込めているのじゃろう。
対するリオレも銃の横についている摘みを回してロワに狙いを付けた。すると、銃口から光が漏れ始めどんどんと強くなっていく。
『リオレも受けて立つつもりみたいだな。どっちが強い一撃を放てるか、分かりやすくていいねぇ。俺好みだ』
会場が固唾をのんで見守る中、お互いの矢と銃口の光が強くなっていく。
そして、ついにロワの周りにあった結界が消え去り、ロワはリオレに向かって矢を放つ。対するリオレも対抗して弾を発射…………しなかった。
リオレはニヤリと笑うと、矢の射線上に3枚の結界が現れた。
『おっと、これは上手いな』
このままでは、矢が結界に直撃してしまうじゃろう。弾かれることは無いと思うが、威力が下がってしまうのは免れん。それを見越しての結界か。このままでは……
結界に矢が触れようとした瞬間、今度はロワがニヤリと口角を上げた。
「!?」
矢は結界に触れる直前に姿を消し、リオレの目の前に現れた。それを見たリオレは予想外の出来事に何もできず、そのまま矢は銃の中へと入っていった。
「うお!?」
MPをチャージしていた銃は矢の衝撃に耐えられずそのまま中央から爆発し跡形もなく消し飛んだ。
呆然としているリオレがロワの方へと視線を向けると、そこには油断なく弓を構えているロワが居た。それを見たリオレは首を振ると、諦めたように両手を上げた。
『勝者!ロワ・タタン!』
(うおおおおおおお!)
スピーカーから勝者を継げるアナウンスが響き、ロワは笑いながら無言で拳を天に突き上げた。
☆ ☆ ☆ ☆
『えーっと、今何が起きましたの?』
『まず初めにリオレ選手が結界でロワ選手の矢の威力を下げようとした』
『それは私にもわかりますわ。問題はロワ様が何をしたかです』
『あれはエンチャントの1つだな「スリップループ」っていって矢を射線上にワープさせる効果がある』
『なるほど、ロワ様はリオレ選手の手を読み切ってスリップループで結界を無視したって事ですわね。そして、MPが詰まった銃を破壊して勝利したと』
『そうなるな』
『流石ロワ様ですわ』
『ま、俺に比べたらまだまだだけどな』
『素直じゃないですわね。単純に褒めるってことが出来ませんの?』
『俺があいつを褒めるのは優勝してからだ』
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不死身のボッカ
暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。
小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。
逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。
割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。
※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。
※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。
※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。
※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。
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