魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第九十話 シャトルの中に隠れるのよ

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───魔方陣───
魔方陣とはスキルや魔法が簡易的に発動できる物である。今回はスキルが発動できるものに関して説明する。魔方陣によっては取得してないスキルを発動できるが、使用できるスキルには制限がある。使えない物は、念動力と言った操作が必要な者や、透明化といった発動時間が長めな物、時間停止と言った強力な物がある。また、MPの込め方も難しく、一度に大量のMPを込めると爆破する恐れがある。ワープ系のスキルは同じ魔方陣を用意することで手軽に遠距離の移動が出来るが、消費するMPも多く、手軽に利用できる物ではない────Maoupediaより抜粋



☆   ☆   ☆   ☆



 国王からサンドの街への操作が命令されて、私たちは魔方陣の間に向かっていた。流石に裁判所に魔方陣はないので、近くの魔方陣がある施設であるギルド本部へ向かっていた。
 馬車の社内で外を眺めながら私は考える。私のやったことは本当に正しかったのだろうか。ホウリさんは別の事をするつもりだったんじゃないだろうか。


「おい見ろよ!あのパン屋すげぇ行列出来てるぜ!」


 間違った事をしていて、全てを台無しにしたらどうしよう。私が皆を危険に巻き込んだらどうしよう。


「美味いのかな?これが終わったら食いに行こうぜ」


 これがホウリさんの計画だったとしても、この後上手く出来ないかもしれない。そう思っていたら不安で胸が……


「でも気分としてはガッツリって感じだな。カツサンドとか良いかもな。ラビュはどう思う?」
「もう!私が悩んでいる後ろで何言ってるんですか!後、私はラビです!」


 隣にいるスイトさんに思わず怒鳴ってしまう。
 この後に敵の本丸に乗り込むって時にお昼ご飯の事を考えるなんて、ある意味凄いのかもしれない。
 私の言葉にスイトさんが大口を開けて笑い始める。


「はっはっは!細かい事は気にするな!」
「もう!スイトさんは心配とかないんですか!」
「ないな!なんとかなる!」


 そう言うとスイトさんはまた笑い始めた。
 ……でも、今は弱音を吐いている場合じゃない。どんなに心配でもやるしかないんだ。
 私は大きく息を吸ってゆっくりと吐く。


「ふう……よし、もう考えるのは止めました。今は私に出来ることをします」
「その意気だ!ちなみに昼飯は何が良い?」
「かつ丼!」

 

☆   ☆   ☆   ☆



 馬車に揺られること数十分、私たちはギルド本部に付いた。
 ギルド本部は意外と高くなく平屋建てだった。ただ、建物の面積は広いみたいで、憲兵所と同じくらいの面積はある。


「腰が痛いです……」
「検察は移動が多いから早めに慣れないとな」


 検察って移動多いとは意外だ。意外と肉体仕事なんだ。
 腰をさすりながらギルドの中へ入る。中にはメガネを掛けた受付嬢が待っていた。
 受付嬢は私たちが入ってくると、恭しくお辞儀をする。


「お待ちしておりました。魔方陣の部屋に案内します」
「よろしく頼むぜ」


 受付嬢にギルド本部の奥へ案内される。
 魔方陣の間の中には既に護衛を付けた国王がいた。


「お待たせしました国王様」
「うむ、後は弁護側だな」


 国王様の言葉通り弁護側の姿は見えない。私たちよりも早く出ていた筈だから来ていないのはおかしい。


「もしかして逃げた?」
「見張りの者を付けているから逃げることは出来ない筈だ。そうだな?」
「は!優秀な見張りを20人つけてますので逃げることは出来ません!」


 国王の言葉に護衛の一人が答える。確かに最有力の容疑者に見張りを付けない訳がないか。だったら何で遅れてるんだろう?まあ、来たら分かるか。


「そういえば、国王様の護衛の人って色んな人がいるんだね」
「国王様は優秀だったら誰でも雇うって有名だからな。全員実力者なのは間違いない」


 国王の護衛はざっと数えて30人はいる。しかも、意外にも護衛の人は男性だけじゃなくて女性もいる。中にはノエルちゃんみたいな銀色の髪の子供までいる。どんな探し方をしたらこんな人材が見つかるのだろうか。
 護衛の人たちをまじまじと見ていると、やっとパンケとローブオがやってきた。
 パンケはやって来るなり国王へ頭を下げる。


「お待たせして申し訳ありません。途中で馬車が壊れてしまいまして……」
「言い訳は良い。全員が揃ったのならば速やかに出発する」


 国王はパンケに背を向けると魔方陣の間へと入る。私たちも国王の後を追って魔方陣の間へ入る。
 魔方陣の間は部屋の中に50人は入りそうな大きな魔方陣が描かれている簡素な部屋だった。魔方陣以外には光源となる燭台が数本あるだけでかなり薄暗い。


「これからワープするなんてドキドキしますね」
「そうだな。帰ったらビタルの奴に自慢してやろう」


 私たちがひっそりと盛り上がっていると、国王と護衛、弁護側がさっさと魔方陣へ入っていった。私たちも慌てて魔方陣の中へ入る。


「それでは、いってらっしゃいませ」


 受付嬢の人がお辞儀した瞬間、魔方陣が光り始める。光はだんだんと強くなっていって、遂には目を開けられないほどに強くなる。
 あまりの眩しさに私は思わず目をつぶってしまう。
 目をつぶって数秒、肩を叩かれた私は恐る恐る目を開けてみる。
 私の目に飛び込んできたのは驚くべき光景……ではなく、さっきと同じく薄暗い部屋だった。よく見ると燭台の柄が違うけど、それ以外に違いは見えない。正直思っていたワープとは違う。
 私たちが突っ立っていると国王が部屋の出口に向かってさっさと歩いて行った。そんな国王をパンケが慌てて追いかける。


「国王様、館は広大です。今、案内の者を呼びますのでお待ちください」
「その必要はない」


 国王は歩きながら一枚の紙を取り出す。


「事前に検察側から館内の地図を提出があった。調査はこれを参考にするため案内の必要はない」
「しかし、調査をするとなると、手を分ける必要があるでしょう。いくら地図があったとしても屋敷の者の案内が必要なのでは?」
「この地図には装置の置き場所の可能性が高い場所の記載もあるため、手分けする必要はない。よって案内の必要はない」
「ですが……」
「くどいぞ」


 国王の一睨みでパンケが縮こまる。おかしいな、検察側から地図なんて提出したっけ?ホウリさんが提出したとしても、記録には残っている筈だ。見落としていただけかな?
 不思議に思いながらも私たちは迷いなく進む国王の後を追う。
 屋敷の中を歩き始めて数分、国王は廊下で突然立ち止まった。


「国王様どうしました?」


 パンケの言葉に答えず、国王は廊下の壁に手を触れる。


「……ここか。おい」


 国王の言葉に護衛の一人が前に出る。


「ここだ」
「了解」

 
 護衛は頷くと壁に向き直る。そして拳を引いて構えを取った。


「!?、まさか!」
「ハアアアア!」


 何が起こるか察したパンケは思わず飛び出す。しかし、時すでに遅く護衛は思いっきり壁を殴りつけて、轟音を響かせながら破壊していた。そんな光景を見た私は呆然とするしかなかった。


「……確か、領主の館ってかなり頑丈でしたよね?噂では小型の爆弾なら傷一つつかないくらいって話ですけど?」
「領主の護衛だぜ?その位は余裕だろ」


 確かに国王の護衛をするくらいだし、そういうものなのかな?
 不思議に思いながらも、破壊された壁の奥へ視線を向ける。壁の奥は部屋になっており、何かの装置があった。明らかな隠し部屋だ。


「スイトさん」
「分かってるって」


 私とスイトさんで部屋の中に入って装置を調べてみる。



「ラビュ、装置の設計図は持ってるか?」
「勿論ありますよ」


 アイテムボックスから装置の設計図を取り出してスイトさんに渡す。設計図を受け取ったスイトさんは目の前の装置と設計図を見比べる。


「ここがMP補給のパイプで、ここはエネルギー変換部位か。流石に発射部位はここには無いな。恐らく、館の中にこれと同じような物があって、発射部位にエネルギーを送っているんだろう」
「よく分かりますね。私なんて何処が何になっているかなんて全く分かりませんよ」
「ラビュに頼まれた時から工学の知識は叩き込んでおいたからな」
「凄いですけど、私はラビです」


 これで確定だ。サンドの街は巨大装置を使って国家転覆を計画していたこれ以上の証拠はないだろう。
 スイトさんの言葉は国王にも聞こえていたらしく、鋭い視線をローブオに向けていた。


「これで結論が出た。サンド・ローブオ、貴様を国家転覆の罪で投獄する」


 国王が手を上げると、護衛の人たちが一斉にローブオとパンケを取り囲んだ。


「何か言う事はあるか?」


 国王の言葉に今まで無口を貫いていたローブオが前に出て口を開いた。


「ここまで来たら弁解は出来ないでしょうね」
「その通りだな。今から貴様らを拘束し、王都の独房へと連行する。抵抗は無駄と思え」


 護衛の人たちがローブオとパンケとの距離を少しずつ詰めていく。だが、絶体絶命のピンチだというのにローブオ達の顔には悲壮感やあきらめの表情はない。それに気が付いた私は緊張で体をこわばらせた。
 そうだ、ここはローブオの館、言い換えれば敵の本拠地だ。何か罠が仕掛けられていてもおかしくない。
 私はその事を伝えようと走りながら口を開く。しかし、私が叫ぶよりも早く地面が光りだした。
 私は反射的に目を覆う。光が収まった事を確認して目を開けると、ローブオ達を守るように複数の兵士が表れていた。


「抵抗する気か?」
「私はここで捕まるわけにはいかないのでね」
「……国王として命じる。反逆者を捕らえよ。生死は問わない」

 
 国王が命令した瞬間、護衛たちが一気に襲い掛かる。
 国王の護衛よりローブオの兵士の方が圧倒的に人数が少ない。それに、国王の護衛は腕利きばかりだ。普通に考えて勝負になる筈がない。しかし、


「何!?」


 兵士が数人の護衛の剣を軽々と受け止めている。それどころか押し返しつつある。
 攻撃を仕掛けた護衛の人達は驚きながらも攻撃の手を緩めない。


「魔法部隊は相手の動きを妨害せよ。騎士部隊は国王を守れ!」


 護衛のリーダーっぽい人が指示を飛ばす。
 魔法部隊とよばれた人たちが少し前に出て、兵士たちに向かって杖を向ける。


「撃て!」


 リーダーの号令と共に魔法部隊が杖を兵士たちに向けてスキルを発動する。だが、


「リーダー!スキルや魔法が出ません!」
「何!?」


 魔法部隊のセリフにパンケがニヤリと笑う。


「この館には特定の魔法具を付けていない者はスキルや魔法が使えないようになっている。つまり、貴様らはスキルが使えずに我々と戦うという訳だ」
「くっ……国王だけでも返すんだ!」


 リーダーの言葉に騎士たちが国王を連れて来た道を戻ろうとする。
 しかし、来た道からも兵士がやってきており、完全に逃げ道を塞いでいた。


「はっはっは!まさか、逃げられると思っていたのか?貴様らはここで終わりだ!」


 裁判が始まってから一番楽しそうな表情でパンケが叫ぶ。


「……もしかして、私たち罠に嵌りました?」
「理解が遅い」


 ……どうしよう?
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